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シリーズ<10> 財務報告に係る内部統制の評価の方法@

1.はじめに

本シリーズ10とシリーズ11では、評価方法について解説します。シリーズ8とシリーズ9で評価対象とされた全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制について、それぞれ評価方法を検討します。これらの内部統制の有効性に関する評価は、大きく分けて整備状況に関する評価と運用状況に関する評価の2つになります。シリーズ10では、内部統制の評価体制の構築方法を解説し、全社的な内部統制の評価方法まで解説します。シリーズ11では、業務プロセスに係る内部統制の評価方法について解説していきます。

2.内部統制の評価体制

経営者による評価とは、一義的には、経営者自らが企業の内部統制の評価を行い、評価の結果を表明することを意味します。内部統制の評価の最終的な責任は経営者にあって、評価の計画、実施、評価結果の責任は経営者が負うことになります。

しかし、内部統制の文書化や運用テストなどを経営者がすべて実施することは、もちろんですが、無理な話です。また、経営者は、内部統制の構築だけでなく、通常の経営戦略なども日々考えなければなりませんので、内部統制報告制度の対応だけに特化することもできません。そこで、経営者の指揮下で経営者を補助して評価を行う責任者(通常は、経理担当役員)を指定するほか、通常、経営者の指揮下で評価を行う部署や機関を設置します。これが、内部統制プロジェクト・チームの組成です。また、小規模な会社であれば、経理部などを活用することも考えられます。

経営者を補助して評価を実施する部署及び機関並びにその要員は、評価の対象となる業務から独立し、客観性を保つ必要があります。これは、「自己監査や監査にあらず」という監査の基本になります。また、評価に必要な能力を有していること、すなわち、内部統制の整備及びその評価業務に精通していること、評価の方法及び手続を十分に理解し適切な判断力を有することも必要とされています。

なお、各業務を実施する部署や担当者によって内部統制の「自己点検」が行われる場合があります。これは「自己監査」でしかありませんので、それのみでは独立的評価とは認められません。しかし、内部統制の整備及び運用状況の改善には有効であり、独立的評価を有効に機能させることにもつながるものです。自らの業務をチェックすることで、その業務に対する誤解がなくなったり、内部統制への意識の高まりにつながったりするので、自己点検制度は、内部統制を有効に機能させる助けとなります。また、自己点検による実施結果に対して独立したモニタリングを適切に実施することにより、内部統制の評価における判断の基礎として自己点検を利用することが考えられる。

3.専門家の利用

また、経営者は、財務報告に係る内部統制の評価作業の一部を、社外の専門家を利用して実施することも考えられます。ただし、専門家による作業結果を評価の証拠として利用するかどうかについては、あくまで経営者が自らの責任において判断する必要があり、評価結果の最終的な責任は経営者が負うことになります。このため、社外の専門家を利用する場合には、以下のような事項に留意する必要があります。

 

≪専門家の利用による留意事項≫

  • 専門家が、単に業務の専門的知識のみならず、内部統制の評価について経営者の依頼内容を達成するのに必要な知識と経験を有していること
  • 専門家に業務を依頼するにあたり、評価手続の具体的内容、評価対象期間、評価範囲、サンプル件数等の基本的要件を明確にすること
  • 評価手続や業務の内容を明確にするため、専門家から経営者に提出される報告に盛り込まれるべき事項を明確にすること
  • 専門家が実施する業務の進捗状況を定期的に検証すること
  • 専門家が実施した業務結果が、依頼した基本的内容を満たしているか確認すること

4.全社的な内部統制の評価

経営者は、まず全社的な内部統制の整備及び運用状況を評価し、これと同時に全社的な内部統制の状況が業務プロセスに係る内部統制に及ぼす影響の程度を評価していきます。

 

≪全社的な内部統制の評価で実施すること≫

  • 整備及び運用状況の評価
  • 業務プロセスに係る内部統制に及ぼす影響の程度を評価
(1)全社的な内部統制の整備及び運用状況の評価

全社的な内部統制は、基本的に企業集団全体を対象とする内部統制になります。ただし、企業集団内の子会社や事業部等に独特の歴史、慣習、組織構造等が認められ、当該子会社や事業部等を対象とする内部統制を別途評価対象とすることが適切と判断した場合には、個々の子会社や事業部等のみを対象とする全社的な内部統制を評価することもあります。その場合、どの子会社や事業部等の単位で内部統制を識別し、評価を実施するかは経営者が財務報告への影響の重要性を勘案して適切に判断します。

全社的な内部統制の評価項目としては、内部統制実施基準で統制環境からITへの対応まで42項目が紹介されています。これらの項目は、基本的に例示であって、これによらない場合やこれに加除修正して利用することになります。

全社的な内部統制を評価するときは、評価対象となる内部統制全体を適切に理解及び分析した上で、必要に応じて関係者への質問や記録の検証などの手続を実施します。

(2)全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制

経営者は、全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制を評価します。ただ、全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制は相互に影響し合い、補完する関係にあるので、経営者は両者のバランスを適切に考慮した上で内部統制の評価を行う必要があります。

企業の行う業務の性質等により、全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制のどちらに重点を置くかが異なります。例えば、組織構造が相対的に簡易な場合には、全社的な内部統制の重要性が高くなり、一方、社内の規程や方針、手続に準拠して行う業務の割合が高い企業においては、業務プロセスに係る内部統制が相対的に重要となることが考えられます。多店舗に展開する小売販売業務は、業務の手続を定型化する必要があり、販売規程、現金取扱規程、従業員教育規程、例外事項対応規程などの多くの業務プロセスに係る内部統制の手引きが作成されており、業務プロセスに係る内部統制の重要度が高くなります。

こうした中で、経営者は、全社的な内部統制の評価結果を踏まえて、業務プロセスに係る内部統制の評価の範囲、方法等を決定します。例えば、全社的な内部統制の評価結果が有効でない場合には、当該内部統制の影響を受ける業務プロセスに係る内部統制の評価について、評価範囲の拡大や評価手続を追加するなどの措置が必要となります。一方、全社的な内部統制の評価結果が有効である場合については、業務プロセスに係る内部統制の評価に際して、簡易な手続を行うことなどが考えられます。

なお、上記(1)で記載した通り、企業集団内の子会社や事業部等の特性等にかんがみ、その重要性を勘案して、個々の子会社や事業部等のみを対象とする全社的な内部統制の評価が行われた場合には、その評価結果を踏まえて、当該子会社や事業部等に係る業務プロセスにつき、評価の範囲、方法等を調整することもあります。

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