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金融商品の認識の中止の会計処理(1/2)

(平成23年5月16日現在)

10−1.認識の中止の要件を満たす譲渡の場合の会計処理

 認識の中止に関して、結論として、どのように会計処理(仕訳)されるのか確認していきます。

 

 認識の中止の要件を満たす譲渡の場合の会計処理は、次の両者の差額として、譲渡損益を認識することになります(IFRS9.3.2.12)。

  • 帳簿価額(認識の中止の日現在で測定)
  • 受け取った対価(獲得した新たな資産と引き受けた新たな負債との差額を含む。)

(A) 最も簡単な売買の設例


 例えば、帳簿価額100円の金融資産を、現金120円(受取った対価)で売却した場合、売却益20円を認識することになります。

 

[仕訳]

(借方) 現金 120 (貸方) 金融資産 100
売却益   20

 

 また、金融資産の売買取引の中で、例えば、先述した「証券化」取引といった場合、譲渡人が譲受人に代理して資金回収業務を引き受けるようなケースがあります。企業が報酬を得てその金融資産の元利金徴収(サービス業務)を行う権利を保持している場合には、そのサービス契約に関して、次のように会計処理されます(IFRS9.3.10)。 

  • 報酬 > サービス業務の遂行における適切な補償 ⇒ 下記(B)の「より大きな資産の一部」として帳簿価額を配分
  • 報酬 < サービス業務の遂行における適切な補償 ⇒ 「サービス負債」として負債計上(公正価値測定) 

 例えば、サービス業務が負債として公正価値10円で認められる場合には次のような仕訳となります。

 

[サービス負債を認識できる場合]

(借方) 現金 120 (貸方) 金融資産 100
サービス負債 10
売却益 10

 

 規定されたサービス報酬がない場合や、受け取るべき報酬がサービス業務の遂行に適切に補償するものでないと見込まれる場合には、サービス業務に対する負債が公正価値で認識されます(IFRS9.B3.2.10)。例えば、サービス業務の報酬の公正価値が10円であるにもかかわらず、その対価を受け取っていない場合には、その10円が負債として計上されることになります。

 サービス資産になる場合は、下記(B)を参照してください。

 

(B) より大きな資産の一部分としての売買の場合


 金融資産の中止の認識が行われる対象が、より大きな資産の一部分であり(例えば、負債性商品の一部分である金利キャッシュ・フローを企業が譲渡する場合)、その譲渡された部分が全体として認識の中止の要件を満たす場合には、譲渡対象となる金融資産部分の帳簿価額がいくらになるかが問題となります。

 この場合、そのより大きな金融資産の従前の帳簿価額を、認識を継続している部分と認識の中止を行った部分とに、譲渡日現在の公正価値の比率に基づいて配分して算定することになります。

 また、この目的上、譲渡資産が一部分である場合には保持しているサービス資産は認識を継続している部分として扱わなければならず、つまり、譲渡日現在の公正価値の比率で配分された帳簿価額を継続するということになるのです(IFRS9.3.2.13)。

 

  • 認識の中止の対象となる金融資産の帳簿価額 ⇒ 認識を継続している部分と認識を中止した部分の公正価値比率
  • サービス資産 ⇒ 新たな資産ではなく、認識を継続している部分として帳簿価額を継続

  

例えば、クーポン付社債を保有しており、クーポン部分のみを8円で売却したとします。クーポン付社債は帳簿価額90円で、公正価値は100円(うち、クーポン部分の公正価値8円、元本部分の公正価値92円)とします。サービス業務はサービス資産として公正価値2円と見積もります。クーポンと元本の回収業務はそのまま継続して譲渡人が行うものとします。

 この場合、認識の中止をするクーポン部分と認識を継続する元本部分の簿価を算出する必要がありますが、これは譲渡日の公正価値(8円、92円、2円)で按分計算して求めます。すると、それぞれの帳簿価額は、7.06円、81.18円、1.76円となります。サービス業務については、認識を継続するものとしますので、新たな資産として公正価値で認識するのではなく、そのまま認識を継続することになります。

 

[より大きな資産の一部として認識の中止が行われる場合]

(借方) 現金 8.00 (貸方) 金融資産 7.06
売却益 0.94

※元本部分81.18円、サービス資産1.76円の合計82.94円が認識を継続する部分として資産計上が継続されている。 

 

