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ヘッジの有効性、公正価値ヘッジ、キャッシュ・フローヘッジ、在外営業活動事業体に対する純投資ヘッジ

(平成23年5月16日現在)

4−8.ヘッジ会計の基本規定

 ヘッジ会計は、ヘッジ手段とヘッジ対象の公正価値の変動が純損益に与える相殺的な影響を認識します(IAS39.85)。

 ヘッジ関係には次の3種類があります(IAS39.86)。

(a)

公正価値ヘッジ 

認識されている資産若しくは負債又は認識されていない確定約定、あるいはそのような資産若しくは負債又は認識されていない確定約定の特定された一部分の、公正価値の変動に対するエクスポージャーのうち、特定のリスクに起因し、かつ、純損益に影響し得るもののヘッジ

(b)

キャッシュ・フロー・ヘッジ

キャッシュ・フローの変動可能性に対するエクスポージャーのうち、(i)認識されている資産又は負債に関連する特定のリスク(例えば、変動利付債券に係る将来の金利支払の全部又は一部)又は可能性の非常に高い予定取引に起因し、かつ、(ii)純損益に影響し得るものに対するヘッジ

(c) IAS第21号で定義されている、在外営業活動体に対する純投資のヘッジ

 

 なお、確定約定の為替リスクのヘッジは、公正価値ヘッジとして会計処理しても、キャッシュ・フロー・ヘッジとして会計処理してもよいこととされています(IAS39.87)。

 

4−9.ヘッジ関係の要件

 ヘッジ関係は、次の条件のすべてが満たされた場合に、かつその場合においてのみ、ヘッジ会計の要件を満たすことになります(IAS39.88)。

 

(A) 企業のリスク管理目的及び戦略の文書化


ヘッジの開始時において、ヘッジ関係並びにヘッジの実施についての企業のリスク管理目的及び戦略の、公式な指定及び文書があること。その文書は、ヘッジ手段の特定、ヘッジの対象となる項目又は取引、ヘッジされるリスクの性質、及びヘッジされたリスクに起因するヘッジ対象の公正価値又はキャッシュ・フローの変動に対するエクスポージャーを相殺するに際してのヘッジ手段の有効性について、企業がどのように評価するかを含んでいなければならない(IAS39.88(a))。

 

(B) 有効性テスト(IAS39.88(b)、(d)、(e))


 ヘッジが、その特定のヘッジ関係について当初に文書化されたリスク管理戦略に沿って、ヘッジされたリスクに起因する公正価値又はキャッシュ・フローの変動を相殺するに際し、きわめて有効(highly effective)であると見込まれる必要があります。また、有効性テストでは、ヘッジの有効性が信頼性をもって測定できなければならず、それは、ヘッジされたリスクに起因するヘッジ対象の公正価値又はキャッシュ・フロー及びヘッジ手段の公正価値が、信頼性をもって測定できることを意味します。なお、ヘッジは継続的に評価され、指定されていた財務報告期間を通じて(throughout the financial reporting periods)、実際に極めて有効であったと判断されていることが必要です。有効性は、少なくとも、企業が年次又は中間財務諸表を作成する際に評価されます(IAS39.AG106)。

 

 ヘッジは、次の要件の両方が満たされる場合に、かつその場合にのみ、高い程度に有効であるとみなされます(IAS39.AG105)。

(a) ヘッジの開始時及びその後の期間において、ヘッジが指定されている期間中のヘッジされているリスクに起因する公正価値又はキャッシュ・フローの変動の相殺を達成する際に、ヘッジが高い程度で有効であると見込まれること。
(b) ヘッジの実際の結果が80%から125%の範囲内にあること

 

<ヘッジの有効性の評価方法>

 上記(a)の予想はいろいろな方法で立証できます。ヘッジ対象とヘッジ手段の過去の変動を比較することや、高い相関関係を立証することなどが含まれます。ヘッジ対象とヘッジ手段の比率を1対1とする必要もなく、有効性を高めるために例えば、1対0.98といったヘッジ比率を用いることもできます。

