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シリーズ<11> 財務報告に係る内部統制の評価の方法A

1.はじめに

 本シリーズ11では、シリーズ10に引き続き評価方法について解説します。シリーズ11では、業務プロセスに係る内部統制の評価方法について解説していきます。

2.業務プロセスに係る内部統制の評価

 経営者は、全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、評価対象となる業務プロセスを次のような流れで評価していきます。

 

≪業務プロセスの評価手順≫

  • 業務プロセスの把握・整理
  • 業務プロセスにおける虚偽記載の発生するリスクとこれを低減する統制の識別
  • 整備状況の有効性の評価
  • 運用状況の有効性の評価
  • ITを利用した内部統制の評価

 以下では、この流れに沿って、解説していきます。なお、ITを利用した内部統制の評価については、シリーズ10の「ITを利用した内部統制」で解説します。

3.評価対象となる業務プロセスの把握・整理

 経営者は、評価対象となる業務プロセスにおける取引の開始、承認、記録、処理、報告を含め、取引の流れを把握し、取引の発生から集計、記帳といった会計処理の過程を理解していきます。これは事前に実施する内部統制の構築プロセスにおいて作成した業務フローチャートや業務記述書などで把握・整理することができます。

4.業務プロセスにおける虚偽記載の発生するリスクとこれを低減する統制の識別

 経営者は、業務プロセスにおける虚偽記載の発生するリスクと財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点をそれぞれ識別して、結び付けていく必要があります。

まず、評価対象となる業務プロセスにおいて、不正又は誤謬により、虚偽記載が発生するリスクを識別します。このリスクを識別するに当たっては、当該不正又は誤謬が発生した場合に、実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性、表示の妥当性といった適切な財務情報を作成するための要件のうち、どの要件に影響を及ぼすかについて理解しておくことが重要です。

 次に、虚偽記載が発生するリスクを低減するための統制上の要点を識別します。その際、特に取引の開始、承認、記録、処理、報告に関する内部統制を対象に、実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性、表示の妥当性といった適切な財務情報を作成するための要件を確保するために、どのような内部統制が必要かという観点から識別していきます。すなわち、識別されたリスクとこのリスクを低減する内部統制を紐づけしていきます。これは、内部統制の構築プロセスにおいて作成せれたRCMが用いられることになります。

 経営者は、財務報告に係る内部統制についての6つの基本的要素が有効に機能しているかを判断するわけですが、直接に見ていくことができないので、結局、財務諸表の重要な虚偽表示となるリスクを低減する形で内部統制が構築されているのかを見ることで、間接的にこの6つの基本的要素の有効性を評価しにいくことになるわけです。

その後、経営者は、(1)、(2)の作業を踏まえて、業務プロセスの整備状況と運用状況を評価していきます。

5.業務プロセスに係る内部統制の整備状況の有効性の評価

 経営者は、上記(2)によって識別した個々の重要な勘定科目に関係する個々の統制上の要点が適切に整備され、実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性、表示の妥当性といった適切な財務情報を作成するための要件を確保する合理的な保証を提供できているかについて、関連文書の閲覧、従業員等への質問、観察等を通じて判断します。この際、内部統制が規程や方針に従って運用された場合に、財務報告の重要な事項に虚偽記載が発生するリスクを十分に低減できるものとなっているかにより、当該内部統制の整備状況の有効性を評価していきます。その際には、例えば、以下のような事項に留意しながら、整備状況を確認していきます。

 

≪整備状況の有効性評価における留意点≫

  • 内部統制は、不正又は誤謬を防止又は適時に発見できるよう適切に実施されているか。
  • 適切な職務の分掌が導入されているか。
  • 担当者は、内部統制の実施に必要な知識及び経験を有しているか。
  • 内部統制に関する情報が、適切に伝達され、分析・利用されているか。
  • 内部統制によって発見された不正又は誤謬に適時に対処する手続が設定されているか。

 内部統制の整備状況は、職務規程等が存在するだけでなく、担当者が、その内部統制の実施に必要な知識及び経験などがあるかなどもチェック対象となります。担当者がその実施方法などを知らない場合には、適切な人材の配置がなされていないことになりますので、整備状況としては不備があると考えられます。

