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IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」(2/2)

(平成23年1月31日現在)

6.引当金の測定

引当金として認識される金額は、報告期間の末日における現在の債務を決済するために要する支出の最善の見積りでなければなりません。(IAS37.36)

 

現在の債務を決済するのに要する支出の最善の見積りとは、報告期間の末日現在で債務を決済するため、又は同日現在で債務を第三者に移転するために企業が合理的に支払う金額となります。(IAS37.37)

また、見積もりは、同種取引の経験や、ある場合には独立した専門家の報告によって補足された企業の経営者の判断により決定されます。考慮される証拠には、報告期間後の事象により提供された追加的証拠も含みます。(IAS37.38)

 

引当金として認識されるべき金額に係る不確実性は、状況に応じてさまざまな方法で取り扱われます。例えば、測定対象の引当金が母集団の大きい項目に関係している場合、期待値に基づき見積もられます。(IAS37.39)

 

単一の債務が測定される場合は、見積られた個々の結果のうち最も起こりそうなものが負債に対する最善の見積りとなります。

しかし、そのような場合にも、企業は他の起こり得る結果を考慮しなければなりません。他の起こり得る結果が、最も起こりやすい結果よりも高いか又は低い場合には最善の見積りは、より高い金額又は低い金額になる場合があります。(IAS37.40)

 

引当金は税引前の金額で測定されます。(IAS37.41)

 

<リスクと不確実性>

多くの事象と状況に必然的に関連するリスクと不確実性は、引当金の最善の見積りに到達する過程で考慮しなければならなりません。(IAS37.42)

不確実な状況にある場合、判断を行うにあたって、収益又は資産は過大計上しないように、費用又は負債は過小計上しないように注意が必要です。(IAS37.43)

 

<現在価値>

貨幣の時間的価値の影響が重要な場合には、引当金額は債務の決済に必要と見込まれる支出の現在価値としなければなりません。(IAS37.45)

 

割引率は、貨幣の時間的価値の現在の市場評価とその負債に固有のリスクを反映した税引前の割引率でなければなりません。割引率は、将来のキャッシュ・フローの見積りの中で修正されているリスクを反映してはなりません。(IAS37.47)

 

<将来の事象>

債務の決済に必要となる金額に影響を与える将来の事象は、それらが起こるであろうという十分な客観的証拠がある場合には、引当金の金額に反映しなければなりません。(IAS37.48)

 

例えば、企業は、用地の使用期間の終了時点における浄化費用は、将来の技術の変化によって減少すると考えている場合、認識される金額は、浄化作業実施時における利用可能な技術に関するすべての入手可能な証拠を考慮したうえでの技術的に適格と認められた客観的な観察者の合理的な予想を反映します。(IAS37.49)

 

制定される可能性がある新しい法律の影響は、法律がほぼ確実に制定されるという十分な客観的証拠が存在するときには、現存の債務の測定にあたって考慮しなければなりません。しかし、実際に発生する状況は多様であり、あらゆる場合に十分に客観的な証拠を備えた単一の事象を特定することはできなく、法律が要求するものは何か、及び、法律が制定され、適当な時期に施行されることがほぼ確実かの双方についての証拠が必要となります。

したがって、多くの場合、新しい法律が制定されるまで、十分に客観的な証拠は存在しないといえます。(IAS37.50)

 

<資産の予想される処分>

資産の予想される処分による利得は、引当金の測定において考慮してはいけません。(IAS37.51)

 

資産の予想される処分による利得は、たとえ予想される処分が引当金を発生させた事象に密接に関係している場合でも、引当金の測定において考慮が禁止されています。その代わりに企業は資産に関連した基準が特定している時点で、資産の予想される処分による利得を認識します。(IAS37.52)

7.補填

引当金を決済するのに必要な支出の一部又は全部を他人から補填されることが予想される場合に、企業が債務を決済すれば補填を受けられることがほぼ確実な場合に限って、補填を認識しなければなりません。(IAS37.53)

