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2011/11/08 東証と大証 来秋合併へ

昨日の日本経済新聞朝刊で、経営統合交渉を進めている東京証券取引所と大阪証券取引所が、合意に向けて最終調整に入ったと報じていますね。オリンパスの粉飾問題で世間は騒然となってますが、今日は、東証と大証の統合についてです。

 


経営統合交渉を進めている東京証券取引所と大阪証券取引所が、合意に向けて最終調整に入ったことが6日分かった。来春にも東証が上限付きのTOB(株式公開買い付け)で大証株の過半数を取得し、来年度秋をメドに両社は合併する方向になった。現在、合併比率の詰めなどを急いでいる。統合構想が表面化した3月から8カ月間に及んでいる国内二大取引所の再編交渉は大詰めを迎えた。

東証、大証の経営統合は、日本の証券市場の国際競争力の強化につなげる狙い。国内市場で、現物株の圧倒的なシェアを握る東証とデリバティブ(金融派生商品)に強い大証が一緒になり、システム費用などの効率化できると判断している。合併新会社を持ち株会社と、現物、先物、決済、自主規制機関の4子会社に再編する。

(2011年11月7日 日本経済新聞朝刊より)


  

交渉は主に、

@ 統合手法

A トップの人事や取締役会の構成などの新会社のガバナンス

B 合併比率

の3つの条件が論点だったようです。

 

■ 統合手法について

 

大証が上場廃止にならないように買い取り株数を全体の3分の2未満に留める「条件付TOB」を実施、その後、大証を存続会社とする逆さ合併で統合するようですね。東証は、非上場会社ですから、東証の”裏口上場”と批判を浴びるリスクをとっての決断だったと思われます。

 

最近では、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を運営するNYSEユーロネクストとドイツ取引所が合併協議に入ったとの発表もありましたし、破談にはなりましたが、ロンドン取引所とカナダのTMXグループとの合併や、シンガポール取引い所とオーストラリア取引所の統合の動きもありましたね。 

世界の取引所の再編の動きの中、最終的にはスピードを重視した統合手法を選択した形となりました。

 

■ トップの人事や取締役会の構成などの新会社のガバナンスについて

 

新会社のトップ人事は東証の斉藤社長が最高経営責任者(CEO)につき、大証の米田社長が最高執行責任者(COO)に就任、会長や社長の肩書は使わないようです。

 

■ 合併比率について

 

東証が未上場会社のため、合併比率についての話し合いが一番難航したようですね。

日本経済新聞では、大証の時価総額(株式価値)を「1」とした場合の東証の時価総額(株式価値)は「1.5〜2.0」の範囲内で決着する公算が大きいと報じています。

 

未上場株式の株式評価方法としては、DCF法や、マルチプル法、純資産法などがありますが、本日はIR情報をもとにマルチプル法により簡単に東証と大証の時価総額(株式価値)の比率についてシミュレーションしてみたいと思います。

 

ちなみに、マルチプル法は、マーケット・アプローチに基づく評価手法で、株式市場に対する「相対価値」により、評価対象会社の事業価値、株式価値等を評価する方法です。具体的には、評価対象会社と事業内容等が類似する複数の上場会社のEBIT、EBITDA、売上高、経常利益、株主資本などの指標から評価対象会社の事業価値や株式価値を評価します。そのため、類似会社の選定が重要なポイントになりますが、「大証」を類似会社として、簡単にシミュレーションしてみます。

 

マルチプル法では、まず、類似会社の事業価値や株式価値の倍率を算出します。

今回は、過去3期分の財務数値をもとにEBIT倍率法、EBITDA倍率法、株主資本倍率法により算出してみました。

計算結果は、下記のとおりとなります。

(なお、筆者の主観的な条件設定に基づく簡易シミュレーションのため、厳密な計算結果と異なる場合があります。)

 

<大阪証券取引所>

 

