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シリーズ<3> 種類株式の活用@

1.はじめに

 シリーズ3、シリーズ4では、種類株式の活用方法について解説します。会社法の改正により、非常に柔軟な株式設計が可能になりました(会社法108条1項各号)。経営者は、自らの経営の自由度と資金調達の可能性のバランスを考えることで、さまざまな形式の株式を発行することができるようになり、一方で投資家は、自らの投資スタンスに合わせた形で資金提供を行うことが可能になりました。

 こうした状況において、経営者にとって重要なことは、自分たちがどのような株式を発行したいのかをしっかりと把握し、投資家の要望がどのようなものがあるかを理解することにあります。また、どれだけ素晴らしい株式を設計したとしても、それが発行可能でなければ意味がありません。また、種類株式の持つ効力をしっかりと理解して活用しないと、必要以上に調達コストがかかったり、逆に、資金提供者が現れなかったりします。

 

≪株式設計で考慮すべきこと≫

  • 経営者はどのような株式設計を望んでいるのか(経営の自由度を優先するのか、調達コスト削減を優先するのか等)
  • 自社を取り巻く資金提供者(メインバンクやベンチャー・キャピタリスト等)が何をリターンとして望んでいるか
  • 法的に問題ないか

 シリーズ3では、まず普通株式と種類株式の違いについて解説した後、全株式に対する内容の付加について解説します。続けて、シリーズ4では、各種類株式について解説していきます。

2.普通株式と種類株式

 まず、株式の設計方法を大きくわけると、次の3つに分類できます。

 

≪分類≫

@会社法が予定している通常のままで何もしない場合

A全株式に特殊な内容を付加する場合

B一部の株式にのみ異なる内容を付加する場合

 

 Bのように一部の株式にのみ異なる内容の株式を発行する場合を、種類株式の発行と言います。なお、2種類以上の内容の株式を発行している会社を「種類株式発行会社」という言い方をします。

 AとBは似ているようですが、まったく違うものです。例えば、株式公開を行っていない株式会社では、すべてが譲渡制限付株式ですが、これはすべての株式に対して内容が付加されているので、種類株式ではありません。あくまでも種類株式は、一部の株式に対してのみ内容の異なる設計が施された株式を発行している場合に使うものです。

 会社法ではAのように全部の株式にある種の内容を付加することを認めています(会社法107条1項各号)が、具体的には、以下の3種類があります。

 

≪株式に付加できる内容(会社法107条1項)≫

  • 譲渡制限付株式(1号)
  • 取得請求権付株式(2号)
  • 取得条項付株式(3号)

 以下では、それぞれ各号の内容について解説します。

3.譲渡制限付株式(会社法107条1項1号)

 譲渡制限付株式とは、譲渡による当該株式の取得について会社の承認を要する旨の定めを設けている株式のことをいいます(会社法2条17号)。これは、未公開会社の多くの株式会社で採用しているもので、そういった会社の定款には必ず記載されています。

 譲渡制限付株式とする場合には、定款にその旨を記載する必要があります(会社法107条2項1号イ)。また、この定款変更に関する手続きは、議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数をもって決議される必要があります(会社法309条3項1号)。特別決議(会社法309条2項)よりも要件が厳しくなっていますので、注意が必要です。株式の内容については、登記事項になりますので(会社法911条3項7号)、変更登記が必要になります(会社法915条、商業登記法62条)。

 譲渡制限付株式は、経営者や現在の株主にとって好ましくない者が株主として会社経営に参画することを防ぐためのものです。もちろん、証券としての重要な機能である“流動性”に対して制限がかけられてしまうため、投資家は何かしらの見返りを求めることになります。銀行などは出資と貸出をセットにすることで、利子収入を考えているかもしれませんし、ベンチャー・キャピタルは、高配当や株式公開による創業者利益を目的としているかもしれません。また、これらの出資者は、モニタリングや役員への人材派遣などを通じて、経営にも参画することを当然考えています。

