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2012/06/19 凸版、100億円でデータ拠点、カタログの電子化・配信を受託

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今日は、日経朝刊11面の電子カタログの話題から。

 

<2012年6月19日 日経朝刊11面 記事要約>


凸版印刷は2015年までに100億円を投じてデータセンターを新設する。

・企業から印刷物の電子化や配信を請け負う事業に活用する。スマホの普及を背景に、電子カタログなどの需要が拡大するとみて中小企業などからの受託を目指す。

・凸版はこれまで、電子書籍の事業を始めているほか、電子チラシの作成・配信を受託している。

・金融機関の顧客データなどの高度な機密性が求められるデータについても扱う考えで、この場合は暗号処理なども同時に請け負う。

・必要な人材は新規採用のほか、配置転換などで1000人強にする。

・同社の12年3月期の印刷関連事業は売上高が前期比1.8%減の8907億円。企業向けの「商業印刷」事業が落ち込んでいる。

・印刷各社は電子化への対応を急いでる。


<要約記事はここまで>

 

印刷大手の凸版と大日本印刷は印刷本業の落ち込みを、デジタル家電や建材といった「部材関連」で収益の柱を確立し、売上・収益を成長させてきましたが、ここ最近のデジタル不況により、次の収益の柱を確立することを求められています。

ここ最近の印刷関連事業の製造品出荷額の推移は以下のとおりです。

 

【リソース】経済産業省工業統計調査「産業編・従業者10人以上の事業所」より筆者集計。

 

これをみると、出荷額が減少していることがわかります。

平成20年(2008年)はちょうどリーマンショックのときですね。

ここを境に落ち込みが回復しきれていません。

平成14年から平成22年で製品出荷額は△約1兆1236億円で、減少率は16.59%の減少となっています。

 

 

以前のBizBlogでは、こうした印刷物の売上減少をカバーするために、部材関連事業を伸ばす一方で、海外売上高比率を高める必要があることを確認しました。

 

2012/01/25 凸版印刷、海外売上高3割に

 

しかし、部材関連事業は電機メーカーの不振を見てもわかるように、一時のような収益を見込むことは難しい状況になっています。

 

そして次の柱として考えられるのは、デジタル・コンテンツである書籍やカタログといったものです。

今回の日経の記事では電子カタログを中心とした、いわゆる商業印刷物のデジタル化をテーマとした、データセンターへの設備投資となっていましたが、電子カタログといったものだけでなく、電子書籍事業についても既に事業を始めています。

 

凸版印刷では、ソニーとKDDI、朝日新聞社の4社共同で、電子書籍事業を展開しようと、「ブックリスタ」という電子書籍取次、プラットフォーム構築を目指した会社を設立しています。

 

平成22年5月27日公表「ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社 電子書籍配信事業に関する事業企画会社を設立」

【リソース】KDDIホームページより

 

ソニーは「Reader」、KDDIは「biblio Leaf」のタブレット端末を持っています。

KDDIは、「LISMO Bookstore」というauのスマホ端末向けの電子書籍サービスを展開しています。

 

 

一方で、大日本印刷は、NTTドコモと電子書籍を共同展開する戦略をとり、子会社である電子書籍店として展開していた「honto」をNTTドコモとの合弁会社「2Dfacto」へ業務移管し、NTTドコモの端末ユーザへの展開を行っています。

大日本印刷は、ジュンク堂、丸善、文教堂のリアル書店を子会社にしているので、実店舗、オンライン、電子書籍と様々な形での書籍販売が可能になります。

 

平成22年8月4日公表「NTTドコモ 大日本印刷 電子出版ビジネスで提携」

【リソース】NTTドコモホームページより

 

 

電子書籍は著者や出版会社等の権利関係の障害により、新刊がなかなか電子書籍によって発表されず、思ったほどの伸びを見せていないのが現状ではないでしょうか。

ゲーム機と同様、コンテンツが充実して初めてハードそのものに魅力が生じるのであって、ハード先行ではなかなかうまく普及しないのが現状かと思います。

 

ただ、電子書籍のためのリーダー端末というより、スマホやタブレット端末の普及により、電子書籍を読むハードそのものの普及は格段に進んでいます

このため、結果として、コンテンツさえ充実していけば、いっきょに普及する可能性があります。

NTTドコモやKDDIといった通信キャリアにとってもスマホ、タブレットの魅力はコンテンツの普及が必須であり、電子書籍市場を拡大させることへのインセンティブは強いと考えられます。

 

海外では、アマゾンの「Kindle store」とアップルの「iBook store」、グーグルの「ebook store」などのビックカンパニーが強力に電子書籍事業を押し進めており、日本の出版業界ほど権利関係が複雑でないことも要因となって、電子書籍市場が開花していくことが予想されています。

 

 

産業革新機構も今年の3月に電子書籍会社・出版デジタル機構に最大150億円の出資を決めています。

今後の電子書籍の展開に注視していきたいですね。

以  上

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