IAS第2号「棚卸資産」

(平成23年1月31日現在)

1.目的・範囲

IAS第2号は、棚卸資産の会計処理を定めています。棚卸資産の会計の主要な論点は、関連する収益が認識されるまでの間、資産として認識し、繰り越すべき原価の金額にあります。(IAS2.1)

 

以下の棚卸資産は適用範囲外としています(IAS2.2)。

・直接関連する役務提供を含む、請負工事契約により発生する未成工事原価(IAS第11号「工事契約」参照)

・金融商品(IAS第32号「金融商品:表示」、IAS第39号「金融商品」)

・農業活動に関連する生物資産および収穫時点での農作物(IAS第41号「農業」参照)

 

また、以下の者によって保有される棚卸資産の測定には適用しません。(IAS2.3)

・農業製品、林業製品、収穫後の農作物、鉱物および鉱物製品の生産者(当該業界の確立した実務に従って正味実現可能価額で測定されている範囲で)。

当該棚卸資産が正味実現可能価額で測定される場合、正味実現可能価額の変動は当該変動が発生した期の損益として認識します。

 

・販売費用控除後の公正価値で棚卸資産を測定するコモディティ・ブローカーやトレーダー。

当該棚卸資産が販売費用控除後の公正価値により測定される場合、販売費用控除後公正価値の変動は当該変動が発生した期の損益として認識います。

2.棚卸資産の定義

棚卸資産とは、以下のような資産と定義しています。(IAS2.6)

 

・通常の事業の過程において販売を目的として保有されるもの

・その販売を目的とする生産の過程にあるもの

・生産過程または役務の適用にあたって消費される原材料または貯蔵品

3.棚卸資産の評価

棚卸資産は、原価と正味実現可能価額とのいずれか低い金額により測定しなければなりません。(IAS2.9)

 

正味実現可能価額とは、「通常の事業の過程における予想売価から、完成までに要する見積原価および販売に要する見積費用を控除した額」で、企業が通常の事業過程における棚卸資産の売却により実現されることが予測される正味の金額をいいます(IAS2.6,7)。

 

棚卸資産が損傷した場合、その全部又は一部が陳腐化した場合、またはその販売価格が下落した場合、棚卸資産の原価が回収できなくなることがあります。また、完成に必要な見積原価または販売に要する見積費用が増加した場合にも、棚卸資産の原価が回収できなくなることがあります。棚卸資産を原価から正味実現可能価額まで評価減する実務は、資産はその販売または利用によって実現すると見込まれる額を超えて評価すべきではないという考え方と首尾一貫しています。(IAS2.28)

4.棚卸資産の原価 −範囲・集計−

棚卸資産の原価には、以下の原価すべてを含めなければなりません。(IAS2.10)

 @ 購入原価

 A 加工費

 B 棚卸資産が現在の場所および状態に至るまでに発生したその他の原価

 

 @ 購入原価

棚卸資産の購入原価には以下のような費用が含まれます。(IAS2.11)

・購入代価

・輸入関税およびその他の税金(税務当局から後で回収可能なものを除く)

・製品、原材料および役務の取得に直接起因する運送費、荷役費、その他の費用

 

なお、値引、割戻、その他類似のものは購入原価の算定上控除します。

 

 A 加工費

加工費には下記のような費用が含まれます。(IAS2.12)

・直接労務費のような生産単位に直接関係する費用

・原材料を完成品に加工する際に生じる固定および変動の製造間接費の規則的な配賦額

 

 固定製造間接費とは、生産量の変動に関係なく、比較的一定して発生する製造間接費で、例えば、工場の建物や設備の減価償却費、維持費、工場の事務管理費があります。

変動製造間接費とは、生産量の変動に直接またはほぼ直接に関連して発生する製造間接費で、例えば、間接材料費や間接労務費があります。

 

−固定製造間接費の配賦について−

固定製造間接費の加工費への配賦は、生産設備の「正常生産能力」に基づいて行われます。

正常生産能力とは、計画的なメンテナンスをしたうえで生じる能力の低下を考慮して、正常な状態で期間または季節を通して平均的に達成されると期待される生産量をいいます。実際の生産水準が正常生産能力に近い場合には、「実際生産水準」を使うこともできます。

