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元本及び元本残高に対する利息の支払のみである契約上のキャッシュ・フロー

(平成23年5月16日現在)

6−1.元本及び元本残高に対する利息の支払のみである契約上のキャッシュ・フローとは

 事業モデル・テストで、契約上のキャッシュ・フローを回収するために資産を保有していることが認められた場合、次に、金融資産の契約条件が、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じるか否かを判断します。

 

 [金融資産の契約上のキャッシュ・フロー特性テスト]

  • 金融資産の契約条件が、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じるか 

 金融資産の契約上のCF特性テストでは、次のような事項を検討します。

 

(A) 利息(interest)


 利息は、特定の期間における元本残高に対する貨幣の時間価値及び信用リスクへの対価でなければなりません(IFRS4.1.3)。何かしらの投資に対する収益の分配が、利息に該当するものでなければ、契約上のCF特性テストはパスできません。

 

(B) 通貨(currency)


 企業は、契約上のキャッシュ・フローが、金融資産の表示されている通貨建の元本及び元本に対する利息の支払のみであるかどうかを評価しなければなりません(IFRS9.B4.1.8)。例えば、元本が円建てで利息がドル建てのような債券は、「利息の支払のみであるキャッシュ・フロー」とは言えないと考えられます。

 

(C) レバレッジ(leverage)


 レバレッジは、一部の金融資産の契約上のキャッシュ・フローの特性です。レバレッジは、契約上のキャッシュ・フローの変動性を増大させ、レバレッジ効果を含む契約上のキャッシュ・フローは、利息としての経済的特徴がなくなります。このため、契約上のCF特性テストをパスできない可能性があります(IFRS9.B4.1.9)。

 

(D) 期限前償還オプション(prepayment option)


 期限前償還は、期限前償還が行われると契約上で定めていた特定日以外にキャッシュを発生させるため、契約上で定められた特定の日にキャッシュを発生させるわけではありません。また、場合によっては期限前償還に対するペナルティが支払われるケースもあり、契約上のCF特性テストをパスできない可能性があります。

 ただし、次の両方に該当する場合のみ、元本及び元本残高に対する利息の支払のみである契約上のキャッシュ・フローとなります(IFRS9.B4.1.10)。

(a) 当該条項が次のいずれかの保護の目的以外には、将来事象を条件としていない。
(i) 発行者の信用状態の悪化(例えば、債務不履行、信用格付けの低下又は融資契約違反)又は発行者に対する支配の変動から、保有者を保護すること
(ii) 関連する税制又は法律の変更から、保有者又は発行者を保護すること
(b) 期限前償還の金額が、元本及び元本残高に対する利息に係る未払金額にほぼ相当している。この金額には、契約の早期終了に対する合理的な追加的補償が含まれる場合がある。

 

(E) 延長オプション(term extension option)


 期限前償還の場合と同様、延長オプションについても契約上で定められた特定の日にキャッシュを発生させるわけではなく、また、場合によっては何かしらのペナルティが発生する可能性があるため、契約上のCF特性テストをパスできない可能性があります。

 ただし、次の両方に該当する場合にのみ、元本及び元本残高に対する利息の支払のみである契約上のキャッシュ・フローとなります(IFRS9.B4.1.11)。

(a) 当該条項が次のいずれかの保護の目的以外には、将来事象を条件としていない。
(i) 発行者の信用状態の悪化(例えば、債務不履行、信用格付けの低下又は融資契約違反)や発行者に対する支配の変動から、保有者を保護すること
(ii) 関連する税制又は法律の変更から、保有者又は発行者を保護すること
(b) 延長オプションの条件により、延長した期間中の契約上のキャッシュ・フローが、元本及び元本残高に対する利息の支払のみとなる。

 

(F) 変動金利の場合


 元本残高に関連する貨幣の時間価値及び信用リスクへの対価(当初認識時にのみ決定されるため、固定されている場合がある)となる変動金利である場合には、契約上のCF特性テストをパスできると考えられます。ただし、信用リスク補完等といったものに連動しなかったり、それ以上のキャッシュが発生したりする場合には契約上のCF特性テストはパスできないと考えられます。

 

