株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

IAS第11号「工事契約」(2/2)

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(平成23年1月31日現在)

7.工事契約収益及び費用の認識

工事契約の結果が信頼性をもって見積ることができる場合、その工事契約に関連した収益及び原価は、その請負業務の報告期間の末日現在の進捗度に応じて、収益及び費用として認識しなければなりません。(IAS11.22)

 

<信頼をもって見積もることができる場合>

 ■固定契約の場合

固定価格の契約の場合には、工事契約の結果は、次のすべての条件が満たされるときに、信頼性をもって見積ることができます。(IAS11.23)

 

 ① 工事契約収益の合計額が、信頼性をもって測定できる。

 ② 契約に関連した経済的便益がその企業に流入する可能性が高い。

 ③ 契約の完了に要する工事契約原価と報告期間の末日現在の契約の進捗度の両方が信頼性をもって測定できる。

 ④ 契約に帰属させることができる工事契約原価が、実際に発生した工事契約原価を従前の見積りと比較できるように、明確に識別でき、かつ、信頼性をもって測定できる。

 

■コスト・プラス契約の場合

コスト・プラス契約の場合には、工事契約の結果は、次のすべての条件が満たされるときに、信頼性をもって見積ることができます。(IAS11.24)

 ① 契約に関連した経済的便益がその企業に流入する可能性が高い。

 ② 契約に帰属させることができる工事契約原価が、個別に支払われるか否かにかかわらず、明確に識別でき、かつ、信頼性をもって測定できる。

 

なお、企業は通常、次の事項を定めた契約を締結した後に、信頼性のある見積りができると考えられます。(IAS11.29)

・建設される資産に関する当事者の執行可能な権利

・交換される対価

・決済の方法及び条件

通常、企業が有効な内部的財務予算や報告システムを有することも必要です。

また、企業に契約が進行するに従い、工事契約収益と原価の見積りを見直し、必要に応じ修正することもありますが、このような修正が必要になるからといって、 必ずしもその契約の結果が信頼性をもって見積ることができないということではありません。

 

<進捗度の見積り>

契約の進捗度は、さまざまな方法で決定されます。企業は、行った工事について信頼性をもって測定できる方法を用います。契約の性質により、その方法には次のものが例として挙げられます。(IAS11.30)

・実施した工事に対してその時点までに発生した工事契約原価が、契約の見禎工事契約総原価に占める割合

・実施した工事の調査

・契約に基づく工事の物理的な完成割合

 

進捗度が累計発生原価を参照して決定されるときは、実施した工事を反映する工事契約原価のみが累計発生原価に含まれます。そのため、例えば下記のような工事契約原価は除外されます。(IAS11.31)

・契約に基づく工事の現場に配送されるか、又は契約に使用するために取り置かれた八契約の履行に際して据付け、使用又は適用されていない材料の原価で、その材料がその契約のために特別に制作されたものでないもののような、将来の詰負業務に関連する 工事契約原価

・下請契約で定められた工事の実施に先立ち、下請業者に対して行われた支払

 

<工事契約の成果が信頼性をもって見積もることができない場合>

工事契約の成果が信頼性をもって見積ることができない場合には、収益は、発生した工事契約原価のうち回収される可能性が高い範囲でのみ認識し、かつ、工事契約原価は、発生した期間に費用として認識しなければなりません。(IAS11.32)

 

工事契約収益は、発生した原価が回収可能であると予想される部分についてのみ認識されるため、利益は認識されません。(IAS11.33)

また、発生した工事契約原価が回収される可能性が高いとはいえず、直ちに費用として認識する必要がある状況の例としては次のものが挙げられます。(IAS11.34)

・完全な執行力がない、すなわち、その有効性に重大な疑義がある契約

・契約の完了が、係争中の訴訟や未決定の立法措置の結果に左右される契約

・収用又は接収されそうな資産に関する契約

・発注者が義務を履行することができない契約

・施工者が契約を完了できないか又は契約による義務を履行できない契約

 

なお、契約の結果を信頼性をもって見積ることを妨げていた不確実性が存在しなくなった場合には、工事契約に係る収益及び費用は、上記認識規準に従い、その請負業務の報告期間の末日現在の進捗度に応じて、収益及び費用として認識しなければなりません。(IAS11.35)

 

<認識に関するその他の論点>

将来の請負業務に関連して施工者において工事契約原価が発生する場合があります。このような工事契約原価は、それが回収される可能性が高ければ、未成工事支出金等の資産として認識されます。(IAS11.27)

 

工事契約の結果は、契約に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高い場合にのみ、信頼性をもって見積ることができます。しかし、すでに工事契約収益に含まれ、純損益に認識されている金額の回収可能性に関する不確実性が生じた場合には、回収不能額又は回収可能性が高いといえなくなった額は、工事契約収益額の修正ではなく費用として認識されます。(IAS11.28)

8.予想損失の認識

工事契約総原価が工事契約総収益を超過する可能性が高いとき、予想される損失は直ちに費用として認識しなければなりません。(IAS11.36)

 

このような損失の額は、次の事項に関わりなく決定されます。(IAS11.37)

・契約に基づき工事がすでに着手されたか否か

・請負業務の進捗度・他の契約から生じると見込まれる利益の額

9.見積りの変更

工事進行基準は、会計期間ごとに、工事契約収益及び原価の最新の見積りに対して累積ベースで適用されます。したがって、工事契約収益又は原価の見積りの変更による影響や、契約の結果の見積りの変更による影響は、会計上の見積りの変更としてIAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に基づき会計処理されます。変更された見積りは、変更が行われた会計期間及びその後の会計期間の純損益に認識される収益及び費用の額の決定に用いられます。(IAS11.38)

10.表示および開示

企業は、次の事項を開示しなければなりません。(IAS11.39)

 

 ① その会計期間の収益として認識された工事契約収益の額

 ② その会計期間に認識した工事契約収益を算定するために用いた方法

 ③ 進行中の工事契約の進捗度を決定するために用いられた方法

 

さらに、企業は、報告期間の末日時点で進行中の工事契約について次の各事項を開示しなければなりません。(IAS11.40)

 

 ④ 発生した原価及び認識した利益(認識した損失を控除)の現在までの総額

 ⑤ 前受金の額

 ⑥ 保留金の額

 

なお、補償の原価、クレーム、違約金又は潜在的損失といった項目から生じた偶発負債及び偶発資産がある場合、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に従って、開示しなければなりません。(IAS11.45)

 

<債権及び債務の表示方法>

契約に基づく工事の発注者に対する債権または債務は、総額で資産または負債として表示しなければなりません。(IAS11.42)

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