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シリーズ<7> 自己査定@−自己査定概要

1.はじめに

 シリーズ7〜シリーズ9では、銀行借入における自己査定を中心に解説していきます。資金調達の方法としてまず思い浮かぶのが、銀行借り入れです。融資を受ける側の企業としては、事業計画等に従って必要な資金を出来るだけ安いコスト(利払い等)で調達したいと考えています。一方、融資をする側の銀行は、融資先が貸し倒れて資金回収不能となることを一番懸念していますので、融資先企業が返済原資を確保できているか定期的(決算ごと)にチェックすることになります。これが、“自己査定”と呼ばれるものです。

 種類株式の活用や社債の発行なども同様ですが、資金提供者(投資家)がどのようなスタンスで自社に資金提供するのか(しているのか)を知っておくことは非常に重要です。この自己査定についても、銀行という最も身近な資金提供者がどのような理論で融資を決定しているかを知ることは、銀行対策として不可欠なものです。

 シリーズ7、シリーズ8では、一般的な企業に対する自己査定の方法について、金融検査マニュアルを中心に解説していきます。ここでは、債務者区分やその区分方法について、収益性判断、財政状態のチェック、償還能力のチェックを中心に解説していきます。

 シリーズ9では、中小企業に対する自己査定の方法について、金融検査マニュアル別冊〔中小企業編〕を中心に解説していきます。中小企業の場合には、大企業に比べて特殊要因が存在する実態を踏まえて、その特殊要因を含めて債務者区分を決定していくことになります。

2.自己査定とは

 自己査定とは、具体的には、銀行が保有する債権等を査定し、必要な引当金を計上していくことです。一般事業会社では債権管理としては、債権区分として一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等の3つに区分して貸倒見積高を算定していますが(金融商品に関する実務指針106項)、銀行の場合には債権の保有割合が高いので、別途自己査定という作業を通じて、詳細に債権状態を把握し、自社の保全状況を把握していこうとするものです。

 この債権を査定するということは、結局、融資先の企業内容を把握して、一般的に“債務者区分”と呼ばれるランク付けをしていくことになります。この債務者区分によるランク付けが高い企業は、元利金の支払いが債務不履行となる可能性が低いことから、銀行側は利子を低く設定してくれます。一方で、債務者区分が低い企業に対しては、(今までの取引経緯や企業規模によりますが、)基本的に新規融資はせず、資金の回収行動へ移る可能性があります。

 このように、銀行は自己査定という作業を通じて、融資先の債権管理を行っており、この査定結果では、融資企業への貸付方針が変更されていきます。このため、融資を受ける側としては、どのような方法によって自社が査定されているのか知っておくことは、銀行担当者と今後の資金繰りを議論する上でも必要な情報となります。

 なお、この自己査定は、各銀行がマニュアルを制定していますが、その基本となるのは、金融庁が公表している『金融検査マニュアル』と呼ばれるものになります。

3.債務者区分

 自己査定を通じて銀行が債務者のランク付けを行うわけですが、このランクは全部で6段階に分かれます。

 

区分名
内容
正常先 正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいう。
要注意先 要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいう。
要管理先 要管理先は、要注意先の債務者のうち、当該債務者の債権の全部又は一部が要管理債権である債務者のことである。なお、要管理債権とは、3か月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権を指す(金融再生法6条2項、金融再生法施行規則4条4項。
破綻懸念先 破綻懸念先とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)をいう。
実質破綻先 実質破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。
破綻先 破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、例えば、破産、清算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者をいう。

 

 一般的に“不良債権”という言葉がありますが、これは要管理先より下の債務者区分が該当します。不良債権に対しては、銀行は資金回収側にまわりますので、新規融資や取引の継続は基本的に考えられません。また、要注意先であっても、特段注意をしながら融資をしていく必要が出てきますので、積極的な新規融資は考えられません。取引は継続していくと思われますが、将来正常先への回復が期待できるため継続していると考えられますので、正常先に回復せず要注意先のままだと最終的には取引をやめる可能性は出てきます。

 企業側として自己査定を理解する大事なポイントは、自社がどの債務者区分に現在いるのか、ということです。もし、要管理先以下であれば正常先へ復活できるように経営努力が必要になります。

4.自己査定の3つのポイント

 自己査定は、上記2で示したように、融資先企業が1〜6のどの分類に当てはまるか評価していくことになります。

 自己査定の方法は、各銀行がそれぞれのマニュアルを策定・実施しておりますので、詳細の部分では異なってきますが、金融検査マニュアルでは次のように債務者区分を判断するように指示しています。

 

【債務者区分の判断】
債務者区分は、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、債務者に対する貸出条件及びその履行状況を確認の上、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案し判断するものである。

 

 要約すれば、次の3つのポイントをチェックしていくことになります。

 

≪ポイント≫

  1. 業況がどうか・・・黒字かどうか
  2. 財務内容の状況・・・実質債務超過に陥っていないか
  3. 返済能力、返済状況・・・返済状況に問題がないか(返済原資が確保できているか)

 これに加えて、要注意先以下の会社には、必要に応じて経営改善計画や他の金融機関の支援状況などについても考慮していくことになります。以下では、3つのポイントについて、具体的に解説していきます。

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