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IAS第19号「従業員給付」(退職後給付 5/9)

(平成22年12月31日現在)

21.確定給付制度(確定給付制度債務の現在価値と当期勤務費用の認識と測定)

<確定給付制度債務の現在価値と当期勤務費用の認識と測定の手順>


確定給付制度の最終的なコストは、最終給与、 従業員の離職及び死亡率、医療費の趨勢、並びに、積立てをする制度においては制度資産に係る投資利益のような、多くの変数の影響を受けます。制度の最終的なコストは不確実であり、この不確実性は、長期にわたり続きます。退職後給付債務の現在価値及び関連する当期勤務費用は、次のフローにより測定されます。(IAS19.63) 

 

@ 保険数理上の評価方法である予測単位積増方式の考え方のもとに(IAS19.64-66)、
A 給付を勤務期間に帰属させ(IAS19.67-71)、
B 数理計算上の仮定を設定する(IAS19.72-91)

 

 

<数理計算上の評価方法(予測単位積増方式)>


企業は、その確定給付制度債務の現在価値及び関連する当期勤務費用並びに過去勤務費用(該当がある場合)を算定するために、予測単位積増方式を使用しなければなりません。(IAS19.64)

 

予測単位積増方式(projected unit credit method)」とは、各勤務期間を、給付の追加的な1単位に対する権利を生じさせるものとみなし、 最終的な債務を積み上げるために各単位を別個に測定する方法をいいます。予測単位積増方式は、勤務の比例配分による発生給付評価方式(accrued benefit method)又は給付/勤務年数方式(benefit/years of service method)としても知られています。(IAS19.65)

 

企業は、報告期間後12か月以内に債務の一部の期日が到来する場合に退職後給付債務の全額を割り引かなければなりません。(IAS19.66)

 

 

<給付の勤務期間への帰属>


確定給付制度債務の現在価値及び関連する当期勤務費用(並びに該当する場合には過去勤務費用)を算定するにあたり、企業は、給付を制度の給付算定式に基づいて勤務期間帰属させなければなりません。

 

しかし、後期の年度における従業員の勤務が、初期の年度より著しく高い水準の給付を生じさせる場合には、企業は、給付を定額法により次の期間帰属させなければなりません。(IAS19.67)

 

(a)

従業員による勤務が、制度の下での給付を最初に生じさせた日から(当該給付が将来の勤務を条件としているか否かに関係なく)、

(b)

従業員によるそれ以降の勤務が、それ以降の昇給を除けば、制度の下での重要な追加の給付を生じさせなくなる日まで。

 

予測単位積増方式は、企業に給付を当期(当期勤務費用の算定のため)並びに 当期及び過去の期間(確定給付制度債務の現在価値の算定のため)に帰属させることを要求します。企業は、退職後給付を支給する債務が発生する期間に給付を帰属させます。

当該債務は、企業が将来の報告期間に支払うと予想する退職後給付の対価として、従業員が勤務を提供するに従って発生します。数理計算上の技法により、負債の認識を正当化するのに十分な信頼性をもって、企業が当該債務を測定することが可能になっています。(IAS19.68)

 

−給付が将来の雇用による権利確定を条件としている場合− 

給付が将来の雇用を条件としている(言い換えれば、給付が権利確定していない)場合であっても、従業員の勤務は確定給付制度に基づく債務(推定的債務)を発生させます。ただし、この場合には確定給付制度債務を測定するにあたり、企業は、ある従業員が権利確定のための要件を満たさない確率を考慮に入れる必要があります。

同様に、例えば退職後医療給付のような特定の退職後給付は、退職後に特定の事象が発生した場合にのみ支払うべきことになりますが、従業員が勤務を提供したときに、特定の事象が発生した場合に給付を受けるという権利を生じさせ、債務が創出されるため、特定の事象が発生する確率は、当該債務の測定には影響しますが、債務が存在するか否かを決定するものではありません。(IAS19.69)

 

