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2013/01/30 平成25年度税制改正大綱【前編】

今日は、1月24日に発表された「平成25年度税制改正大綱」について、その要旨を確認していこうと思います。

このBizBlogをご覧の皆様の多くはすでにお読みになられている方も多いかと思いますが、当Blogでも簡単に検証していきたいと思います。

 

内容は非常に多岐にわたるため、当法人のクライアントに影響の大きいところ、筆者の個人的な興味の強いところ、BizBlogをご覧になる方々が興味があるのではないか、、と思われる部分に特にスポットを当てて、解説・紹介していきたいと思います。

 

原文のPDFをアップしておきますので、一緒にご覧になってお読みいただけると理解が深まるかと思います。

 

平成25年1月24日 自由民主党・公明党公表『平成25年度税制改正大綱』

◆第1 平成25年度税制改正の基本的な考え方

 皆さん御承知のとおり、今回の平成25年度税制改正は、デフレ脱却を目指す「アベノミクス」を実現するための大胆な税制改正を行う一方で、財政再建を目指すための増税政策、財源確保の改正部分とが同居する改正案となりました。

 安倍政権では、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」を提唱しており、この税制改正大綱でも前文の部分で明記されており、これに従った税制改正であることがうたわれています。

 

(1)民間投資の喚起による成長力強化

 大枠では、民間投資の喚起するために、次の税制改正が軸になります(個別論は次項以降で解説)。

 

【大企業向け】

● 生産等設備投資促進税制の創設

● 再生可能エネルギーと省エネ設備導入の支援拡大

● 研究開発税制の拡充(共同研究を対象に)

 

【雇用関係】

● 所得拡大促進税制の創設、雇用促進税制の拡充

● 孫世代への教育資金贈与税の非課税枠の創設

 

【中小企業・農林水産業向け】

● 中小企業等の店舗改修等の特別償却・税額控除の創設

● 中小企業の接待交際費特例の拡充(最大800万円まで拡充。90%ルールの廃止)

● 事業承継税制の見直し(使いやすいように)

 

【その他】

● 日本版ISAの導入

● 金融所得課税の一体化の拡充(利子所得、配当所得、株譲渡所得関連の整理)

 

(2)社会保障・税一体改革の着実な実施

 社会保障と税の一体改革は民主党時代からもテーマでしたが、今回も引き続き各種の改正が行われています。ここは基本的に増税のオンパレードといったところでしょうか。

 

【富裕層向け】

● 所得税の最高税率の見直し(所得課税4000万円超について45%の税率へ(現行40%)

● 相続税の基礎控除の縮小及び最高税率の引き上げ

● 相続税の小規模宅地特例の拡充

● 贈与税の最高税率の引き上げ

● 贈与税の相続時精算課税制度の要件緩和等

 

【消費税対応】

● 住宅ローン減税の拡充(平成26年4月以降)

● 住宅投資減税・住宅リフォーム減税の拡充

● 自動車取得税の段階的な廃止

● エコカー減税の恒久化

● 消費税の軽減税率制度の導入を目指すことが決定

 

(3)復興支援のための税制上の対応

 東日本大震災からの復興を目指すため、次のような施策が考えられています。

 

● 防災集団移転促進事業で行われる土地の買取にかかる譲渡所得の5000万円の特別控除枠

● 住宅ローン減税の引き上げ

● 避難解除区域等への企業誘致の促進

● 固定資産税等の免除措置の1年延長

 

(4) 円滑・適正な納税のための環境整備

 適切な納税環境の整備のため、次のような施策が考えられています。

 

● 利子税(国税)と延滞金(地方税)の適用利率の見直し(低金利時代に合わせた是正)

● 上記と合わせて、還付金(国税)・還付加算金(地方税)の適用利率の見直し

● 租税教育の拡充

● 税執行のための定員の確保

 

 

 上記のように、項目を列挙しただけでも今回の改正が非常に多岐にわたっていることが理解できますね。

 平成25年度税制改正では、個人所得課税、資産課税、法人課税、消費課税、国際課税、納税環境整備、関税、検討事項の順に記載されていますが、BizBlogではビジネスマンを中心とした読者が想定されているため、法人課税から検討していこうと思います。

 また繰り返しになりますが、内容が多岐にわたるので、すべての事項については触れません。皆様の必要に応じて、原文をご覧いただければと存じます。

◆第2 法人課税

1 民間投資の喚起と雇用・所得の拡大

(1)国内投資設備を促進するための税制措置の創設 p62〜(新設)

