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特定目的会社(会計、税務)

1.特定目的会社における会計(投資サイド、オリジネータ)

 TMKに対する出資は、通常の有価証券もしくは金銭債権と同様に処理され、金融商品に関する会計基準に従って会計処理されます。

 

 また、TMKの連結に関する考え方は基本的に他のファンドの場合と異なるところはありません。ただし、TMKについては、オリジネータとTMKとの間での連結範囲に関する問題があるため、会計制度委員会報告15号「特定目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(日本公認会計協会、平成12年7月31日)が整備されています。

 オリジネータがTMKに対して不動産を売却した場合、リスクと経済価値のほとんどが売却先(つまりTMKであり、最終的にはTMKに対する投資家)に移転していることをもってオリジネータは不動産の売却を認識することが可能です。逆に、リスクがTMKの投資家に移転していない場合には、当該不動産を売却していると認識することができず、金融取引として処理することになります。

 リスクと経済価値の移転があるかどうかは、実質的な判断ももちろんのこと、継続的関与として、以下ののような具体例が挙げられいます。

 

1 譲渡人が譲渡した不動産の管理業務を行っている場合
2 譲渡人が不動産を買戻し条件付きで譲渡している場合
3 譲受人である特別目的会社が譲渡人に対して売戻しの権利を保有している場合
4 譲渡人が譲渡不動産からのキャッシュ・フローや譲渡不動産の残存価額を実質的に保証している場合
5 譲渡人が、譲渡不動産の対価の全部又は一部として特別目的会社の発行する証券等(信託の受益権、組合の出資金、株式、会社の出資金、社債、劣後債等)を有しており、形式的には金融資産であるが実質的には譲渡不動産の持分を保有している場合
6 譲渡人が譲渡不動産の開発を行っている場合
7 譲渡人が譲渡不動産の価格上昇の利益を直接又は間接的に享受している場合
8 譲渡人が譲受人の不動産購入に関して譲受人に融資又は債務保証を行っている場合
9 譲渡人がセール・アンド・リースバック取引により、継続的に譲渡不動産を使用している場合

 

 1において、オリジネータが不動産管理業務を行っている場合であっても、通常の契約条件による不動産管理業務を行っている場合には、リスクと経済価値は他に移転していると考えられます。また、9のセール・アンドーリースバック取引の場合であっても、リース取引がオペレーティングリースであって、適正な賃借料をオリジネータが支払っている場合に限り、リスクと経済価値は他に移転していると考えられます。

 

 リスクと経済価値が他に移転していることを不動産の消滅の認識要件としても、「すべての移転」とすると実務的に不都合が生じ、実務的な観点からも「リスクの一部」がオリジネータに残ることを許容する必要があります。このため、リスク負担割合として5%以内まで許容するものとしています。

 リスク負担割合の計算では、流動化した不動産がその価値のすべてを失った場合に譲渡人に生ずる損失に基づいて算定します。このため、例えば、当初の出資割合によるリスク負担割合が5%以内であったとしても、キャピタル・コール条項などにより追加出資しなければならないような場合には、その部分も含めてリスク負担割合を計算することになります。

2.特定目的会社における会計(オリジネータの連結問題A)

 TMKの連結範囲の検討として上記以外に、財務諸表等規則8条7項の連結範囲除外の規定についても検討する必要があります。当該規定は、一定の要件を満たす特別目的会社については、当該特定目的会社に対する出資者等の子会社に該当しないものと推定するものです。

 この除外規定を適用する場合の一定の要件は、以下の3つを満たすことです。

 

@ 特別目的会社に対して、適正な価額により資産が譲渡されていること
A 特別目的会社が、譲り受けた試算から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者(資産流動化法に規定する特定目的借入に係る債権者を含む。)に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されていること。
B 事業内容の変更が制限されていること

 

 この要件はいわゆる「オートパイロット型(自動操縦)」のファンドであることを求めるもので、つまり、ファンドへの支配力がないものと推定されるために設けられた規定です。事業目的については、定款等により文書において特定されていることが必要であり、事業内容の変更の制限では、チャリダブルトラスト等の利用により議決権行使が制限されていることが求められます。最近では、チャリダブルトラストを利用せずに、一般社団法人を用いた議決権の凍結スキームも採用されており、こうした全体的なスキームの検討により連結除外となり得るかを検討する必要があります。

