株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

金融資産の譲渡に関する開示

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(平成23年5月16日現在)

9.金融資産の譲渡に関する開示

 企業は、関連した譲渡取引が発生したときとは無関係に、報告日に存在する認識の中止がなされていない譲渡金融資産のすべて、及び譲渡資産における継続的関与に関して、要求された開示を提供しなければなりません。金融商品の認識の中止の論点はIFRS第9号で詳細に規定されていますが、企業は、次のいずれかの場合(その場合にのみ)、すべての又は一部の金融資産(譲渡金融資産)を譲渡するとIFRS第7号でも合わせて規定しています(IFRS7.42A)。IFRS第9号と異なる規定ではありません。

  • 当該金融資産のキャッシュ・フローを受取る契約上の権利を移転する。
  • 当該金融資産のキャッシュ・フローを受取る契約上の権利を保持するが、アレンジメントにおける1人もしくはそれ以上の最終受取人へキャッシュ・フローを支払う契約上の義務を引き受ける。

 

 なお、金融資産の譲渡に関連する開示要求は、IFRS第7号の開示基準の他の開示要求を補完するものです。企業は、財務諸表の単一の注記において開示します。

 

 企業は、財務諸表の利用者が次の事項を可能にする情報を開示しなければなりません(IFRS7.42B)。

(a) 譲渡金融資産全体において認識の中止が行われていない譲渡金融資産と関連する負債の関連性を理解すること。
(b) 認識の中止が行われている金融資産における企業の継続的関与の性質(及び関連するリスク)を評価すること。

 

 

(A) 継続的関与


譲渡の一部として、企業が譲渡金融資産に固有の契約上の権利又は債務を保持する、もしくは、譲渡金融資産に関連する新しい契約上の権利又は債務を獲得する場合に、企業は譲渡金融資産に継続的関与しているといえます。なお、開示規定を適用する目的上、次の事項は、継続的関与を構成しません(IFRS7.42C)。

  • 詐欺的移転及び法的行動の結果として譲渡を無効にする合理性、誠実及び公正な売買の構想に関連する通常の告知及び保証
  • 契約価格(又は行使価格)が譲渡資産の公正価値である譲渡金融資産を再取得する先物、オプション及び他の契約
  • 企業が、金融資産のキャッシュ・フローを受取る契約上の権利を保持するが、1つ又は1つ以上の企業にキャッシュ・フローを支払う契約上の債務を引き受ける及びIFRS第9号の定める条件を満たす同様のアレンジ

 

 開示規定の目的上の譲渡金融資産に対する継続関与の評価は、報告企業の水準で行われます。例えば、子会社が親会社が継続的関与している金融資産を無関係の第三者に譲渡した場合、子会社は親会社が単体の財務諸表において譲渡資産の継続的関与があるかどうかを評価する親会社の関与を含めません(子会社が報告企業である場合)。しかし、親会社は、連結財務諸表における譲渡資産に対する継続的関与を保有しているかどうかを判断する際に、子会社によって譲渡された金融資産に対する親会社(又はグループ内の他の企業)の継続的関与を含めることになります(報告企業がグループの場合)(IFRS7.B29)。

 企業が譲渡の一部として、譲渡金融資産に固有の契約上の権利又は債務を保持していない、もしくは譲渡金融資産に関連した新しい契約上の権利又は債務を取得していない場合、企業は、譲渡金融資産に対する継続的関与を持っていないと判断できます。企業が、譲渡金融資産の将来の業績に対する持分を保有していないか、もしくは将来において譲渡金融資産の対価として支払が生じる責任がどんな状況においても保有していない場合、企業は譲渡金融資産に対する継続的関与を保有していません(IFRS7.B30)。譲渡金融資産に対する継続的関与は、譲渡に関連して締結された譲受人又は第三者との譲渡契約又は個別の合意における契約条項の結果として生じます(IFRS7.B31)。

 

(B) 全体で認識の中止が行われない譲渡金融資産 


企業は、譲渡金融資産の一部又は全部が認識の中止の要件を満たさないことで譲渡金融資産を保有することがあります。企業は、各報告日において、全体で認識の中止が行われない譲渡金融資産のそれぞれの種類ごとに開示しなければなりません(IFRS7.42D)。

(a) 譲渡資産の性質
(b) 企業が晒されている所有に係るリスクと経済価値の性質
(c) 譲渡資産と関連する負債の間にある関連性の性質の説明。譲渡資産の報告企業の使用に関する移転から生ずる制限を含む。
(d) 関連する負債に対する取引先が、譲渡資産に対してのみ償還請求権を保有する場合、譲渡資産の公正価値を示すスケジュール、関連する負債の公正価値及びネット・ポジション(譲渡資産と関連する負債の公正価値の差額)
(e) 企業が譲渡資産のすべてを認識し続ける場合、譲渡資産及び関連する負債の帳簿価額
(f) 企業が、企業の継続的関与の範囲で資産を認識し続ける場合、譲渡前の原資産の帳簿価額合計、企業が認識を継続する資産の帳簿価額及び関連する負債の帳簿価額

 

 これらの開示は、譲渡が発生したときではなく、企業が譲渡金融資産の認識を継続している各報告日において要求されます(IFRS7.B32)。

 

(C) 全体として認識の中止が行われる譲渡金融資産


 企業は譲渡金融資産全体として認識の中止を行うが、それらに対する継続的関与がある場合、企業は、各報告日における継続的関与の種類別に、最低でも、次の事項を開示しなければなりません(IFRS7.42E)。

