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金融負債と資本の分類における日本基準とIFRSの比較

(平成23年9月20日現在)

4−1.金融負債と資本の分類における規定の比較

 日本基準とIFRSにおける金融商品会計の差異の中で、大きな違いの1つとして挙げられるのが、この金融負債と資本の分類に関する規定の有無です。

 IFRSでは、IAS第32号「金融負債と資本の分類」という負債と資本における包括的な規定が存在するのに対し、日本基準ではこうした包括的な規定はありません。制度的には、会社法の枠組みでの規定や企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」といった形で、純資産の内容を規定し、それ以外のものは負債に計上するといった対応が基本的であると思われます。ただ、個別論点的なものとして、企業会計基準適用指針第12号「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」、企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」などがあります。

 

 一般的な企業であれば、IFRSへ移行したとしても、「日本基準で負債だったものが純資産に」もしくは「日本基準で純資産だったものが負債に」ということは少ないように思われます。しかし、新しいもしくは複雑なファイナンス手法を用いている金融機関や大手企業の場合、IAS第32号を適用すると、「負債から資本」もしくは「資本から負債」ということは十分に考えられます。この場合には、資金調達方法ごとに精査していく必要があります。

 また、この「負債か資本か」という概念は、金融商品の資産側の分類でも用いることになります。金融資産の分類において、評価損益をOCI処理することが認められるのは資本性金融商品に限定されており、投資サイドとして保有する金融商品が「負債性」なのか「資本性」なのかが判断は重要な位置を占める可能性があります。この場合に、負債と資本の判断はIAS第32号を用いて行われることになります(明文上の規定はないものの結論の背景に記述)。

 こうしたことから、金融負債と資本の分類のGAAP差異については十分に注意が必要です。

  

内容 日本基準 IFRS

包括的規定

IAS第32号「金融負債と資本の分類」にて規定。

法的な概念における負債・株式の概念ではなく、経済的に負債(結果として現金等を支払うこと)になるのかといった観点で負債と資本を分類している。

包括的な規定はない。

種類株式

上記のとおり、名目が種類株式であろうと金融負債と判断されれば負債として処理することになる。

会社法上の種類株式(株式発行手続き)であれば、資本として処理されることになる。

※分類論点ではなく、評価の論点であるが。実務対応報告第10号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」がある。

複合金融商品

構成部分について、金融負債、金融資産又は資本性金融商品として別々に分類する。

複合金融商品については払込金融商品

株式発行費等の資本取引

資本から控除して会計処理。

IAS第32号では、負債にかかる経費は費用計上、資本取引かかる経費は純資産に直接計上という取扱いを明確化している。

費用として処理。

また、繰延資産として会計処理が認められている。

実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」にて株式発行費の取扱いが規定されている。

4−2.種類株式の取扱いの比較

 日本では、実務上で多様化するファイナンス手法を受けて、会社法では、9種類の種類株式の発行を認めています。企業は、それぞれの用途や投資家ニーズをくみ取り、普通株式に合わせて様々な種類株式を発行しています。

 こうした種類株式に対する会計処理として、日本基準では、「株式発行」という側面を重視し、会社法の規制もあって資本として会計処理することになります。設計次第では、負債とほとんど変わらない種類株式の発行も認められているので、厳密には負債として処理すべきものがある可能性があります。しかしながら、現実として、負債性の高い種類株式が発行されているケースは稀ではないかと思われます。

 

 一方で、IFRSではIAS第32号に従って、種類株式であっても負債として会計処理される可能性があります。もともと、IFRSは国際的に共通する会計基準を目指していることから、自国の法規制(例えば日本でいえば会社法)の枠組みから飛び出て会計概念上で、「会計的にあるべき姿」を規定しています。このため、「(自国における)法的に株式かどうか」が重要ではなく、経済的実態(会計的実態)からして負債であるか資本であるかの分類が検討されることになるのです。

 

 なお、評価の論点となりますが、日本基準では実務対応報告第10号において、種類株式の貸借対照表価額については、形式的に株式であっても債券と同様の性格を持つと考えられるものは、債券の評価と同様に取り扱うことが適当であり、それ以外の場合で、市場価格のある種類株式は市場価格に基づく価額で、市場価格のない種類株式は取得原価をもって貸借対照表価額とすることとしています。

4−3.複合金融商品の取扱いの比較

 複合金融商品(compound financial instruments)は、金融負債と資本の両方とも含んでいる金融商品のことです。新株予約権付社債が代表例です。日本基準でも、複合金融商品については、企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」として整備されています。

 IFRSと日本基準で異なる点は、以下の場合です。

内 容 IFRS 日本基準

全体規定

複合金融商品の全体的な規定というよりも、新株予約権付社債の会計処理として規定(日本基準では、新株予約権付社債ぐらいしか複合金融商品が想定されていない)。

構成部分は、IAS第32号に従って、金融負債、金融資産又は資本性金融商品に分類する。

転換社債あ型新株予約権付社債の会計処理

@(一括法)

転換社債型新株予約権付社債の発行に伴う払込金額を、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分せず、普通社債の発行に準じて処理する。

A(区分法)

転換社債型新株予約権付社債の発行に伴う払込金額を、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分した上で、社債の対価部分は普通社債の発行に準じて処理し、新株予約権の対価部分は新株予約権の発行者側の会計処理に準じて処理する。

金利と元本を支払うという現金又はその他の金融資産を引き渡す契約上の取決め⇒金融負債。

一定の期間に、それを企業の固定数の普通株式に転換する権利を保有者に付与するコール・オプション⇒資本性金融商品。

 

上記以外の新株予約権付社債の会計処理

区分法と同様の会計処理を行う(新株予約権部分と社債部分に区分して会計処理)。

 

 なお、取得条項付きの転換社債型新株予約権については、取得条項は発行者側のコール・オプションと考えられ、組込デリバティブ処理されることになります。ただし、実務的にこの部分について区分処理されているケースは稀であると考えられ、IFRS導入に伴い、IAS第32号の検討を行わるときに、取得条項の部分がデリバティブ資産として認識される可能性があります。

4−4.株式発行費等の資本的取引費用

 資本取引費用の取扱いについて日本基準とIFRSでは次のような差異があります。

 

内 容 日本基準 IFRS

資本取引費用(株式交付費)とは

株式交付費とは、株式募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・株券等の印刷費、変更登記の登録免許税、その他株式の交付等のために直接支出した費用をいう(実務対応報告19号3(1))。

その資本取引がなければ避けられたであろう資本性金融商品に直接起因する増分費用。

原則的な会計処理 損益取引(PL処理)。

税効果適用後、資本からの直接控除。

繰延資産としての取扱い

企業規模の拡大のためにする資金調達などの財務活動(組織再編の対価として株式を交付する場合を含む。)に係る株式交付費用については、繰延資産に計上することができる。この場合は、株式交付のときから3年以内のその効力の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければならない。

繰延資産として処理する規定はない。

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