6−2.元本及び元本残高に対する利息の支払のみである契約上のキャッシュ・フローの例

 IFRS第9号付録では、以下のように、契約上の特性テストの適用例を紹介しています(IFRS9.B4.1.13、B4.1.14)。

 

(i) レバレッジのないインフレ連動債(inflation-linked bond)


 商品Aは、一定の満期日を有する債券である。元本及び元本残高に対する利息の支払は、当該商品が発行された通貨のインフレ指数に連動している。この物価連動にはレバレッジがかかっておらず、元本は保証されている。

 

⇒契約上のキャッシュ・フローは、元本及び元本残高に対する利息の支払のみである。

 インフレ連動は、元本及び元本残高に対する利息の支払を、レバレッジのないインフレ指数に連動させることにより、貨幣の時間価値が現在の水準に更改されることになります。言い換えれば、この商品に係る金利は、「実質」金利を反映しているだけです。したがって、利息の金額は元本残高に対する貨幣の時間価値の対価といえます。

 しかし、利息の支払が債務者の業績(例えば、債務者の純利益)や株価指数といったその他の変数に連動する場合には、約定利息の支払に、市場金利と整合しない変動性が発生するため、その利息の支払は元本残高に関連する貨幣の時間価値及び信用リスクへの対価ではなくなります。このため、契約上の特性テストはパスできません。

 

(ii) 借手が更改日ごとに金利を選択できる場合


 商品Bは、一定の満期日を有する変動金利商品であり、借手が市場金利を選択することを継続的に認めている。例えば、金利更改日ごとに、借手は3か月の期間について3か月物LIBORを支払うか、1か月の期間について1か月物LIBORを支払うかを選択できる。

 

⇒契約上のキャッシュ・フローは、元本及び元本残高に対する利息の支払のみである。

 この契約上のキャッシュ・フローは、金融商品の残存期間にわたり支払われる利息が金融商品に関する貨幣の時間価値及び信用リスクへの対価を反映したものである限り、元本及び元本残高に対する利息の支払のみといえます。金融商品の残存期間中にLIBOR金利が更改されること自体は、契約上の特性テストには影響しません。

 しかし、借手が1か月物LIBORを3か月間支払うことを選択でき、1か月物LIBORの更改が毎月でない場合は、契約上のキャッシュ・フローは元本及び利息の支払にはなりません。この場合、利息は貨幣の時間価値及び信用リスクへの対価を反映したものにはならないからです。貸手の公表する1か月物変動金利と3か月物変動金利とを借手が選択できる場合も、同じ分析が当てはまります。

 また、契約金利が金融商品の残存期間を超える期間に基づいている場合には、その契約上のキャッシュ・フローは元本及び元本残高に対する利息の支払ではありません。例えば、金利が定期的に更改されても常に5年満期を反映した変動金利を支払う期間5年の変動利付債は、各期の支払利息が、その金融商品の期間に関係ないものとなっているため、元本及び元本残高に対する利息の支払いとは言えません。

 

(iii) 金利キャップが定められている場合


 商品Cは、一定の満期日を有する債券であり、変動型の市場金利を支払う。当該変動金利には上限が定められている。

 

⇒契約上のキャッシュ・フローは、元本及び元本残高に対する利息の支払のみである。

 固定金利の金融商品も変動金利の金融商品も、契約上のキャッシュ・フローは、利息が金融商品の期間中の当該金融商品に関連した貨幣の時間価値及び信用リスクへの対価を反映している限り、元本残高に対する利息の支払となります。

 したがって、固定金利の金融商品と変動金利の金融商品を組み合せた金融商品(例えば、上限金利のある債券)は、キャッシュ・フローが元本及び元本残高に対する利息の支払のみとなる可能性があります。そうした特徴は、変動金利に上限を設けることによりキャッシュ・フローの変動性を増加させたりする場合があります。

 

(iv) フル・リコース・ローンの場合(full recourse loan)


 商品Dは、フル・リコース・ローンで担保保全されている。

 

⇒フル・リコース・ローンは分析に影響しない。

 フル・リコース・ローンが担保で保全されていること自体は、契約上のキャッシュ・フローが元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるかどうかの分析に影響しない。

 

(v) 転換社債(convertible bond)


 商品Eは、発行者の資本性金融商品に転換可能な債券である。例えば、転換社債である。

 