6.業務プロセスに係る内部統制の運用状況の有効性の評価

 運用状況の有効性を評価する場合には、次の@〜Bを決定する必要があります。なお、この決定に際しては、Cに記載されている事項を留意する必要があります。

(1)評価の内容


 関連文書の閲覧、当該内部統制に関係する適切な担当者への質問、業務の観察、内部統制の実施記録の検証、各現場における内部統制の運用状況に関する自己点検の状況の検討等により、業務プロセスに係る内部統制の運用状況を確認します。

(2)評価の実施方法


 原則としてサンプリングにより十分かつ適切な証拠を入手していきます。全社的な内部統制の評価結果が良好である場合や、業務プロセスの内部統制に関して、同一の方針に基づく標準的な手続が企業内部の複数の事業拠点で広範に導入されていると判断される場合には、サンプリングの範囲を縮小することができます。

 例えば、複数の営業拠点や店舗を展開している場合において、統一的な規程により業務が実施されている、業務の意思決定に必要な情報と伝達が良好である、内部統制の同一性をモニタリングする内部監査が実施されている等、全社的な内部統制が良好に運用されていると評価される場合には、全ての営業拠点について運用状況の評価を実施するのではなく、個々の事業拠点の特性に応じていくつかのグループに分け、各グループの一部の営業拠点に運用状況の評価を実施して、その結果により全体の内部統制の運用状況を推定し、評価することができます。

(3)評価の実施時期


 評価時点(期末日)における内部統制の有効性を判断するには、適切な時期に運用状況の評価を実施することが必要です。ただ、実務的な問題からすべての運用状況の把握を期末日に実施できないことから、期中に評価が行われることも考えられます。この場合、期末日までに内部統制に関する重要な変更があったときには、重要な変更の内容の把握・整理、変更後の内部統制の整備状況の有効性評価、変更後の内部統制の運用状況の有効性の評価などの追加手続の実施を検討します。なお、変更されて期末日に存在しない内部統制については、評価する必要はありません。

 なお、決算・財務報告プロセスに係る内部統制の運用状況の評価については、当該期において適切な決算・財務報告プロセスが確保されるよう、仮に不備があるとすれば早期に是正が図られるべきであり、また、財務諸表監査における内部統制の評価プロセスとも重なりあう部分が多いと考えられることから、期末日までに内部統制に関する重要な変更があった場合には適切な追加手続が実施されることを前提に、前年度の運用状況をベースに、早期に実施されることが効率的・効果的だと考えられます。

(4)評価の実施方法の決定に関する留意事項


 上記の(1)から(3)の実施内容、実施方法、実施時期を決定する場合には、次のような事項に留意して決定する必要があります。

 

@内部統制の形態・特徴等

 経営者は、内部統制の重要性、複雑さ、担当者が行う判断の性質、内部統制の実施者の能力、前年度の評価結果やその後の変更の状況等を考慮して運用状況の評価の実施方法(サンプル件数、サンプルの対象期間等)を決定する必要があります。

 また、ITを利用した内部統制は一貫した処理を反復継続するため、その整備状況が有効であると評価された場合には、ITに係る全般統制の有効性を前提に、人手による内部統制よりも、例えばサンプル件数を減らし、サンプルの対象期間を短くするなど、一般に運用状況の評価作業を減らすことができます。

 

A決算・財務報告プロセス

 決算・財務報告プロセスに係る内部統制は、財務報告の信頼性に関して非常に重要な業務プロセスであることに加え、その実施頻度が日常的な取引に関連する業務プロセスなどに比して低いことから評価できる実例の数は少ないものとなります。したがって、決算・財務報告プロセスに係る内部統制に対しては、一般に、他の内部統制よりも慎重に運用状況の評価を行う必要があります。

 なお、全社的な内部統制として評価するように決定された決算・財務報告に係る内部統制については、全社的な内部統制に準じて、全社的な観点から評価を実施する必要があります。

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