3.特定目的会社における会計(TMK自体)

 TMK自体の会計処理は、「資産流動化法及び特定目的会社の計算に関する規則」(以下、「TMK計算規則」といいます。)に従って処理されます。基本的に会社法計算規則と同様の処理が求められています。表示については、貸借対照表において、「特定資産の部」という区分が設けられ流動化対象となった特定資産に関する開示が独立掲示されている点が特徴的です。 また、損益計算書では未処分利益の算定過程までの開示が必要であり、この点が会社法の損益計算書とは異なるものです。

 一般的に、TMKは会計監査人による監査が行われることが多く、監査法人によって計算書類等のチェックが行われます。

4.特定目的会社における税務(総論)

 TMKの場合、TMK自身は会社であるため法人格を有し、TMK自体に課税関係が発生します。つまり、民法上の任意組合やLPSといった組合型ファンドが法人格を有さないがために、組合員課税(パススル―)となっていたのに対し、TMKでは、TKと同様に、ファンドそのものに課税関係が発生します。 このため、TMKは組合型ファンドに比べて、ファンドとして税務上不利な状況となっており、ファンドの選択によって投資利回りに影響が与えられてしまう状況にあります。

 この点を回避する目的として、いわゆる「ペイスル―税制」が採用され、一定の要件を満たせばTMKから支払った配当金は税務上損益に算入できるものとし、一方で配当金を受け取った投資家は、受取配当金の益金不算入の規定を除外する取扱いとしています。ただし、一定要件を満たした場合にのみペイスルーが適用されますので注意が必要です。特に、いわゆる「支払配当要件」は特定資産の減損処理などの状況などによって要件を満たさない場合があります。

 

5.特定目的会社における税務(個人投資家)

 TMKに参加する投資家は、@特定社債、A特定目的借入、B特定約束手形、C優先出資、D特定出資が考えられます。TMKの場合、そのスキームの特性上、個人投資家が参加することは非常に稀です。このため、ここでは詳細について割愛しますが、基本的な考え方は他の金融商品と同様で、特定社債であれば利子所得、優先出資証券であれば配当所得として税務上処理されます。

 

6.特定目的会社における税務(法人投資家)

 投資対象にかかわらず、それらで得られた利得については、すべて法人税上の益金に算入されます。一部の利子や償還差益などについては源泉所得税が徴収され、税額控除の対象になります。

 また、TMKからの配当については法人税法23条の受取配当金等の益金不算入規定は適用されません。これは、通常の配当金が法人税課税後利益に対する配当であるため、配当先においても課税した場合に二重課税となることを回避するために設けられている規定であるため、TMKのように支払配当金の損金算入規定がある場合には、配当先における税務的配慮は不必要であることから法人税法23条の規定は適用されません。なお、この規定は、TMKが支払配当金の損金算入規定を適用したか否かに関係ありませんので留意が必要です。

7.特定目的会社における税務(TMK自体―ペイスルー税制)

 TMKの場合、組合型ファンドにおけるパススルー税制との関係から、ペイスルー税制が制度化されています。

 通常の法人の場合、配当金支払は税引き後利益の剰余金を基本的に配当原資として行われ、配当金の支払は資本的取引として考えられ、税務上において損金算入されることはありません。もちろん、会計的にも費用として認識されることはありません。しかし、TMKの場合は、一定要件を満たした場合、支払配当金の損金算入を認め、結果としてTMKの税引き「前」利益から支払配当分を損金として処理し、課税所得をゼロにすることでTMK自体には課税されないという、組合型ファンドと同様の税務上の効果をもたらすものです。これをペイスルー税制と呼んでいます。

 

 ここで問題となるのは、ペイスルーが認められるための要件となります。具体的には租税特別措置法67条の14第1項に規定されていて、以下の通りとなります。大きく分けると、対象法人に対する要件と事業年度に関する要件の2つです。

 

