株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

シリーズ<2> 内部統制の4つの目的

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

1.はじめに

 本シリーズ2では、内部統制の定義やその目的について解説します。実際の内部統制構築・評価作業において、必要以上に意識する必要はないことですが、知っておくと内部統制への理解がより深まったり、何か悩んだときに参考にする事項であったりします。まずは、内部統制とは何かについて確認し、内部統制の4つの目的について解説します。

2.内部統制とは何か

 内部統制を議論する場合に、『内部統制とは何か』というところから考える必要があります。内部統制実施基準によれば、「内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセス」とされています。つまり、①業務の有効性及び効率性、②財務報告の信頼性、③事業活動に関わる法令等の遵守、④資産の保全の4つの目的を達成するために必要と考えられて、日々の業務に組み込まれ、社長や従業員など組織構成員の全員によって遂行され、機能する仕組みのことです。

 

≪内部統制の4つの目的≫

  • 業務の有効性及び効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 事業活動に関わる法令等の遵守
  • 資産の保全

 このことから、上記の4つの目的を達成しないような仕組みは内部統制になりませんし、組織構成員によって遂行されないような仕組みも内部統制にはなりません。例えば、「当番が回ったらトイレ掃除をする」というものは、従業員によって日々行われている業務ですが、①~④の目的を達成できるものではないので内部統制にはなりません(①の目的達成に軽微ながら影響を与えているかもしれませんが、ここでは議論しません)。また、公認会計士による外部監査は、②財務報告の信頼性に関してその目的達成に大きく貢献しますが、外部監査人は組織構成員ではないので、内部統制にはなり得ません。あくまで、内部統制とは、4つの目的を達成するために必要と考えられる仕組みで、組織構成員によって遂行されることで機能するものなのです。

3.内部統制の4つの目的

 上記で示した内部統制の4つの目的について、簡単に解説しましょう。これらの内部統制の目的は、それぞれ固有の目的ですが、お互いに独立して存在するものではなく、相互に緊密に関連しているものです。ある目的を達成するために整備・運用されている内部統制が、他の目的のために構築された内部統制と共通の体制となったり、互いに補完し合う場合もあります。

 今般の金融商品取引法で導入された内部統制報告制度は、財務報告の信頼性の確保に係る内部統制についての有効性を評価しようとするものであり、財務報告の信頼性以外の他の目的を達成するための内部統制の整備及び運用を直接的に求めるものではありません。このため、財務報告の信頼性の確保に係る内部統制以外について、その構築や運用は問題としない向きがあります。しかし、実際にはすべての目的が達成されるように内部統制を構築することが、適切な会社経営のために必要であることは言うまでもありません。

ここでは、内部統制の4つの目的について、解説していきます。

(1)業務の有効性及び効率性


 業務の有効性及び効率性とは、事業活動の目的の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めることをいいます。これに関する内部統制は、業務の達成度(有効性)及び資源の合理的な利用度(効率性)を測定・評価し、目標通りの達成ができたのか、また目標の見直しが必要なのか、といった適切な対応を図る体制を設けることにより、組織が設定した業務の有効性及び効率性に係る目標の達成を支援するものであります。

 業務の有効性及び効率性に関する内部統制は、会社経営を行う上で最も優先すべきものと考えられます。限られた経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報など)を適切に資源配分して事業を展開するためには、業務の有効性と効率性を図る必要があります。また、業務の有効性と効率性が達成されない場合には、結果として会社は存続・発展することが難しくなります。このため、業務の有効性及び効率性に関する内部統制の構築は、経営者がまずは優先して考えるべき課題だと言えます。

(2)財務報告の信頼性


 財務報告の信頼性とは、財務諸表及び財務諸表に影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保することいいます。これに係る内部統制は、財務報告の重要な事項に虚偽表示が生じることのないよう、必要な体制を整備し、運用することにより、組織の財務報告に係る信頼性を支援します。

 今般の金融商品取引法で導入された内部統制報告制度は、この財務報告に係る内部統制についての有効性を評価しようとするものであり、内部統制を議論していく上で中心的な役割を担うものです。橋本内閣から始まった金融ビックバンにより、「投資家の自己責任」が浸透してきた昨今において、誤った財務報告は、多くの利害関係者に対して不測の損害を与えるだけでなく、組織に対する信頼を著しく失墜させる結果となります。このため、財務報告の信頼性の確保に係る内部統制の構築は、重要性は非常に高いものです。

(3)事業活動に関わる法令等の遵守


 事業活動に関わる法令等の遵守とは、事業活動に関わる法令その他の規範の遵守を促進することをいいます。これに係る内部統制は、法令等を遵守して事業活動を営むための体制を整備し、運用することであり、これらを通じ、組織の存続及び発展が図られます。

 法令等に対する違反行為は、それに応じた罰則、批判を受け、組織そのものが存続できない可能性があります。逆に、商品の安全基準の遵守や、法令等の遵守への真摯な取り組みが認知された場合には、社会的レピュテーションが向上し、業績や株価等の向上に資することにもなります。

 金融商品取引法で導入された内部統制報告制度は証券市場を中心として考えているため、財務報告に係る内部統制が結果として中心的課題となりますが、一般的な社会的視点からすれば、社会的責任を果たすためにも法令等への遵守に係る内部統制の構築に対して、非常に大きな関心が寄せられています。

(4)資産の保全


 資産の保全とは、資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認の下に行われるよう資産の保全を図ることをいいます。

 資産が不正にまたは誤って取得、使用及び処分された場合、組織の財産や社会的信用に大きな損害や影響を与えることになります。また、経営者は出資者等から拠出された財産を適切に保全する責任があります。

 資産の保全は、この内部統制実施基準で新たに内部統制の目的に独立掲示された項目ですが、これは、監査役の財産調査権と資産の保全に対する内部統制との関わりをはっきりさせることを目的としています。監査役(監査役会や監査委員会)は、会社法の規定上、業務及び財産の状況の調査をすることができるとされており(会社法381条2項、390条2項、405条2項)、組織の資産の保全に対して重要な役割・責任を担っています。そこで、監査役の財産調査権と内部統制の関わりを明示的にするため、独立項目にしています。

前へ  次へ

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

お問い合わせ

PAGETOP