【改正案】

 青色申告書を提出する法人の平成25 年4月1日から平成27 年3月31 日までの間に開始する各事業年度(設立事業年度を除く。)において取得等をした国内の事業の用に供する生産等設備で、その事業年度終了の日において有するものの取得価額の合計額が次の@及びAの金額を超える場合において、その生産等設備を構成する資産のうち機械装置をその法人の国内にある事業の用に供したときは、その取得価額の30%の特別償却とその取得価額の3%の税額控除との選択適用ができることとする。ただし、税額控除における控除税額は、当期の法人税額の20%を限度とする(所得税についても同様とする。)。


@ その法人の有する減価償却資産につき当期の償却費として損金経理をした金額
A 前事業年度において取得等をした国内の事業の用に供する生産等設備の取得価額の合計額の110%相当額

 ここで、生産等設備とは、その法人の製造業その他の事業の用に直接供される減価償却資産(無形固定資産及び生物を除く。)で構成されているものをいい、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設等は、該当しない。

 

【解説】

 投資促進税制として新たに創設されたものです。国内産業を活性化するために、「国内の事業の用に供する生産等設備」に限定されており、海外事業は含まれません。

 適用要件は、@償却額以上の投資を行っていること、A前期の投資額の110%相当額であることの2点です。すなわち、設備投資が前期以上に行われていることを要件としており、積極的な設備投資を促しています。

 

 現時点での製造業の流れは、労働コスト、為替といった問題だけでなく、新興国の消費そのものを確保するために海外現地での生産拠点を確立していくことです。このため、この投資促進税制の創設だけで生産拠点の国内回帰がどこまで図れるのか未知数と言えるでしょうか。

 筆者個人としては、海外事業を含めて企業全体に投資促進を促し、海外で稼いだ利益を国内に還元するような(したくなるような)税制の方が現行の製造業の活動の実態に即したもので、より活発な民間活動を刺激できるのではないかと思います。また、その結果として企業が成長すれば、国内本社の役員・従業員等にも給与等に反映されることになり、所得税・消費税等を通じて税収拡大が見込まれるのではないでしょうか。

 また、本税制は生産等設備が機械等の有形固定資産に限定されていますが、ソフトウェアも含めるべきではないかと思います。情報基盤強化促進税は現在でも制度化されていますが、要件が厳しく中小企業では実際に使えていないところが多いかと思います。現在の生産活動において、ソフトウェアを除く理由は特にないように思えます。

(2)企業による雇用・労働分配(給与等支給)を拡大するための税制措置の創設 p63〜(新設)

【改正案】

 青色申告書を提出する法人が、平成25 年4月1日から平成28 年3月31 日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、その法人の雇用者給与等支給増加額(雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額)の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上であるとき(次の@及びAの要件を満たす場合に限る。)は、その雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができることとする。ただし、控除税額は、当期の法人税額の10%(中小企業者等については、20%)を限度とする(所得税についても同様とする。)。


@ 雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと
A 平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないこと

 なお、国内雇用者とは、法人の使用人(法人の役員及びその役員の特殊関係者を除く。)のうち法人の有する国内の事業所に勤務する雇用者をいう。

 また、「雇用者給与等支給額」とは、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいい、「基準雇用者給与等支給額」とは、平成25 年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度(基準事業年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう。

 

【解説】

 民主党時代には雇用促進税制が導入されましたが、民主党の雇用促進税制は、雇用者数を増加させることを目的としたものでした。このため、雇用者数が5名以上(中小企業では2名以上)増加、増加割合が10%増加、企業都合の退職者がいない、給与等支給額が比較給与等支給額以上であること、といった要件が求められていました。

 一方で、今回の自公政権では労働分配拡大税制は、企業利益を給与に還元することを目的としたものです。すなわち、「雇用者数」を要件に入れず、「支給総額」を要件としています。このため、雇用を増やさなくても、現在雇用している従業員等へ給与を反映すればよいので非常に使い勝手がよくなっていると言えます。なお、現行の雇用促進税制についても税額控除限度額を1人当たり40万円(現行20万円)へ引き上げる形で継続されます。

 

 もちろん、雇用の安定や失業率の低位推移、非正規雇用の問題などを放置することは社会政策的に問題があるでしょうが、日本の雇用促進の最もネックとなるのは、現行労働法による労働者側の権利の強さと企業の社会保険負担の重さでしょう。この部分の大胆な改革なしに税制部分のみで雇用促進を促したとしても、企業が雇用を積極的に増加させることはないと思われます。

