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2013/02/06 平成25年度税制改正大綱【中編】

今日は、前回の平成25年度税制改正大綱の確認の続きです。

以下は、自民党・公明党公表の『平成25年度税制改正大綱』になりますので、引き続き必要な方はご利用ください。

 

平成25年1月24日 自由民主党・公明党公表『平成25年度税制改正大綱』

◆第5 個人所得課税

1 所得税の最高税率の見直し(増税)

 現行の所得税の税率構造に加え、課税所得4,000万円超について45%の税率を設けることになりました。この改正は平成27年分以後の所得税について適用することになります。

 

【解説】

 富裕層への増税路線は継続されるようです。税収拡大、かつ、格差是正のための政策として後述する資産課税の増税と合わせて、この路線は今後も続きそうですね。

 平成25年分、すなわち今年から給与所得控除の上限設定がスタートします。平成24年分の所得税では、給与収入が1500万円を超えても5%の給与所得控除が常に認められていましたが、税制改正により給与所得控除は245万円を上限とされることになっています。

 参考までに、給与所得控除の改正については、こちらをご覧ください。

 

国税庁のタックスアンサー

http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1410.htm

 

 また、現行の所得課税に対する税率テーブルは次のとおりです。

 

課税される所得金額税率控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超 40% 2,796,000円

【リソース】国税庁タックスアンサーより。http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.html

2 金融・証券税制

(1)金融所得課税の一体化の前進 p10〜(減税)

【改正案】

 国債、地方債、公募公社債、上場公社債などの特定公社債等に係る利子所得、譲渡所得の課税方式を源泉分離課税から申告分離課税へ変更する。

 そのうえで、上場株式等の譲渡損失及び配当所得との損益通算を可能にする。なお、配当所得との損益通算は、配当所得を申告分離課税方式を採用した場合に限られます。

 

【解説】

 金融所得課税の一体化は以前より議論されているもので、今回の改正で一歩前進しました。

 利子所得と配当所得は、基本的に源泉分離課税であり申告が必要とされません。逆の言い方をすれば、源泉徴収によって所得税(及び住民税利子割)が徴収され、株式や債券の売買などで損失が生じたとしても利子所得を損益通算することができませんでした。

 そこで、利子所得について申告分離課税方式への選択も認め、株式や債券等の売買による譲渡損失とも損益通算できるように改正しました。なお、源泉徴収された利子所得について、申告を要しないこともすることができます。

(2)同族会社発行社債の役員等の支払いを受ける利子の総合課税化 p13〜(増税)

【改正案】

 一般公社債等の利子等については、20%源泉分離課税を維持する。ただし、同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受けるものは、総合課税の対象とする。

 

【解説】

 若干、細かい内容の規制ですが、筆者個人が気になったのでピックアップしました。但し書き以降の部分は、いわゆる少人数私募債の利子所得による節税対策を防止するものだと考えられます。

 中小企業の場合、資金調達は社長をはじめとする経営陣による資金供与が少なくありません。小規模企業では、役員からの無利息による貸付が行われるわけですが、規模がある程度大きくなってくると役員からの貸し付けではなく、社債を発行して資金調達することがあります。政策的にも中小企業の資金調達手段の多様化を目的として、社債という方法が一部で推進されてきた経緯もあります。

 なお、通常の社債は担保社債法や金融商品取引法の規制の観点から、いわゆる少人数私募債が組成されて実行されるのが通常です。

 この少人数私募債は有利子負債が一般的です。このため、少人数私募債に応じた役員は社債利息を受け取り、利子所得として課税されることになります。利子所得は金額に関係なく20%課税であるため、別の観点からすると節税になります。すでに高所得者である役員が役員報酬をあげずに、社債を組成し、その社債利息を受け取ると、累進課税を受けない社債利息部分が節税になるのです。

 たとえば、5000万円を社債として応募し、金利5%とすれば、年間250万円の所得が生じますが、これはすべて20%課税とすることができるのです。

 上記の改正案はこれを防止する目的で、総合課税の対象とすることが提案されています。

(3)上場株式等の譲渡所得・配当所得の軽減税率の撤廃 p22(増税)

