株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

新株予約権およびストック・オプションの発行法人の税務

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1.新株予約権の発行法人の税務

新株予約権の発行および当該新株予約権の権利行使に伴う新株発行は、資本等取引(法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引等)に該当します。したがって、当該一連の取引について、発行法人が課税関係は発生しません。

 

<課税関係>

■新株予約権発行時

課税なし

資本等取引として処理する(ただし、資本金等の額は構成しない)

(借方)現金×××(貸方)新株予約権×××

■取得者の権利行使時

課税なし

資本等取引として処理する

(借方)現   金×××(貸方)資本金等×××

    新株予約権×××

■取得者の株式譲渡時

 

2.ストック・オプションの発行法人の税務

ストック・オプションの発行法人において、個人に役務の提供を受ける対価として新株予約権(すなわち、ストック・オプション)を発行した場合は、法人税法第54条および法人税法施行令第111条の2に基づき、給与等課税事由が生じた日において、当該役務の提供を受けたものとして、損金算入することになります(法人税法第54条第1項、法人税法施行令第111条の2第1項)。

 

給与等課税事由が生じた日とは、「当該個人において当該役務の提供につき所得税その他所得税に関する法令の規定により当該個人の同法に規定する給与所得その他の政令で定める所得の金額に係る収入金額とすべき金額または総収入金額に算入すべき金額を生ずべき事由」が生じた日をいい、具体的には、所得税法施行令第84条より新株予約権の取得者が課税されるタイミングである”権利行使時”を指しています。(法人税法第54条第1項、法人税法施行令第111条の2第1項)

ただし、発行する新株予約権が、権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されている権利に該当しない場合には、損金算入はできません(法人税法施行令第111条の2第2項)。

  

一方、個人において役務の提供につき給与等課税事由が生じないときは、新株予約権の発行法人は、役務の提供に係る費用を損金に算入することはできません(法人税法第54条第2項)。したがって、税制適格ストック・オプションの適用を受けている場合、権利行使時に給与所得等として課税されないため、発行法人においても損金算入することできません

 

【法人税法 第54条】

(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)

第五十四条  内国法人が、個人から役務の提供を受ける場合において、当該役務の提供に係る費用の額につきその対価として新株予約権(当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権を当該新株予約権と引換えにする払込みに代えて相殺すべきものに限る。)を発行したとき(合併、分割、株式交換又は株式移転(以下この項において「合併等」という。)に際し当該合併等に係る合併法人、分割承継法人、株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人(次項において「合併法人等」という。)である内国法人が当該合併等に係る被合併法人、分割法人、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人の当該新株予約権を有する者に対し自己の新株予約権(次項及び第三項において「承継新株予約権」という。)を交付したときを含む。)は、当該個人において当該役務の提供につき所得税法 その他所得税に関する法令の規定により当該個人の同法 に規定する給与所得その他の政令で定める所得の金額に係る収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額を生ずべき事由(次項において「給与等課税事由」という。)が生じた日において当該役務の提供を受けたものとして、この法律の規定を適用する。

2  前項に規定する場合において、同項の個人において同項の役務の提供につき給与等課税事由が生じないときは、同項の新株予約権を発行した内国法人(承継新株予約権を交付した合併法人等である内国法人を含む。以下この条において「発行法人」という。)の当該役務の提供に係る費用の額は、当該発行法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

3  前項に規定する場合において、第一項の新株予約権(承継新株予約権を含む。)が消滅をしたときは、当該消滅による利益の額は、発行法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

4  発行法人は、確定申告書に当該新株予約権の一個当たりのその発行の時の価額、発行数、当該事業年度において行使された数その他当該新株予約権の状況に関する明細書の添付をしなければならない。

5  内国法人が新株予約権を発行する場合において、その新株予約権と引換えに払い込まれる金銭の額(金銭の払込みに代えて給付される金銭以外の資産の価額及び相殺される債権の額を含む。以下この項において同じ。)がその新株予約権のその発行の時の価額に満たないとき(その新株予約権を無償で発行したときを含む。)又はその新株予約権と引換えに払い込まれる金銭の額がその新株予約権のその発行の時の価額を超えるときは、その満たない部分の金額(その新株予約権を無償で発行した場合には、その発行の時の価額)又はその超える部分の金額に相当する金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入しない。

6  第四項に定めるもののほか、第一項から第三項まで又は前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

  

【法人税法施行令 第111条の2】

(給与等課税事由を生ずべき所得の種類)

第百十一条の二  法第五十四条第一項 (新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する政令で定める所得は、所得税法 に規定する給与所得、事業所得、退職所得及び雑所得とする。

2  内国法人が発行する新株予約権が所得税法施行令第八十四条 (株式等を取得する権利の価額)に規定する権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されている権利に該当しない場合には、当該新株予約権は、法第五十四条第一項 に規定する新株予約権に含まれないものとする。