 今回の税制は「成長→利益拡大→給与へ反映→消費拡大」という流れをつくるためのもので、税制としては十分かと筆者個人は考えます。雇用促進については、税制以外の部分での雇用対策・就業政策等を規制緩和も含めて行ってから、それを加速させるために行うのが正当な順番かと思います。

(3)研究開発税制の拡充 p64〜(延長・拡充等)

【改正案】

試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度(研究開発税制)について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
@ 試験研究費の総額に係る税額控除制度、特別試験研究費の額に係る税額控除制度、繰越税額控除限度超過額に係る税額控除制度、中小企業技術基盤強化税制及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度について、2年間の時限措置として、控除税額の上限を当期の法人税額の30%(現行20%)に引き上げる
A 特別試験研究費の額に係る税額控除制度について、特別試験研究費の範囲に一定の契約に基づき企業間で実施される共同研究に係る試験研究費等を加える。

 

【解説】

 現行の研究開発税制を延長・拡充するようです。

 現行の研究開発税制では、法人税額の20%までとなっているところ、30%に引き上げるようです。

 また、特別試験研究費減税の制度についても、企業間の共同研究を含めることができるように拡充されます。現行の特別試験研究費減税では、国の試験研究機関や大学との共同研究についてのみ適用できます。

2 中小企業対策・農林水産業対策

(4)商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等の経営改善に向けた設備投資を促進するための税制措置の創設 p64〜(新設)

【改正案】

 青色申告書を提出する中小企業等で経営改善に関する指導及び助言を受けたものが、平成25 年4月1日から平成27 年3月31 日までの間に、その指導及び助言を受けて行う店舗の改修等に伴い器具備品及び建物附属設備の取得等をして指定事業の用に供した場合には、その取得価額の30%の特別償却とその取得価額の7%の税額控除との選択適用ができることとする。ただし、税額控除における控除税額は当期の法人税額の20%を限度とし、控除限度超過額は1年間の繰越しができる(所得税についても同様とする。)。

 

 ここで、「経営改善に関する指導及び助言」とは、商工会議所、認定経営革新等支援機関等による法人の経営改善及びこれに必要な設備投資等に係る指導及び助言をいう。
 対象となる器具備品は、1 台又は1 基の取得価額が30 万円以上のものとし、対象となる建物附属設備は、一の取得価額が60 万円以上のものとする。
 「指定事業」とは、卸売業、小売業、サービス業及び農林水産業(これらのうち性風俗関連特殊営業及び風俗営業に該当する一定の事業を除く。)をいう。
 税額控除の対象法人は、資本金の額等が3,000 万円以下の中小企業等に限る。

 

【解説】

 中小企業向け、農林水産業向けの設備投資減税です。ただし、「経営改善に関する指導及び助言を受けた」ことが前提となっているので、いわゆるベンチャー企業の方々にはあまり使い勝手がいいものではなさそうですね。

 以前から中小企業庁が推進している経営革新計画制度があるので、この制度を活用する、ないし今後活用していく会社であれば、この税制も合わせて活用されることができると思います。

(5)中小企業技術基盤強化税制等の拡充 p67~(拡充等)

【改正案】

 中小企業技術基盤強化税制及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度について、2年間の時限措置として、控除税額の上限を当期の法人税額の30%(現行20%)に引き上げる(所得税についても同様とする。)。

 

【解説】

 中小企業技術基盤強化税制の2年間延長と控除限度の20%→30%への引き上げのようです。

 伝統的な製造業等はもちろんのこと、IT系のソフトウェア企業にとっても朗報ではないでしょうか。販売用ソフトウェアや自社利用ソフトウェアを開発している場合のその開発費は税務上の試験研究費の総額に算入できるのが一般的です。成長しているベンチャー企業であれば研究開発費が増加している可能性が高く、この税制を適用できるケースが高いと思われます。

 開発系の超アーリーステージの企業の場合、初年度からの開発費で多額の繰越欠損金をかかえ、黒字化した時点でもそれを利用して法人税等が課税されない状況が多く、こういった税制を検討する必要がないケースもありますが、最近ではキャッシュが早い段階で発生するビジネスモデルを展開するケースも見れるため、そういった企業にとっては納税額を減税できるので、是非検討してみるのがよいかと思います。