 さて、上記の例ではそれぞれの公正価値が提供されていますが、実際にはそれぞれの公正価値を自ら算定しなければならないときがあります。通常、譲渡する部分(認識を中止する部分)は取引価格が公正価値となり、認識を継続する部分の公正価値の算定が問題となります。

 IFRSでは、認識を継続する部分に類似した部分を売却した経験を企業が有している場合や、そのような部分について他の市場取引が存在する場合には、実際の取引の最近の価格がその公正価値の最善の見積りを提供すると規定しています。また、認識を継続する部分の公正価値の根拠となる公表価格や最近の市場取引がない場合には、その公正価値の最善の見積りは、より大きな金融資産全体の公正価値と、認識を中止する部分について譲受人から受け取った対価との差額によって求めるように規定しています(IFRS9.3.2.14)。

 

(C) サービス業務の報酬として一部のキャッシュ・フローを保留する場合


 譲渡人は、譲渡した金融資産に対する利息支払の一部分に対する権利を、それらの資産のサービス業務の報酬として留保する場合があります。この場合、サービス業務の契約が解除又は譲渡した時点でどのように取り扱うかで処理が異なります。

 

  • 利息支払のうち、譲渡人が放棄していない部分は「金利のみ」のストリップ債権
  • 利息支払のうち、サービス契約の終了又は移転の際に譲渡人が放棄するであろう部分は、サービス資産又はサービス負債に配分

 

 例えば、クーポン付社債を保有しており、クーポンは固定金利で5%とします。クーポン付社債は帳簿価額90円で、公正価値は100円(うち、クーポン部分の公正価値8円、元本部分の公正価値92円)とします。なお、サービス業務の公正価値4円とします。このクーポン付社債を公正価値で売却したとしましょう。

 最初に、譲渡人が金利の1%分を受取る権利と回収サービス業務はそのまま継続して行うものとします。金利1%を受取る権利の公正価値は1.6円とします。また、譲渡人はサービス業務を解除又は譲渡したとしても金利1%を受取る権利は放棄せず、そのまま金利1%部分を取得し続けるとします。

 この場合、受取対価は金利4%部分の公正価値6.4円と元本の公正価値92円の合計98.4円です。資産計上していたクーポン付社債は、認識を中止する部分(金利4%+元本)と認識を継続する部分(金利1%部分)に帳簿価額が配分されます。配分額はそれぞれの公正価値で配分するため、認識を中止する部分は84.96円、認識を継続する部分は1.44円となります。

 サービス業務については、その対価を受け取っていないため、公正価値4円が新たな負債として認識されることになります。よって、仕訳は以下のとおりとなります。

 

[サービス契約が終了又は移転されても金利を受取る権利が放棄されない場合]

(借方) 現金 98.40 (貸方) 金融資産(認識の中止分) 90.00
金融資産(ストリップ債権) 1.44 サービス負債 4.00
売却益 5.84

 

 

 次のケースとして、サービス契約を終了又は移転した場合に、金利1%の公正価値1.6円のうち公正価値0.6円部分のみ残して放棄するとします。この場合、放棄される公正価値1.0円分はサービス負債に配分されることになります。このため、金利ストリップ債権の帳簿価額は0.54円となるため、0.9円がサービス負債に配分されます。仕訳例は以下のとおりです。

 

[サービス契約が終了又は移転されても金利を受取る権利が放棄される場合場合]

(借方) 現金 98.40 (貸方) 金融資産(認識の中止分) 90.00
金融資産(ストリップ債権) 0.54 サービス負債 3.10
売却益 5.84

 

10−2.認識の中止の要件を満たさない譲渡

 企業が譲渡資産の所有に係るリスクと経済価値のほとんどすべてを保持しているために、譲渡が認識の中止とならない場合には、企業は、その譲渡資産全体の認識を継続し、受け取った対価について金融負債を認識しなければなりません。その後の期間においては、企業は譲渡資産に関する収益と金融負債に発生する費用をすべて認識します(IFRS9.3.2.15)。

 

[所有に係るリスクと経済価値のほとんどすべてを保持している場合]

(借方) 現金 ××× (貸方) 金融負債(借入金等) ×××

 

 上記のとおり、受取った対価(この場合、現金)が財政状態計算書に計上される一方、譲渡資産は認識が中止されないため、資金調達を借入金等として会計処理することになります。

 

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