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2012/04/04 三菱ケミカルHD、「量から質へ」改革急務

今日は、日経朝刊13面の三菱ケミカルHDの記事が掲載されていたので、総合化学の話題から。

 

<2012年4月4日 日経13面>


・総合化学最大手、三菱ケミカルホールディングスが進めてきた買収による規模拡大戦略が成果を問われている。2007年以降、三菱グループ内外の企業を次々と取り込み、5年間で売上高は2割強増えた。

・ただ、純利益や時価総額は逆に下回る。

・三菱ケミカルHDは、傘下の三菱樹脂が中国で計画していた液晶部材の設備増強を中止。

・12年3月期下期は石化市況も悪化。通期の純利益は300億円と前期比64%減少。

・株価も1,000円台から400円台へ。時価総額は独大手委BASFの10分の1。

・2007年4月以降に次々とM&Aを実施し、約2500億円を投じた。事業分野を分散することで市況の変動に強い会社を目指した。しかし、「市況に左右される製品群が集まっている」(JPモルガン証券尾脇アナリスト)のが現状で思うように成果が上げていない

・信越化学工業はシリコンウエハーなど世界首位の製品群で利益率を高める「ナンバーワン」戦略で企業価値を高める。

・小林社長が見据えるのは、LED関連材料や電池材料で世界トップシェアを獲得すること。3月には英キャッセル工場でリチウムイオン電池材料の量産試作が開始。

・電池材料・LED関連材料で16年3月期に営業利益1000億円を安定的に稼ぎ、石化市況の影響を抑える狙い。


<要約記事はここまで>

 

「化学系企業」と言っても、様々な化学カテゴリーがあり、以前のBizBlogでも取り上げた繊維系の東レや旭化成、シリコン系のSUMCOと信越化学、ハードディスク外販首位の昭和電工など様々な分野の会社があります。

旭化成は繊維系というより、医療や住宅関連(レーベルハウス)も手掛けており、異分野展開の総合化学会社といったところでしょうか。

◆財閥系総合化学各社のステータス

日本の財閥系総合化学といえば、三菱ケミカルHD・三井化学・住友化学の3社でしょうか。

3社のステータスは以下のとおりです。

 

三菱ケミカルHD 住友化学 三井化学
証券番号 4188 4005 4183
12年3月期予想売上高(百万円) 3,220,000 1,990,000 1,430,000
12年3月期予想営業利益(百万円) 135,000 65,000 25,000
12年3月期予想当期純利益(百万円) 77,000 0 △6,000
12年3月期予想営業利益率(%) 4.19 3.26 1.74
個社財務情報(当社DB) 三菱ケミカルHDpdf 住友化学pdf 三井化学pdf
比較財務情報(当社DB)  総合化学3社比較財務情報.pdf
特徴 三菱系企業の統合により拡大。傘下に三菱化学、田辺三菱製薬、三菱樹脂、三菱レイヨンがある。 石油会社サウジアラコムと石油化学プラントなどで合弁。また、10年ほど前に住友化学との統合交渉あるも破談している。傘下に大日本住友製薬、住友ベークライト、京葉エチレンがある。 米デュポンとの合弁あり。また石化系に強い。10年ほど前に住友化学との統合交渉あるも破談している。傘下に住友化学、丸善石油の合弁の京葉エチレンがある。

 

 

<三菱ケミカルHDのセグメント>※11年3月期有報から

<エレクトロニクス・アプリケーションズ>記録材料、電子関連製品、情報機材

<デザインド・マテリアルズ>食品機能材、電池材料、精密化学品、樹脂加工品、複合材、無機化学品、化学繊維

<ヘルスケア>医薬品、診断製品、臨床検査

<ケミカルズ>基礎石化製品、化成品、合成繊維原料、炭素製品

<ポリマーズ>合成樹脂

 

 <住友化学のセグメント>※11年3月期有報から

<石化>エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン

<基礎化学品>フェノール、ビスフェノールA、高純度テレフタル酸、ペット樹脂、エチレンオキサイド

<ウレタン>ポリウレタン材料、コーティング材料、接着材料、成形材料

<機能樹脂>エラストマー、コンパウンド製品、特殊ポリオレフィン、エンジニアリングプラスチック

<加工品>衛生材料、半導体材料、エネルギー材料、包装用フィルム

<機能化学品>眼鏡レンズ用材料、ヘルスケア材料、化成品、特殊ガス、触媒、農業化学品

 

 <三井化学のセグメント>※11年3月期有報から

<基礎化学>無機薬品、合繊原料、有機薬品、メタアクリル、アルミナ製品、アルミニウム等

<石油化学>石油化学品、合成樹脂、合成ゴム、合成樹脂加工製品等

<精密化学>機能性材料、添加材、染料、医薬化学品等

<情報電子化学>光学製品、カラーフィルター、半導体プロセス材料、電子材料、化合物半導体材料、電池部材等

<農業化学>農薬、肥料、農業資材、家庭用・防疫用殺虫剤、熱帯感染症対策資材、飼料添加物等

<医薬品>医療用医薬品、放射性診断薬等

 

 総合化学だけあって、エチレン生産から電池部材、医薬品まで幅広く化学製品を生産しているのがわかります。

◆三菱ケミカルHDの業績推移

三菱ケミカルHDの5年の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

 

<三菱ケミカルHD 5カ年推移>

【リソース】IKP財務データベースより筆者が一部加工

 

売上高は3兆円を突破し、今期予想も3兆2000億円程度となっています。

しかし、日経の記事にもあったように、利益幅の変動が大きく、特に今期は石油化学関連製品の需要及び市況が悪化し、2月に業績を下方修正、770億円の最終利益予想を300億円まで半減させています。

 

これは三菱ケミカルHDに限らず、住友化学、三井化学も同日に業績下方修正を出しており、欧州債務問題や中国需要減退懸念により業績悪化となり、三井化学では前回予想260億円から最終赤字60億円まで下方修正しています。住友化学は、前回予想100億円から最終利益ゼロと下方修正になっています。

 

総合化学3社ともに、セグメントでわかるように化学全般を手広くやっており、信越化学のシリコンウエハー、昭和電工のHD、東レの合成繊維といったような特徴的な部分を強く押し出せていない感が否めません。

規模的には化学セクターでも大きく、三菱ケミカルはダントツの3兆円規模なので、東レ・旭化成の1兆5000億円、信越化学の1兆円と比較しても大きいのがわかります。

なお、世界的には、日経の記事にもあったドイツのBASFは7兆円を超え、アメリカのダウケミカルで4兆円、デュポンで2兆5000億円程度となっています。

 

セグメント自体を多角化することは決して悪いことではないと思いますが、自社の強みを生かす事業ポートフォリオを構築していく必要があるように思います。

三菱ケミカルHDは、全社的な統合もまだ途中の段階だと思いますが、早く全社的統合をおえ、集中と選択によって事業ポートフォリオの再構築が急がれると思います。

 

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