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2013/02/07 平成25年度税制改正大綱【後編】

今日は、昨日の平成25年度税制改正大綱の確認の続きです。

資産課税について検証します。分量が多くなったため、2回→3回にわたっての解説へと変更しています。

 

なお、以下は、自民党・公明党公表の『平成25年度税制改正大綱』になりますので、引き続き必要な方はご利用ください。

 

平成25年1月24日 自由民主党・公明党公表『平成25年度税制改正大綱』

◆第6 資産課税

1 相続税・贈与税の見直し

(1)相続税の基礎控除及び税率構造の見直し p44〜(増税)

【改正案】

 相続税の基礎控除及び税率構造について、次の見直しを行う。

 

@ 相続税の基礎控除

  現行 改正案
定額控除 5,000万円 3,000万円
法定相続人比例控除 1,000万円に法定相続人数を乗じた金額 600万円に法定相続人数を乗じた金額

 

A 相続税の税率構造

現行改正案
金額テーブル 税率 金額テーブル 税率
1,000万円以下の金額 10% 同 左 同 左
3,000万円以下 〃 15% 同 左 同 左
5,000万円以下 〃 20% 同 左 同 左
 1億円    〃 30% 同 左 同 左
 3億円    〃 40% 2億円以下の金額 40%
3億円  〃  45%
 3億円超の金額 50% 6億円  〃 50%
6億円超の金額 55%

 

 上記の改正は、平成27 年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する。

 

【解説】

 民主党時代の税制改正大綱でも資産課税強化がうたわれていましたが、今回の自公政権で実現されそうです。今まで妻・子供2人の場合、基礎控除で8000万円が適用されていたケースで、4800万円(3,000万円+600万円×3人)まで減額されることで相続税の申告対象者が増加するものと考えられます。

(2)小規模宅地等特例の拡充 p45~(減税)

【改正案】

 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、次の見直しを行う。


@特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積を330 u(現行 240 u)までの部分に拡充する。
A特例の対象として選択する宅地等の全てが特定事業用等宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能とする。なお、貸付事業用宅地等を選択する場合における適用対象面積の計算については、現行どおり、調整を行うこととする。

B一棟の二世帯住宅で構造上区分のあるものについて、被相続人及びその親族が各独立部分に居住していた場合には、その親族が相続又は遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人及びその親族が居住していた部分に対応する部分を特例の対象とする。
C 老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等は、次の要件が満たされる場合に限り、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして特例を適用する。
イ 被相続人に介護が必要なため入所したものであること。
ロ 当該家屋が貸付け等の用途に供されていないこと。

 

 上記@及びAの改正は平成27 年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用し、上記B及びCの改正は平成26 年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する。

 

【解説】

 相続税の基礎控除等の減額に伴う都心に住居を設ける人たちへの課税強化を回避する目的で、いわゆる小規模宅地特例の拡充が図られました。また、B及びCのように小規模宅地特例の「同居原則」が緩和されています。

(3)贈与税率構造の見直し p46~(ケースにより増税・減税あり)

【改正案】

 相続時精算課税制度の対象とならない贈与税に係る贈与税の税率構造について、次の見直しを行う。

 

@20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産に係る贈与税の税率構造

現行改正案
金額テーブル 税率 金額テーブル 税率
200万円以下の金額 10% 同 左 同 左
300万円以下 〃 15% 400万以下の金額 15%
400万円以下 〃 20% 600万円以下 〃 20%
600万円以下 〃 30% 1,000万円以下 〃 30%
1,000万円以下 〃 40% 1,500万円以下 〃 40%
3,000万円以下 〃 45%
1,00万円超の金額 50% 4,500万円以下 〃 50%
4,500万円超の金額

55%

 

A上記@以外の贈与財産に係る贈与税の税率構造

現行改正案
金額テーブル 税率 金額テーブル 税率
200万円以下の金額 10% 同 左 同 左
300万円以下 〃 15% 同 左 同 左
400万円以下 〃 20% 同 左 同 左
600万円以下 〃 30% 同 左 同 左
1,000万円以下 〃 40% 同 左 同 左
1,500万円以下の金額 45%
1,00万円超の金額 50% 3,000万円以下 〃 50%
 ー  ー 3,000万円超の金額

55%


 上記の改正は、平成27年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用する。

 

【解説】

 相続税の改正に合わせて贈与税率のテーブルも変更されました。ケースによって増税・減税のパターンが異なります。

(4)相続時精算課税制度の改正 p47~(減税)

【改正案】

 相続時精算課税制度の適用要件について、次の見直しを行う。

 

@ 受贈者の範囲に、20歳以上である孫(現行、推定相続人のみ)を追加する。

A 贈与者の年齢要件を60歳以上(現行、65歳以上)に引き下げる

 

 上記の改正は、平成27 年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用する。

 