例えば、保険契約や損賠賠償条項、製造業者の保証などが挙げられます。(IAS37.55)

 

当該補填は、別個の資産として処理し、補填として認識される金額は、引当金の金額を超えてはなりません。(IAS37.53)

 

また、包括利益計算書においては、引当金に関する費用は、認識された補填と相殺して純額で表示することも許容されています。(IAS37.54)

8.引当金の変動

引当金は、各報告期間の末日現在で検討し、新たな最善の見積りを反映するように修正しなければなりません。経済的価値をもつ資源の流出が債務の決済のために必要となる可能性がもはや高くない場合には、引当金を振り戻さなければなりません。(IAS37.59)

 

なお、割引計算が行われた場合には、引当金の計上金額は時の経過を反映して毎期増加するが、この増加は、借入費用として認識されます。(IAS37.60)

9.引当金の使用

引当金は、最初に引当金の対象として認識された支出に対してのみ使用しなければなりません。(IAS37.61)

当初に他の目的のために認識されていた引当金に対して支出を充当することは、2つの異なった事象の効果を隠すことになってしまうからです。(IAS37.62)

10.リストラクチャリング引当金

リストラクチャリングの定義に含まれる事例には、下記のようなものがあります。(IAS37.70)

 

 ・一事業部門の売却又は撤退

 ・国若しくは地域における事業所の閉鎖、又はある国若しくは地域から他の国若しくは地域への事業活動の移転

 ・経営管理構造の変更、例えば管理階層の削減

 ・企業の事業逆営の性格と徹点に重要な影響を及ぼす根本的な再編成

 

リストラクチャリング費用に対する引当金は、引当金に対する一般的認識規準を満たしたときにのみ認識されます。(IAS37.71)

 

<推定的債務の発生要件>

リストラクチャリングによる推定的債務は、次の場合にのみ発生しているといえます。(IAS37.72)

 

 @ 企業は、リストラクチャリングについて少なくとも次の事項を明確にした詳細な公式計画を有していること 

 ・関係する事業又は事業の一部

 ・影響を受ける主たる事業所

 ・雇用契約終結により補償されることとなる従業員の勤務地、職種及びその概数

 ・負担する支出

 ・計画が実施される時期

 

 A リストラクチャリング計画の実施を開始することによって、又はリストラクチャリングの主要な特徴を、影響を受ける人々に公表することによって、企業がリストラクチャリングを実行するであろうという妥当な期待を、影響を受ける人々に惹起していること

 

例えば、企業がリストラクチャリング計画の実施を開始したという証拠は、工場の撤去又は資産の売却、あるいは計画の主要な特徴の公表によって得られます。リストラクチャリングの詳細な計画の公表は、その公表によって顧客、納入業者及び従業員(又はそれらの代表者)のような他の者に企業はリストラクチャリングを実行するであろうという妥当な期待を惹起するような方法で行われ、また十分に詳細(すなわち、計画の主要な特徴の記述)である場合にのみ、リストラクチャリングによる推定的債務を構成します。(IAS37.73)

 

<推定的債務の検討における様々なケース>

 ・リストラクチャリングによって影響を受ける人々に計画を伝達した時に、当該計画が推定的債務の発生に十分なものであるためには、リストラクチャリングの実施をなるべく早く開始するように、そして計画に対する重要な変更が起こり得ないような時間的枠組みの中でリストラクチャリングが完成するように計画される必要があります。リストラクチャリングを開始するまでに長い遅延が生じる、あるいはリストラクチャリングが不合理に長い期間にわたることが予想されるならば、企業が計画を変更する機会を持ち得るため、この計画について他の者が、企業が現時点でリストラクチャリングをコミットしているという妥当な期待を惹起しているとはいえないと考えられます。(IAS37.74)

 

