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IAS第12号「法人所得税」(1/3)

(平成23年1月31日現在)

1.目的・範囲

IAS第12号「法人所得税」の目的は、法人所得税の会計処理を定めることにあります。法人所得税の会計処理に関する主たる論点は、次の事項に関して当期および将来の税務上の影響をどのように会計処理するかにあります。

 @ 企業の財政状態計算書で認識されている資産(負債)の帳簿価額の将来の回収(決済)

 A 企業の財務諸表に認識されている当期の取引その他の事象

 

 本基準は、上記目的のため法人所得税の会計処理全般に適用します。(IA12.1)

2.定義

IAS第12号で使用する用語は、日本基準で使用している用語と異なるものがあります。

IAS12.5で掲げられている主要な用語の定義は下記のとおりです。

 

 ・税金費用(収益)

ある期の純損益の計算に含まれる当期税金と繰延税金との合計額をいいます。

繰延税金とは、日本基準でいう「法人税等調整額」に相当するものです。

 

 ・当期税金

ある期の課税所得(欠損金)について納付すべき(還付される)税額をいいます。

日本基準でいう「法人税等」に相当するものです。

 

 ・繰延税金負債

将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます。

 

 ・繰延税金資産

将来減算一時差異、税務上の欠損金の繰越し、税額控除の繰越し、に関連して将来の期に回収されることとなる税額をいいます。

 

 ・一時差異

ある資産または負債の財政状態計算書上の帳簿価額と税務基準額との差額をいいます。

このうち、当該資産または負債の帳簿価額が将来の期に回収または決済されたときに、その期の課税所得(税務上の欠損金)の算定上加算される一時差異を「将来加算一時差異」といい、当該資産または負債の帳簿価額が将来の期に回収または決済されたときに、その期の課税所得(税務上の欠損金)の算定上減額される一時差異を「将来加算一時差異」といいます。

 

・資産または負債の税務基準額

その資産または負債に税務上帰属するとされた金額をいいます。

日本基準でいう「税務上の簿価」に相当するものです。

3.当期税金負債(未払法人税等)および当期税金資産(未収法人税等)の認識

当期及び過去の期間に係る当期税金は、未納額の範囲で負債として認識しなければなりません。当期および過去の期間について支払い済みの額がそれらの年度の税額を超える場合は、当該超過額は資産として認識しなければなりません(IA12.12)

 

税務上の欠損金が過去の期間の当期税金の還付を受けるために繰延控除をすることが認められており、税務上の欠損金が過去の期間の当期税金の還付を受けるために使用される場合、その税務上の欠損金が発生した期間にその便益を資産として認識します。(IA12.13,14)

4.繰延税金負債の認識

すべての将来加算一時差異について繰延税金負債を認識しなければなりません。(IA12.15)

 

ただし、繰延税金負債が、次のような取引における資産または負債の当初認識から生じる場合を除きます。(IA12.15)

 @ のれんの当初認識

 A 繰延税金負債が次の取引における資産または負債の当初認識から生ずる場合

 ・企業結合ではなく

 ・取引時に会計上の利益にも課税所得(欠損金)にも影響を与えない取引

 

ただし、子会社、支店および関連会社に対する投資ならびにジョイント・ベンチャーの持分に関連して生じる将来加算一時差異については、繰延税金負債を別規定に従って認識しなければなりません。(IA12.15)

詳細は<8.子会社、支店及び関連会社に対する投資ならびにジョイント・ベンチャーに対する持分>で解説します。

 

<のれんの当初認識>

当該例外規定が想定している状況は、企業結合により会計上でのれんを認識したけれども、税務上はのれんの償却費について損金算入が認められていない場合です。

このような状況の場合では、のれんの当初認識時の税務基準額はゼロであるため、のれんの帳簿価額と税務基準額との差異は、将来加算一時差異ということになります。しかし、のれんは配分残余として測定されるため、当該将来加算一時差異について繰延税金負債を認識すると当該のれんの帳簿価額を増加させることになってしまい、堂々巡りの結果となってしまいます。そのため、のれんの金額を確定できなくなってしまうため、IAS第12号ではのれんの当初認識にかかる繰延税金負債を認めていません。(IA12.21)

