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市場株価法・類似取引法・過去取引事例法(マーケット・アプローチA)

(平成23年11月30日現在)

3−3.市場株価法

 市場株価法は、上場(公開)企業のみが採用できる方法で、株式市場における実際の株価を参照する方法です。

 一般的に、前日終値、1カ月間の終値の平均値、3カ月間の終値の平均値、6カ月間の終値の平均値などを用いて算定します。平均値としては何かしらの情報公開によって異常値と認められる株価が含まれる場合には、当該異常値を除いた平均値が算定されることもあります。また、参照する期間は評価目的などに応じて異なります。一般的には、各期間の平均値を算出し、それを評価レンジとして用いることになります。

3−4.類似取引比準法

 類似取引比準法は、類似取引のうち、公表されている取引価格と売買対象企業の財務数値を参照して各種倍率を算定し、当該倍率を用いて評価対象企業の評価を行う方法です。例えば、M&A取引において、過去に発生した類似したM&A取引で取引価格などが公表されており、かつ、被買収企業が上場企業で財務数値が公開されているケースなどが考えられます。

 

 類似取引比準法と類似公開企業比準法は同じマーケット・アプローチですが、異なる基準に基づいて評価対象企業の株価が算定されます。2つの方法を比較すると次のようになります。

項目   類似取引比準法 類似公開企業比準法
倍率の算定方法 類似取引の取引価格をベースにして倍率を算定する。 類似公開企業の株価(株式市場の取引価格)をベースにして倍率を算定する。 
コントロール・プレミアム

買収を前提とするようなM&A取引などの場合には、コントロール・プレミアムを含んだ価格となる。

市場株価は少数株主同士の売買を前提としているため、コントロール・プレミアムを含んでいない価格となる。
参照データの数 日本の場合、欧米に比べてM&A取引等の情報が整備されておらず、取引件数が少ない(特に非上場企業)ことから適切な倍率が求められない可能性がある。 類似公開企業として選定しうる母集団数は多いため、類似取引比準法に比べて公正な倍率が算定される可能性が高い。


 上記のように、類似取引比準法にはコントロール・プレミアムの加味といった一定の理論的な有意性があるものの、参照データの少なさから、株式評価の評価報告書上ではあまり採用されない方法です。

 ただし、金融商品取引法によるTOB開示制度が整備されたため、公開買付報告書等を参照することでプレミアム率等を参照することで評価することも考えられます。また、上場企業に対するM&A等の件数も増え、参照データ数も増加してきました。そこで、株式評価の評価報告書上では採用されなくても、最終的な売買価格の決定では類似取引の指標を参照・参考にしているものと考えられます。

3−5.過去取引事例法

 過去取引事例法は、評価対象企業の過去の株式評価実績を参考にする方法です。欧米等では、プライベート・エクイティ・ファンドやエンジェル投資家が成熟していることから、非上場株式であっても頻繁に取引が行われており、過去の取引価格を参照するケースがあります。

 また、株式売買だけではなく、増資等の際にも株式評価が行われるため、直近で増資した際に行われた評価額を参照することもあります。ただし、取引目的と増資目的とで評価目的が異なるため、過去の評価額を参考にする場合には、評価目的・前提や状況等を考慮する必要があります。

3−6.マーケット・アプローチのまとめ

 マーケット・アプローチは、それぞれの評価方法において様々な前提のもとで評価されているため、評価対象企業の評価を行う際に評価目的に合わせて調整をする必要があります。マーケット・アプローチを採用する際の留意事項を簡単にまとめると以下のとおりです。

  

【まとめ】

  • 類似公開企業比準法を採用する場合、類似公開企業の選定に十分留意する。ただし、類似企業の選定の際に厳密な類似性を要求すると類似企業を選定することができなくなってしまうので、ある程度の割り切りは必要である。
  • 類似取引比準法や過去取引事例法などでは評価目的や参照データ数の有意性などにも考慮して利用する必要がある。
  • 上場企業であれば、市場株価法を用いるのが一般的である。ただし、日々の取引量が不十分で、適切な市場株価が形成されていないと判断出来る場合には、上場企業であっても類似公開企業比準法を採用する場合もある。
  • マーケット・アプローチ全体としての利点は、実際の取引価格(株価もしくはM&A等の売買価格)を参照している点である。ただし、その価格形成の特性を十分に理解し、評価目的等に照らして選択しなければ、誤った評価額を導く可能性がある。

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