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2011/12/16 リチウムイオン電池部材、市場拡大にらみ増産

本日の日経朝刊11面にリチウムイオン電池の記事が掲載されていたので、その話題から。

 

<2011年12月16日 日経朝刊11面 記事の要約>


・リチウムイオン電池の主要部材を手掛ける企業で連携や新工場の建設が相次いでいる

・三井造船と戸田工業は15日、新開発の正極材事業での連携と工場建設を発表。「リン酸鉄リチウム」という新型の正極材を開発。三井造船の千葉事業所に年2100トンの生産設備を建設し、13年1〜3月に稼働させる。投資額は約50億円。新材料はレアメタルの添加が不必要なうえ、寿命が従来より10年ほど長い。

・旭硝子も中国で正極材の生産をスタート。12年4月から中国で生産を開始。中国産現地メーカーに出資し子会社化。「コバルト酸リチウム」を生産する。国内2拠点で生産しているが、顧客の電池メーカーの中国進出が相次いでいるためで、生産能力を倍増する。

・宇部興産と米化学大手のダウ・ケミカルは電解液の合弁会社を米国ミシガン州に設立。ダウの事業所に年産5000トンの工場を建設、12年末に稼働させる。

・リチウムイオン電池は、2013年以降に車載向け需要が本格的に立ち上がる見通しで、世界的に高いシェアを持つ日本の部材各社も供給体制を急ぐ

リチウムイオン電池の20年の世界市場規模は11年見通し比3.6倍の4兆1,060億円。うち、電気自動車やハイブリッド車などの車載用の需要は40倍強と大きく伸びる


<記事はここまで>

 

◆リチウムイオン電池の構造と部材

リチウムイオン電池は、その名を聞いたことがある方も多いと思いますが、パソコンや携帯電話のバッテリーとして多くの電子機器に利用されているものです。

正確にはリチウムイオン二次電池のことで、「二次電池」とは蓄電池のことで・充電&放電して利用するための電池です。

「一次電池」は日常で利用している乾電池で放電のみができるものを指します。

 

リチウムイオン電池の構造は、通常の電池と同じように、『正極材』と『負極材』、それに『電解液』があり、正極材と負極材を確立する『セパレータ』というものがあります。

日経新聞にもリチウムイオン電池の構造が図で紹介されていますので参考にしてください。

正極材・負極材・電解液・セパレータはそれぞれ異なる部材であり、それぞれの製造分野が異なっています

 

現在のリチウムイオン電池は、正極材がニッケル・マンガン・コバルト、リン酸鉄といったものを利用して生成しています。

記事にもあったように、利用する材料によって「コバルト酸リチウム」や「リン酸鉄リチウム」などと言います。 

正極材で利用されるコバルトはいわゆる「レアメタル」であるため、しばしばレアメタルの調達問題が発生する可能性があります。コバルトが主流のようですが高価であるため、安価なニッケル利用などの技術開発が行われているようです。

記事ではリン酸鉄の場合はレアメタルが不要とのことです。ソニー等でも利用している部材です。

 

一方で負極材は、グラファイトもしくはハードカーボンが利用されています。つまり、炭素材が一般的に利用されています。

最近では、東芝がチタン酸リチウムを負極材として利用した電池を開発しています。従来の負極材はカーボン系であるがゆえに熱に弱いという弱点があったようです。一方チタン酸リチウムは熱に強い負極材で、自動車メーカーが注目しているものです。

 

セパレータはポリエチレンやポリプロピレンなどを利用しています。電解液は、エチレンカーボネートなどを溶媒として利用しています。

 

上記のように、リチウムイオン電池には化合物が様々使われているため化学会社などが部材メーカーとして登場するのが特徴的です。

◆各部材メーカーの業績等

@ 正極材メーカー

正極材メーカーとして、世界トップシェアを誇るのが日亜化学工業です。

日亜化学は非上場会社ですが、資本金467億円、直近売上256,697百万円・営業利益71,156百万円です(有価証券報告書提出会社)。

主要株主に銀行が名を連ねてますが、第6位にシチズン(3.7%)、第10位にソニー(2.6%)の名前があります。

 

日経の記事にもあるように、戸田工業と三井造船連合はリン酸鉄リチウムの正極材の増産、旭硝子はコバルト酸リチウムの増産を本格化するとしています。これ以外にも、田中化学研究所は電池の正極材の生産を主要事業としています。