@対象法人要件(下記の要件をすべて満たすこと)

特定目的会社名簿に登録されているものであること

次のいずれかに該当するものであること

(1)特定社債が募集により発行され、その発行価額の総額が1億円以上であるもの

(2)特定社債が機関投資家のみによって引き受けられたもの

(3)優先出資が50以上の者によって引き受けられたもの

(4)優先出資が機関投資家のみによって引き受けられたもの

資産流動化計画において、特定社債又は優先出資の発行価額の総額のうちに国内において募集される特定社債又は優先出資の発行価額の占める割合がそれぞれ50%を超える旨の記載又は記録があること
会計期間が1年を超えないものであること。

 

 上記の要件は、設計段階において満たさなければならない要件です。そもそもTMKはセットアップにおけるコストが他のファンドに比べて多額になることでファンドの選択として嫌う傾向にもありますが、要件ロがファンド設計上で困難なケースもあり、要件ロを満たせないためにペイスルーが採用できず、ファンドとしてTMKを利用しないとされるケースも散見されます。

 

A対象事業年度に関する要件(下記の要件をすべて満たすこと)

イ  資産の流動化に係る業務及びその附帯業務を資産流動化計画に従って行っていること。 
他の業務を営んでいる事実がないこと。
特定資産を信託財産として信託していること又は当該特定資産の管理及び処分に係る業務を他の者に委託していること
当該事業年度終了の時において同族会社でないこと(@ロ(1)又は(2)に該当するものを除く。)
ホ  当該事業年度に係る配当等の額の支払額が当該事業年度の配当可能所得の金額の90%に相当する金額を超えていること。
合名会社又は合資会社の無限責任社員となっていないこと 
ト 

次に掲げるすべての要件を満たすこと

(1)資産流動化計画に記載された特定資産以外の資産(資産の流動化に係る業務及びその附帯業務を行うために必要と認められる資産並びに余裕金の運用に係る資産を除く。)を保有していないこと。

(2)特定目的借入を行っている場合には、その特定目的借入が機関投資家からのものであり、かつ、当該特定目的会社に対して特定出資をした者からのものでないこと。 

 

 通常のTMKは、特定出資者も優先出資者も1名ないし数名であることが多いため、実務的に要件ニに該当するケースが多いと考えられます。このため、除外規定として、要件@ロ(1)又は(2)に該当するように設計されることが一般的です。実務的には、公募発行は金融商品取引法上の規制でコストが高まることが多いので、メインバンク等に特定社債を全額引き受けてもらうことで要件ニを満たすスキーム組成が多いと考えられます。

 

 次に、実務上で問題となるのが要件ホの支払配当要件です。これは、利益配当の支払額が配当可能所得金額の90%超であることを求めるもので、利益のほとんどを配当することを要求しています。実際にTMK自体に剰余金を残さないことで、組合型ファンドと実質的に同様なものとし、ペイスルー税制を担保しています。

 ここで実務的に問題となるのは、90%超の計算をする上での配当可能所得の考えです。利益配当の支払額は会計ベースで算定される利益配当であるのに対し、配当可能所得の金額は税務上の課税所得に一定の調整を加えたものとなります。会計上費用計上されたものであっても税務上では加算調整されることもあり、このため、会計上の利益と税務上の課税所得には大きな開きが出ることが多々あります。例えば、特定資産に対して減損処理が必要となった場合、会計上では費用計上されるため利益配当の限度額は小さくなのに対し、税務上では減損損失は加算調整されるため課税所得は大幅に膨らみます。この結果、支払配当割合が90%とならないことが多く、減損損失の認識=スキーム破綻ということになります。

 TMKの場合は、会計監査人による監査も多く、監査上、減損処理すべき場合にはスキームが破綻するとしても減損処理を強要することになります。このため、不動産市場が下落するとTMKスキームが破綻する可能性があります。

 なお、配当可能利益の額は、資産の額から負債の額、資本の額、内閣府令で定める額を控除したものに(租税特別措置法施行令39条の32の2第6項)、特定社債を発行している場合には、その残額の5%を控除するものとしています(同条第7項)。

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