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公正価値測定に関する開示事項

(平成23年5月16日現在)

7−1.公正価値測定の開示に関する基本事項

 公正価値測定に関する開示事項は、IFRS第13号「公正価値測定」に詳細規定が設けられています。IFRS第13号が公表された時点で、IFRS第7号に規定されていた事項はほとんど削除されましたが、当初認識時における公正価値測定の開示事項などはIFRS第7号の規定が残っています。

 本シリーズでは、IFRS第13号における要求事項とIFRS第7号の要求事項を中心に解説します。なお、IFRS第13号は非金融商品項目に関する公正価値測定にも言及されているため、本シリーズでも、非金融商品項目に関する内容が一部含められています。

 

 企業は、財務諸表利用者が次の両方の事項について評価することができる情報を開示しなければなりません(IFRS13.91)。なお、企業は、他の形式がより適切でない限り、本基準で要求されている定量的開示について、表形式で表示しなければりません(IFRS13.99)。

(a) 当初認識後に、財政状態計算書において、継続的又は一時的に公正価値で測定される資産及び負債に関して、その測定技法及びそれらの測定額を設定するために利用されたインプット。
(b) 重要な観察不能なインプット(レベル3)を利用している、継続的な公正価値測定に関して、当期中の純損益又はその他の包括利益における測定の影響額。

 

 上記の目的を満たすため、企業は次のすべての事項を考慮しなければなりません。もし、IFRS第13号及び他の基準に従って提供される開示が上記の目的を満たすのに不十分である場合、企業は、この目的を満たすために必要な追加的情報を開示しなければなりません(IFRS13.92)。

(a) 開示要件を満たすために必要な詳細の水準 
(b) 様々な要求ごとにどこまで強調するか
(c) 合算又は分解をどの程度行うか
(d) 財務諸表利用者が開示されている定量的情報を評価するのに追加的情報を必要とするか

 

7−2.公正価値測定における開示事項

 企業は、少なくとも、当初認識後に財政状態計算書において公正価値で測定(IFRS第13号の適用範囲内の公正価値を基礎とした測定を含む。)される資産及び負債の種類ごとに次の情報を開示しなければなりません(IFRS13.93各号)。

 

(a) 期末日における公正価値測定額


 継続的(reccuring)及び一時的(non-reccuring)な公正価値測定額に関して、報告期間の末日における公正価値測定額、並びに、一時的な公正価値測定額に関して、当該測定に関する理由を開示します。

  • 継続的な公正価値測定額⇒ 他の基準が各報告期間の末日における財政状態計算書において要求又は許容するもの
  • 一時的な公正価値測定額⇒ 他の基準が特定の状況における財政状態計算書において要求又は許容するもの(例えば、資産の売却費用控除後公正価値が帳簿価額より低いため、企業がIFRS第5号「売買目的で保有する非流動資産及び非継続企業」に従って、売却のために保有する資産を売却費用控除後の公正価値価で測定する場合)。

(b) 公正価値ヒエラルキーの分類開示


継続的及び一時的な公正価値測定額に関して、公正価値測定額が全体として分類される公正価値ヒエラルキーのレベル(レベル1、2又は3)を開示します。

 

(c) 公正価値ヒエラルキーのレベル1とレベル2間の振替


 継続的に公正価値で測定され、報告期間の末日に保有されている資産及び負債に関して、以下の開示を行います。なお、各レベルへの振替と各レベルからの振替とは別に開示され、記述されなければなりません。

・公正価値ヒエラルキーのレベル1とレベル2の間を振り替えた額

・そうした振替に関する理由

・レベル間の振替が起こったと思われる時期を判定する企業の方針

 

 なお、企業は、公正価値ヒエラルキーのレベル間の振替が生じたとみなされる時期を決定することに関する方針を開示し、整合的に継続利用しなければなりません。振替を認識する時期についての当該方針は、レベルへの振替、レベルからの振替とともに同じものでなければなりません。振替の時期の決定に関する方針の例は、以下のようなものが含まられます(IFRS13.95)。

・振替を生じさせた状況における事象もしくは変化の日

・報告期間の期首

・報告期間の末日

 

(d) レベル2及びレベル3のインプットの説明


 公正価値ヒエラルキーのレベル2及びレベル3内に分類される継続的及び一時的な公正価値測定額に関して、評価技法及び公正価値測定に利用されたインプットの説明をしなければなりません。

 評価技法の変更がある場合(例えば、マーケット・アプローチからインカム・アプローチへの変更又は追加的評価技法の利用)、企業はそうすることに関する変更及び理由を開示しなければなりません。

