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2011/11/15 雇用促進税制について【前編】

雇用促進税制の概要

今日は、平成23年度税制改正の目玉改正となった『雇用促進税制』について解説します。

 

◆雇用促進税制の制度趣旨と概要

 現下の雇用失業情勢は、持ち直しの動きが見られるものの、依然として厳しい状況にあることから、既存の雇用対策や経済対策として講じられている雇用対策に加え、税制上の措置による対応を図ることが検討され、平成22年9月10日閣議決定された「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」において「雇用の増加に応じ、企業の税負担を軽減する措置を講ずるなど、有効な税制措置の具体化を図る」とされたところで、平成23年度税改正において雇用促進税制が導入されました(「平成23年度税制改正の解説」財務省P328より一部引用)。

 

 雇用促進税制では、雇用保険法の適用事業を行っている事業主で、適用要件を満たすと、従業員数の増加1人当たり20万円の税額控除が受けられます(措法10の6、42の12@)。ただし、控除税額は、その適用年度における法人税の額(個人の場合は、所得税の額)の10%(中小企業者等 の場合は、20%)までとします(措法10の6、措法42の12@後段)。雇用促進税制は平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主の場合は、平成24年1月1日から平成26年12月31日までに各年)が適用年度となる時限付きの税制となります。

 

◆雇用促進税制の適用要件のまとめ

 雇用促進税制は、次の各要件を満たす場合、従業員数の増加1人当たり20万円の税額控除が受けられます。適用要件は、以下の『事業主の要件』と『事務手続の要件』の両方を満たす必要があります。

 

【事業主の要件】

以下のすべて要件を満たす必要があります。

  • 雇用保険法の適用事業を行っている事業主であること。
  • 青色申告書を提出する事業主であること(白色申告事業主は認められない)。
  • 新設法人や新たに事業を開始した個人事業主ではないこと。
  • 適用年度とその適用年度開始の前1年以内に開始した各事業年度において、事業主都合による離職者がいないこと。
  • 適用年度に雇用者(雇用保険一般被保険者)の数を5人以上(中小企業の場合は2人以上)、かつ、10%以上増加させていること。
  • 適用年度における給与等の支給額が、比較給与等支給額以上であること。
  • 風俗営業等(風俗営業及び性風俗関連特殊営業)を営む事業主ではないこと。

 

【事務手続の要件】

以下のすべての要件を満たす必要があります。

  • 事業年度開始後2カ月以内に、目標の雇用増加数などを記載した雇用促進計画を作成し、ハローワークへ提出すること(平成23年4月1日から8月31日までの間に事業年度を開始する事業主の場合には、10月31日までに提出)。
  • 事業年度終了後2カ月以内(個人事業主については3月15日まで)に、ハローワークで雇用促進計画の達成状況の確認をすること。
  • 確認を受けた雇用促進計画の写しを確定申告書等に添付して、税務署に申告すること。

 なお、雇用促進計画を提出するのは事業主の主たる事業所の所在地を管轄するハローワークとなります。連結納税制度を適用している法人の場合は、連結親法人の主たる事業所を管轄するハローワークになります。

事業主都合による離職者

 雇用促進税制では、『離職者』について、以下のとおり定義されています。

 

離職者とは、雇用者であった者でその法人の都合による雇用対策法施行規則附則第8条第2項第4号に規定する労働者の解雇によって離職をした者をいう(租税特別措置法42条の12第1項一号)。

 

 雇用促進税制の適用要件には、適用年度とその適用年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度に、「事業主都合による離職者」がいないこととされています。

 

 なお、「事業主都合による離職」は、次のような場合が該当します(厚労省Q&A 【雇用促進税制について】Q7)。

@ 人員整理、事業の休廃止等による解雇

ただし、以下のような場合は該当しない。

・労働者の責めに帰すべき重大な事由による解雇

・天災その他やむを得ない理由により事業の継続が不可能となったことによる解雇

 

A 事業主の勧奨等による任意退職

ただし、実質的には労働者の都合による任意退職であるのに事業主が退職金等を支給するために勧奨退職の形式をとった場合は該当しません。

雇用者の範囲

 雇用促進税制における雇用者は、法人又は個人事業主の使用人のうち雇用保険一般被保険者に該当するものをいいます。ただし、役員の特殊関係者や使用人兼務役員は、使用人から除外されています(措法42の12A二)。