 このため、譲渡制限会社において増資を図る場合、その投資家が何を最終的に望んでいるのかを理解することが大切になります。例えば、経営者は株式公開など目指していないのに、株式公開を目指させるようなベンチャー・キャピタリストが出資に応じてしまうと、経営者と出資者のアンマッチが生じてしまい、経営がうまくいかなくなってしまいます。通常の会社は、非公開会社ですので、資本戦略は十分に考えてから増資等を行うことが重要になります。

4.取得請求権付株式(会社法107条1項2号)

 取得請求権付株式とは、株主が会社に対して株式の取得を請求できる株式のことをいいます(会社法2条18号)。原則として、通常の株式は、その出資に対する払戻しは認められておらず、株主は譲渡するしか投下資金を回収する方法はありません。しかし、この取得請求権付株式は、金銭による買取りや社債などの財産への転換を求めることが可能で、譲渡以外での投下資本の回収を可能とします。

 取得請求権付株式を定めるときは、次の事項を定款で定める必要があります(会社法107条2項2号)

(イ)その旨

(ロ)取得の対価が社債の場合には、社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

(ハ)取得の対価が新株予約権の場合は、新株予約権の内容及び数又はその算定方法

(ニ)取得の対価が新株予約権付社債の場合は、新株予約権社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項

(ホ)取得の対価が株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

(ヘ)株主が当該株式会社に対して当該株式を取得することを請求することができる期間 

 

 繰り返しになりますが、107条1項の取得請求権付株式は、すべての株式に取得請求権を付加するものですので、108条1項5号の種類株式における取得請求権付株式の場合とは異なります。具体的にはシリーズ4の種類株式のところで解説しますが、例えば、107条1項の取得請求権付株式の対価に株式は考えられませんが、種類株式の場合には対価に株式が考えられます。107条では、1種類しか株式が発行されていませんので、対価として株式を設定することは通常考えません(取得請求の対価にまた同じ取得請求権付株式を渡しても意味がないため)。

 なお、取得請求権付株式を設定するためには、株主総会で特別決議が必要となります(会社法309条2項11号)。また、株式の内容については、登記事項になりますので(会社法911条3項7号)、変更登記が必要になります(会社法915条、)。

5.取得条項付株式(会社法107条1項3号)

 取得条項付株式とは、会社が一定の事由が生じたことを条件として、株式を取得することができる旨が定められている株式のことをいいます(会社法2条19号)。取得請求権付株式が株主側から会社に対して取得するよう請求できる株式であったのに対し、取得条項付株式は、会社側が株主に対して株式を引き渡すように請求できる株式になります。すなわち、株主は、自らの意思とは関係なく、その株主の立場を剥奪される可能性があるのです。

取得条項付株式を定めるときは、次の事項を定款で定める必要があります(会社法107条2項3号)。

(イ)一定の事由が生じた日に当該株式会社がその株式を取得する旨及びその事由

(ロ)当該株式会社が別に定める日が到来することをもって上記の事由とするときは、その旨

(ハ)一定の事由が生じた場合に取得するのが一部の株式の場合には、その旨及び取得する株式の一部の決定方法

(ニ)取得の対価が社債の場合には、社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法(ホ)取得の対価が新株予約権の場合は、新株予約権の内容及び数又はその算定方法

(ヘ)取得の対価が新株予約権付社債の場合は、新株予約権社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項

(ト)取得の対価が株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

 

 取得条項付株式についても、取得請求権付株式と同様に、107条1項の全部の株式に付加するものと、108条1項7号の種類株式とに分けられますので、しっかりと区別が必要になります。具体的にはシリーズ4の種類株式のところで解説しますが、その設定方法等に相違があります。

 取得条項付株式は、一定事由の発生によって、既存株主を株主から強制的に排除することができる株式なので、その設定には総株主の同意が必要となります(会社法110条)。また、株式の内容については、登記事項になりますので(会社法911条3項7号)、変更登記が必要になります(会社法915条、)。

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