3  法第五十四条第一項 の新株予約権の発行が正常な取引条件で行われた場合には、同項 の役務の提供に係る費用の額は、その新株予約権の発行の時の価額(次の各号に掲げる場合に該当する場合には、当該各号に定める金額)に相当する金額とする。

一  当該新株予約権が合併又は分割に係る法第五十四条第一項 に規定する承継新株予約権(次号において「承継新株予約権」という。)である場合 当該合併又は分割に係る被合併法人又は分割法人が発行した同項 に規定する新株予約権(当該承継新株予約権に係るものに限る。)の発行の時の価額

二  当該新株予約権が株式交換又は株式移転に係る承継新株予約権である場合 当該株式交換又は株式移転に係る株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人が発行した法第五十四条第一項 に規定する新株予約権(当該承継新株予約権に係るものに限る。)の発行の時の価額に、当該発行の日から当該承継新株予約権の行使が可能となる日までの期間の月数のうちに当該株式交換又は株式移転の日から当該行使が可能となる日までの期間の月数の占める割合を乗じて計算した金額

三  当該新株予約権がその発行法人(法第五十四条第二項 に規定する発行法人をいう。)を株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人とする株式交換又は株式移転により消滅したものである場合(当該新株予約権の行使が可能となる日前に消滅した場合に限る。) 当該新株予約権の発行の時の価額に、当該発行の日から当該新株予約権の行使が可能となる日までの期間の月数のうちに当該発行の日から当該株式交換又は株式移転の日の前日までの期間の月数の占める割合を乗じて計算した金額

4  前項の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。

 

したがって、ストック・オプションの発行法人の課税関係を整理すると下記の通りとなります。

 

<税制非適格ストック・オプションの場合の課税関係>

■新株予約権発行時

損金算入 不可

■取得者の権利行使時

損金算入 可

■取得者の株式譲渡時

 

<税制適格ストック・オプションの場合の課税関係>

■新株予約権発行時

損金算入 不可

■取得者の権利行使時

損金算入 不可

■取得者の株式譲渡時

 

 

<税制非適格ストック・オプションの損金算入金額について>

税制非適格ストック・オプションは、給与等課税事由が生じた日において、役務の提供を受けたものとするとされているため(法人税法第54条第1項)、この場合の損金算入額は、役務提供にかかる費用になります。そして、ストック・オプションの発行が正常な取引条件で行われた場合には、役務の提供に係る費用の額は、その新株予約権の発行時の価額に相当する金額とされています(法人税法施行令第111条の2第3項)。そのため、 税制非適格ストック・オプションの損金算入額は、ストック・オプションの発行時の公正価値で測定されると考えられます。

一方、税制非適格ストック・オプションの取得者は、権利行使時において、権利行使時の株価と権利行使価額との差額に対して課税されます。

したがって、税制非適格ストック・オプションにおいては、ストック・オプションの発行法人が損金算入するタイミングとストック・オプションの取得者が課税を受けるタイミングは、権利行使時点で同じですが、損金算入する金額は、発行法人が付与時のストック・オプションの公正価値である一方、取得者は、権利行使時の株価と権利行使価額との差額であるため、差異が生じます。

 

なお、内国法人が新株予約権を発行する場合において、その新株予約権と引換えに払い込まれる金銭の額(金銭の払込みに代えて給付される金銭以外の資産の価額及び相殺される債権の額を含む)がその新株予約権のその発行の時の価額に満たないとき(その新株予約権を無償で発行したときを含む)又はその新株予約権と引換えに払い込まれる金銭の額がその新株予約権のその発行の時の価額を超えるときは、その満たない部分の金額(その新株予約権を無償で発行した場合には、その発行の時の価額)又はその超える部分の金額に相当する金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入しないとされていますが(法人税法第54条第5項)、これは、新株予約権の取得者が法人の場合、発行条件によって受贈益課税もしくは寄付金課税が生じる場合でも、発行法人においては損金および益金が生じないことを明確化しているに過ぎません。

 

税制非適格ストック・オプションの損金算入時期について> 

会計上は、ストック・オプション等会計基準に基づき、発行時におけるストック・オプションの公正価値を、発行時から権利行使可能期間までの期間において費用計上しますが、税務上は取得者の権利行使時に損金算入するため、会計上の費用計上タイミングと損金計上タイミングとは差異が生じます。

(ストック・オプション会計については、ストック・オプション会計シリーズをご覧ください。)

 

<ストック・オプションの失効時について>

会計上は、ストック・オプション等会計基準に基づき、ストック・オプションが失効した場合、戻り益を計上します。

一方、税務上は、ストック・オプション付与時において、損金算入が認められていないため、ストック・オプションが失効した場合の戻り益についても、益金算入はしません(法人税法第54条第3項)。

(ストック・オプション会計については、ストック・オプション会計シリーズをご覧ください。)

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