・企業が報告期間の末日以前に次のことを行っていない限り、報告期間の末日前に行われた経営者又は会社機関のリストラクチャリングの決定は、報告期間の末日における推定的債務の発生にはなりません。(IAS37.75)

 @リストラクチャリング計画の実施を開始している。

 Aリストラクチャリングによって影響を受ける人々に、企業はリストラクチャジングを実行するだろうという妥当な期待を惹起するために十分に明確な方法でリストラクチャリング計画の主要な特徴を公表している。

 

なお、報告期間後になってからリストラクチャリング計画の実施を開始し、あるいは影響を受ける人々に計画の主要な特徴を公表する場合、もし、リストラクチャリングが重要で、これを開示しなかったことが財務諸表を基礎として利用者が行う経済的意思決定に影響を及ぼす可能性かおるならば、IAS第10号「後発事象」に基づいて開示を要求されます。

 

 ・単に経営者の決定のみでは推定的債務は発生しないが、他の過去の事象とこのような決定事項が一緒になって債務を生じさせることがあります。例えば、従業員代表との退職金支払について、あるいは購入者との事業の売却についての交渉は、もっぱら会社機関の承認を条件として妥結されていることがある。いったん承認が得られ、他者に伝達され、上記の推定的債務に関する条件が満たされるならば、企業はリストラクチャジングの推定的債務を負うことになります。(IAS37.76)

 

 ・国によっては、最終権限を経営者以外の利害関係者(例えば、従業員)の代表者を委員として含めた会社機関に委ねているか、あるいは会社機関の決定が行われる前にそのような代表者に通告することを必要とすることがあります。このような、会社機関の決定はこれらの代表者に対して伝達されるので、この決定は、リストラクチャリングの推定的債務を生じさせたこととなります。(IAS37.77)

 

<事業の売却のケース>

事業の売却は、企業がその売却をコミットするまで、すなわち拘束力ある売却契約が締結されるまで売却についての債務は発生しません。(IAS37.78)たとえ、企業が事業の売却を決定し、その決定を公表した場合でも、購入者が明らかになり、拘束力ある売却契約書が締結されるまで、売却について約束したとはいえません。拘束力のある売却契約ができるまでは、企業は意向を変更することが可能であり、許容される条件で購入者が見当たらない場合には、企業は他の行動をとらなければならないからです。

なお、事業の売却がリストラクチャリングの一部であるとみなされているときは、当該事業の資産は、IAS第36号に従って、その減損の有無について検討する必要があります。(IAS37.79)

 

<リストラクチャリング引当金に含むもの>

リストラクチャリング引当金は、リストラクチャリングから発生する直接支出のみを含むものでなければならず、それらの支出とは次の双方に該当するものです。(IAS37.80)

 @ リストラクチャリングに必然的に伴うものであり、

 A 企業の継続的活動には関連しないもの

 

なお、リストラクチャリング引当金には、次のようなコストは含みません。(IAS37.81)

・雇用を継続する従業員の再教育又は配置転換費用

・販売費用

・新しいシステム及び流通組織への投資

これらの支出は、将来の事業遂行に関するものであり、報告期間の末日におけるジストラクチャリングに対する負債ではありません。このような支出は、リストラクチャリングに関係なく発生したときと同じ基準で認識されます。

 

また、リストラクチャリングの日までの識別可能な将来の営業損失は、不利な契約に関連するものを除いて、引当金に含めてはいけません。(IAS37.82) さらにに、予想される資産の処分から生じる利得は、たとえ資産の売却がリストラクチャリングの一部だとみなされる場合でも、リストラクチャリング引当金の測定において考慮してはいけません。(IAS37.82)

11.認識及び測定規準の適用におけるその他留意事項

<将来の営業損失>

将来の営業損失に対しては、引当金を認識してはなりません。(IAS37.63)

 

将来の営業損失は、負債についての定義と引当金に対する一般的な認識規準に適合しないためです。(IAS37.64)

