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IFRS第2号「株式報酬」

(平成22年12月31日現在)

1.目的

IFRS第2号は、企業の株式報酬取引の影響を損益および財政状態に適切に反映することを目的としています(IFRS2.1)。

株式報酬取引(share-based payment transaction)」とは、企業が自らの資本性金融商品の対価として財貨・サービスを受け取るか、もしくは企業の株式またはその他の資本性金融商品の価格を基礎とする金額で、財貨・サービスの提供者に対する負債を負うことにより財貨・サービスを取得する取引をいいます。

株式報酬取引の代表例としてはストック・オプションがあげられます。

日本基準でもストック・オプション会計基準により株式報酬取引に関する会計基準を定めていますが、日本基準では「持分決済型の株式報酬取引」のみを対象としており、「現金決済型の株式報酬取引」は対象としていません。

2.範囲

企業は、IFRS第2号を受け取った財貨・サービスの一部または全部を具体的に識別できるかどうかにかかわらず、下記取引を含むすべての株式報酬取引の会計処理に適用しなければなりません(IFRS2.2)。

 

● 持分決済型の株式報酬取引(equity-settled share-based payment transaction)

企業が自らの資本性金融商品(equity instrument;株式またはストック・オプションを含む)の対価として財貨・サービスを受け取る形態

 

● 現金決済型の株式報酬取引(cash-settled share-based payment transaction)

企業が自らまたは他のグループ企業の株式または他の資本性金融商品の価格(または価値)を基礎とする金額で、財貨・サービスの提供者に対する負債を負うことにより財貨・サービスを取得する形態

 

● 複合決済型の株式報酬取引

持分決済型か、現金決済型かを企業もしくは財貨・サービスの提供者が選択できる形態

 

なお、株式報酬取引は、財貨・サービスを受け取る企業に代わって、他のグループ企業により決済されることがあります。この場合、「同一グループ内の他の企業が株式報酬取引を決済する義務を有している場合において、財貨・サービスを受け取る企業」、「同一グループ内の他の企業が財貨・サービスを受け取る場合において、株式報酬取引を決済する義務を有する企業」にも本基準が適用されます(IFRS2.3A)。

3.認識

企業は、株式報酬取引で受け取った財貨・サービスを、取得時点で認識しなければなりません(IFRS2.7)。

 

企業は、財貨・サービスを持分決済型の株式報酬取引で受け取った場合は「資本」に、現金決済型の株式報酬取引で受け取った場合は「負債」に対応する増加を認識しなければなりません(IFRS2.7)。

また、株式報酬取引で受け取った財貨・サービスが、資産としての認識の要件を満たしている場合には「資産」として、満たしていない場合には、「費用」として認識しなければなりません(IFRS2.8)。

 

<仕訳例> 


仕訳例を示すと下記のとおりとなります。

 

● 持分決済型の株式報酬取引で受け取った場合

 (借方)株式報酬費用 または 資産 ××× (貸方)資本 ×××

 

● 現金決済型の株式報酬取引で受け取った場合

 (借方)株式報酬費用 または 資産 ××× (貸方)負債 ×××

 

 

<サービス取引の場合>


企業は、株式報酬取引で受け取ったサービスを、取得時点で認識しなければなりません(IFRS2.7)。

したがって、株式報酬取引の対価がサービス取引の場合、資本性金融商品の確定タイミングの違いによって、下記のとおり認識しなければなりません。

 

● 付与した資本性金融商品が直ちに確定する場合

この場合、企業は、当該資本性金融商品の対価として相手方が提供するサービスは、すでに受け取っているものと想定しなければなりません。そのため、企業は、この場合、受け取ったサービスの全額を、対応する資本の増加とともに、付与日において、全額費用認識しなければなりません。(IFRS2.14,32)

 

● 付与した資本性金融商品が、相手方が一定期間の勤務を完了するまで確定しない場合

この場合、企業は、当該資本性金融商品の対価として相手方が提供するサービスは、将来において権利確定期間中に受け取るものと想定しなければなりません。そのため、企業は、この場合、受け取ったサービスを、対応する資本の増加とともに、権利期間中に相手方から提供されたときに、費用認識しなければなりません。(IFRS2.15,32)