 ここで、役員の特殊関係者とは、次の者をいいます(措令27の12D)。

@役員の親族

A役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

B上記@、A以外の者で役員から生計の支援を受けているもの

C上記A、Bの者と生計を一にするこれらの者の親族

 

 このため、雇用保険加入の要件を満たして雇用保険に加入できている役員の親族がいたとしても、雇用促進税制の雇用者には含まれませんので注意が必要です。

基準雇用者数の要件と基準雇用者割合の要件

◆基準雇用者数の要件(基準雇用者数5人以上(中小企業者等は2人以上))

 雇用促進税制を適用する要件として定められている雇用者の増加数(租税特別措置法上では「基準雇用者数」といいます。)の算定は、適用年度終了の日(つまり、当事業年度末)における雇用者の数からその適用年度開始の日の前日を含む事業年度終了の日(つまり、前事業年度末)における雇用者の数を減算した数であり(措法42の12A三)、この増加数が5人以上(中小企業者等であれば2人以上)であることが要件とされています(措法42の12@二イ)。

 このため、例えば、同一の事業年度中に複数回の採用を行って雇用者数が増加した場合でも、特に問題ありません(厚労省Q&A【雇用促進税制について】Q8参照)。

 

◆基準雇用者数の増加割合の要件(基準雇用者数の増加割合が10%以上であること)

 雇用増加割合(租税特別措置法上では「基準雇用者割合」といいます)とは、雇用者増加数(基準雇用者数)の適用年度開始の日の前日を含む事業年度終了の日における雇用者の数に対する割合をいい、次の算式で求められます。

 

【雇用増加割合の計算式】

 

 雇用促進税制を適用するには、この雇用増加割合が10%以上になることが要件とされています(措法42の12@二ロ)。

 なお、前事業年度末日に雇用者がいない場合、前事業年度末日の雇用者総数がゼロとなり、上記のとおり計算することができません。この場合は、雇用増加割合の適用要件は不要で、雇用者数が5人以上(中小企業は2人以上)で、雇用増加割合以外の他の要件を満たしていれば、雇用促進税制の適用を受けることができます(厚労省Q&A【雇用促進税制について】Q8、Q10参照)。

給与支給額の要件

 雇用促進税制では、雇用者増加数の要件と雇用者増加割合の要件に合わせて、給与支給額の要件が定められています。これは、現状の従業員の給与支給額を下げて人件費分をねん出し、雇用者数を増加して雇用促進税制を受けようとする企業等の行動を抑制しようとするものだと考えられます。すなわち、現状の給与水準を維持しつつ、雇用増加をしてくれた企業に対して税務上の優遇措置をしようとするものだと考えられます。

 

 給与支給額の要件は、給与等支給額が比較給与等支給額以上であることとされています。ここで、比較給与等支給額とは、適用年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される給与等の支給額の合計額をその1年以内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額(以下「適用年度前1年以内事業年度における給与等の支給額」をいいます。)に、その適用年度前1年以内事業年度における給与等の支給額に基準雇用者割合を乗じて計算した金額の30%相当額を加算した金額をいいます(措法42の12A七)。計算式で示すと次のとおりです。

 

【比較給与等支給額の計算式】

 比較給与等支給額=前事業年度の給与等の支給額+前事業年度の給与等の支給額×雇用増加割合×30%

 

 なお、給与等支給額とは、雇用者に対して支給する俸給、給与、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与の額で、適用年度において損金算入される金額をいいます(措法42の12A六)。事業年度の中途で自身の都合で離職した雇用者に対して支給した給与の額や、事業年度の中途で使用人から役員に昇格した者に対して支給した使用人分の給与の額などは、給与等支給額に含まられることになります。役員の特殊関係者や使用人兼務役員に対して支給する給与や、退職手当ては除かれます(厚労省Q&A【雇用促進税制について】Q9-1,Q9-2参照)。前事業年度の月数が12か月に満たない場合には適用年度開始の前1年以内に開始した各事業年度における給与等支給額の平均額とし、各事業年度の月数が適用年度の月数と異なる場合には月数按分調整を行います(厚労省Q&A【雇用促進税制について】Q9-1参照)。