 また、ヘッジの有効性の評価方法は、IFRSで単一の方法を指定するわけではなく、企業のリスク管理戦略によって、企業ごとに決定・採用します。場合によっては、企業は異なる種類のヘッジについては異なる方法を採用することもあります。ヘッジ戦略に関する企業の文書には、有効性を評価するための手続が含まれます。それらの手続は、ヘッジ手段に係る損益のすべてを評価に含めるかどうか、又は当該金融商品の時間的価値を除外するかどうかについても記述します(IAS39.AG107)。

 

<ヘッジが完全に有効であると思われる例>

 ヘッジ手段とヘッジ対象である資産、負債、確定約定又は非常に可能性の高い予定取引の主要な条件が同一である場合には、ヘッジされているリスクに起因する公正価値及びキャッシュ・フローの変動は、ヘッジの開始時とその後の両方について、互いに完全に相殺される可能性が高いと考えられます。例えば、ヘッジ手段とヘッジ対象について、想定元本及び元本金額、期間、金利改訂日、利息及び元本の受払日、並びに金利の算定ベーシスが同一であろう場合には、金利スワップは有効なヘッジである可能性が高いと思われます(IAS39.AG108)。

 

<ヘッジが完全に有効ではないと思われる例>

 ヘッジ手段とヘッジ対象が、連動していない異種通貨で表示されている場合には、ヘッジは完全には有効でないと考えられます。また、デリバティブによる金利リスクのヘッジは、そのデリバティブの公正価値の変動の一部が相手方の信用リスクに起因するものである場合には、完全には有効でないことになります(IAS39.AG109)。

 

(C) キャッシュ・フローヘッジにおける予定取引の実行可能性


キャッシュ・フロー・ヘッジについては、ヘッジの対象である予定取引は、実行の可能性が非常に高く、かつ最終的に純損益に影響しうるキャッシュ・フローの変動可能性に対するエクスポージャーを表すものでなければならない。

 

(D) ヘッジの有効性とヘッジの中止 


 

 企業がヘッジの有効性の要件を満たしていない場合には、企業は、ヘッジの有効性に準拠していることが立証された最後の日から、ヘッジ会計を中止します。しかし、企業が、ヘッジ関係が有効性の要件を満たさなくなる原因となった事象又は状況変化を識別していて、その事象又は状況変化が生じるまではヘッジは有効であったと立証する場合には、その事象又は状況変化の日からヘッジ会計を中止します(IAS39.AG113)。

 

4−10.公正価値ヘッジの会計処理

 公正価値ヘッジが当期中にヘッジ会計の条件を満たしている場合には、次のように会計処理します(IAS39.89)。

(a) ヘッジ手段を公正価値(デリバティブであるヘッジ手段の場合)又はIAS第21号に従って測定された帳簿価額の外貨部分(デリバティブ以外のヘッジ手段の場合)で再測定することによる利得又は損失は、純損益に認識しなければならない。
(b) ヘッジされたリスクに起因するヘッジ対象に係る利得又は損失は、ヘッジ対象の帳簿価額を修正して、純損益に認識しなければならない。これは、そうでなければヘッジ対象が取得原価で測定される場合に適用される。

 

 ヘッジ対象に起因する特定のリスクのみがヘッジされている場合には、ヘッジされたリスクに関連しない部分で認識されたヘッジ対象の公正価値の変動額は、IFRS第9号に従って純損益ないしその他の包括利益に計上れます(IAS39.90)。

 IFRSにおける公正価値ヘッジの会計処理は、ヘッジ対象とヘッジ手段の公正価値測定による変動額を純損益にともに計上することでヘッジを実現させています。

 

