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2012/08/09 フォード、生産方式統一 世界で運営効率化

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今日は、本日日経朝刊6面のフォードの話題から。

 

<2012年8月9日 日経朝刊6面>


・米フォード・モーターは世界の自動車工場で生産方式を統一する。

・ITを取り入れて1つの工場で作ることのできる車種の数を最大で7つに増やし、混流生産方式を取り入れる。

・エンジンや足回りなど車の基本構造となる車台を絞ったうえで、外観や一部性能が異なる「派生車」の数を増やし、1つのラインで複数の車種を生産する。

車の売れ行きが工場の稼働率に左右されにくくなり、所得層が多様な新興国における需要の変動に対応しやすくなる

・また、ライン設計をバーチャル化する手法を全面導入。

・一連の生産改革で2016年までに既存工場の生産能力を11年と比べ27%高める予定。

・4-6月期では、成長鈍化や人件費の上昇で新興国事業は赤字。黒字転換に一段とコスト削減が求められる。


<要約記事はここまで>

 

世界の自動車大手の1つである、フォード・モーター(FORD MOTOR)が大規模な生産改革に乗り出すようです。

 

Ford’s Global One Manufacturing System Drives Efficiencies, Increases Capabilities and Lowers Total Cost of Production(August 06, 2012)

【リソース】フォード社、HPより。

 

今日は、フォードの業績状況について確認したいと思います。

◆フォード・モーター(FORD MOTOR)の業績推移

フォードは、ご承知の方も多いと思いますが、ヘンリー・フォードが創設した世界の大手自動車会社で、経営学を勉強すると必ずと言っていいほど登場する「フォード生産方式」を確立したので有名ですね。

いわゆる、分業と大量生産方式による労働生産性の向上で低価格商品を作ることができる、という現代の生産方式の基礎的な部分を築き上げたのがフォード生産方式です。

経営学では、その後、極端な分業(極端な単調作業の繰り返し)が従業員のモチベーションを下げてしまい、逆に労働生産性を引き下げ、また、T型フォード車の単一生産でモデルチェンジを一切行わなかったため、自動車時代の流れに乗ったGM(General Motor)にとってかわられた、、、という事例で展開されていきます。

 

 

さて、余談はこの辺にして、、、

フォードの直近5年の業績は以下のとおりです。

 

<売上高>

【リソース】FORD MOTOR 10-Kより筆者集計。円換算は1$=78.5円。

 

<営業利益と利益率推移>

 

【リソース】FORD MOTOR 10-Kより筆者集計。円換算は1$=78.5円。

 

リーマンショックの2008ー2009を底に業績が回復しているのがわかります。

ただ、2011年度は、税効果による影響が大きく、Provision for income taxsで115億ドルの利益を上乗せしています

税効果前のIncome before income taxesは約86億ドル(前期71億ドル)です。

Income before income taxesでの売上高利益率はグラフのとおりとなっています。

直近で6%台まで回復しているのがわかります。

◆フォードの直近1-6月期の業績

直近の4-6月期と半期の1-6月期の業績は次のとおりです。

 

<直近の四半期ベース>

【リソース】FORD MOTOR 10-Qより転載。

 

減収減益ですね。

1-6月期は、売上高前期比△4%、最終利益は△50%となっています。

前期に比べて、原価率(Automotive cost of sales / Automotive Revenues)が86.8%から88.3%と2ポイント近く悪化しているのをはじめ、税金コストが上昇している分も大幅な減益要因といえます。

 

なお、1-6月期のセグメント情報は次のとおりです。

 

<地域別セグメントによる業績>

【リソース】FORD MOTOR 10-Qより転載。

 

North Americaでは増収増益となっているのが確認できますが、それ以外では業績が落ちており、とくに欧州債務危機の影響でEuropeでは大幅な赤字計上に転落しています。

また、Asia Pacific Africaでも赤字となっており、アジア・アフリカなどの新興国の旺盛な需要を取り込めていないことがわかります。

 

最後に、BizBlogで取り上げた、トヨタ自動車、独フォルクスワーゲンと直近の財務数値を並べてみましょう。

 

フォード(米)

フォルクスワーゲン(独)

トヨタ自動車(日)

直近期(通期) 2011.12 2011.12 2012.3
適用会計基準 US-GAAP IFRS US-GAAP

Total sales and revenue/売上高

136,264 millions $

(10,696,724百万円

159,337 millions €

15,933,700 百万円

18,583,653 百万円

Operating income/営業利益

8,681 millions $ 

(681,459百万円)

11,271 million €

1,127,100 百万円

355,627 百万円

売上高営業利益率

6.37% 

7.07%

1.91%

Net income/当期利益 ※

 20,213 millions $

(1,586,720百万円)

15,409 millions €

1,540,900 百万円

283,559 百万円

Cash and cash equivalents

/現金・現金同等物

17,148 millions $

(1,346,118百万円) 

16,495 millions €

(1,649,500 百万円)

1,679,200 百万円

Total assets/資産総額

178,348 millions $

(14,000,318百万円) 

253,626 millions €

(25,362,600 百万円)

30,650,965 百万円

Stockholders' equity/株主資本 ※

15,023 millions $

(1,179,305百万円) 

57,539 millions €

( 5,753,900 百万円)

10,550,261 百万円

世界新車販売台数(2011年)

570万台(世界6位) 

816万台(世界2位)

795万台(世界3位)

※ 日本円ベースは100円/ユーロ、0.07円/ウォンで簡便的に換算している。日本円換算数値はあくまで参考値。

※ 当期利益と株主資本は支配株主帰属分

 

消費者ニーズの多様化に伴い、多品種少量生産方式が主流になりつつある家電系の製造方式では、最近でセル生産方式が普及しています(1人もしくは少人数で完成品まで組み立てていくもの)。

自動車製造でセル生産方式まではいかないと思いますが、日経の記事にもあるように、「1000万台時代」に突入していく中で、世界大手自動車メーカーは混流生産方式へ移行していくのが潮流といえるでしょうか。

 

世界の自動車大手の動きに注目していきたいですね。

以  上

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