 

IFRS2号では、当該例として下記2つが挙げられています。

(a)

従業員が、3年間の勤務を完了することを条件に、ストック・オプションが付与されている場合

 

当該ストック・オプションの対価として従業員から提供されるサービスを、将来において、3年間の権利確定期間にわたって受け取るものとして費用認識します。

(b) 従業員が、業績条件の達成および業績条件の充足までの継続勤務を条件に、ストック・オプションを付与されており、業績条件がいつ充足されるかによって権利確定期間の長さが変わる場合

企業は、予想される権利確定期間の長さを、付与日現在で、業績条件についての最も可能性の高い結果に基づいて見積り、当該ストック・オプションの対価として従業員から提供されるサービスを、将来において、当該予測される権利確定期間にわたって受け取るものとして費用認識します。

ただし、業績条件が株式市場条件である場合には、予想される権利確定期間の長さの見積りは、付与したオプションの公正価値の見積りに用いた仮定と首尾一貫したものでなければならず、その後に修正してはなりません

一方、業績条件が株式市場条件ではない場合には、その後の情報によって権利確定期間の長さが従来の見積りと異なることが示されているときは、必要に応じて権利確定期間の見積りを修正しなければなりません

4.測定 - 持分決済型の株式報酬取引 -

<基本となる考え方>


持分決済型の株式報酬取引については、企業は、受け取った財貨・サービスおよびそれに対応する資本の増加を、受け取った財貨・サービスの公正価値で、直接測定しなければなりません(IFRS2.10)。

ただし、受け取った財貨・サービスの公正価値を企業が信頼性をもって見積もれない場合には、企業は、受け取った財貨・サービスおよびそれに対応する資本の増加を、付与した資本性金融商品の公正価値を参照して、間接的に測定しなければなりません(IFRS2.10)。

 

原則・・・受け取った財貨・サービスの公正価値で直接測定

信頼性をもって測定できない場合・・・付与した資本性金融商品の公正価値で間接的に測定

 

上記の基本的な考え方をもとにIFRS第2号では下記のように規定しています。

 

 

<従業員からのサービス提供の場合>


受け取った従業員サービスの公正価値は直接測定することは困難のため、企業は受け取ったサービスの公正価値を、付与した資本性金融商品の公正価値で間接的に測定しなければなりません。付与した資本性金融商品は付与日現在で測定しなければなりません。(IFRS2.11,12)

 

 

<従業員以外との取引の場合>


一方、従業員以外との取引の場合、受け取った財貨・サービスの公正価値の測定は通常可能のため、財貨・サービスの受領日において、受け取った財貨・サービスの公正価値で測定しなければなりません。ただし、受け取った財貨・サービスの公正価値を信頼性をもって測定できない場合付与した資本性金融商品の公正価値で間接的に測定しなければなりませんが、IFRS第2号ではこのような状況を「稀な状況(rare case)」として限定しています。(IFRS2.13)

 

 

なお、企業が受け取った識別可能な財貨・サービスが、付与した資本性金融商品または発生した負債の公正価値を下回るように見える場合、通常この状況は他の対価(すなわち、識別可能でない財貨・サービス)を企業が受け取る(または受け取る予定である)ことを示していると考えられます。そのため、企業は、受け取った(または受け取る予定である)識別可能でない財貨・サービスを、株式報酬の公正価値と受け取った(または受け取る予定である)識別可能な財貨・サービスとの差額として測定しなければなりません。また、識別可能でない財貨・サービスは付与日現在で測定しなければなりません。(IFRS2.13A)

5.付与した資本性金融商品の公正価値で測定される取引の評価方法

付与した資本性金融商品の公正価値で測定される取引について、市場価格が利用可能な場合は、測定日現在の市場価格に基づき、契約条件を考慮に入れて測定しなければなりません(IFRS2.16)。

一方、市場価格が利用不可能な場合は、知識を有している自発的な当事者間の第三者間取引における見積価格を、評価技法を用いて見積もらなければなりません。評価技法は、金融商品の価格算定についての一般に受け入れられている方法論と整合したものでなければならず、知識のある自発的な市場参加者であれば価格設定において考慮するであろう要因と仮定のすべてを織り込まなければなりません。(IFRS2.17)