 ただし、研究開発費に含める範囲などの恣意性を排除するために、ある程度の管理体制を構築することが必須であるため、あまりにも小規模事業者だと適用が厳しい可能性がありますね。

(6)交際費等の損金不算入制度の拡充 p67~(拡充)

【改正案】

 交際費等の損金不算入制度における中小法人に係る損金算入の特例について、定額控除限度額を800 万円(現行600 万円)に引き上げるとともに、定額控除限度額までの金額の損金不算入措置(現行10%)を廃止する。

 

【解説】

 不動産や飲食業などの接待交際の多い業種の営業担当の皆様にとっては朗報ではないでしょうか。90%ルールがまず撤廃され、かつ、限度額が600万円から800万円まで引き上げられるようです。平成21年4月1日以降に400万円から600万円まで上限額を引き上げられたばかりですので、5年ほどで限度額がさらに上昇することとなりました。

 なお、交際費には、皆様も御承知のとおり、1人当たり5,000円以下飲食交際費制度があり、こちらはそのまま継続されますので、ご留意ください。

(7)その他 p77~

 上記以外に、個別案件でいくつかピックアップすると以下のとおりです。

 

●連結法人が連結子法人株式の譲渡を行う場合等においてその譲渡直前に行う連結子法人株式の帳簿価額の修正(投資簿価修正)について、その修正事由がみなし配当事由によるものである場合における投資簿価修正額の計算について所要の整備を行う。

 

●民事再生等一定の事実による債務免除等があった場合に青色欠損金等の控除後に繰越欠損金を損金算入できる制度について、青色欠損金等の控除前の所得金額が債務免除益相当額を超える場合における損金算入額は、青色欠損金等の控除後の所得金額からその超える部分の金額の20%相当額を減算した金額を限度とする。ただし、中小法人等については、現行どおりとする。

 

●特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度等の制限対象について、次の見直しを行う。
@ 特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度について、対象となる特定資産の範囲に、特定適格組織再編成等を行った法人がその特定適格組織再編成等の日以前に行われた他の特定適格組織再編成等によりその法人と支配関係がある他の法人から移転を受けた一定の資産を加える。
A 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度について、支配関係がある法人間でみなし共同事業要件を満たさない適格合併等が行われた場合において引継ぎが制限される被合併法人等の欠損金及びないものとされる合併法人等の欠損金の範囲に、次の金額を加える。
イ その適格合併等を行った法人の欠損金額のうち、その法人がその適格合併等の日前に行われたみなし共同事業要件を満たさない適格組織再編成等によりその法人と支配関係がある他の法人から移転を受けた一定の資産の譲渡等損失により生じた欠損金額とされる部分の金額
ロ その適格合併等を行った法人の欠損金額のうち、その法人がその適格合併等の日前に行われたみなし共同事業要件を満たさない適格合併等によりその法人と支配関係がある他の法人から引き継いだ一定の欠損金額で特定資産譲渡等損失額から成る部分の金額に相当する金額
(注)上記@及びAの改正は、平成25 年4月1日以後に他の法人との間に支配関係があることとなる法人に係る資産及び欠損金について適用する。

 

●法人税の額から控除する所得税の額の計算について、公社債等に係る所得に対する課税の見直しに合わせて、公社債の利子、公社債投資信託の収益の分配等に対する所得税の額の所有期間による按分を廃止し、その全額を控除する。

 

●連結特定同族会社の留保金課税制度について、連結留保金額に連結法人間で行われた適格現物分配に係る移転資産の価額を含めることとする。

◆第3 消費課税

 消費課税は特に注目すべき改正はありません。

 

◆第4 国際課税

 国際課税では、公社債等にかかる利子課税の見直しに関連して、一部の改正が行われます。それ以外には、外国税額控除と移転価格税制で以下の見直しがあるようです。

 

●内国法人等の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(いわゆる外国子会社合算税制)について、無税国に所在する特定外国子会社等に係る外国子会社合算税制の合算所得につき、本店所在地国以外の国で課税される場合には、当該合算所得は、外国税額控除の適用上、非課税国外所得に該当しないこととする。

 

●国外関連者との取引に係る課税の特例(いわゆる移転価格税制)について、独立企業間価格を算定する際の利益水準指標に営業費用売上総利益率(いわゆるベリー比)を加える。

 

 

 本日のBizBlogはここまでとします。

 次回は、所得課税、資産課税を確認していくことにします。

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