 

また、のれんの当初認識により生じたものであるために未認識であった繰延税金負債について、事後的な減損額についても、この未認識の繰延税金負債の減少は、のれんの当初認識に関連するものとして取り扱われ、認識が禁止されています。(IA12.21A)

 

ただし、のれんに関連する将来加算一時差異による繰延税金負債は、のれんの当初認識から生じていない範囲では認識されます。

例えば、のれんが税務上償却され損金算入されるケースでは、のれんの当初認識時においては会計上の資産計上額と税務基準額が一致するため、当該一時差異はのれんの当初認識時に発生しているとはいえないためです。(IA12.21B)

 

<資産または負債の当初認識>

繰延税金負債が資産または負債の当初認識から生ずる場合についての会計処理方法は、当該資産または負債の当初認識をもたらす取引の性質によって決まります。すなわち、企業結合の場合や当該取引が会計上の利益か課税所得のどちらかに影響する場合には、繰延税金負債を認識します。

 

【繰延税金負債を認識する場合】

 ●企業結合の場合

例としては、企業結合で取得した認識可能な資産および引き継いだ負債は、取得日時点の公正価値で認識されるが、税務基準額が前所有者の簿価のままである場合などが考えられます。この場合、認識された当該繰延税金負債はのれんに影響を及ぼします。(IA12.19,22)

 

●当該取引が会計上の利益か課税所得のどちらかに影響する場合

もし当該取引が会計上の利益か課税所得のどちらかに影響するときには、企業は繰延税金負債(資産)をすべて認識し、対応する繰延税金費用(収益)を純損益に計上します。(IA12.22)

 

【繰延税金負債を認識しない場合】

取引が、企業結合でなく、かつ会計上の利益にも課税所得にも影響しない場合、繰延税金負債を認識しません。例えば、減価償却費やキャピタルゲインおよびキャピタルロスの損金不算入となる有形固定資産がある場合、当初認識時において会計上の資産計上額と税務基準額に差異が生じますが、会計上の利益にも課税所得にも影響しないにもかかわらず当該差異について税効果費用を認識すると不合理な結果となってしまうためです。(IA12.22)

5.繰延税金資産の認識

将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で、すべての将来減算一時差異について繰延税金資産を認識しなければなりません。(IA12.24)

 

ただし、繰延税金資産が、次のような取引における資産または負債の当初認識から生じる場合を除きます。(IA12.24)

 @ 企業結合ではなく、かつ

 A 取引日に会計上の利益にも課税所得(欠損金)にも影響しない取引

 

ただし、子会社、支店および関連会社に対する投資ならびにジョイントベンチャーの持分に関連して生ずる将来減算一時差異については、繰延税金資産を別規定に従って認識しなければなりません。(IA12.24)

詳細は、<8.子会社、支店及び関連会社に対する投資ならびにジョイント・ベンチャーに対する持分>で解説します。

 

考え方は、繰延税金負債の場合と同様ですが、のれんの当初認識から発生する繰延税金負債は認識しませんが、負ののれん(割安購入益)の当初認識から発生する繰延税金資産は、将来減算一時差異を活用できる課税所得を得られる可能性が高い範囲で、企業結合の会計処理の一環として認識しなければなりません。(IA12.32A)

これは、負ののれん(割安購入益)の場合は、一括利益計上されるためだと考えられます。

 

<税務上の繰越欠損金および繰越税額控除>

税務上の繰越欠損金および繰越税額控除に対しては、将来その使用対象となる課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で、繰延税金資産を認識しなければなりません。(IA12.34)