生産水準が低下した場合や遊休設備が存在した場合、生産単位当たりの固定製造間接費の配賦額の増加は禁止されており、配賦されなかった固定製造間接費は、発生した期間の費用として認識しなければなりません。

一方、生産水準が異常に高い期間では、生産単位当たりの固定製造間接費の配賦額を減少させ、棚卸資産の評価が原価を上回らないようにする必要があります。(IAS2.13)

 

 B その他の原価

その他の原価は、棚卸資産が現在の場所および状態に至るまでに発生したものに限り、棚卸資産の原価に含めます。

例えば、特定の顧客のために発生する非製造間接費または製品設計費用を棚卸資産の原価に含める場合など挙げられます。(IAS2.15)

 

棚卸資産の原価から除外され、発生した期間に費用として認識されるものの例としては以下のものがあります。(IAS2.16)

・仕損に係る材料費、労務費またはその他の製造費用のうち異常な金額

・保管費用(ただしその後の製造工程に移る前に必要な費用を除く)

・棚卸資産が現在の場所および状態に至ることに寄与しない管理部門の間接費

・販売費用

なお、決済が繰り延べられる条件下で棚卸資産を購入する場合で、契約の中に事実上、資金調達の要素が含まれている場合、当該要素は資金調達期間の利子費用として認識しなければなりません。(IAS2.18)

 

<サービス事業者の棚卸資産の原価>

サービス事業者の棚卸資産については、その生産の原価をもって測定します。

当該原価は、主として役務の提供に直接関係している人員の労務費およびその他の費用から構成され、当該業務の管理職の人件費および役務に帰属する間接費も含まれます。販売および一般管理部門の人員に関連する労務費ならびにその他の費用は含まれず、発生した期間に費用として認識されます。(IAS2.19)

5.棚卸資産の原価 −測定方法−

以上では棚卸資産の原価の測定方法として、実際原価計算を前提としていますが、適用結果が原価と近似する場合にのみ、簡便法として「標準原価法」および「売価還元法」の使用が認められています。(IAS2.21)

 

<標準原価法>

標準原価法は、正常な材料費・貯蔵品費・労務費・能率水準・生産水準を前提とする測定方法であり、標準原価は定期的に見直され、必要に応じてその時々の状態を勘案して改訂される必要があります。(IAS2.21)

 

<売価還元法>

売価還元法とは、棚卸資産の販売価額から適切な売上総利益を減額することにより算出する方法です。利益率の適用にあたっては、売価を当初の販売価格よりも引き下げた棚卸資産を考慮に入れる必要があります。

売価還元法は、小売業において、利益率が近似した回転の速い大量の棚卸資産で、他の原価計算方法の使用が実務上不可能なものを測定するために使用されることが多く、小売部門ごとの平均利益率が使用されることが多いといわれています。(IAS2.22)

6.棚卸資産の原価 −配分方法−

<代替性のない資産や特定のプロジェクトの場合>

通常は代替性がない棚卸資産の原価および特定のプロジェクトのために製造され、かつ、他の棚卸資産から区分されている財貨または役務の原価は、個別法によって配分しなければなりません。(IAS2.23)

 

<上記以外の場合>

棚卸資産の原価は、上記個別法に従って処理される場合を除き、先入先出法(FIFO)または加重平均法によって配分しなければなりません。(IAS2.25)

 

先入先出法とは、先に購入された、または製造されたものから先に販売され、期末時点で棚卸資産に残っているものは、最も直近に購入または製造したものであると仮定する配分方法です。

一方、加重平均法は、類似品目についての期首の原価と期中に購入または製造したものの原価との加重平均により、個々の原価を算定する配分方法で、平均原価は状況に応じて一定期間ごと又は購入のつど算出します。(IAS2.27)

 

企業にとって性質および使用方法が類似するすべての棚卸資産について、企業は同じ原価配分方法を使用しなければなりません。ただし、異なる性質または使用方法の棚卸資産については、異なる原価配分方法が正当化される場合もあります。(IAS2.25)

