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IAS第19号「従業員給付」(退職後給付 2/9)

(平成22年12月31日現在)

12.様々な退職後給付制度 −複数事業主制度−

IAS第19号では、様々な退職後給付制度についての確定拠出制度と確定給付制度との区分について言及しています。(IAS19.28)

 

複数事業主制度(multi-employer plans)」とは、次のような確定拠出制度(公的制度を除く)または確定給付制度(公的制度を除く)をいいます。

 

共通支配下にない種々の企業による拠出資産をプールし、かつ
当該資産を複数の企業の従業員に給付するために使用し、掛金及び給付水準が、関係する従業員を雇用する企業を識別することなく決定されるもの

 

企業は、(正式な規約を超える推定的債務があればそれを含めて)制度の規約に従って、複数事業主制度を、確定拠出制度又は確定給付制度として分類しなければなりません

 

なお、複数事業主制度は集団管理制度(group administration plans)とは別のものです。集団管理制度は、単に、加入事業主がその投資目的の資産をプールして、投資管理費用及び管理費用を削減できるようにするために結合された、単一事業主制度の集まりに過ぎず、通常、各事業主の請求権は、当該事業主自身の従業員の給付だけのために分離されてます。そのため、特別か会計上の問題を発生させず、制度の規約に従って確定拠出制度または確定給付制度として分類し、単一事業主制度と同様に本基準を適用します(IAS19.33)。

 

−複数事業主制度が確定給付制度である場合−

数事業主制度が、確定給付制度である場合があります。例えば、下記のような場合、確定給付複数事業主制度に該当します(IAS19.31)。

当該制度が現金払方式により資金を調達している

(すなわち、掛金は同一期間中に期日の到来する給付を支払うのに十分と予想される水準に設定され、当期中に稼得された将来の給付は将来の掛金により支払われる)

かつ

従業員への給付がその勤続期間により決定され、加入企業は、脱退日までに従業員が稼得した給付に必要な掛金を支払わずに制度から脱退する現実的な方法を有しない

(企業に数理計算上のリスクを生じさせるため)

複数事業主制度が確定給付制度である場合には、下記処理を行わなければなりません(IAS19.29)。

@ 他の確定給付制度と同様に、当該制度に関連する確定給付制度債務、制度資産及び費用に対する企業の比例的持分を会計処理する
A 確定給付制度に関して要求される情報を開示する

 

確定給付制度である複数事業主制度について、確定給付の会計処理を行うために十分な情報を入手できないときには、企業は、下記対応を行わなければなりません(IAS19.30)。

@ 確定拠出制度であるかのように会計処理する 
A 次の開示を行う 
当該制度が確定給付制度である旨 
企業が当該制度を確定給付制度として会計処理するための十分な情報を入手できない理由
B 当該制度の積立超過又は積立不足が将来の掛金額に影響する範囲で、次の追加的開示を行う。
当該積立超過又は積立不足に関して入手可能な情報
当該積立超過又は積立不足を算定するために使用した基礎
企業への影響(もしあれば)

 

確定給付の会計処理を行うために、十分な情報を入手できない場合とは次のような場合があります(IAS19.32)。

企業が、制度に関して本基準の要求を満たす隋報にアクセスできない場合
制度が加入企業を他の企業の現在の及び前従業員に関連する数理計算上のリスクに晒しており、その結果、制度に加入している個々の企業に債務、制度資産及び費用を分配するための首尾一貰した信頼性のある基礎がない場合

 

なお、複数事業主制度と加入者の間に、制度の積立超過(又は基金の積立不足)を加入者にどのように配分すべきかを定めた契約上の合意が存在する場合があります。そのような合意を行っており、上記のように複数事業主制度を確定拠出制度として会計処理する加入者は、契約上の合意により生じる資産及び負債を認識し、その結果生じる収益と費用を純損益に計上しなければなりません(IAS19.32A)。

 

また、複数事業主制度に関して、例えば、次のようなものから偶発負債が生じる場合があります。偶発債務は、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に従い情報開示が要求されています。(IAS19.32B)

複数事業主制度に加入する各企業が他のすべての加入企業の数理計算上のリスクを分担することによる、他の加入企業に関連する数理計算上の差損
他の企業が加入をやめた場合に制度の不足額があればその資金を提供するという制度の規約の下での責任