 また、助成金の利用していることで、雇用促進税制が適用できなくなることはありませんが、雇い入れ助成金などがある場合、給与等支給額から当該助成金を控除する必要があるので留意が必要です(厚労省Q&A【雇用促進税制について】Q13参照)。

手続き関連の要件

 雇用促進税制では、雇用者を雇用保険一般被保険者と同等として考え、事業主都合の離職者がいないことや雇用者増加数などについては、雇用保険を管轄するハローワークに証明してもらう、という枠組みにしています。このため、手続き要件として、確定申告書上の添付資料にハローワークからの証明書が必要とされています。

 以下では、ハローワークに対する具体的な手続きについて解説します。

 

◆事業年度開始後2カ月以内に雇用促進計画を提出

 最初に、事業年度開始後2カ月以内に雇用促進計画をハローワークに提出する必要があります。雇用促進計画は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます(厚生労働省の該当ページhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/roudouseisaku/koyousokushinzei_youshiki.html

 

 雇用促進計画の提出には、厚生労働省が指定する@「雇用計画書−1」、A「雇用計画書−2」及びB「主たる事業所の雇用保険適用事業所番号のわかる書類」(例えば、雇用保険適用事業所設置届・変更届の事業主控えの写しなど)の各1部を提出することになります。

 なお、雇用計画書を提出すると、ハローワークが「雇用計画書−1」に受付印を押印して返却します。返却された雇用促進計画は事業年度終了時に利用しますので大切に保管しておく必要があります(厚労省『雇用促進計画の提出手続き』P3参照)。

 

◆事業年度終了後の雇用促進計画の達成状況の確認手続き

 事業年度終了後2か月以内(個人事業主については3月15日まで)にハローワークに雇用促進計画の達成状況の確認を求める必要があります。雇用促進税制では、@事業主都合の離職者がいないこと、A雇用者増加数及びB雇用増加割合をハローワークで証明してもらう仕組みを設けています(措法42の12@、措令27の12、措規20の7)。

 ハローワークへの提出書類は、計画開始時に押印された「雇用促進計画‐1」に雇用増加数などの達成状況を追記したものに返信用封筒を合わせて、提出します。なお、返信用封筒は、返送先を記入し、簡易書留の所要額の切手を貼り、「雇用促進計画在中」と明記する必要があります(厚労省『雇用促進計画の提出手続き』P3参照)。 雇用促進計画のハローワークへの提出は郵送でも可能なようです。ただし、提出期限必着となります(雇用促進税制に関するQ&A【雇用促進計画について】Q1)。

 

 ハローワークによる雇用促進計画の達成状況の確認には通常だと約2週間、4〜5月は1か月程度を要するようです(厚労省Q&A【雇用促進計画について】Q1)。このため、法人税の確定申告の申告期限に留意すると早めに提出する必要があると考えられます。

 

 なお、雇用促進計画の達成状況についての再確認をしてもらうことはできません。このため、雇用促進計画の達成状況の確認を求める前に、計画期間中の雇用保険一般被保険者の資格取得届・喪失届を提出してください。なお、雇用保険一般被保険者の資格取得届・喪失届を提出した場合には、一定期間(2週間程度を目安)経過後を目途に雇用促進計画の達成状況の確認を行うようにしてください(厚労省『雇用促進計画の提出手続き』P4参照)。

 

◆確定申告上の手続き

 確定申告において、上記のハローワークによる雇用促進計画の達成状況の確認の証明書(「雇用促進計画ー1」に確認印が押印されているもの)を確定申告書に添付しなければなりません。

 また、確定申告書に控除を受ける金額の申告の記載があり、かつ、当該金額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用することとされていて(措法10の6B、措法42の12C)、いわゆる別表の添付義務があります。具体的には、別表6(26)「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を添付する必要があります(別表6(26)「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」のページ http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2011/pdf_beppyo/06_26.pdf)。

 明日のビズブロも引き続き、雇用促進税制について解説します。

 明日は、連結納税制度を採用している企業や組織再編成を実施した場合の企業について解説します。

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