将来の営業損失が見込まれるということは、ある営業用資産が減損しているかもしれないという徴候であるため、企業は、IAS第36号「資産の減損」に基づいて、これら資産の減損について検討しなければなりません。(IAS37.65)

 

<不利な契約>

もし、企業が不利な契約を有しているならば、当該契約による現在の債務を引当金として測定し、認識しなければなりません。(IAS37.66)

 

不利な契約とは、契約による債務を履行するための不可避的な費用が、契約上の経済的便益の受取見込額を超過している契約をいい、契約による不可避的な費用は契約から解放されるための最小の純費用(契約履行の費用と契約不履行により発生する補償又は違約金のいずれか低い方)を反映します。(IAS37.68)

 

なお、不利な契約に対する別個の引当金を設定する前に、企業は、当該契約専用の資産に生じた減損を認識しなければなりません(IAS 第36号参照)。(IAS37.69)

12.開示

<引当金勘定に関する開示事項>

引当金の種類ごとに次の事項を開示しなければなりません。(IAS37.84)

 

 @ 期首と期末における引当金の計上金額

 A 既存の引当金の増加も含む、期中の引当金増加額

 B 期中に使用された金額(発生し、引当金と相殺された額)

 C 期中に未使用で取り崩された金額

 D 現在価値で計上されている引当金につき、時間の経過によって発生した期中増加額及び割引率の変更による影響額

 

なお、比較情報は要求されません。

 

<引当金の内容に関する開示事項>

引当金の種類ごとに、次の事項を開示しなければなりません。(IAS37.85)

 

 @ 債務の内容についての簡潔な説明及び結果として生じる経済的便益の流出が予測される時期

 A これらの流出の金額又は時期についての不確実性の内容。

適切な情報を提供するために、 必要な場合には、将来の事象に関連する重大な仮定について開示しなければなりません。

 B 予想されている補填金額、予想されている補填について認識されている資産の金額

 

<偶発負債に関する開示事項>

決済における流出の可能性がほとんどない場合を除き、企業は報告期間の末日における偶発負債の種類ごとに偶発負債の内容についての簡潔な説明を開示しなければなりません。

 

そして、実行可能な場合には、次の事項も開示しなければなりません。(IAS37.86)

 @ 最善の見積りにより測定された、偶発負債の財務上の影響の見積額

 A 流出の金額又は時期に関する不確実性の内容

 B 補填の可能性

 

<引当金と偶発負債の開示における留意事項>

どの引当金又はどの偶発負債が同一種類のものとして合算できるのかを決定するにあたっては、上記の開示事項を単一の記述で開示できる程度に、合算される項目の性質が十分に類似しているか否かを考慮する必要があります。(IAS37.87)

 

引当金と偶発負債が同じ状況の組合せから発生している場合には、開示事項について引当金と偶発負債の関連を示すような方法で行う必要があります。(IAS37.88)

 

<偶発資産に関する開示事項>

経済的便益の流入の可能性が高い場合、企業は報告期間の末日における偶発資産の簡潔な内容を開示し、実行可能な場合には、引当金についての原則を用いて測定された、偶発資産の財務上の影響の見積額を開示しなければなりません。(IAS37.89)

偶発資産の開示は、収益発生の可能性の徴候として誤解されるのを避けることが重要です。(IAS37.90)

 

なお、開示することが実行不可能であるとの理由で、上記偶発負債と偶発資産で要求されている情報が開示されていない場合には、その旨を記述しなければなりません。(IAS37.91)

 

<係争案件の場合の開示事項>

極めて稀ではあるが、上記で要求されている情報の一部又は全部を開示することが、引当金、偶発負債あるいは偶発資産の対象となる事項について他の者との係争における、企業の立場を著しく不利にすると予測できる場合があります。このような場合には、企業はその情報を開示する必要はありません。しかし企業は、係争の一般的内容を、情報が開示されなかった事実及びその理由とともに開示しなければなりません。(IAS37.92)

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