 公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類される公正価値測定額に関して、企業は、当該公正価値測定に利用した重要性のある観察不能なインプットについての定量的な情報を提供しなければなりません。公正価値を測定するときに(例えば、企業が調整なしに以前の取引又は第三者のプライシング情報から得られた価格を利用する場合)、定量的な観察不能なインプットが企業によって設定されている場合、企業は、開示要件に応じるために定量的情報を創出することは要求されません。しかし、この開示を提供するときに、企業は公正価値測定にとって重要であり、企業にとって合理的に入手可能である定量的な観察不能なインプットを無視することはできません。

 

(e) レベル3に分類される資産・負債の調整表


 公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類された継続的な公正価値測定額に関して、期首残高から期末残高の調整表、次の事項に起因する当期中の変動額を個別に開示する必要があります。

  • 純損益に認識された当期中の損益合計額、及び当該損益が認識されている純損益の項目。
  • その他包括利益に認識された当期中の損益合計、及び当該損益が認識されたその他包括利益の項目。
  • 購入、売却、発行及び決済額(個別に開示された変動額の種類ごとに)
  • 公正価値ヒエラルキーのレベル3への振替額又はレベル3からの振替額、振替に関する理由、レベル間の振替が発生する時期を判定することに関する企業の方針。レベル3への振替は、レベル3からの振替とは別にして、開示及び説明する。

(f) レベル3に分類される資産・負債の未実現損益の開示


 公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類された継続的な公正価値測定額に関して、報告期間の末日に保有されている資産及び負債に関連する未実現の損益の変動額に起因する純損益に含まれる(e)(i)における当期中の損益合計額、未実現の損益が認識されている純損益の項目を開示します。

 

(g) レベル3に分類された資産・負債の評価行程の説明


 公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類させた継続的及び一時的な公正価値測定額に関して、企業によって利用された評価行程(valuation processes)の説明をします。例えば、企業がどのように評価方針と手順を決定し、期間中の公正価値測定における変化を分析するのかを含みます。

 

(h) 観察不能なインプットの変動に関する開示


公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類された継続的な公正価値測定額に関して、以下の点について開示します。

 

(i)  観察不能なインプットに対する感応度

 すべてのそのような測定に関して、観察不能なインプットが異なる金額へ変化した結果、重要なより高いもしくは低い公正価値測定額の結果を生じさせる場合、観察不能なインプットの変動に対する公正価値測定の感応度の詳細な説明を開示します。公正価値測定において利用されたこれらの観察不能なインプットとその他の観察不能なインプットとの間の相互関係がある場合、企業は、これらの相互関係及び公正価値測定における観察不能なインプットの変動の影響を拡大もしくは緩和する方法の説明もしなければなりません。

 開示要求を準拠するために、観察不能なインプットの変動に対する感応度の詳細な説明は、少なくとも、上記(d)に準拠する場合に開示される観察不能なインプットを含めなければなりません。

 

(ii) 仮定の変更

 金融資産及び金融負債に関して、合理的に代替可能な仮定を反映するために観察不能なインプットを1つ又は1つ以上を変更させることで、公正価値に重要な変化をもたらす場合、企業は、その事実を記述し、これらの変更の影響を開示しなければなりません。また、企業は、合理的に代替可能な仮定を反映するための変更の影響がどのように計算されたかを開示しなければなりません。これらの目的上、純損益、資産総額、負債総額、純資産総額(公正価値の変化がその他の包括利益で認識される場合)の観点から、重要性の判断をしなければなりません。

 

(i) 最有効使用の開示


 継続的及び一時的な公正価値測定額に関して、非金融資産の最有効使用が現在の使用と異なる場合、企業はその事実及び非金融資産が最有効使用と異なる方法で利用されている理由を開示しなければなりません。

 

7−3.その他の開示事項

(A) 階層に関する事項


 企業は、次の事項において、資産及び負債の適切な階層(appropriate classes)を決定しなければなりません(IFRS13.94)。

  • 資産及び負債の性質、特徴及びリスク
  • 公正価値測定額が分類される公正価値ヒエラルキーのレベル

 

 公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類された公正価値測定は、より多くの不確かさと主観性を有するため、階層の数は多くなるかもしれません。