−ある日において重要な追加の給付を生じさせなくなる給付制度の場合− 

後期の年度における従業員の勤務が初期の年度より著しく高い水準の給付を生じさせるが、ある日において重要な追加の給付を生じさせなくなる給付制度の場合、従業員による勤務が、制度の下での給付を最初に生じさせた日から(当該給付が将来の勤務を条件としているか否かに関係なく)、従業員によるそれ以降の勤務が重要な追加の給付を生じさせなくなる日まで(上記の(a),(b))、企業は、定額法により給付を帰属させます。これは、全期間を通じての従業員の勤務が、最終的にそのように高水準の給付を生じさせるからです。(IAS19.70)

設例

ある制度は、20年間の勤務後に55歳でなお雇用されているか、または勤務期間を問わず、65歳でなお雇用されているすべての従業員に2,000の一時金での退職給付を支払います。この場合の、給付の帰属はどのように考えればよいでしょうか?

解答

35歳前に入社した従業員にとって、当該制度の下での給付を生じさせる最初の勤務は、35歳の時です。当該給付は、それ以上の勤務を条件とし、また、55歳を超えて勤務しても、重要なそれ以上の給付を生じさせません。

そのため、当該従業員に、35歳から55歳までの各年に100(2,000÷20年)の給付を帰属させます。

 

−給付が勤続期間の各年について最終給与の一定割合となる場合−

給付の金額が、勤続期間の各年について最終給与の一定割合となる場合には、将来の給与の上昇は、報告期間の末日より前の勤務について存在する債務を決済するに必要な金額に影響するであろうが、追加的な債務を創出しません。したがって、給付の金額は最終給与に左右されるとしても、給与の上昇は追加的な給付を生じさず、また、各期に帰属させる給付額は、給付が連動する給与の一定比率となります。(IAS19.71)

 

 

<数理計算上の仮定>


 保険数理上の評価方法を使用して、当期及び過去の期間の勤務の対価として従業員が稼得した給付の信頼性のある見積額を求めるに当たっては、いくらの給付を当期および過去の期間に帰属させるかを決定するとともに、数理計算上の仮定の設定を行わなければなりません。

 

数理計算上の仮定とは、退職後給付を支給する最終的な費用を算定するための変数についての企業の最善の見積りを意味します。

数理計算上の仮定は、次のものから構成されます。(IAS19.73)

 

(a) 人口統計上の仮定(demographic assumptions)
雇用中及び退職後の死亡率
従業員の離職、身体障害及び早期退職の比率
受給資格を得るであろう被扶養者を有する制度加入者の比率
医療給付制度における支払請求率
(b) 財務上の仮定(financial assumptions)
割引率 ※1
将来の給与及び給付水準 ※2
医療給付の場合には将来の医療費並びに重要性がある場合には請求及び給付支払の管理費用 ※3
制度資産に係る期待収益率

 

数理計算上の仮定(actuarial assumptions)は、偏りがなく、かつ、互いに矛盾しないものでなければなりません(IAS19.72)。

数理計算上の仮定は、慎重さを欠くものでなく過度に保守的なものでなければ、その仮定は偏りがないものといえます(IAS19.74)。

また、数理計算上の仮定が、インフレーション、昇給率、制度資産に係る収益及び割引率のような要素間の経済的関係を反映する場合には、その仮定は、互いに矛盾しないといえます(IAS19.75)。

 

企業は、割引率及び他の財務上の仮定を名目値によって決定します。

ただし、実質値による見積りの方がより信頼できる場合(例えば超インフレ経済下(IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」参照)にある場合や給付が指数にリンクしていて、通貨及び期間が同一の指数リンク債券の厚みのある市場がある場合)を除きます。(IAS19.76)

 

また、財務上の仮定は、債務を決済する全体の期間についての、報告斯間の末日時点における市場の予測に基づかなければなりません(IAS19.77)。 

 

−※1 割引率(discount rate)−

退職後給付債務の割引きに使用する率は、報告期間の末日時点の優良社債の市場利回りを参照して決定しなければなりません。

そのような債券について厚みのある市場が存在しない国では、報告期間の末日時点の国債の市場利回りを使用しなければなりません。(IAS19.78)