(A) ヘッジ対象が実効金利法を適用している償却原価金融資産である場合


 第89項(b)により生じる、実効金利法が使用されるヘッジ対象金融商品の帳簿価額に対する修正は、償却して純損益に計上しなければなりません。償却は、修正額が存在するのと同時に開始してもよく、ヘッジ対象がヘッジされたリスクに起因する公正価値の変動額について修正されることがなくなる以前に開始しなければなりません。修正額は、償却が開始する日現在で再計算された実効金利を基礎とし、満期までに全額を償却します(IAS39.92)。

 

(B) 確定約定の場合


 未認識の確定約定がヘッジ対象に指定されている場合には、ヘッジされたリスクに起因する確定約定の公正価値のその後の累積変動額は、資産又は負債として認識するとともに、対応する利得又は損失を純損益に認識します。ヘッジ手段の公正価値の変動も純損益に認識されます(IAS39.93)。

 企業が、資産を購入するか又は負債を引き受ける確定約定で、公正価値ヘッジのヘッジ対象であるものを締結した場合には、企業が確定約定を実行したことにより生じる資産又は負債の当初の帳簿価額は、財政状態計算書に認識された、ヘッジされたリスクに起因する確定約定の公正価値の累積変動額を含めるように修正されます(IAS39.94)。

 

(C) 公正価値ヘッジの中止


 次の場合には、企業は、ヘッジ会計を将来に向かって中止しなければなりません(IAS39.91)。

(a) ヘッジ手段が失効、売却、終結又は行使された場合(この目的上、ヘッジ手段の他のヘッジ手段への入替え又はロールオーバーは、企業の文書化されたヘッジ戦略の一環である場合には、失効又は終結とはみなされない)
(b) ヘッジが、ヘッジ会計の要件をもはや満たさない場合
(c) 企業が指定を取り消した場合

 

4−11.キャッシュ・フロー・ヘッジの会計処理

 当期中にキャッシュ・フロー・ヘッジがヘッジ会計の要件を満たしている場合には、次のように会計処理しなければなりません(IAS39.95)。

(a) ヘッジ手段に係る利得又は損失のうち有効なヘッジと判定される部分は、その他の包括利益に認識しなければならない。
(b) ヘッジ手段に係る利得又は損失のうちの非有効部分は、純損益に認識しなければならない。

 

 より具体的には、キャッシュ・フロー・ヘッジは、次のように会計処理されます(IAS39.96)。

(a) ヘッジ対象に関連する資本の独立の構成要素は、次のうち小さい方(絶対額で)に修正される。
(i)ヘッジの開始時からのヘッジ手段に係る利得又は損失の累計額
(ii)ヘッジの開始時点からのヘッジ対象の予想将来キャッシュ・フローの公正価値(現在価値)の累計額
(b) ヘッジ手段に係る残りの利得若しくは損失又はそのうちの指定された構成部分(有効なヘッジではないもの)があれば、純損益に認識される。
(c) 企業の文書化されたリスク管理戦略が、特定のヘッジ関係について、ヘッジ手段に係る利得若しくは損失又は関連するキャッシュ・フローの特定の部分を、ヘッジの有効性の評価から除外している場合には、利得又は損失のうち除外された部分は、IFRS第9号に従って、純損益もしくはその他の包括利益として認識される。

 

 

(A) 予定取引にかかるキャッシュ・フロー・ヘッジの会計処理


(i) 予定取引が金融資産又は金融負債を生じさせる場合

 予定取引のヘッジがその後において金融資産又は金融負債の認識を生じさせる場合には、その他の包括利益に認識されていた関連する利得又は損失を、ヘッジされた予定キャッシュ・フローが純損益に影響を与えるのと同じ期(支払利息又は受取利息が認識される期など)に、資本から純損益に組替調整額として振り替えます(IAS第1号参照)。ただし、その他の包括利益に認識されている損失の全部又は一部分が、1つ又は複数の将来の期において回収されないと企業が見込んでいる場合には、回収されないと見込まれる金額を組替調整額として純損益に振り替えなければなりません(IAS39.97)。

 