 

測定日(maesurement date)」とは、付与した資本性金融商品の公正価値が、本基準の目的上、測定される日をいいます。従業員及び他の類似サービス提供者とのとの取引については、測定日は付与日となり、一方、従業員以外との取引については、測定日は、企業が財貨を獲得した日または相手がサービスを提供した日となります(IFRS2付録A)。

 

 

<権利確定日後> 


IFRS第2号では、権利確定後に付与した資本性金融商品が失効したり、ストック・オプションが行使されなかった場合、いったん計上した株式報酬費用を戻り益として利益計上することは禁止されています。あくまで資本項目内での振替にとどまります。(IFRS2.23)

一方、日本基準では失効部分は戻り益として利益計上するという違いがあります。

 

 

<資本性金融商品の公正価値が信頼性をもって見積もれない場合>


稀な状況において、付与した資本性金融商品の測定日現在の公正価値を信頼性をもって見積もれない場合、その資本性金融商品の本源的価値(intrinsic value)により測定しなければなりません。

この場合、認識当初は財貨・サービスを取得した日現在で測定し、その後は各報告期間の末日および最終決済日で本源的価値を再測定し、その変動を当期の純損益として認識しなければなりません。(IFRS2.24)

 

日本基準では未上場企業の場合、本源的価値モデルが採用される場合が一般的ですが、IFRSでは資本性金融商品の公正価値を信頼性をもって見積もれないのは「稀な状況(rare case)」として限定しています。

また、日本基準では本源的価値を再評価する必要はありませんが、IFRSでは本源的価値を各報告期間の末日で再評価するとともに変動額を損益に反映することが要求されています。

 

本源的価値で測定される株式報酬は、最終的に確定した、または、権利確定すると見込まれる資本性金融商品の数に基づいて、受け取った財貨・サービスを認識します。 企業は、その後の情報により、確定すると見込まれる資本性金融商品の数が従前の見積りと異なることが示されている場合には、必要に応じて、その見積りを修正し、また、権利確定日においては最終的に確定した資本性金融商品の数に等しくなるように見積りを改訂しなければなりません。権利確定後は、資本性金融商品がその後に失効したり、期間終了時に消滅したりした場合には、受け取った財貨・サービスについて認識した金額を戻し入れなければなりません。(IFRS2.24)

 

6.測定 - 現金決済型の株式報酬取引の場合 -

現金決済型の株式報酬取引については、企業は、受け取った財貨・サービスおよび発生した負債を、負債の公正価値で、測定しなければなりません。

その後は各報告期間の末日および最終決済日で当該負債の公正価値を再測定し、その変動を当期の純損益として認識しなければなりません。(IFRS2.30 )

 

負債は、当初および決済までの各報告期間の末日において、オプション価格算定モデルを適用して、株式増価受益権が付与された契約条件と従業員がそれまでにどの範囲までサービスを提供しているかを考慮に入れることにより、株式増価受益権の公正価値で測定しなければなりません(IFRS2.33)。

7.複合決済型の株式報酬取引

複合決済型の株式報酬取引については、企業は、当該取引またはその構成要素を、企業に現金等で決済する負債が発生している場合にはその範囲で現金決済型の株式報酬取引としてそのような負債が発生していない場合にはその範囲で持分決済型の株式報酬取引として、会計処理しなければなりません(IFRS2.34 )。

 

具体的には決済方法の選択権を誰が保有しているかで会計処理が異なります。

 

● 従業員等に決済方法の選択権が与えられている場合

企業は複合金融商品を従業員等に付与していることとなるため、負債部分と資本部分を分けて処理しなければなりません(IFRS2.42)。

 

● 企業に決済方法の選択権が与えられている場合

企業に現金決済義務ある場合、現金決済型として処理し、現金決済義務がない場合、持分決済型として処理しなければなりません(IFRS2.42) 。

8.開示

<当期中に存在していた株式報酬契約の性質と範囲>


企業は、当期中に存在していた株式報酬契約の性質と範囲を財務諸表利用者が理解できるようにする情報を開示しなければなりません(IFRS2.44)。当該原則を満たすため、企業は最低限下記の開示をしなければなりません(IFRS2.45)。