(a) 財政状態計算書で認識の中止が行われ、認識の中止が行われた資産に対する企業の継続的関与が表示されている資産及び負債の帳簿価額、並びに当該資産及び負債の帳簿価額が認識されている項目。
(b) 認識の中止が行われた金融資産に対する企業の継続的関与が表示されている資産及び負債の公正価値
(c) 認識の中止が行われた金融資産に対する企業の継続的関与から生ずる企業の最大損失エクスポージャーを最もよく表す額、並びに最大損失エクスポージャーの最低方法を示した情報。
(d) 認識の中止が行われた金融資産を再取得するために要求されるであろう割引前キャッシュ・フロー(例えば、オプション契約の行使価格)又は譲渡資産の対価として譲受人に対して支払われるその他の額。キャッシュ・フローが変化する場合、開示される額は各報告日に存在する状況をベースとする。
(e) 認識の中止が行われた金融資産を再購入するために要求されるであろう割引前キャッシュ・フロー又は譲渡資産の対価として譲受人に対して支払われるその他の額の満期分析(企業の継続的関与の残存契約期間を示す)。
(f) (a)から(e)で要求される定量的開示を説明又は補足する定性的な情報。

 

 上記(e)は、企業が、認識が中止された譲渡金融資産を再購入するための割引前キャッシュ・フローの満期分析を開示すること、もしくは、認識が中止された金融資産の対価として譲受人に支払われる額を、企業の継続的関与の残余契約期間を示すように、開示するよう要求しています。当該分析は、支払を要求されるキャッシュ・フロー(例えば、先物契約)、企業が支払を要求されるキャッシュ・フロー(例えば、売建プット・オプション)及び企業が支払を選択するであろうキャッシュ・フロー(例えば買建コール・オプション)を識別します(IFRS7.B34)。

 また、企業は、要求される満期分析を準備するための適切な期間帯を判定するために判断を利用しなければなりません。例えば、企業は、次のような期間帯が適切であるかを判断すします(IFRS7.B35)。なお、 可能な満期の範囲がある場合、キャッシュ・フローは、企業が要求されるもしくは支払うことを認められる最も早い日を基礎にして含めます(IFRS7.B36)。

  • 1カ月未満
  • 1カ月以上3カ月未満
  • 3カ月以上6カ月未満
  • 6か月以上1年未満
  • 1年以上3年未満
  • 3年以上5年未満
  • 5年以上

 

 上記(f)で要求される定性的な情報には、認識が中止された金融資産の説明と、当該資産の譲渡後に保持されている継続的関与の性質と目的を含めます。次の事項を含めて、企業が晒されているリスクの説明も含めます(IFRS7.B37)。

  • 企業が、認識が中止された金融資産に対する企業の継続的関与に固有のリスクをどのように管理するかの説明。
  • 企業が、他の関係者より前に損失が生じることを要求されるかどうか、また、当該資産の企業の持分(つまり、当該資産に対する企業の継続的関与)より低い地位の持分を持つ関係者によって生じた損失額。
  • 財政上のサポート又は譲渡金融資産の再購入の義務に関連するトリガーに関する説明。

 

 認識の中止が行われた金融資産に対して継続的関与の種類が1つ以上である場合、企業は、特定の資産の観点で上記の要求事項の情報を集め、継続的関与の1つの種類のもとで、それを報告します(IFRS7.42F)。

 加えて、企業は継続的関与の種類ごとに次の事項を開示します(IFRS7.42G)。

(a) 当該資産の譲渡のときに認識した利得又は損失。
(b) 報告期間中及び累積の両方で、認識の中止が行われた金融資産に対する企業の継続的関与から認識した収益及び費用(例えば、デリバティブ商品の公正価値の変動額)。
(c) 報告期間中の(認識の中止の要件を満たす)譲渡活動からの収益の合計額が報告期間を通じて公平に分配されない場合(例えば、譲渡活動の合計額のうちの実在する一部が報告期間のクロージング日に行われる場合)

(i)当該報告期間内で最も大きな譲渡活動が行われたとき(例えば、報告期間の末日の5日前)。

(ii)報告期間のある一部で行われた譲渡活動で認識された(利得又は損失に関連する額)。

(iii)報告期間のある一部でお紺割れた譲渡活動からの利益の合計額。企業は、包括利益計算書に計上される各報告期間中の当該情報を提供しなければならない。

 

 上記(a)項は、企業が継続的関与を保有する金融資産に関連した認識を中止における利得又は損失を開示する要求しています。当該企業は、認識の中止における利得又は損失が、以前に認識していた資産(認識が中止された資産に対する持分及び企業によって保持されている持分)の構成部分の公正価値が、以前認識していた資産全体の公正価値と異なっていたことから生じていた場合、開示しなければなりません。当該状況では、企業は、第27A項で説明されているように、公正価値測定額が、観察可能な市場データを基礎としていない重要なインプットを含めたかどうかを開示しなければなりません(IFRS7.B38)。

 

(D) 補足説明 


 企業は、開示規定の目的を満たすために必要だと企業が考える追加情報は開示しなければなりません(IFRS7.42H)。企業は、当該状況に照らして、利用者の情報ニーズを満たすために提供することが必要となる追加情報がどれくらいか、また、追加情報の異なる観点をどの程度強調するかかを決定しなければなりません。企業は、財務諸表利用者の助けとならない過度に詳細な財務諸表にすることと、合算しすぎた結果として情報をぼやかしてしまうこととの均衡をとる必要があります(IFRS7.B39)。

 

(E) 種類ごとの開示


 認識が中止された金融資産に対する継続的関与の各種類定性的及び定量的な開示を要求しています。企業は、企業のリスクに対するエクスポージャーを表す種類に継続的関与を集計しなければなりません。例えば、企業は、金融商品の種類ごと(例えば、保証又はコール・オプション)又は譲渡の種類ごと(例えば、債権のファクタリング、証券化及び証券貸借)によって継続的関与を集計します(IFRS7.B33)。

 

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