7.棚卸資産の正味実現可能価額

正味実現可能価額とは、「通常の事業の過程における予想売価から、完成までに要する見積原価および販売に要する見積費用を控除した額」で、企業が通常の事業過程における棚卸資産の売却により実現されることが予測される正味の金額をいいます(IAS2.6,7)。

 

<グルーピング>

棚卸資産は通常、個別の品目ごとに正味実現可能価額まで評価減されます。

しかし、同種のまたは関連する品目のグループごとに行うことが適切な状況もあります。例えば、目的ないし最終的な利用方法が類似しており、同一地域で生産または販売が行われ、かつ、その生産ラインの他の品目と実務上別個に評価できないような同一生産ラインにおける棚卸資産などが該当すると考えられます。(IAS2.29)

 

<見積り>

正味実現可能価額の見積りは、棚卸資産によって実現すると見込まれる金額について、見積りを行う時点において入手可能な、最も信頼し得る証拠に基づいて行われます。

決算日以降に発生した事象に直接関連する価格または原価の変動は、そのような事業が決算日にすでに存在していたという状況を確認できる範囲で、正味実現可能価額の見積りにあたって考慮されます。(IAS2.30)

 

なお、正味実現可能価額の見積りにあたっては、当該棚卸資産の保有目的も考慮する必要があります。例えば、確定済みの販売または役務提供を履行するために保有されている棚卸資産の在庫量の正味現可能価額は、その契約価格に基づいて算定されます。(IAS2.31)

 

<原材料および貯蔵品の評価減>

棚卸資産の生産に使用する目的で保有される原材料および貯蔵品は、それが組み込まれる製品が原価以上の金額で販売されると見込まれる場合には、原価より低く評価減する必要はありません。ただし、原材料の価格の下落が、製品の正味実現可能価額が原価より低くなることを示しているときには、その原材料は正味実現可能価額まで評価減する必要あります。(IAS2.32)

8.棚卸資産の費用の認識

棚卸資産が販売されたときには、その棚卸資産の帳簿価額は、関連する収益が認識される期間に費用として認識します。

一方、正味実現可能価額への棚卸資産の評価減の金額および棚卸資産に係るすべての損失は、評価減又は損失の原因が発生した期間に費用として認識しなければなりません。(IAS2.34)

 

棚卸資産が、自家建設固定資産の一部分のように他の資産勘定に振り替えられることがあります。このように、他の資産に振り替えられた棚卸資産は、その他の資産の耐用年数にわたって費用として認識されます。(IAS2.35)

 

<評価減の戻入れ>

正味実現可能価額の評価は、毎期行われます。

棚卸資産を原価以下に評価減する原因となった従前の状況がもはや存在しない場合、または経済的状況の変化により正味実現可能価額の増加が明らかである証拠がある場合には、評価減の戻入れを行います(戻入れは当初評価減額を限度)。

そのため、戻入れ後の新たな帳簿価額は原価と修正後の正味実現可能価額とのいずれか低い方の額となります。(IAS2.33)

 

正味実現可能価額の上昇により生じる棚卸資産の評価減の戻入額は、その戻入れを行った期間において、費用として認識された棚卸資産の金額のマイナスとして認識します(IAS2.34)。

9.開示

棚卸資産に関して以下の事項の開示が要求されています。(IAS2.36)

 

 @ 原価配分方法を含む、棚卸資産の評価にあたって採用した会計方針

 A 棚卸資産の帳簿価額の合計金額およびその企業に適した分類ごとの帳簿価額

 B 販売費用控除後の公正価値で計上した棚卸資産の帳簿価額

 C 期中に費用に認識した棚卸資産の額

 D 期中に費用に認識した棚卸資産の評価減の金額

 E 期中に費用に認識した棚卸資産の金額の減少として認識した評価減の戻入金額

 F 棚卸資産の評価減の戻入をする原因となった状況及び事象

 G 負債の担保に差し入れた棚卸資産の帳簿価額

 


 

 

 

このページの先頭へ戻る