6.繰延税金資産の回収可能性

将来減算一時差異の解消によって将来の期の課税所得計算上の損金算入が生じます。しかし、支払税金の減少という形での経済的便益は、企業が損金算入額と相殺するのに十分な課税所得を稼得する場合にのみ企業に流入します。したがって、将来減算一時差異を使用するだけの課税所得を使用するだけの課税所得が得られる可能性が高い場合にのみ繰延税金資産を認識します。(IA12.27)

 

IAS第12号では、繰延税金資産の回収可能性の評価においては、下記3点について検討する必要があると述べられています。

 ・ 将来加算一時差異の十分性

 ・ 将来課税所得の十分性

 ・ タックス・プランニングの実行

 

【将来加算一時差異の十分性】

同一の税務当局および同一の納税企業に係る十分な将来加算一時差異があって、それが次に述べる時期に解消すると予測される場合、将来減算一時差異の使用対象となる課税所得が生じる可能性が高いといえます。(IA12.28)

 @ 将来減算一時差異の解消が予測される期と同じ期に、同一の税務当局および同一の納税企業に係る十分な将来加算一時差異がある場合

 A 税務上の欠損金の繰戻しまたは繰越しが可能な期に、同一の税務当局および同一の納税企業に係る十分な将来加算一時差異がある場合

 

【将来課税所得の十分性】

同一税務当局の区域内で、同一の納税企業体内に、将来減算一時差異が解消するのと同じ期に(または税務上の欠損金が繰戻しもしくは繰越が可能な期に)当該企業が十分な課税所得を稼得する可能性が高い場合です。(IA12.29)

企業が将来の期に十分な課税所得を稼得するかどうかを判断するに際しては、将来の期に発生すると予想される将来加算一時差異より生じる課税利益は無視します。

 

【タックス・プランニングの実行】

タックス・プランニングの実行とは、企業が税務上の欠損金または税額控除の繰越期限到来前に特定の期に課税所得を創出または増加させる行動です。(IA12.30)

繰延税金資産の回収可能性の判断にあっては適切な時期に課税所得を生じさせるタックス・プランニングの実行が企業とって可能である必要あります。

 

<税務上の繰越欠損金および繰越税額控除額にかかる繰延税金資産の回収可能性>

税務上の繰越欠損金および繰越税額控除から生じる繰延税金資産を認識するための要件(回収可能性も含む)は、将来減算一時差異から生じる繰延税金資産を認識するための要件と同じです。

しかし、繰越欠損金の存在は、将来課税所得が稼得されない強い根拠となるという点に注意が必要です。

したがって、近年に損失が発生したという事実があるときは、企業は税務上の繰越欠損金もしくは繰越税額控除より発生する繰延税金資産を、十分な将来加算一時差異を有する範囲内でのみ、または税務上の繰越欠損金もしくは繰越税額控除の使用対象となる十分な課税所得が稼得されるという他の信頼すべき根拠がある範囲内でのみ認識します。(IA12.35)

 

税務上の繰越欠損金または繰越税額控除の使用対象となる課税所得が稼得される可能性を査定するに際しては、次の要件を考慮する必要があります。(IA12.36)

・同一の税務当局の区域内で同一の納税企業体内に、税務上の繰越欠損金または繰越税額控除の繰越期限内に使用対象となる課税所得をもたらすのに十分な将来加算一時差異を当該企業が有しているか否か

・税務上の繰越欠損金または繰越税額控除の繰越期限内に、当該企業が課税所得を稼得する可能性が高いか否か

・税務上の繰越欠損金は再発しそうもない特定の原因によって発生したものであるか否か

・税務上の繰越欠損金または繰越税額控除の繰越期限内に課税所得を発生させるべきタックス・プランニングの実行が可能であるか否か

 