【解説】

 高齢者の財産(特に貯蓄)が消費が旺盛な現役世代へ流れるように、課税の公平性のバランスをとりつつ、いろいろと検討されています。そのひとつが相続時精算課税制度ですが、その適用範囲の拡大が図られています。後述する教育資金贈与税の非課税制度の創設も同じですね。

2 事業承継税制

(1)非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し p47〜(減税)

【改正案】

 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、次の見直しを行う(主なもの)。


@ 経営承継相続人等の要件のうち、非上場会社を経営していた被相続人の親族であることとする要件を撤廃する。
A 贈与税の納税猶予における贈与者の要件のうち、贈与時において認定会社の役員でないこととする要件について、贈与時において当該会社の代表権を有していないことに改める
B 役員である贈与者が、認定会社から給与の支給等を受けた場合であっても、贈与税の納税猶予の取消事由に該当しないこととする。
C 納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、経済産業大臣の認定の有効期間(5年間)における常時使用従業員数の平均が、相続開始時又は贈与時における常時使用従業員数の80%を下回ることとなった場合に緩和する
D 相続税等の申告書、継続届出書等に係る添付書類のうち、一定のものについては、提出を要しないこととする。
経済産業大臣による事前確認制度を廃止する。
F 資産保有型会社・資産運用型会社に該当する認定会社等を通じて上場株式等(1銘柄につき、発行済株式等の総数等の100 分の3以上)を保有する場合には、納税猶予税額の計算上、当該上場株式等相当額を算入しない。
G 適用対象となる資産保有型会社・資産運用型会社の要件について、次のとおり所要の見直しを行う。
イ 常時使用従業員数が5人以上であることとする要件は、経営承継相続人等と生計を一にする親族以外の従業員数で判定する。
ロ 商品の販売・貸付け等を行っていることとする要件について、経営承継相続人等の同族関係者等に対する貸付けを除外する。
H 相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例の適用対象者の範囲に、相続税法等において相続又は遺贈により非上場株式を取得したものとみなされる個人を加える。(再掲)

 上記の改正は、「1 相続税・贈与税の見直し」の施行の日(平成27年1月1日)以後に開始する相続又は遺贈により非上場株式を取得した
ものとみなされる個人について適用する。

 

【解説】

 事業承継税制は、平成21年度税制改正で導入された制度で、円滑な事業承継を税制面で支援することで雇用の安定等を目的としたものです。ただ、数年がたち、当初思っていたよりも使い勝手が悪い部分が見つかり、今回はその一部が改正されました。

 上記@では経営承継相続人等に親族以外が認められるようになりました。最近の後継者問題では、現在の日本経済の状況の鑑み、親族が「後を継ぎたくない」という根本的な問題があります。このため、今回の改正では経営者の成り手のいない会社にとっては大きいでしょう。

 また、Aにあるように贈与者が贈与時に役員であることが認められるようにもなり、今までは役員であることも認められなかった制度よりも使い勝手がよくなりました。世代交代するとしても、実際に役員からも退くことは営業面・経営面も含めて難しいことが多く、実態に合わせた改正だと考えられます。@で親族以外が後継者となる場合は、尚更役員であることが必要だと思います。

 さらに、実務的な面からEの経済産業省大臣による事前確認制度が廃止され使い勝手よくなるでしょう。事前確認制度は、計画的な事業承継を達成するために設けられたものですが、これに対応すること自体に一定のコスト(専門家等へのコンサル料等)がかかるため使い勝手がよくない、とされていました。

3 教育資金一括贈与税制

(1)教育資金一括贈与税制の創設 p49〜(減税)

【改正案】

 受贈者(30 歳未満の者に限る。)の教育資金に充てるためにその直系尊属が金銭等を拠出し、金融機関(信託会社(信託銀行を含む。)、銀行及び金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る。)をいう。)に信託等をした場合には、信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1,500万円(学校等以外の者に支払われる金銭については、500万円を限度とする。)までの金額に相当する部分の価額については、平成25 年4月1日から平成27 年12 月31 日までの間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととする。

 

 ここで、教育資金とは、文部科学大臣が定める次の金銭をいう。
@ 学校等に支払われる入学金その他の金銭
A 学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの

<申告>
受贈者は、本特例の適用を受けようとする旨等を記載した教育資金非課税申告書(仮称)を金融機関を経由し、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

<払出しの確認等>
受贈者は、払い出した金銭を教育資金の支払いに充当したことを証する書類を金融機関に提出しなければならない。
金融機関は、提出された書類により払い出された金銭が教育資金に充当されたことを確認し、その確認した金額を記録するとともに、当該書類及び記録を受贈者が30 歳に達した日の翌年3月15 日後6年を経過する日まで保存しなければならない。

