株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

匿名組合(総論、法務)

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1.匿名組合(総論)

 匿名組合(以下、「TK」といいます。)は、「組合」という名前が付いていますが、民法上の任意組合やLPS、LLPのような組合とは違い、商法に規定される共同事業のための契約形態で、通常の「組合」とは異なります。TKの場合、契約するのは、事業を実際に行う「営業者」と匿名組合員の間のみであり、匿名組合員同士は一切の契約関係にありません。通常の組合は、組合員同士が共同事業を展開することを約し、組合員同士で契約関係を締結するため、この点が大きく異なります。

 こうした特徴から、TKの最大の特徴は、その「匿名性」にあります。通常の組合では、組合員同士が契約関係にあるため誰が組合員であるかを知ることができますが、TKは営業者と匿名組合員との間にある関係でしかないため、匿名組合員同士がお互いを知り得ることはありません。この匿名性がTKをファンドとして利用する最大のメリットとなります。

 また、対外的な法律関係においても、対外的に取引を行うのは営業者であるため、営業者がすべての法律関係を構築しており、通常の組合のような共有持分となるなど、法律関係の煩雑さは解消することができます。これもTKを利用する上でのメリットであると考えられます。

 営業者は、基本的に個人であっても構わないのですが、有限責任制を持たせるために、合同会社(以下、「GK」といいます。)といったビークルを採用します、GKと匿名組合員との間でTK契約を締結する、いわゆる「GK-TKスキーム」というのがよく使われます。また、金融商品取引法の規制の観点から、合同会社ではなく株式会社(以下、「KK」といいます。)を利用する場合もあり、この場合は「KK-TKスキーム」と呼ばれています。 

2.匿名組合の法務(法律関係)

 TKは、商法の規定です。匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力が生じます(商法535条)。このため、営業者と匿名組合員の契約であって、匿名組合員同士の法律関係は一切ありません。また、「相手方の営業のために」出資するため、営業者が営業を行い、出資者は営業に関与することはありません。つまり、匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することはできないし、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しません(商法536条3項、4項)。ただし、営業者の商号に匿名組合員の氏もしくは氏名または商号を使用させてしまった場合は、例外的に、匿名組合員は営業者と連帯して第三者に対する責任を負うことになります(商法537条)。なお、匿名組合員は、労務出資などは認められず、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができます(商法536条2項)。 

3.匿名組合における法務(利益配当)

 TK契約は「営業から生ずる利益を分配する」必要があり、これが契約上で明確化されていなければ、単純な金銭消費貸借契約に過ぎません。また、出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができません(商法538条)。

 TK契約は、共同事業なので営業者のみが損失を負担するのではなく、匿名組合員も損失負担する必要があります。しかし、契約上の特約によって、損失分配をしないことは可能です。あくまで要件としては、「利益の分配」であって、損失の分配は必要要件ではありません。

 ただし、損失分配をしないことにつき、経済合理性のある説明が付かない場合には、営業者から匿名組合員への寄付行為であると判断され、税務上において寄附金に関する損金不算入規定が適用される可能性もあるため留意が必要です。

4.匿名組合における法務(TKの解除と終了)

 TK契約で、TKの存続期間を定めなかったとき、又はある当事者の終身の間TKが存続すべきことを定めたときは、各当事者は、営業年度の終了時において、契約の解除をすることができます。ただし6か月前にその予告をしなければなりません(商法540条)。また、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、いつでもTK契約の解除をすることができます(同条2項)。

 

 TK契約の終了事由としては、以下の3点があります。

  1. TKの目的である事業の成功又はその成功の不能
  2. 営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたこと
  3. 営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと

 TK契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければなりません。ただし、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足ります(商法542条)。

 なお、TK契約は、契約によるものであるため、契約期間の満了といった契約の一般的消滅原因により終了します。

 

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