株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

2012/04/23 エイブル&パートナーズ MBOの実施

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

今日は、4月13日と若干古い話題ですが、不動産賃貸で皆さんご存知の「エイブル」と「CHINTAI」を傘下に持つエイブル&パートナーズのMBOについて、当社『TOBデータベース』から。

 

■IKP提供『TOBデータベース』はこちら ⇒ http://www.ikpi.co.jp/tobdatabase/index.html

 

 

◆エイブル&パートナーズのMBOにおける基礎情報

不動産賃貸『エイブル』と不動産賃貸情報誌『CHINTAI』を傘下にもつ、エイブル&パートナーズがMBOを実施することになりました。

エイブルは、全国で452店舗の直営店を展開し、CHINTAIは情報誌「CHINTAI」やサイト「CHINTAIネット」を通じた賃貸不動産物件情報の提供を展開しています。

エイブルとCHINTAIは、厳しい外部環境の中で、共同持株会社の設立により、①「仕入」、「集客」、「仲介」の連鎖によって加速するバリューチェーンの確立、②グループ経営資源の効率配分、最適活用による事業展開、③間接部門の削減等によるコスト削減、等の効果が期待して平成23年10月期は持株会社設立第1期目として強化を図っていたようです。

 

ところが、平成23年10月期は、東日本大震災の影響により、賃貸仲介実績は前年の177,196件から165,405件にとどまり、外部環境に大きく左右されたようです。

これにより、「中核事業の更なる抜本的改革及び取り組みの再強化が不可欠である」と考えるにいたったようです。

 

そこで、以下の理由によりMBOが有効であると考えたようです。

 

  • 中核事業の営業力再構築をはじめとした一連の抜本的改革は迅速な意思決定のもとで実行されることが不可欠。
  • 短期的なコストの増加等により利益水準が低下。結果として証券市場からの評価が得られない。
  • 証券市場を通じた資金調達の必要性がない。知名度、ブランド、信用力を有している。
  • 上場維持コスト(SOX、IFRS導入など)の費用が経営負担となりうる。

 

 なお、基本的な公開情報は以下のとおりです。

 

日  付 公表企業 タ  イ  ト  ル
平成24年4月16日 対象者 意見表明報告書の提出
平成24年4月16日 公開買付者 公開買付届出書の提出
平成24年4月13日 対象者 MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ

◆エイブル&パートナーズの資本関係

エイブル&パートナーズの代表取締役兼CEOである佐藤茂氏が100%所有のACコーポレーションを通じて実施予定。

エイブル&パートナーズは、佐藤茂氏が代表取締役社長を勤める株式会社ミントが筆頭株主として30%超を保有し、その他佐藤茂氏の親族の持ち株も合わせると40.49%となっているようです。

今回、佐藤茂氏の保有株はMBO対象となっていませんが、佐藤氏の保有数は平成23年10月期の有価証券報告書では12.31%となっているので、実質的に過半数以上を佐藤氏が支配していたといえます。

 

なお、公開買付者と対象者の基本情報は以下のとおりです。

公開買付者の基本情報 株価チャート
企業名

㈱ACコーポレーション

証券番号 N/A EDINET E26560
URL N/A 業種 N/A 市場 N/A
財務情報

N/A

対象者の基本情報 株価チャート
企業名 ㈱エイブル&パートナーズ 証券番号 3272 EDINET E24549
URL http://www.able-partners.co.jp/ 業種 不動産業 市場

JASDAQ

財務情報 N/A
公開買付者と対象者との既存資本関係等
N/A

※各社の「財務情報」は、IKP財務データベースによる。

◆本公開買付の取引に関する基本情報

基本的な取引内容は以下のとおりです。

MBO総額は約334億円。公表前日の株価に対するプレミアムは35%程度となっているようです。

新株予約権は、権利行使価額と公開買付価額との差額として買取しているようです。

 

取引種類 MBO 対象者の賛同 賛同 二段階条項 あり
公開買付代理人 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
買付け等の期間 平成24年4月16日から平成24年5月30日まで(30営業日)

 

買付予定数(数)買付予定数の下限(株)買付予定数の上限(株)
57,425,824 38,607,018

 

◆公開買付価格

公開買付価格 580円 買付け等に要する資金 33,401百万円 公表前日終値 429円

 

◆プレミアムの状況

対前日取引日終値対過去1カ月終値単純平均対過去3カ月終値単純平均対過去6カ月終値単純平均
35.2% 37.1% 44.3%

45.4%

 

〔備 考〕

第2回新株予約権は既に行使期間中であり、第1回新株予約権についても、本公開買付けの期間中である平成24年5月1日から行使期間に入る。また、第1回新株予約権及び第2回新株予約権の各行使価額が本公開買付価格である580円をそれぞれ下回っている。そこで、本公開買付者は、本公開買付価格と各新株予約権の権利行使価額との差額に新株予約権1個に対して目的となる普通株式の数を乗じた金額を買取価格とした。

◆バリュエーションの状況

バリュエーションの状況は、以下のとおりです。

MBOの場合、買収する経営者と売り手である株主の間には情報の非対称性が当然あるわけなので、高めのプレミアムが付くことが多いです。今回は30%台なので通常のM&Aのときのプレミアムと同じぐらいの感じを受けるので、それほど高額なプレミアムが付いたとは言えないでしょう。

ただ、Sell-sideのバークレイズ証券のバリュエーションでもDCF法で601円がMax、Buy-sideの三菱UFJモルガン・スタンレーで590円なので、580円ぐらいが妥当なレベルとなるでしょう。

逆に言えば、株式マーケットではそこそこ評価されていたというところでしょうか。

 

公開買付者による評価状況
第三者算定機関 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
フェアネスオピニオンの有無
評価方法1 市場株価分析 評価額1 399円から423円
評価方法2 類似企業比較分析 評価額2 367円から458円
評価方法3 DCF分析 評価額3 472円から590円
対象者による評価状況
第三者算定機関 バークレイズ証券
フェアネスオピニオンの有無
評価方法1 市場株価法 評価額1 399円から423円
評価方法2 類似会社比較法 評価額2 404円から484円
評価方法3 DCF法 評価額3 550円から601円

◆ファイナンスの状況

今回のファイナンスは、約340億円全額をエクイティ・ファイナンスではなく、りそなと三菱東京UFJのブリッジ・ローンとタームローンで行うようです。

最終的にはPEファンドが登場するのか不明ですが、とりあえずはローンでのMBO実施のようです。

 

ファイナンス合計 (a) + (b) + (c) + (d) 34,400,000千円
保有預金等 (a) 金融機関借入金等 (b) 34,400,000千円
金融機関以外 (c) その他の資金調達方法 (d)

 

〔備 考〕

りそな銀行、東京三菱UFJ銀行からの借入。

最近では、MBOも当たり前のように行われるようになってきました。

上場メリットが見当たらない中で、銀行やPEファンドではカネ余り状況なので、MBO等のファイナンスも容易になっていることがMBOに拍車をかけているように思えます。

雑貨franc-francを展開しているバルスもMBOを実施し、アジアでの再上場を視野に入れているといった話題も以前のBizBlogでは取り上げました。

 

2011/11/04 Francfrancの㈱バルス MBO成立 今後は海外展開へ

 

今後もMBO情報には注目していきたいところですね。

以上

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