 

割引率の算定に際しては下記点に留意する必要があります(IAS19.78,79,80,81)。

社債又は国債の通貨及び期日は、退職後給付債務の通貨及び見積期日と整合しなければなりません。

割引率は貨幣の時間価値を反映しますが、数理計算上又は投資とのリスクは反映しません。また、割引率は、企業に対する債権者が負担している企業固有の信用リスクは反映せず、また、将来の実績が数理計算上の仮定と異なる可能性についてのリスクも反映しません。
割引率には、給付支払の見積時期を反映させる必要があります。
すべての給付支払の見積期日に対応するような、十分に長期な債券について、厚みのある市場がない場合もありますが、そのような場合には、より短期の支払を割り引くために適切である期間の現在の市場利率を使用し、現在の市場利率をイールドカーブに応じて推定することにより、より長い期間の割引率を見積る必要があります。

 

−※2 給与・給付−

退職後給付債務は、次の点を反映した基礎により測定しなければなりません(IAS19.83,84)。

(a)

将来の昇給の見積り

インフレーション、年功、昇進及び雇用市場における需給のような、他の関連する要素も考慮します。

(b)

報告期間の末日現在の制度の規約の中に示された(又は当該規約を超える推定的債務があればそれから生じる)給付

制度の正式な規約(又は当該規約を超える推定的債務)が企業に将来の期間において給付を変吏することを要求している場合には、債務の測定には当該変更を反映させます。例えば、「インフレーションの影響を緩和するために、企業が給付を増加させてきた実績を有し、その慣行が将来変更される徴候がない場合」や「すでに数理計算上の差益が財務諸表で認識されており、制度の正式な規約(若しくは当該規約を超える推定的債務)又は法律のいずれかにより、企業が、その制度の積立超過を制度加入者の給付のために使用する義務がある場合」があります。

(c) 確定給付制度の下で支払うべき給付に影響する公的給付水準の変更があれば、次のいずれかの場合にのみ、その将来の変更の見積り
当該変更が報告期間の末日前に実施された場合
過去の歴史又は他の信頼できる証拠が、例えば将来の一般物価水準又は一般給与水準の将来の変動と一致するような予測可能な方法により、公的給付が変更されることを示している場合

 

−※3 医療費− 

医療費に関する仮定には、インフレーションと医療費の固有の変動の双方から生じる医療サービスの費用の将来の変動の見積りを考慮しなければなりません(IAS19.88)。

 

退職後医療給付の測定には、将来の請求の水準及び頻度並びに当該請求に応じるための費用に関する仮定が必要とされます。

企業は、企業自身の経験に関する過去データに基づき、必要な場合には他の企業、保険会社、医療機関又は他の情報源からの過去データで補足することにより、将来の医療費を見積らなければなりません。将来の医療費の見積りには、技術の進歩、医療給付の利用又は提供の形態の変化及び制度加入者の健康状態の変動の影響を考慮に入れます。(IAS19.89)

また、請求の水準及び頻度は、従業員(及びその被扶養者)の年齢、健康状態及び性別に特に強く影響され、また、地理的立地のような他の要素にも強く影響を受けることがあります。したがって、母集団の人口構成が、過去データの基礎として使用した母集団と異なる範囲で、過去データは修正されます。歴史的趨勢が継続しないという信頼性のある証拠かおる場合にも、修正が行われます。(IAS19.90)

退職後健康管理制度の中には、制度の対象となる医療費について従業員の拠出を要求するものがありますが、将来の医療費の見積りには、報告期間の末日現在の制度の規約に基づいて(又は当該規約を超える推定的債務があればそれに基づいて)、このような拠出があればそれを考慮する必要があります。当該従業員掛金の変動は、過去勤務費用又は、場合によっては、縮小をもたらしたり、また、公的な又は他の医療機関からの給付により、請求に応じるための費用が減少することもあります。(IAS19.91)

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