⇒契約上のキャッシュ・フローは、元本及び元本残高に対する利息の支払のみではない。

 保有者は転換社債全体を分析することになります。この場合、リターンも発行者の資本の価値に連動しており、社債金利が貨幣の時間価値及び信用リスクへの対価のみを反映していないため、この契約上のキャッシュ・フローは、元本及び元本残高に対する利息の支払ではないと考えられます。

 

(vi) マーケットと逆相関の変動金利付債券(inverse floating interest rate)


 商品Fは、逆変動金利を支払うローンである(すなわち、当該金利は市場金利と逆相関の関係にある)。

 

⇒契約上のキャッシュ・フローは、元本及び元本残高に対する利息の支払のみではない。

 利息の金額は、元本残高に対する貨幣の時間価値の対価とはならないため、契約上の特性テストはパスできません。

 

(vii) 永久金融商品(prepetual instruments)


 商品Gは、永久金融商品であるが、発行者はどの時点でも当該金融商品を償還し、保有者に額面金額と未払利息の合計を支払うことができる。商品Gは市場金利を支払うが、支払直後に発行者が支払能力を維持できるものでなければ、利息の支払ができない。利息の繰延べは、追加的な利息を生じさせない。

 

⇒契約上のキャッシュ・フローは、元本及び元本残高に対する利息の支払のみではない。

 設例のように、発行者は利息の支払を繰延べるよう求められる場合があり、こうした繰延べられた利息の金額に係る追加的な利息は生じない場合は、結果として、利息の金額は、元本残高に対する貨幣の時間価値の対価ではなくなります。もし、繰り延べられた金額に係る利息が発生する場合には、契約上のキャッシュ・フローは、元本及び元本残高に対する利息の支払であるものとなります。

 なお、商品Gが永久的であること自体は、分析上特に影響はありません。また、永久債券に償還オプションが付与されていたとしても、期限前償還オプションが前項の適格要件を満たしていれば、契約上の特性テストでは特に問題になりません。たとえ、当該商品の早期終了に対する保有者への補償金額が償還可能金額に含まれている場合であっても、契約上のキャッシュ・フローは、元本及び元本残高に対する利息の支払である可能性があります。

 

6−3.ルック・スルーの必要性

 分類しようとする金融資産の契約上のキャッシュ・フローが元本及び元本残高に対する利息の支払であるかどうかを判断するにあたり、特定の原資産又はキャッシュ・フローを評価(ルック・スルー)することが重要です。例えば、以下のようなケースで検討が必要になります。

 

(A) ノン・リコースの場合


 ノン・リコースの金融商品の場合、債権者の請求権が債務者の特定の資産又は特定の資産からのキャッシュ・フローに限定されていることがしばしばあります。金融資産がノン・リコースであること自体は、契約上のCF特性テストに影響を与えることはありませんが、そのような状況では、分類しようとする金融資産の契約上のキャッシュ・フローが元本及び元本残高に対する利息の支払であるかどうかを判断するにあたり、特定の原資産又はキャッシュ・フローを評価(ルック・スルー)することが求められます。条件によっては、元本及び利息を表す支払と整合しない方法で他のキャッシュ・フローが生じたり、キャッシュ・フローが制限されたりする場合があり、契約上のCF特性テストをパスできないケースがあるからです。なお、原資産が金融資産であるか非金融資産であるかは、それ自体ではこの評価に影響しません(IFRS9.B4.1.17)。

 

(B) 契約上のキャッシュ・フローの特性が真正ではない場合


 契約上のキャッシュ・フローの特性が真正(genuine)でない場合には、金融資産の分類に影響しません。契約条件が極めて稀で異常な、発生する可能性が非常に低い事象が発生した場合のみ当該金融商品の契約上のキャッシュ・フローに影響するといった場合、真正とはいえません(IFRS9.B4.1.18)。

 

(C) 他の債権者との従属関係(ranked relative)


