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ストック・オプションの取得者(個人)の税務 -税制適格(2/2)-

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7.税制適格ストック・オプションの要件

シリーズ6とシリーズ7では、ストック・オプションの取得者(個人)の税務に関して、原則方式(税制非適格ストック・オプション)と特例方式(税制適格ストック・オプション)の課税関係ついて紹介しました。 この章では、税制適格ストック・オプションのための要件について解説していきます。税制適格ストック・オプションは特例の位置づけですから、税制適格要件を満たさないストック・オプションは税制非適格(原則課税)として課税されることになります。 税制適格ストック・オプションの要件は、「租税特別措置法第29条の2」および「租税特別措置法施行令第19条の3」で規定されています。

 

法令の内容を整理すると下記とおりとなります。

 

【ストック・オプションの発行内容の要件】

新株予約権は、金銭の払込(金銭以外の資産の給付を含む)をさせないで発行されたものであること(租特法施行令第19条の3第1項)

 

新株予約の権利行使は、付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に行わなければならないこと(租特法第29条の2第1項1号)

 

新株予約権の1株当たりの権利行使価額は、付与契約締結時における株式時価以上であること(租特法第29条の2第1項3号)

 

当該新株予約権については、譲渡をしてはならないこととされていること(租特法第29条の2第1項4号)

 

新株予約権の行使に係る株式の交付(新株の発行又は株式の移転若しくは譲渡を含む。)が当該交付のために付与決議がされた会社法第二百三十八条第一項に定める事項に反しないで行われるものであること(租特法第29条の2第1項5号)

 

発行会社と金融商品取引業者等(証券会社など)と間であらかじめ、振替口座簿への記載・記録、保管の委託または管理等信託に関する契約が締結され、新株予約権の権利行使により取得した株式が、当該契約に従い、振替口座への記載・記録または保管の委託若しくは管理等信託がなされること(租特法第29条の2第1項6号)

 

【ストック・オプションの取得者の要件】

付与対象者は、発行会社・その子会社の取締役・執行役・使用人・権利承継相続人であること(租特法第29条の2第1項)

 

※子会社とは、発行会社が発行済株式総数の50%超の株式数を直接または間接に保有している関係にある法人をいう(租特法施行令第19条の3第2項)

 

※権利承継相続人とは、取締役・執行役・使用人(「取締役等)という)が新株予約権を行使できる期間内に死亡した場合において、当該新株予約権に係る付与決議に基づき当該新株予約権を行使できることとなる当該取締役等の相続人をいう(租特法施行令第19条の3第5項)

 

付与決議日において大口株主及び当該大口株主の特別関係者(親族や配偶者など)でないこと(租特法第29条の2第1項)

 

※大口株主とは、上場会社・店頭売買登録銘柄として登録されている会社においては発行済株式総数の10分の1超を有する者、それ以外の未公開会社については発行済株式総数の3分の1超を有する者をいいます(租特法施行令第19条の3第3項)

 

※大口株主の特別関係者とは、以下の者をいいます(租特法施行令第19条の3第4項)

(a) 大口株主に該当する者の親族

(b) 大口株主に該当する者とまだ婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情がある者及びその者の直系血族

(c) 大口株主に該当する者の直系血族とまだ婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

(d) (a)~(c)に掲げる者以外の者で、大口株主に該当する者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの及びその者の直系血族

(e) (a)~(d)に掲げる者以外の者で、大口株主に該当する者の直系血族から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの 

 

【ストック・オプションの権利行使に関するの要件】

新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間合計額が、1,200万円を超えないこと(租特法第29条の2第2項)

 

権利者が、新株予約権を権利行使する際、下記書面を発行会社に提出するともに、発行会社は当該書面を保存すること(租特法第29条の2第3項4項)・権利者が、新株予約権の付与決議の日において発行会社の大口株主及び大口株主の特別関係者に該当しないことを誓約した書面・新株予約権の行使日の属する年における当該権利者の他の新株予約権の権利行使の有無(他の権利行使があった場合には、当該行使に係る権利行使価額及びその行使年月日)を記載した書面

 

重要な要件は上記の②③⑦⑧⑩になります。

 

■ ②について

権利行使期間が付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に制限されています。

 

■ ③について

権利行使価格が付与契約締結時の株価以上であること。これは権利行使価格が時価未満の場合、オプション用語でイン・ザ・マネーの状態、すなわち付与時点で経済的利益を得ている状態になってしまうためです。

 

■ ⑦⑧について

付与対象は誰でも良いわけではなく、発行会社・その子会社の取締役・執行役・従業員に限定されています。したがって、オーナー経営者は、税制適格ストック・オプションを付与できない点子会社の役員等へ付与が可能である点、取締役・執行役は可能であるが監査役は除外されている点がポイントになってきます。

 

■ ⑨について

年間の権利行使価額の1,200万円制限は、IPOなどの一攫千金型のインセンティブプランの場合、障害となるケースがあります。

 

 

なお、条文を正確に読みたい方は、下記リンクをご覧下さい。

>>租税特別措置法第29条の2

>>租税特別措置法施行令第19条の3

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