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2012/08/15 マンチェスターユナイテッド NY証券取引所上場

今日は、イングランド・プレミアリーグ名門のマンチェスターユナイテッドのNY証券取引所上場の話題から。

 

【記事要約】


・イングランドプレミアリーグの名門・マンチェスターユナイテッドは今月10日にNY証券取引所に上場した。

・売り出された株式は1670万株。1株14ドルで上場初日を終えた。

・クラブ側は1株16ドルから20ドルでの株式公開を予定していたが、上場直前の9日に14ドルに引き下げられた経緯がある。

(AFP=時事 2012年8月11日(土)配信)


  

日本の香川真司選手が移籍して日本でも話題になっている、イングランド・プレミアリーグ名門のマンチェスターユナイテッドが今月10日、NY証券取引所に上場しました。

今日は、マンチェスターUの財務状況について簡単にみてみようと思います。

◆マンチェスターユナイテッドの財務状況

マンチェスターユナイテッドの財務状況を次のとおりです。

 

<売上高>

 

【リソース】FORM F-1より筆者集計。

 

これをみると、広告料や放映料が増加していっており、売上高に占める比率が高まっているのがわかります。

スタジアム関連の売上は、すでに名門チームとしての集客力が定着しているため横ばいで、観客席の増加等のキャパシティを拡大しない限り拡大することはないでしょう。

 

<利益推移>

 

 

この利益推移をみると、2009年に営業利益(Operating profit)が大きくなっていますが、選手の移籍に伴う利益(Profit on disposal of players' registrations)が約8000万ポンドと突出していたことが要因です。

マンチェスターユナイテッドの貸借対照表には、Players' registrationsが計上されており償却処理されているあたりが普通の企業会計では出てこない会計処理ではないでしょうか。

Players' registrationsは、transfer fee(移籍金)などが資産計上されたもので、選手との契約期間で償却されるようです。

 

さて、マンチェスターUのPLをみると、Net financail costが非常に高く、2010年には最終赤字の大きな要因となっているのがわかります。上図では、折れ線グラフがNet financial costsを表しています。

これは、マンチェスターUを米資産家のグレーザー氏が買収した際に、LBO(レバレッジド・バイ・アウト)の手法を用いたために、マンチェスターUに負債が多額に計上されたことによるものです。

LBOは、買収先の事業(ないし資産)を担保にして買収資金を借り入れ、それを使って企業を買収する方法です。

買収する際には、ペーパーカンパニーが負債を調達するのですが、そのペーパーカンパニーは最終的に被買収先と吸収合併されるのが一般的であるため、結果として、被買収企業の貸借対照表に買収資金の負債が計上され、被買収企業が返済していくことになってしまうのです。

 

LBOは通常の企業買収ではよく利用されるファイナンス手法なのですが、マンチェスターUを伝統的な名門チームでクラブ経営も健全であったことから、多額の負債を抱えて経営が苦しくなってきてしまったことも多くのマンチェスターUのファンがグレーザー氏の買収に批判的だったのも事実です。

 

ちょうどリーマンショックが重なってしまったので財務コストが相当高まってしまったのも誤算だったかもしれませんね。

2009年のfinancial costが約1187万ポンドで、Borrowingsの残高が流動・固定合わせて約6991万ポンドですから、単純計算になってしまいますが利子率は約17%で、金融危機で相当の財務コストがかさんでしまったことがわかります。

 

 

こうした中で、今回のNY証券取引所へのIPOも資金使途は負債の返済原資です

SECに提出したF-1のThe Offeringにおける"Use of proceeds"で次のとおり開示されています。

 

We estimate that our net proceeds from the sale of Class A ordinary shares in this offering will be approximately $141.0 million, assuming an initial offering price of $18.00 per share, which is the midpoint of the price range set forth on the cover page of this

prospectus, and after deducting the estimated underwriting discounts and commissions. Expenses of this offering will be paid by us with existing cash on hand. We intend to use all of our net proceeds from this offering to reduce our indebtedness by exercising our option to redeem and retire $116.8 million (£73.0 million) in aggregate principal amount of our 83/8% US dollar senior secured notes due 2017 at a redemption price equal to 108.375% of the principal amount of such notes and £8.3 million in aggregate principal amount of our 83/4% pound sterling senior secured notes due 2017 at a redemption price equal to 108.750% of the principal amount of such notes, plus, in each case, accrued and unpaid interest to the date of such redemption. In addition, upon consummation of this offering, our senior secured notes previously purchased by us in open market transactions will be contributed to MU Finance plc and retired. 

【リソース】MANCHESTER UNITED LTDが07/30/2012にSECへ提出したFORM F-1 p9より。

 

今回の上場がリファイナンスを目的としている向きが強いため、株式市場ではあまり好感されず、当初16−20ドルあたりで公開する予定だったのが上場前日に急きょ1株14ドルで公開されてしまったようです。

 

 

マンチェスターUの本拠地は、ロンドン五輪でも話題になったオールド・トラフォード(The Old Trafford)。

近年のヨーロッパチームはアラブの大富豪が、経営を度外視した移籍金で運営されているところが多くあります。

長年チームの指揮を執り続けてきたファーガソン監督も70歳になりました。

指揮官としての後継者をどうするかも注目されつつあります。

 

世界の強豪チームとどのように戦っていくのか、難しいチーム運営が求められそうです。

以  上

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