 ほとんどすべての貸出取引において、債権者の商品は、債務者の他の債権者の商品との相対関係で順位付けられます。他の商品に劣後する商品であっても、債務者の不払が契約違反に当たり、債務者の倒産の場合でも保有者が元本及び元本残高に対する利息の未払金額に対する契約上の権利を有する場合には、元本及び元本残高に対する利息の支払となる契約上のキャッシュ・フローを有しているかもしれませんので、他の債権者との従属関係の有無は、契約上のCF特性テストに影響を与えません。例えば、企業が、通常の買掛金と担保付借入を保有していた場合、もし当該企業が倒産すれば、担保付債権者は当該担保の実行が行われ、売掛債権の保有者は劣後することになります。それでも、未払の元本及びその他の支払い義務のある金額に対する契約上の権利に影響しなければ、契約上のCF特性テストに影響することはありません(IFRS9.B4.1.19)。

 

6−4.契約上リンクしている商品(証券化商品)の検討

 証券化取引の場合、投資家のリスク許容度に応じて階層化させた金融商品を発行するケースがあります。つまり、信用リスクの階層ごとに金融資産の所有者への支払に優先順位を付けることがあります(こういった階層を「トランシェ」(tranchs)といいます)。各トランシェには、発行者の生み出すキャッシュ・フローが当該トランシェに配分される順序を特定する劣後順位が付けられています。トランシェの存在は、証券化商品の特徴で、それぞれのリスクテイクの度合いが異なる投資家を集めるための工夫として開発されているものです。

 このような場合には、あるトランシェの保有者は、発行者がそのトランシェよりも高い順位のトランシェへの支払を行うのに十分なキャッシュ・フローを生み出す場合にのみ、元本及び元本残高に対する利息の支払を受ける権利を有します(IFRS9.B4.1.20)。すなわち、トランシェの契約上のキャッシュ・フローは、上位トランシェへのキャッシュ・フロー状況に左右されることになります。

 

 このため、証券化取引では、次のすべての事項に該当する場合のみ、あるトランシェが元本及び元本残高に対する利息の支払であるキャッシュ・フロー特性を有すると判断し、償却原価で測定することで、証券化商品の特殊性を考慮しています(IFRS9.B4.1.21)。当該判断には、(A)トランシェそのものの特性、(B)原金融商品プールの特性の2つの視点から要件が設定されています。なお、当該認識時に、保有者が次の条件を満たさない場合又は次の条件を判断できない場合には、当該トランシェは公正価値で測定します(IFRS9.B4.1.26)。

 

(A) トランシェそのものの検討


 原金融商品プールへのルック・スルーをする前に、トランシェの契約条件が、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローを生じさせるものでなければなりません(例えば、金利がコモディティに連動していないこと)(IFRS9.B4.1.21(a))。

 また、当該トランシェに内在する原金融商品プールの信用リスクへのエクスポージャーが、原金融商品プールの信用リスクへのエクスポージャーと等しいか又はそれ以下である必要があります。例えば、原商品プールが貸倒により50%減価した場合、どのような状況においても当該トランシェの減価が50%以下となる必要があります(IFRS9.B4.1.21(c))。

 

(B) 原金融商品プールの検討


 原金融商品プールは、パススルーではなく(すなわち、何段階も証券化が繰り返されている場合の途中の証券化商品ではないということ)、キャッシュ・フローを生み出しているプールのことであり、それを特定できるまでルック・スルーしなければなりません(IFRS9.B4.1.22)。

 原金融商品プールは、元本及び元本残高に対する利息の支払のみである契約上のキャッシュ・フローを有する商品が1つ以上含まれている必要があります(IFRS9.B4.1.23)。

 なお、原金融商品プールは、以下のような商品が含まれている場合もありますが、これが契約上のCF特性テストを妨げることはありません(IFRS9.B4.1.24)。

  • キャッシュ・フローの変動性を減少させあるもの(ただし、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるCF特性は維持)。例えば、金利キャップ、金利フロア、又は原金融商品プールの一部又は全部に係る信用リスクを減少させる契約がある。
  • (i)金利が固定型か変動型かといった相違、(ii)発行通貨の相違(当該通貨のインフレーションを含む)、(iii)キャッシュ・フローの時期の相違、という3点のみの差異に対処するために、トランシェのキャッシュ・フローと原商品プールのキャッシュ・フローとを調整するもの

  

 なお、原商品プールが当初認識後に上記の条件を満たさなくなるように変化する可能性がある場合には、当該トランシェは償却原価測定のための要件を満たさないと考えられるため、公正価値で測定します(IFRS9.B4.1.26)。

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