【改正案】

 上場株式等の配当等及び譲渡所得等に係る10%軽減税率(所得税7%、住民税3%)は、平成25年12月31日にをもって廃止する。

 

【解説】

 後述する日本版ISAの導入に伴い、いわゆる10%軽減税率が撤廃され、原則の20%課税へ戻るようです。以前から原則課税へ戻すことが議論され続けましたので、ようやく決着がついたとも言えます。しかし、証券市場としては、税負担の高まりによりある程度の影響は受けるものと考えられます。

(4)日本版ISAの導入 p20〜(新設/減税

【改正案】

 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置等について、次の措置を講ずる(主なものをピックアップ)。

 

<期 間>

平成26年1月1日から平成35年12月31日(現行:平成26年1月1日から平成28年12月31日)まで非課税口座を開設する。

 

<対 象>

非課税の対象となる配当等及び譲渡所得等を、次に掲げるものとする。

非課税口座に非課税管理勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの期間(以下「非課税期間」という。)内に支払を受けるべき非課税口座内上場株式等の配当
非課税期間内に金融商品取引業者等への売委託等による譲渡をした場合における当該譲渡に係る非課税口座内上場株式等の譲渡所得等。

 

<要 件(主なもの)>

非課税口座に関する要件は次のとおりとする(主なもの)。

●金融商品取引業者等は、居住者等から提出を受けた非課税適用確認書に記載された勘定設定期間内の各年の1月1日に非課税管理勘定を設ける。
●各年分の非課税管理勘定においては、非課税口座に非課税管理勘定が設けられた日から同日の属する年の12 月31 日までの間に受け入れた上場株式等の取得対価の額の合計額が100 万円を超えないものを受け入れることができることとする。

非課税適用確認書は、居住者等からの申請に基づき税務署長から交付を受けた書類で、勘定設定期間として次に掲げる期間のいずれかの期間、当該期間の区分に応じそれぞれ次に定める基準日における国内の住所その他の事項が記載された書類をいうものとする。

勘定設定期間 基準日
(イ) 平成26 年1月1日から平成29 年12 月31 日まで 平成25 年1月1日
(ロ) 平成30 年1月1日から平成33 年12 月31 日まで 平成29 年1月1日
(ハ) 平成34 年1月1日から平成35 年12 月31 日まで 平成33 年1月1日


● 非課税適用確認書の交付を受けようとする居住者等は、交付申請書に基準日における住所地を証する住民票の写し等を添付して、勘定設定期間の開始の日の属する年の前年10 月1日から当該勘定設定期間の終了の日の属する年の9月30 日までの間に、金融商品取引業者等の営業所に提出するものとする。
●居住者等は、同一の金融商品取引業者等に重複して非課税口座を開設することができないものとし、同一の勘定設定期間に重複して非課税適用確認書を提出することができないものとする。

 

【解説】

 英国で導入されているIndividual Savings Account(個人貯蓄口座)を参考に導入された制度であるため、日本版ISAと呼ばれています。日本語では、「少額投資非課税制度」と言われています。

 このISA制度の最も大きな特徴は、(非課税であることはもちろんのこと、)年間投資額の上限が少額であり、かつ、持ち越せないことです。

 年間投資額は100万円程度であるため、一部の裕福層にとってはほとんど意味のない制度であるのと対照的に、ミドル層にとって投資意欲を起こさせる適度な金額と言えるでしょう。特に、日本の場合、国民性からリスク資産への投資を回避する傾向に強いことは知られています。この日本版ISAの導入に伴って、年間100万円を上限に投資してみよう、、という方が増えるのではないかと筆者個人は考えています。

 また、この制度は100万円に達しなかった部分を翌年に持ち越すことできません。このため、最大500万円の非課税枠を享受するためには、毎年100万円の上限まで投資する必要が生じます。これは結果として数年間にわたって投資を継続させるインセンティブが起き、国民に広く薄くリスク資産へ向かわせるにはちょうどよいかと思います。合わせて、非課税枠が投資額によって上限設定されていることから、多少の値上がりですぐに売却してしまう、、というインセンティブも抑制され、証券業界で提唱されている長期保有が実現されやすいとも考えられます。

