株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

2012/09/26 ルネサス、官民で買収

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

今日は、先週末にニュースになったルネサスエレクトロニクスの買収の話題からです。

 

【記事要約】


・業績不振の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスに対し、トヨタ自動車やパナソニックなど日本の性業を代表する企業が、政府系ファンドの産業革新機構と組み、1000億円超を共同出資する方向で調整に入った。

・すでに交渉中の米投資ファンド・KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)への対抗案を作り、年内に過半数の株式取得を目指す。

・マイコンは車や家電製品、産業機器などに多くつかわれ、モーターなどの動きをきめ細かく制御するなど頭脳の役割を果たす。

・ルネサス製は長期間使っても性能が劣化せず、最先端品は他メーカーでの代替が難しい。

・ルネサスはシステムLSI事業の不振で7期連続赤字。約5500人の早期退職募集や、国内19工場を売却・閉鎖により半減させる大規模なリストラに取り組んでいる。

・KKRは金融機関や株主の追加支援と合わせてルネサス取締役の総退陣を要求しているもよう。


<要約記事はここまで> 

 

ルネサスの話題は、以前のBizBlogでも取り上げました。

 

■ 2012/05/28 ルネサスエレクトロニクス、再建の行方は?

 

ルネサスは、マイコンの世界シェアトップで、自動車系マイコンは特に強いです。

ただ、一方で、システムLSIはその他の半導体企業と同様、韓・サムスン、LGといったところに押されており、苦境に立たされている状況です。

今日は、ルネサスの業績について、2013年第1四半期の業績も踏まえて現状確認してきましょう。

◆ルネサスの業績推移

直近の2013年第1四半期を含めた四半期の業績推移は次のとおりです。

 

【リソース】IKP財務データベースより。

 

今期は抜本的なリストラの実施に伴い工場の閉鎖・売却等があったことから売上は減少し、四半期売上として2000億円を下回る結果となりました。

 

【リソース】IKP財務データベースより。 

 

利益は前年同期比レベルでは回復傾向にあるものの、まだ赤字から脱却できていません。

新聞記事でもあったように、7期連続赤字ですから、もちろん上記のような結果となるでしょう。

 

【リソース】IKP財務データベースより。

 

損益が悪いので当たり前といえば当たり前ですが、営業キャッシュフローもほとんど赤字の状態で、十分なキャッシュが稼げていないことがわかります。

◆ルネサスの収益構造の構築に向けての取り組み

ここでは、平成24年7月3日にルネサスが公表したリストラ計画について簡単にみてみようと思います。

 

平成24年7月3日ルネサスエレクトロニクス公表 『強靭な収益構造の構築に向けた諸施策の方向性について

【リソース】ルネサスHPより

 

ルネサスのコアコンピタンスはマイコン事業で、その中でも自動車と今後のスマート社会分野への集中がうたわれています。

マイコンとのシナジーのあるアナログ&パワー半導体はシナジーを発揮し強化していくようです。

もっとも問題であるSoC事業は抜本的な取捨選択を加速することが方針となっています。

 

【リソース】平成24年7月3日「目指す事業構造に向けて~強靭な収益構造の構築~」P3より

 

上記のとおり、事業ターゲットを縮小し、かつ、大口径化・微細化製品を対象とし、国内外サブコンと海外生産委託を増加させる戦略を描いています。

これに伴い、3年を目途に生産拠点の再編全体を推進していく予定です。

 

【リソース】2013年第1四半期決算資料p39より

 

これをみると大幅に整理させることがわかりますね。

なお、津軽工場は7月に富士電機に売却済みです。

これに合わせて、人員整理も大幅に行われる予定で、日経の記事にもあるように約5000人の人員削減が予定されています。

それによる効果が年間で430億円程度の費用削減効果があると試算しています。

 

 

◆KKRと日本連合の綱引き

上記のリストラの実行によって当期に約1500億円程度の最終赤字を見込んでいます。

平成24年6月末時点での純資産合計は2000億円程度なので、結果によっては債務超過の可能性が出てきます。

 

こうした中で、財務的に増資は必至で、その出資に名乗りを上げたのが米投資ファンドのKKRでした。

公式な発表はありませんが、約1000億円程度で経営権の取得と報道されていました。

 

ただ、ルネサスのマイコンに依存している自動車業界や電機業界としては、アメリカの投資会社が経営を実行するとなれば、マイコンの調達コストが高まる可能性があり、完成品の価格転嫁が難しい現状において、大きな経営課題として浮上していました。

ルネサス再建の必要性が高まったときから、産業革新機構が音頭をとって完成品メーカーからの共同支援が模索されていたようですが、完成品メーカーとしては1つの部材会社に依存度を高めることへの抵抗感もあって(サプライチェーン問題など)、及び腰だったようです。

 

それでも、ルネサスのマイコン製品は費用対効果の関係で投資した方が良いという判断に傾いたのでしょう。

エルピーダが汎用品DRAM製造がメインだったために完成品メーカーが名乗り出なかったのと対照的な結果ですね。

 

日経の記事では、日本連合に分があるような感じで書かれてましたが、正式コメントは出ていないのでどちらが出資するかはわかりませんね。

東京株式市場ではこのニュースを材料にこの3営業日は乱高下しているようですが、もともと大幅増資で希薄化が顕著でることはハッキリしているので、それほど株価も駆け上がっていくことはないんじゃないかと筆者は思います。

実際、ルネサス側からすれば完成品メーカーに資本を握られるとなれば、マイコンの価格上昇・転嫁は期待できないし、政府系ファンドでどこまで抜本的な改革ができるのか疑問的な見方もできるので、日本連合が買収することになったとしたら、改革がどこまでできるかが注目されるところです。

 

今後のルネサスの動向に注視していきたいですね。

以  上

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