<終了時>
@ 受贈者が30歳に達した場合
イ 調書の提出
金融機関は、本特例の適用を受けて信託等がされた金銭等の合計金額(以下「非課税拠出額」という。)及び契約期間中に教育資金として払い出した金額(上記(3)により記録された金額とする。)の合計金額(学校等以外の者に支払われた金銭のうち500万円を超える部分を除く。以下「教育資金支出額」という。)その他の事項を記載した調書を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。


ロ 残額の扱い
非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額については、受贈者が30 歳に達した日に贈与があったものとして贈与税を課税する。

A 受贈者が死亡した場合
イ 調書の提出
金融機関は、受贈者の死亡を把握した場合には、その旨を記載した調書を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

ロ 残額の扱い
非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額については、贈与税を課さない。

 

【解説】

 高齢者の貯蓄資産を消費旺盛な現役世代へ還流させるための1つの手段として創設されたのが、この教育資金一括贈与税制です。

 この制度を採用する場合、制度の適正性を担保するために信託銀行等の金融機関を利用することを要件としているので留意が必要です。限度額は1500万円ですが、学校等以外のもの、たとえば学習塾・進学塾などへの資金については500万円までとされています。

◆第7 納税環境整備

1 延滞税等の見直し p84〜

【改正案】

 延滞税等について、当分の間の措置として、次の措置を講ずる。


●延滞税の割合は、各年の特例基準割合が年7.3%に満たない場合には、その年中においては、次に掲げる延滞税の区分に応じ、それぞれ次に定める割合とする。


@ 年14.6%の割合の延滞税→当該特例基準割合に年7.3%を加算した割合
A 年7.3%の割合の延滞税→当該特例基準割合に年1%を加算した割合(当該加算した割合が年7.3%を超える場合には、年7.3%の割合)

 また、納税の猶予等の適用を受けた場合(延滞税の全額が免除される場合を除く。)の延滞税については、当該納税の猶予等をした期間に対応する延滞税の額のうち、当該延滞税の割合が特例基準割合であるとした場合における延滞税の額を超える部分の金額を免除する。

 ここで、「特例基準割合」とは、各年の前々年の10 月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12 で除して得た割合として各年の前年の12 月15 日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいう。


●利子税の割合は、各年の特例基準割合(相続税及び贈与税の延納に係る利子税については、各分納期間の開始の日の属する年の特例基準割合)が年7.3%に満たない場合には、その年中(相続税及び贈与税の延納に係る利子税については、各分納期間)においては、次に掲げる利子税の区分に応じ、それぞれ次に定める割合とする。


@ Aに掲げる利子税以外の利子税→当該特例基準割合
A 相続税及び贈与税に係る利子税(その割合が年7.3%のものを除く。)→これらの利子税の割合に、当該特例基準割合が年7.3%に占める割合を乗じて得た割合


●還付加算金の割合は、各年の特例基準割合が年7.3%に満たない場合には、その年中においては、当該特例基準割合とする。

 

【解説】

 今まで高金利と言われてきた延滞税等が見直されることになりました。

 まず、特例基準割合の計算では、短期貸出約定平均金利をベースにして財務大臣が告示する割合に1%加算した割合へと変更になります。従来は、「前年の11月30日の日本銀行が定める基準割引率+4%」とされていたので、特例基準割合が小さく計算されます。平成25年では特例基準割合は4.3%です。

 今まで延滞税は、納付すべき本税の額に納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、一定の割合で計算した金額に納期限の翌日から2月を経過する日までに完納していない場合は、納付すべき本税の額に納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後について年14.6%の割合で計算した金額を加えて計算されていました。

 

参考:国税庁ホームページ

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/nofu-shomei/entaizei/entai.html

 

 現在の低金利時代に、14.6%は高金利であると長年批判されてきましたが、今回の改正では特例基準割合に年7.3%を加算した割合へ改正されました。

 延滞税の計算では、修正申告時や源泉所得税の期限後納付などのケースで計算されることが多いと思います。また、法人税等の申告期限の延長申請を行っている企業等においては利子税の計算も変更されることになるので注意が必要です。なお、国税に合わせて地方税における延滞金等の計算も改正されるので留意しておきましょう。

 

 自公政権に代わっての最初の税制改正大綱となりました。国会で法案化されていませんので、大綱の改正案がすべて法改正されるかはまだわかりませんが、自公政権の現状を見れば、おそらくほぼ改正案が通ると思われます。

 選挙後、時間も限定されていたため十分に議論する時間はなかったものの法人課税においてはさまざま減税制度の創設・拡充が行われています。グローバル企業の世界競争力の強化をはじめ、海外投資を促進するためにも、今後も引き続き法人課税の減税・個人課税の強化が図られていくと考えられます。

 企業の財務・経理部門としては、税制を活用することで税負担を軽減していくことができる一方で、複雑な税制によるタックス・プランニングが複雑化していきます。また、要件を満たさない場合には予定した税制を活用できないことにもなります。丁寧な検討が必要といえるでしょう。

 

以 上

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