 

<正極材メーカーの概要> 

日亜化学工業 田中化学研究所 旭硝子 戸田工業
証券番号 未上場 4080 5201 4100
直近売上高(百万円) 256,697 16,310 1,288,947 34,847
直近営業利益(百万円) 71,156  196  229,205  27,590
営業利益率 27.72% 1.20% 17.78% 7.87%
財務情報(当社財務DBより) N/A 田中化学研究所.pdf 旭硝子.pdf 戸田工業.pdf

※日亜化学工業は未上場だが有価証券報告書の提出会社。

 

A 負極材メーカー

次に、負極材メーカーをみると、負極材世界首位の日立化成工業を筆頭に、JFEグループのJFEケミカル、日本カーボンがあります。

負極材は炭素材なので、日本カーボンなど人造黒鉛を製造している会社が強いといえます。

また、上記でも紹介したように、負極材にチタンを利用したリチウム電池を東芝が開発し、このチタンを提供しているのがチタン工業です。

 

<負極材メーカーの概要>

日立化成工業 JFEケミカル 日本カーボン チタン工業
証券番号 4217 未上場 5302 4098
直近売上高(百万円) 497,452 991億円 35,012 5,935
直近営業利益(百万円) 43,471 N/A  3,772  441
営業利益率 8.74% N/A 10.77% 7.43%
財務情報(当社財務DBより) 日立化成工業.pdf N/A 日本カーボン.pdf チタン工業.pdf

※JFEケミカルは未上場。連結売上高はHPにて公表。

 

B セパレータ・メーカー/電解液メーカー

セパレータは旭化成が世界首位であり、電解質大手の宇部興産もセパレータを展開しています。

電解液では、三菱化学が首位で、それを宇部興産が追う形です。

今日の日経の記事では、宇部興産は米国化学大手のダウケミカルと合弁で電解液の増産することになります。

セパレータや電解液はポリエチレンなどの化学製品が利用されていることから、化学大手が参入しやすい事業と言えます。

例えば、セパレータを開発していた東燃ゼネラルに東レが参画し2010年1月に合弁会社を設立していますし、住友化学や帝人もセパレータとして既に参入しています。

 

<セパレータ・電解液メーカーの概要>

旭化成 宇部興産 東燃ゼネラル 東レ 帝人
証券番号 3407 4208 5012  3402 3401
直近売上高(百万円) 1,598,387 616,062 2,398,817 1,539,693 815,655
直近営業利益(百万円)  122,927  44,363  33,528  100,087  48,560
営業利益率 7.69% 7.20% 1.40% 6.50% 5.95%
財務情報(当社財務DBより) 旭化成.pdf 宇部興産.pdf 東燃ゼネラル.pdf 東レ.pdf 帝人.pdf

◆リチウムイオン電池メーカー

こうした電池部材メーカーから部材を調達し、製造しているのがリチウムイオン電池メーカーです。

近年までトップシェアを誇っていたパナソニックグループの三洋電池も、サムスンとLGの猛追にあい、サムスンが三洋に肩を並べたところまできました。

 

これに次いで、ソニー、パナソニックと続いています。

総合電機の東芝は、チタン系リチウムイオン電池により再参入を果たし、ホンダ・三菱自動車のEV車利用にこぎつけ、ダークホース的な存在となっています。

 

巨漢・日立グループも電池事業には力を入れており、特に車載用電池の生産・開発のための日立ビークルエナジー(日立製作所65%、日立マクセルエナジー10%、新神戸電機25%。新神戸電機は日立化成工業の子会社)を設立し、GMに提供しています。

また、先月11月には、日立化成工業が子会社の新神戸電機を完全子会社化するTOBを発表しています。電池事業の強化も狙ったものと発表されています。

 

PCやスマホの電子部材としてだけでなく、電気自動車の電池として、また、スマートハウスにおける充放電等、ますます蓄電池需要は高まると考えられます。蓄電機能を持つことでエネルギー利用の効率化が図れ、スマートシティ構想には欠かせない部材と言えます。

電気自動車の普及に伴いリチウム電池の量産体制が確立すれば、次世代電池の開発がますます加速するものと考えられます。

今後も電池部材の開発も含め注目していきたいですね。

以上

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