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2012/03/01 エルピーダ 銀行、3月末決着譲らず

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今週初頭に発表されたエルピーダの会社更生法適用のニュース。

今日の日経朝刊13面で、エルピーダの会社更生法の継続記事が掲載されていたので、今日はその話題から。

 

<2012年3月1日 日経朝刊13面要約記事>


・DRAM世界3位のエルピーダ。2009年6月に改正産業活力再生法の認定を受け、日本政策投資銀行が優先出資300億円を引受。三井住友やみずほコーポレート銀行など4行が中心になって1000億円の協調融資を実施した。

・今年の3月末に産活法の期限が切れ、公的資金や融資をすべて返済する必要があった。このため、銀行と借り換え交渉を継続していた。

・政投銀の主張は3月末までに「進行中の交渉をすべて最終合意して欲しい」と要請。マイクロンとの提携交渉、グローバルファウンドリーズへの広島工場の売却の早期決着を迫られていた。主力4行も政投銀に足並みをそろえた。

・エルピーダの坂本社長はマイクロンとグローバルファウンドリーズとの交渉の詰めを試みたが3月末の最終合意は難しいと返答。これで万策尽きたと判断。

・2月24日に運転資金を確保するため250億円の預金をりそな銀行へ移し、25日から26日に会社更生法適用申請の準備、27日午後2時半から臨時取締役会にて正式決定。


<要約記事はここまで>

 

以前のBizBlogでもエルピーダの厳しい経営状況については触れていましたが、とうとう更生法適用までになってしまいましたね。

 

2011/12/22 エルピーダ、台湾大手と資本提携交渉 統合も視野

 

◆エルピーダの業績

以前のビズブロでも紹介したように、エルピーダは日立・三菱電機・NECのDRAM事業を譲り受けて設立された国内唯一のDRAM専業会社です。

国内唯一のDRAM会社として経済産業省も力を入れていて、産活法による延命措置なども行っていましたがマーケット圧力には勝てなかったようです。

エルピーダの2012年3月期第3四半期までの業績は以下のとおりです。

 

<エルピーダの最近四半期業績> 

【リソース】IKP財務データベースより筆者加工。

 

当社データベースの四半期情報は以下のとおり。

 

エルピーダメモリ四半期財務情報.pdf

【リソース】IKP財務データベース

 

厳しい業績が続いていることがわかります。

 

◆エルピーダの会社更生法申請に至った理由

エルピーダが公表した「会社更生手続開始の申立てに関するお知らせ」によれば、会社更生法適用に至った経緯は以下のように述べられています。

 

平成24年2月27日 エルピーダメモリ公表「会社更生手続開始の申立てに関するお知らせ」

【リソース】エルピーダメモリHPより

 

パソコン出荷台数や1台当たりのDRAM搭載容量の増加による需要拡大期待を背景に、DRAM業界において平成18年から19年にかけて積極的な設備投資による製造能力増強が行われた。

●その結果、需給バランスが悪化し平成19年初頭からDRAM価格の急落。

●需給バランスが改善されないまま平成20年秋に始まった世界的な経済環境悪化(※リーマンショックのこと。筆者注)による製品需要の大幅な減少。これにより更なるDRAM価格の下落。

平成21年6月に「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」(※いわゆる産活法。筆者注)の事業再構築計画の認定を受け、プレミアムDRAMについて最先端の研究開発を行い、高生産性を実現する最先端設備への投資を行う。

●技術優位性の維持により、生産の向上、更なるシェア拡大を目指した。

●しかし、平成22年以降、為替相場が対米ドルで歴史的な円高を記録、DRAM業界における競争激化等によりDRAM製品価格が急落

平成23年にはタイの大洪水によるDRAM需要の低迷という新たなマイナス要因も加わった。

●資金繰りが早晩破たんすることは必至な状況となり、自力の事業継続を断念。会社更生法に基づく会社再建を目指すこととした。

 

 

DRAM価格の下落は2011年12月期から多少上向いてはいたようですが、円高でその部分も吸収されてしまった感はありますね。

 

<DRAM価格の推移>

【リソース】エルピーダ2012年3月期第3四半期 決算説明会資料より

 

◆会社更生法と民事再生法について

今回、エルピーダはDIP型の会社更生法を選択するとの報道がありました。

「DIP型」とは、Debtor In Prossessionの略です。

会社更生法は原則として旧経営陣は退陣しますが(管理型)、このDIP型は旧経営陣が経営関与を継続するものです。

旧経営陣が経営を関与したければ従来は民事再生法を選択するのが一般的でしたが、担保権の行使に関連して会社更生法の優れており(あくまで更生手続きの中でしか行使権を発動できない)、この点で民事再生法は大型案件の倒産には不向きとされていました。

 

そうした中で、会社更生法でDIP型が確立され、最近ではDIP型の会社更生法申請が多くなったようです。

 

民事再生法と会社更生法の選択で一時ニュースになったのが、2001年のマイカル破綻のときです。

取締役の間で会社更生法による申請と民事再生法による申請の争いがあり、会社としては民事再生法による申請を選択(会社更生法による申請を考えていたメインバンク派は解任)。

ただ、この再生がうまくいかず、最終的には会社更生法の適用してイオンをスポンサーとした再生を果たすことになります。

皆さんもご存知のとおり、「ビブレ」などまだマイカル時代のブランドは残っていますが、去年には「サティ」は「イオン」へブランド統一されることになりました。

 

このときの騒動を機に、会社更生法の改正が行われたように記憶しております。

DIP型には債権者の合意など様々な要件がありますので、今回のエルピーダもDIP型で債権者等が容認するか注目です。

 

 

負債総額4000億円の大型破綻。

再生の道を選ぶとしても、韓国勢を中心とした市場競争に勝つことができるのか。

DRAMに限らず、半導体産業は厳しい状況が続いています。

 

スポンサーがどこになるのかを含め、今後のエルピーダの再建は注目していきたいところですね。

以 上

 

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