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金融資産の分類基準における日本基準とIFRSの比較

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(平成23年10月11日現在)

5-1.金融資産の分類基準の基本

 IFRS第9号の改訂により、IFRSでは金融資産の分類基準が大きく変更され、結果として日本基準と大きく異なることになりました。完全に一致していたわけではありませんが、IAS第39号の分類基準と日本基準における分類基準は、考え方としてそれほど差異はありませんでした。

 IFRS第9号では、事業モデルテスト及び契約上のCF特性テストの2つのテストによって、償却原価測定資産と公正価値測定資産の2分類のみとなり、分類基準が簡素化されています。日本基準では、まずは債権と有価証券に分類し、有価証券は、4つの分類が行われています(なお、日本基準ではコンバージェンスのため金融商品会計基準の改訂の論点整理が発表されています)。

  分類基準をまとめると以下のとおりです。

内容 日本基準 IFRS

全般規定

債権と有価証券に分類し、有価証券は、「売買目的有価証券」「満期保有目的有価証券」「子会社株式・関連会社株式」「その他有価証券」の4つに分類する。

負債性金融商品と資本性金融商品に分類し、事業モデルテスト及び契約上のCF特性テストによって、償却原価測定資産と公正価値測定資産に分類する。

また、FVTPLオプションかFVTOCIオプションの適用の有無によって分類される。

債権

金融資産のうち、債権に該当するものは債権に分類される。

(貸倒見積額の算定分類として、一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等に分類される)

債権か有価証券かの区分は特にない。

有価証券

次の4つに分類される。

①売買目的有価証券

②満期保有目的有価証券

③子会社株式・関連会社株式

④その他有価証券


 なお、分類と評価は表裏一体の関係であるため、本来は評価基準も含めた比較をするべきですが、今回は内容をわかりやすくするため、分類基準にのみスポットをあてて、日本基準とIFRSの比較をしています。次シリーズで、評価基準における日本基準とIFRSの比較をすることで、最終的な理解を目指します。

5-2.債権の取扱いの比較

 日本基準では、売掛金や貸付金などを、「債権」として有価証券と区別し、会計処理を定めています。このため、まずは債権を有価証券と区分する必要があります。何が債権であるかは明確に規定されていませんが、有価証券の範囲について明確に規定(次項で詳述)されていることから、有価証券に該当せず、かつ、金融資産に該当するものは「債権」と考えて差し支えないものと考えられます。

 IFRSでは、(繰り返しになりますが、)有価証券と債権との区分がなされることなく、金融資産に対する分類基準が設けられているにすぎません。

5-3.有価証券の取扱いの比較

 日本基準では、(繰り返しになりますが、)債権と有価証券を区分し、有価証券に区分されたものは、有価証券の分類基準に従って4つに分類し、それぞれの評価基準を適用することになります。このため、まずは有価証券の範囲というのが重要となり、金融商品会計基準では有価証券の範囲を次のように定めています。

 

【日本基準の有価証券の範囲】金融商品会計実務指針8項、58項

金融商品取引法第2乗第1項及び第2項に定義する有価証券。

ただし、金融商品取引法に定義する有価証券以外のものであっても、これに類似するもので活発な市場があるものは(例えば、国内CD)は、有価証券として取り扱います。

一方、金融商品取引法に定義する有価証券に該当しても、信託受益権(金融商品取引法第2条第2項第1号及び第2号に該当するものに限る。)は、有価証券として取り扱いません。ただし、信託受益権が優先劣後等のように質的に分割されており、信託受益権の保有者が複数である場合など、有価証券(債券、株式等)とみなして取り扱われるものは、結果的に有価証券として取り扱うこととなります。

 

 上記の有価証券の範囲に該当しない場合には、当該金融資産は、「債権」として区分され、債権の評価基準に従って会計処理されることになります。

 一方で、IFRSは債権と有価証券の区分はなく、事業モデルテスト及び契約上のCF特性テストに従った分類となります。このため、有価証券と債権を分類する必要がなく、結果として、有価証券の定義や債権の定義は存在しません。

 日本基準とIFRSの比較を簡単にまとめると次のとおりです。

内 容 日本基準 IFRS

有価証券の定義

原則として、金融商品取引法第2乗第1項及び第2項に定義する有価証券。ただし、一部につき、有価証券と認められないものや金融商品取引法の定義に該当しないが有価証券として取り扱うものなどがある。

有価証券の定義は特にない。

有価証券の分類基準

①売買目的有価証券 ⇒ 時価評価

時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券。

②満期保有目的の債券 ⇒ 取得価額(or償却原価法)

満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券。

③子会社株式及び関連会社株式 ⇒ 取得価額

子会社に該当するもしくは関連会社に該当する株式。

④その他の有価証券 ⇒ 時価評価(差額は純資産計上他)

売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券。

事業モデルテスト及び契約上のCF特性テストの2つのテストにより、償却原価測定対象資産と公正価値測定対象資産の2つに分類する。

なお、公正価値測定対象資産は、公正価値測定による評価損益をPL計上する場合とその他の包括利益に計上する場合(いわゆる、FVTOCIオプション)に分類する。FVTOCIオプションは資本性金融商品のみに認められている。

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