上記結果、税務上の繰越欠損金または繰越税額控除に対して、その使用対象となる課税所得が得られる可能性が高くないならば、繰延税金資産を認識してはなりません。

7.繰延税金資産の再査定および回収可能性の見直し

<未認識の繰延税金資産の再査定>

各報告期間の末日現在で未認識の繰延税金資産の再査定を行う必要があります。その結果、将来の課税所得が繰延税金資産の回収を可能にするという可能性が高くなった範囲で、企業は未認識の繰延税金資産を認識します。(IA12.37)

 

<繰延税金資産の回収可能性の見直し>

繰延税金資産の帳簿価額は各報告期間の末日現在で再検討しなければなりません。企業は、一部または全部の繰延税金資産の便益を実現させるだけの十分な課税所得を稼得する可能性が高くなくなった範囲で、繰延税金資産の帳簿価額を減額しなければなりません。

また、そのような評価減額は、十分な課税所得を稼得する可能性が高くなった範囲で戻入なければなりません。(IA12.56)

8.子会社、支店および関連会社に対する投資ならびにジョイント・ベンチャーに対する持分

<一時差異の内容>

子会社、支店および関連会社に対する投資またはジョイント・ベンチャーに対する持の帳簿価額が、当該投資または持分の税務基準額と異なる場合、一時差異が発生します。

例として、下記のようなものがあります。(IA12.38)

・子会社、支店、関連会社およびジョイント・ベンチャーにおける未分配利益

・親会社と子会社が別々の国に根拠を置いている場合の外国為替レートの変動

・関連会社投資の帳簿価額の回収可能価額までの減額

 

<繰延税金負債の認識>

上記のような子会社、支店および関連会社に対する投資ならびにジョイント・ベンチャーに対する持分に係るすべての将来加算一時差異に対して、繰延税金負債を認識しなければなりません。(IA12.39)

 

ただし、次の条件がともに充足される場合は、繰延税金負債を認識する必要はありません。

 ・親会社、投資者または持分所有者が一時差異を解消する時期をコントロールできる

 ・予測可能な期間内に一時差異が解消しない可能性が高い

 

下記投資パターンごと、上記例外規定に関して以下の点がいえます。

 

【子会社、支店への投資の場合】

親会社は、その子会社の配当政策をコントロールしているので、当該投資にかかる一時差異の解消もコントロールすることができます。さらに一時差異が解消したときに納付することになるであろう税額を決定することは実務上不可能であることが多いと考えられます。そのため、親会社が予測可能な期間内その利益を配当しないと決定している場合には、その親会社は繰延税金負債を認識しません。支店に対する投資についても同様の考慮がなされます。(IA12.40)

 

【関連会社への投資の場合】

関連会社に対する投資者は、その企業をコントロールしないし、通常その配当政策を決定する立場にもありません。それゆえに、関連会社の利益が予測し得る期間内に配当されないであろうという合意がないときは、投資者は関連会社投資に係る将来加算一時差異から生じる繰延税金負債を認識します。

場合によっては、投資者は関連会社に対する投資を回収したとしたら支払うこととなる税額を算定することが不可能と考えられますが、最低限の金額以上になるという判断ができる場合には当該金額で繰延税金負債を測定します。(IA12.42)

 

【ジョイント・ベンチャーの持分の場合】

ジョイントベンチャー参加者間の協定において、参加者が利益配分をコントロールでき、予測可能な期間内に利益が配分されない可能性が高い場合は、繰延税金負債は認識されません。(IA12.43)

 

<繰延税金資産の認識>

企業が、子会社、支店および関連会社に対する投資ならびにジョイントベンチャー持分から発生するすべての将来減算一時差異に対して、次の可能性が高い範囲内で、かつ、その範囲内でのみ、繰延税金資産を認識しなければなりません。(IA12.44)

 

 ・当該一時差異が、予測し得る期間内に解消する

 ・当該一時差異の使用対象となる課税所得が稼得される

 

なお、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたっては、上記以外にも<6.繰延税金資産の回収可能性>で述べた事項も考慮する必要があります。

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