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2012/06/11 三菱ケミカル、エチレン設備廃止(BASFとダウケミカル比較)

今日は、日曜日の日経朝刊1面の三菱ケミカルのエチレン設備廃止の話題から。

 

<2012年6月10日 日経朝刊1面・7面 記事要約>


・三菱ケミカルHDは鹿島コンビナート(茨城県神栖市)のエチレン設備1基を2014年に廃止する方針を固めた。国内需要の減少や円高で採算が悪化しており、生産能力を約3割減らす。国内でエチレン設備の廃止は13年ぶり。高機能素材へ軸足を移す戦略

・中国、中東などの海外企業が台頭するなかで工業品としては日用品化がすすみ、日本の化学大手は構造転換を迫られていた。

・エチレン需要は新興国で増える見通しだが、中国企業などが増産し円高が続く日本から供給するのは難しくなってきた。

三菱ケミカルは国際競争力を失ったエチレンなどの事業は今後できるだけで縮小、世界シェアの高いアクリル樹脂原料や高機能発光ダイオード(LED)基盤、シート型太陽電池の開発や生産などに経営資源を向ける

・石化大手を含む記憶ない全体の設備能力は年間721万トンあり、11年の生産量は669万トンにとどまった。


<要約記事はここまで>

 

エチレン生産の過剰設備は以前から指摘されており、三菱ケミカルに限らず、石化大手の経営課題となっています。

日経の記事にもあったように、三井化学は出光興産と千葉コンビナートで一体運営をしており、三菱ケミカルと旭化成は岡山県倉敷で水島コンビナートを共同運営しています。

また、三井化学・住友化学・丸善石油化学の合弁会社・京葉エチレンでも共同生産が行われています。

 

以前BizBlogで取り扱った総合化学大手3社の記事は以下のとおりです。

 

2012/04/04 三菱ケミカルHD、「量から質へ」改革急務

◆国内化学大手3社の業績チェック

国内の総合化学大手3社の2012年3月期の業績は以下のとおりです。

 

三菱ケミカルHD 住友化学 三井化学
証券番号 4188 4005 4183
12年3月期売上高(百万円)

3,208,168

(1.3%)

1,947,884

(△1.7%)

1,454,024

(4.5%)

12年3月期営業利益(百万円)

130,579

(△42.3%)

60,688

(△31.0%)

21,564

(△46.8%)

12年3月期当期純利益(百万円)

35,486

(△57.5%)

5,587

(△77.1%)

△1,007

(ー%)

12年3月期営業利益率(%) 4.07 3.11 1.48
特徴

三菱系企業の統合により拡大。傘下に三菱化学、田辺三菱製薬、三菱樹脂、三菱レイヨンがある。

旭化成と岡山県倉敷市で水島コンビナートを共同運営。

石油会社サウジアラコムと石油化学プラントなどで合弁。また、10年ほど前に住友化学との統合交渉あるも破談している。傘下に大日本住友製薬、住友ベークライト、京葉エチレンがある。 米デュポンとの合弁あり。また石化系に強い。10年ほど前に住友化学との統合交渉あるも破談している。出光興産と千葉コンビナート共同運営。傘下に住友化学、丸善石油の合弁の京葉エチレンがある。

 

2012年3月期の業績は各社とも売上マチマチで、営業利益、最終利益は大幅に落ち込む結果となりました。

円高に加えて、下期の欧州債務問題、タイの洪水問題などに大きく影響を受けています。

日経の記事にもあったように、三菱ケミカルの基礎化学品の売上は前期比810億円増加の7370億円となったものの、営業利益ベースでは前期比△300億円の13億円にとどまる結果となりました。

◆エチレンの生産状況の確認

エチレンの各社生産能力は以下のとおりです。

【リソース】平成24年5月25日公表、経済産業省製造産業局化学課「我が国の主要石油化学製品生産能力調査(平成23年12月末時点)結果について」

 

エチレンの実際の生産高の1998年ー2011年推移は以下のとおりです。

【リソース】石油化学工業協会『主要製品生産実績』

 

 

エチレンの生産設備が過剰状態になっているのは明らかで、設備の統合は避けられないと思われます。

世界の需要そのものは新興国中心に増加していくことが予想されますが、エチレンなどの汎用品の生産は原料を持つ中東や労働コストの低い中国等と争っても厳しい状況が続くことも考えられます。

直近2011年の生産高は、2008年のリーマンショック時の688万トンを下回り、669万トンとなってしまいました

 

また、エチレン生産者のプレイヤーの多さ、逆に言えば、1社あたりの生産能力の低さも構造的な問題と言えます。

世界最大手のドイツ・BASFのエチレンの生産能力は1社で337万トン(joint ventureによるプラント生産能力も含む。BASFのAnual Reportより)で、日本国内全体の生産能力が721万トンであることを考えるとその規模の大きさがわかります。

◆BASF、ダウ・ケミカル、三菱ケミカルHDとの比較

最後に、ドイツ最大手のBASF、米国大手のダウ・ケミカル、日本最大手の三菱ケミカルHDの3社の財務情報を比較してみましょう。

単純比較のため、BASF及びダウ・ケミカルの円換算レートは、本日の為替レート、1€=100円、1$=79円とします。

 

会社名

BASF

(ドイツ)

ダウ・ケミカル

(米国)

三菱ケミカルHD

(日本)

会計基準 IFRS SEC JP
証券取引所 フランクフルト NY  東京
決算期 2011.12 2011.12  2012.03
直近売上高(億円)

73,497

47,388

32,081

直近営業利益(億円)

 8,586

2,808

1,305

直近最終利益(億円)

 6,188

 2,199

 354

営業利益率(%)

 11.68

 5.92

 4.06

時価総額(億円)

 50,950

30,320

5,181

備 考

総合化学の世界最大手。

アメリカの化学最大手で、世界2位。

日本の最大手総合化学。

<参考:現地通貨(in million)>

 

 

 

Net Sales

€73,497

$59,985

Income from operation

€8,586

$3,601

 ー

Net income

€6,188

 $2,784

 ー

※BASFの営業利益及び最終利益は"Income from operations","Net income"。ダウ・ケミカルの営業利益及び最終利益は"Income from Continuing Operations Berfore Income Taxes","Net Income"である。

※時価総額は、直近終値における時価総額を用いている。 

 

BASFは売上7兆円を超え、三菱ケミカルのほぼ倍ですね。

時価総額では10倍ほど差がついてしまっています。

営業利益率は10%を超え、欧米諸国に比べて典型的な高利益率の企業といえます。

 

一方で、ダウ・ケミカルは6%程度でやや低迷しています。

2012.4Qでの3カ月決算では赤字を出しており順調な業績推移とは言えない状況です。

 

 

車や電機製品といった完成品メーカーだけでなく、部材・原料サプライヤーにも新興国のコスト競争が激しさを増しています。

特に汎用品は高い技術力が必要ないため、世界での製品競争力は既に失っていると言っても過言ではありません。

早い段階で汎用品は業界全体での統廃合・整理を進め、高付加価値・高機能素材への転換を図り、世界競争力を維持していくことが必要でしょう

 

日本は今でも高い技術力により、多くの部材分野で高いシェアを確立しています。

今後の展開に注視していきたいですね。

以 上

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