 ただ、一方で、配当所得・譲渡所得に適用されていた、いわゆる10%軽減ルールが撤廃され、本則課税である20%にセットで戻ったので、国全体における投資マインドは低下してしまうではないかと筆者個人は懸念しています。

 もちろん、国民性として証券投資への否定的なマインドは一筋縄で瓦解することはできないでしょう。学校レベルでの金融教育改革も含め、この意識改革をどのように達成できるかが、「貯蓄から投資へ」を実現するために重要であろうと筆者個人は考えます。

3 住宅税制

(1)住宅ローン特別控除制度の拡充 p23〜(減税)

【改正案】

 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について適用期限(平成25 年12 月31 日)を平成29 年12 月31 日まで4年延長するとともに、次の措置を講ずる。

 

@ 住宅の取得等をして平成26 年から平成29 年までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率、各年の控除限度額及び控除期間(10 年間)の最大控除額を次のとおりとする。


イ 一般の住宅の場合

居住年 借入限度額 控除率

各年の

控除限度額

最大控除額

平成26 年

1月〜3月

2,000 万円 1.0% 20万円 200万円

平成26 年4月

平成29 年12 月

4,000 万円 1.0% 40万円 400万円

(注1)一般の住宅とは、下記ロの認定住宅以外の住宅をいう。
(注2)平成26 年4月から平成29 年12 月までの欄の金額は、一般の住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合の金額であり、それ以外の場合における借入限度額は2,000 万円とする。

 

ロ 認定住宅の場合

居住年 借入限度額 控除率

各年の

控除限度額

最大控除額

平成26 年

1月〜3月

3,000 万円 1.0% 30万円 300万円

平成26 年4月

平成29 年12 月

5,000 万円 1.0% 50万円 500万円

(注1)認定住宅とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。
(注2)平成26 年4月から平成29 年12 月までの欄の金額は、認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合の金額であり、それ以外の場合における借入限度額は3,000万円とする。

 

<地方税>

 平成26 年分以後の所得税において住宅借入金等特別税額控除の適用がある者(平成26 年から平成29 年までに入居した者に限る。)のうち、当該年分の住宅借入金等特別税額控除額から当該年分の所得税額(住宅借入金等特別税額控除の適用がないものとした場合の所得税額とする。)を控除した残額があるものについては、翌年度分の個人住民税において、当該残額に相当する額を、次の控除限度額の範囲内で減額する。

 

居住年 控除限度額
平成26 年1月〜3月 所得税の課税総所得金額等×5%(最高9.75 万円)
平成26 年4月〜平成29 年12 月 所得税の課税総所得金額等×7%(最高13.65 万円)

(注)平成26 年4 月から平成29 年12 月までの欄の金額は、住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合(東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合を含む。)の金額であり、それ以外の場合における控除限度額は所得税の課税総所得金額等×5%(最高9.75 万円)とする。

 

【解説】

 皆さんもご承知のとおり、消費税増税に伴い拡充された住宅ローン控除の規定です。通常の住宅ローン以外にも省エネ減税なども拡充されています。

 住宅ローン減税では、消費税増税に伴う改正であるため、一般の住宅及び認定住宅ともに(注2)で記述されているように対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合の金額に限定されています。従来の住宅ローン減税の認定では「住宅の用に供した日(居住年)」判定でしたが、居住年が平成26年4月以降であっても消費税率が5%である場合には2,000万円(もしくは3,000万円)を上限とされます。

 なお、住宅ローン減税は、住宅ローンの1%(もしくは1.2%)とされているため、住宅ローン残高が減少していけば上限額は減っていきます。また、そもそも頭金を多めに入れて住宅ローンを抑制している人、もしくは繰り上げ返済をしている人にとっては、減税効果は限定されます。最大額で400万円(もしくは500万円)を最大限使い切る方は少ないのではないかと思います。

 本日のBizBlogはここまでとします。思ったより分量が多かったので、資産課税及び納税環境整備については、明日のBizBlogで特別更新しようと思います。

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