【基礎データ】

  平成21年3月期 平成22年3月期 平成23年3月期
経常利益(a)  9,444百万円 9,160百万円   8,453百万円
支払利息(b) 12百万円 12 百万円 12百万円
減価償却費(c) 4,268百万円 4,757百万円 3,290百万円
EBIT(a+b)  9,456百万円 9,172百万円 8,465百万円
EBITDA (a+b+c) 13,724百万円  13,926百万円 11,755百万円

株主資本(d)

 44,272百万円  48,429百万円  52,858百万円
時価総額(3月末時点)(e)  85,050百万円 132,030 百万円 112,725 百万円
有利子負債(f)  1百万円  1百万円 16 百万円
現金及び現金同等物(g) 12,513 百万円  15,115百万円  8,453百万円
事業価値(e+f-g)  72,538百万円 116,916百万円 104,288百万円

 

【各種倍率】

  平成21年3月期 平成22年3月期 平成23年3月期

EBIT倍率(事業価値÷EBIT)

7.67 12.74 12.31

EBITDA倍率(事業価値÷EBITDA)

5.28  8.39 8.87

株主資本倍率(時価総額÷株主資本)

 1.92 2.72 2.13

 

続いて、大証の基礎データで算出した、倍率を東証で算出した基礎データに乗じることにより、マルチプル法による株式価値の評価結果が算出されます。

 

<東京証券取引所>

 

【基礎データ】

  平成21年3月期 平成22年3月期 平成23年3月期
経常利益(h) 16,259百万円 17,425百万円  15,302百万円
支払利息(i) 114百万円 67百万円 58百万円
減価償却費(j) 10,016百万円 13,274百万円 10,391百万円
EBIT(h+i)  16,373百万円 17,492百万円 15,360百万円
EBITDA (h+i+j) 26,389百万円 30,766百万円 25,751百万円

株主資本(k)

111,672百万円 113,882百万円 121,889百万円

 

【算定結果】

  平成21年3月期 平成22年3月期 平成23年3月期

事業価値(EBIT×大証EBIT倍率) 

125,599百万円 222,972百万円 189,234百万円

事業価値(EBITDA×大証EBITDA倍率) 

139,479百万円 258,296百万円 228,458百万円
有利子負債(l)  17,630百万円  17,612百万円 17,570百万円
少数株主持分(m)  2,416百万円  3,058百万円 2,893百万円
現金及び現金同等物(n) 37,199百万円 27,693百万円 29,101百万円

株主価値(EBIT倍率法)

(EBIT倍率法による事業価値−l−m+n) 

142,752百万円 229,995百万円 197,872百万円

株主価値(EBITDA倍率法) 

(EBITDA倍率法による事業価値−l−m+n)

156,632百万円 265,320百万円 237,096百万円

株主価値(株主資本倍率法) (k×大証株主資本倍率)

214,531百万円 310,472百万円 259,941百万円

 

 

各種倍率法による評価結果に基づく、合併比率は下記のとおりとなりました。

 

<シミュレーション結果に基づく東証と大証の時価総額(株式価値)比率>

 

(大証の株式価値を「1」とした場合の東証の時価総額(株式価値)) 

  平成21年3月期 平成22年3月期 平成23年3月期 3期平均
EBIT倍率法による株式価値比率 1.67 1.74 1.75 1.72
EBITDA倍率法による株式価値比率 1.84 2.00 2.10 1.98
株主資本倍率法による株式価値比率 2.52 2.35 2.30 2.39

 

3期平均で「1.72〜2.39」なので、概ね報道結果を整合していますね。 

 

実際のバリュエーションでは、DCF法など他の評価手法結果やその他の定性的な要因を総合的に勘案して合併比率を算出することなります。

最近は、ビズブロでも扱いましたがFrancfrancを運営する潟oルスが、MBOを実施、将来は香港やシンガポールでの上場を狙うなど、市場の地盤沈下が深刻化していますね。

今回の統合は、世界の証券取引所の競争激化・再編の中、アジア展開を本格化するための布石ともいわれています。

最近は、香港市場やシンガポール市場に圧され気味な印象がありますから、これを機に世界の成長企業を輩出するような魅力的な市場になってほしいところです。

 

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