(ii) 予定取引が非金融資産又は非金融負債を生じさせる場合

 予定取引のヘッジがその後において非金融資産又は非金融負債の認識を生じさせるものである場合又は非金融資産又は非金融負債についての予定取引が、公正価値ヘッジが適用される確定約定となった場合には、企業は次の(a)又は(b)を採用しなければなりません(IAS39.98)。

(a) 予定取引が金融資産又は金融負債を生じさせる場合と同じ。
(b) その他の包括利益に認識されていた関連する利得又は損失を除去し、それらを資産又は負債の当初の取得原価又は他の帳簿価額に含める。

 

 上記のいずれかを会計方針として採用し、キャッシュ・フローヘッジのすべてのヘッジにそれを首尾一貫して適用しなければなりません(IAS39.99)。

 

 

(B) 上記以外のキャッシュ・フロー・ヘッジの会計処理

のキャッシュ・フロー・ヘッジについては、その他の包括利益に認識されていた金額は、ヘッジ対象である予定キャッシュ・フローが純損益に影響を与えるものと同じ期(例えば、予定売上が発生する時)に組替調整額として資本から純損益に振り替えなければなりません(IAS第1号参照)(IAS39.100)。


 上記以外

 

(C) キャッシュ・フロー・ヘッジの中止


 次のいずれかの状況においては、企業は、キャッシュ・フロー・ヘッジを将来に向かって中止しなければなりません(IAS39.101)。

 

<ヘッジ手段が失効、売却、終結又は行使された場合>

 ヘッジが有効であった時にその他の包括利益に認識されていた、ヘッジ手段に係る利得又は損失の累計額は、予定取引が発生するまで、区分して資本に残さなければなりません。その取引が発生した時には、その予定取引に従って上記(A)及び(B)で示した会計処理に従います。なお、ヘッジ手段の他のヘッジ手段への変更又はロールオーバーは、企業の文書化されたヘッジ戦略の一環でる場合には、失効又は終結とはみなされません。

 

<ヘッジ要件を満たしていない場合>

ヘッジが有効であった時にその他の包括利益に認識されていた、ヘッジ手段に係る利得又は損失の累計額は、予定取引が発生するまで、区分して資本に残さなければなりません。その取引が発生した時には、上記(A)及び(B)で示した会計処理に従います。

 

<予定取引がもはや見込まれない場合>

ヘッジが有効であった時にその他の包括利益に認識されていた、ヘッジ手段に係る利得又は損失の累計額は、組替調整額として資本から純損益に振り替えなければなりません。可能性が非常に高いとはいえなくなった予定取引は、まだ発生が見込まれる場合もあります。

 

<企業が指定を取り消した場合>

予定取引のヘッジについては、ヘッジが有効であった時にその他の包括利益に認識されていた、ヘッジ手段に係る利得又は損失の累計額は、予定取引が発生するか又は発生が見込まれなくなるまで、区分して資本に残さなければなりません。その取引が発生した時には、上記(A)及び(B)の会計処理に従います。取引の発生が見込まれなくなった場合には、その他の包括利益に認識されていた利得又は損失の累計額は、組替調整額として資本から純損益に振り替えなければなりません。

 

4−12.在外営業活動体に対する純投資ヘッジ

 在外営業活動体に対する純投資のヘッジ(純投資の一部として会計処理される貨幣性項目のヘッジを含む)(IAS第21号参照)は、キャッシュ・フロー・ヘッジと同様に会計処理しなければなりません(IAS39.102)。

(a) ヘッジ手段に係る利得又は損失のうち有効なヘッジと判定される部分は、その他の包括利益に認識しなければならない。
(b) 非有効部分は純損益に認識しなければならない。

 

 その他の包括利益に認識されている、ヘッジの有効部分に関連するヘッジ手段に係る利得又は損失は、在外営業活動体の処分又は部分的な処分の時に、IAS第21号に従って、組替調整額として資本から純損益に振り替えなければなりません(IAS第1号参照)。

 

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