 

【最低限必要な開示事項】

(a)

当期中に存在していた株式報酬契約の各種類の説明

各契約の権利確定条件、付与されたオプションの最大期間、決済方法(現金決済か株式決済か)などの全般的な契約条件を含む。同種の株式報酬契約の場合、集計して開示することも可能です。 

(b) 次のグループごとのオプション数加重平均行使価格
 ・ 期首残高

 ・

期中の付与 
 ・ 期中の失効
 ・ 期中の行使
 ・ 期中の満期消滅
 ・ 期末残高
 ・ 期末現在の行使可能残高
(c)

期中に権利が行使されたストック・オプションについて、権利行使日時点の加重平均株価 

(d) 期末時点に残っているストック・オプションについて、行使価格の範囲と残存契約年数の加重平均 

 

 

<当期中に受け取った財貨・サービスの公正価値または付与した資本性金融商品の公正価値の算定方法>


企業は、当該期間中に受け取った財貨・サービスの公正価値または付与した資本性金融商品の公正価値だどのように算定されたかを、財務諸表利用者が理解できるようにする情報を開示しなければなりません(IFRS2.46)。当該原則を満たすため、企業は最低限下記の開示をしなければなりません(IFRS2.47,48,49)。 

 

【資本性金融商品の公正価値を参照して間接的に測定している場合の最低限必要な開示事項】

(a)

期中に付与されたストック・オプションについて、測定日時点の公正価値公正価値の測定方法に関する情報  

 ・

 使用したオプション価格算定モデルおよび当該モデルに対する入力値

(加重平均株価、行使価格、予想ボラティリティ、オプション残存期間、予想配当、リスクフリーレート、その他のパラメータ(使用した方法及び予想される早期権利行使の影響を織り込むために行った仮定を含む))

 ・

 予想ボラティリティの算定方法

(予想ボラティリティが実績ボラティリティにどの程度基づいているかを含む)

 ・  株式市場条件などオプション付与のその他の特徴が公正価値の算定に織り込まれているかどうか、およびその場合の方法
(b) 期中に付与されたストック・オプション以外の資本性金融商品について、測定日現在における加重平均公正価値、その公正価値の算定方法に関する情報
 ・  公正価値が観測可能な市場価格を基礎にして測定されていない場合には、その算定方法
 ・  予測配当が公正価値の測定に織り込まれているか否か、およびその方法
 ・

 当該資本性金融商品の他の特徴が公正価値の測定に織り込まれているか否か、およびその方法

(c)  期中に条件が変更された株式報酬契約について 
 ・ それらの変更に関する説明
 ・  付与した増分公正価値(それらの変更の結果としての)
 ・  付与して増分公正価値をどのように測定したかに関する情報

 

【受け取った財貨・サービスの公正価値を直接測定してる場合の開示事項】

・当該公正価値ををどのように算定したか(当該財貨・サービスの市場価格で測定したのかなど)

 

従業員以外との株式報酬取引の場合で、受け取った財貨・サービスの公正価値を見積もれない場合の開示事項

・その旨

・推定が反証された理由

 

 

<株式報酬取引が当期純損益および財政状態に与えた影響>


企業は、株式報酬取引が企業の損益および財政状態に与えた影響を、財務諸表の利用者が理解できるようにする情報を開示しなければなりません(IFRS2.50)。当該原則を満たすため、企業は最低限下記の開示をしなければなりません(IFRS2.51)。

 

【最低限必要な開示事項】

(a)

受け取った財貨・サービスが資産としての認識の要件を満たさず、そのため直ちに費用として認識された株式報酬取引から生じた、当期に認識された費用の総額

(費用総額のうち株式決済型の株式報酬取引として会計処理された取引から生じた部分を含む)

(b) 株式報酬取引から生じた負債について 
・期末現在の帳簿価額の合計
・現金または他の資産に対する相手方の権利が当期末までに確定した負債(例えば、確定した株式増加受益権)の当期末現在の本源的価値の合計

 


 

 

 

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