13.様々な退職後給付制度 −共通支配下にある企業間でリスクを分担する確定給付制度−

 親会社とその子会社のように、共通支配下にある企業間でリスクを分担する確定給付制度は、複数事業主制度ではありません(IAS19.34)。

そうした制度に加入している企業は、制度全体に適用するという仮定の下で、IAS第19号に従って測定される制度全体の情報を入手しなければなりません。

IAS第19号に従って測定された制度全体の正味確定給付制度費用を、個々のグループ企業に負担させる契約上の合意又は確定した方針が存在する場合には、当該企業は個別財務諸表で、負担する正味確定給付制度費用を認識しなければなりません

一方、そうした合意又は方針が存在しない場合には、当該正味確定給付制度費用は、制度を法律上運営する事業主であるグループ企業の個別財務諸表で認識し他のグループ企業は、企業の個別財務諸表で、当期に支払うべき拠出に相当する費用を認識します(IAS19.34A)。

 

また、当該制度への加入は、個々のグループ企業のそれぞれにとっては、関連当事者取引となるので、企業は個別財務諸表に次の開示を行わなければなりません(IAS19.34B)。

正味確定給付制度費用の負担に関する契約上の合意若しくは確定している方針、又はそうした方針は存在しないとする事実
企業が支払うべき拠出を決定するための方針
企業が上記に従って正味確定給付制度費用の配分の会計処理を行い場合には、制度全体に関する単一制度と同様の開示内容
企業が上記に従って当期に支払うべき拠出の会計処理を行う場合には、第120A項(b)から(e)、(j)、(n)、(o)、(q)と第121項に従った制度全体に関する情報

14.様々な退職後給付制度 −公的制度−

企業は、公的制度について複数事業主制度と同様の方法で会計処理しなければなりません(IAS19.36)。

 

 公的制度は、法令によりすべての企業(又は、例えば特定業種のような特定の範昭に属するすべての企業)を対象とするように設立され、国若しくは地方政府により、又は報告企業の支配又は影響を受けない他の団体(例えばその目的で特に創設された独立機関)により運営されるものです。企業により設立された制度の中には、公的制度の対象となる給付を代行する強制的給付と追加的な任意的給付の双方を支給しているものがありますが、このような制度は公的制度ではありません(IAS19.37)。

 

公的制度は、当該制度の下での企業の債務に基づいた性質により、確定給付又は確定拠出の特徴を有します。

多くの公的制度は現金払方式で積み立てられ、掛金を同一期間中に期日の到来する必要な給付を支払うのに十分と予想される水準に設定し、当期中に稼得された将来の給付は、将来の掛金から支払われると見込まれますが、大多数の公的制度においては、企業は将来の給付を支払うべき法的債務又は推定的債務を有しません。すなわち、通常公的制度の唯一の債務は、期日の到来した掛金を支払うことであり、企業が公的制度の加入者の雇用を終了させた場合、企業は、過年度に企業自身の従業員が稼得した給付を支払う義務を有しません。

この理由から、公的制度は通常、確定拠出制度だと考えられます

しかし、稀ではありますが、公的制度が確定給付制度である場合には企業は、確定給付複数事業主制度の取扱いを適用しなければなりません。(IAS19.38)

15.様々な退職後給付制度 −保険が付された制度−

企業は退職後給付制度の積立てのために保険料を支払う場合があります。

当該企業が(直接的又は当該制度を通じて間接的に)、次のいずれかの法的債務又は推定的債務を有する場合を除き、当該企業は当該制度を確定拠出制度として取り扱わなければなりません(IAS19.39)。

 

期日が到来した時に従業員給付を直接支払う債務
保険会社が当期及び過去の期間の従業員の勤務に関連する将来の従業員給付の全額を支払わない場合には、さらに金額を支払う債務

 

企業が(直接、又は制度を通じて将来の保険料の設定メカニズムを通じて、若しくは保険会社との間の関連当事者関係を通じて間接的に)法的債務又は推定的債務を保持することとなるような場合、企業は、当該制度を確定給付制度として取り扱わなければなりません。すなわち、退職後給付債務に充てる資金を積み立てるための保険証券への拠出は、確定拠出制度と同様に、適格な保険証券を制度資産として会計処理し、その他の保険証券を補填の権利として認識しなければなりません(IAS19.41)

 

なお、保険証券が特定の制度加入者又は制度加入者のグループの名義であり、企業が当該証券による何らかの損失を補填すべきいかなる法的債務も推定的債務もない場合には、企業は従業員に給付を支払うべき債務を有さず、保険会社が単独で当該給付を支払うべき責任を有しています。当該契約の下での固定額の保険料の支払は、従業員給付債務を支払うための投資ではなく、実質的に、当該債務の決済にあたるため、当該支払額を確定拠出制度への拠出として取り扱います。(IAS19.42)

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