 公正価値測定額についての開示が提供されることに関して資産及び負債の適切な階層を決定することは、判断を要求します。資産及び負債の階層は、しばしば財政状態計算書で表示されている項目よりも分解され開示されます。ただし、企業は、財政状態計算書に表示されている項目との調整ができるように十分な情報を提供しなければなりません。他のIFRS基準が、資産又は負債に関する階層を定めている場合、企業は、当該階層が本規定の要求を満たすものであれば、本基準で要求される開示を提供するのに当該階層を利用します。

 

(B) 相殺ポジションの開示


企業が市場リスク又は取引先の信用リスクにおける相殺ポジションを有する金融資産及び金融負債への適用(いわるゆ「相殺ポジションの例外」)を利用する会計方針の決定をした場合、その事実を開示しなければなりません(IFRS13.96)。

 

(C) 財政状態計算書で公正価値測定されていない資産及ぶ負債


 財政状態計算書で公正価値測定されていないが、公正価値が開示されている資産及び負債の各階層に関して、企業は、公正価値ヒエラルキーの分類開示(第93項(b))、レベル2及びレベル3のインプットの説明(第93項(d))及び最有効使用の開示(第93項(i))で要求されている情報を開示しなければなりません。しかし、企業は、第93項(d)で要求されている公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類された公正価値測定に利用されている重要な観察不能なインプットについて定量的な開示を提供することは要求されません。そのような資産及び負債に関して、企業は本基準に要求される他の開示を提供する必要はありません(IFRS13.97)。

 

(D) 分離できない第三者の信用保証付き負債


 公正価値で測定され、分離できない第三者の信用保証付きで発行された負債に関して、発行者は、当該信用保証及び当該負債の公正価値測定額に反映されているかどうかを開示しなければならない(IFRS13.98)。

 

7−4.金融商品に係る開示事項

 IFRS第7号では、金融商品の公正価値開示について次のように規定しています。 

 企業は、次のような場合の除いて、金融資産及び金融負債の種類ごとに、その種類の資産及び負債の公正価値を、帳簿価額と比較できるような方法で、開示しなければなりません(IFRS7.25)。なお、公正価値を開示する際には、企業は、金融資産及び金融負債を種類別にグルーピングし、関連する帳簿価額が財政状態計算書において相殺される範囲でのみそれらを相殺しなければなりません(IFRS7.26)。

 

(a) 帳簿価額が公正価値の合理的な近似値となっている場合(例えば、短期の売掛金及び買掛金のような金融商品)
(b) 公正価値が信頼性をもって測定できないために取得原価で測定されている、同一の金融商品に関する活発な市場の相場公表価格(レベル1のインプット)のない資本性金融商品に対する投資に連動するデリバティブ
(c) その特性の公正価値を信頼性をもって測定できない場合、裁量権のある有配当性を含んだ契約(IFRS第4号「保険契約」で記載されている)

 

 また、上記(c)で記載される場合、企業は、それらの契約の帳簿価額と公正価値との間にどの程度の差異が生じ得るかについて、財務諸表利用者が自ら判断するのを助けるために情報を開示しなければなりません。その情報には次のものが含まれます(IFRS7.30)。

(a) その公正価値が信頼性をもって測定できないために、公正価値の情報がこれらの金融商品について開示されていない旨
(b) 金融商品の概要、帳簿価額及び公正価値が信頼性をもってなぜ測定できないかの説明
(c) 金融商品の市場に関する情報
(d) 企業が金融商品を処分するかどうか、及び処分方法に関する情報
(e) これまで公正価値が信頼性をもって測定することのできなかった金融商品が認識を中止された場合には、その旨、認識中止時の帳簿価額及び認識された利得又は損失の金額

 

 当初認識時に関する規定として、次のような規定が設けられています。

 公正価値が、同一の資産又は負債に関する活発な市場における公表価格(レベル1のインプット)に証拠づけられず、また、観察可能な市場から得られるデータだけを利用した評価技法に基づいていないために、一定の場合、企業は、金融資産又は金融負債の当初認識時に純損益を認識しません。そのような場合、企業は金融資産又は金融負債の種類ごとに次の事項を開示しなければなりません(IFRS13.28)。

(a) 市場参加者が価格を設定する当該資産又は負債をプライシングする際に考慮する要素(時間を含む)における変動を反映するため、当初認識時の公正価値と取引価格との間にある差額を純損益において当該差異を認識するための会計方針
(b) 期首及び期末において純損益にいまだに認識されていない差異の総額及び当該差異残高の変動の調整
(c) 企業が取引価格が公正価値の最良の証拠ではなかったと結論付けた理由(当該公正価値を支持する証拠の説明を含む)

 

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