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公正価値測定におけるインプットと公正価値ヒエラルキー

(平成23年5月16日現在)

3−10.公正価値ヒエラルキーの一般原則

 公正価値を測定するために使用される評価技法は、関連する観察可能なインプットを最大限活用し、観察不能なインプットの利用を最小限に抑えなければなりません(IFRS13.67)。このため、IFRS第13号では、FASBのFAS157号で用いている「公正価値ヒエラルキー(fair value hierarchy)」の概念を導入し、公正価値測定のためのインプットを、レベル1からレベル3まで順位付け規定を設けました。公正価値ヒエラルキーの採用は、公正価値測定及び関連する開示における整合性及び比較可能性を増加するためです(IFRS13.72)。

 公正価値ヒエラルキーの3つのレベルは以下のとおりです(IFRS13.76,81,86)。

 

レベル 内容
レベル1のインプット 企業が測定日においてアクセスできる同一の資産又は負債に関する活発な市場における(調整されていない)公表価格
レベル2のインプット 直接又は間接を問わず、資産又は負債に関する観察可能である、レベル1に含められる公表価格以外のインプット
レベル3のインプット 資産又は負債に関する観察不能なインプット

 

 

 

<プレミアムとディスカウント>


 選択するインプットは、市場参加者が資産又は負債に関して取引で考慮する資産又は負債の特性に整合的である必要があります。これは、支配プレミアムや非支配持分ディスカウントといったプレミアム又はディスカウントの調整の適用が必要であるということです。

 ただし、公正価値測定を要求又は許容する基準における会計単位に整合しないプレミアムやディスカウントを結合してはなりません。例えば、支配持分の公正価値を測定するときの支配プレミアム以外の、企業が同一商品を大量に保有していることで、もし売却したら市場の公表価格に影響を与えるといったような企業の保有特性を反映するようなプレミアムやディスカウントを公正価値評価額に織り込むことは認められません。すべてのケースで、資産又は負債に関する活発な市場の公表価格(つまり、レベル1のインプット)がある場合、企業は、一部の例外を除いて、公正価値で測定する場合、調整せずに当該価格を使用しなければなりません(IFRS13.69)。

 

<ビッド価格とアスク価格を基礎としたインプット>


 公正価値で測定される資産又は負債に、ビッド価格及びアスク価格がある場合(例えば、ディーラー市場のインプット)、インプットが公正価値ヒエラルキーのどのレベルに分類されようとも、その状況において公正価値を最も示しているビッド・アスク・スプレッド間の価格が、公正価値を測定するために利用されなければなりません。なお、資産ポジションに関するビッド価格及び負債ポジションに関するアスク価格の使用は認められていますが、要求はされていません。ビッド・アスク・スプレッド間の公正価値測定に関する実務上の簡便法(practical expedient)として利用している仲値(mid-market pricing)又はその他の値付け慣行の使用を妨げるものでもありません(IFRS13.70,71)。

 

 

<公正価値ヒエラルキーにおけるインプットと評価技法>


 公正価値ヒエラルキーは、同一の資産又は負債に関する活発な市場における(調整されない)公表価格に最も高い優先順位を与え(レベル1のインプット)、観察不能なインプットへ最も低い優先順位としています(レベル3のインプット)

 関連するインプットの入手可能性及び相対的な主観性は、適切な評価技法の選択に影響を及ぼします。しかし、公正価値ヒエラルキーは、公正価値を測定するために使用される評価技法でなく、評価技法へのインプットの優先順位付けを行うものです。例えば、現在価値技法によって測定される公正価値測定は、現在価値技法であることで公正価値ヒエラルキーのレベルが決定されるのではなく、現在価値技法によって測定するための全体の測定にとって重要となるインプットの公正価値ヒエラルキーのレベルによって分類されるのです(IFRS13.74)。

 

<異なるレベルのインプットを利用する場合>


 公正価値を測定するために利用されるインプットで、公正価値ヒエラルキーの異なるレベルのものが利用されている場合、測定額全体にとって重要である最も低いレベルのインプットとして、公正価値ヒエラルキーの同じレベルに、公正価値測定額全体を分類します。

 測定額全体への特定のインプットの重要性の評価は、資産又は負債の固有の要因を考慮して判断しなければなりません。なお、売却費用控除後の公正価値を測定する場合の売却費用のように、公正価値を基礎とした測定に達するための調整を、公正価値測定が分類される公正価値ヒエラルキーのレベルを決定するときに考慮してはなりません(IFRS13.73)。  

 

<観察可能なインプットを観察不能なインプットで調整する場合>


 観察可能なインプットが、観察不能なインプットを利用して調整しなければならず、当該調整によって重要なほどに、より高い又は低い公正価値測定額の結果を生じさせる場合、その結果としての測定額は、公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類されます。例えば、市場参加者が資産の価格を見積るときに資産の売却の制限の効果を考慮する場合、企業は制限の効果を反映するため、公表価格を調整します。その公表価格がレベル2のインプットであるものの、当該調整が測定額全体にとって重要である観察不能なインプットである場合、その測定額は、公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類されることになります(IFRS13.75)。

  

3−11.観察可能なインプットを提供する市場

 観察可能なインプットの市場として、IFRS第13号付録では以下のようなものが紹介されています(IFRS13.B34)。

 

(i) 取引所市場(exchange markets)

取引所市場において、終値(closing price)は容易に入手可能であり、一般的に公正価値を表しています。そのような市場の例は、ロンドン株式市場(London Stock Exchange)です。

 

(ii) ディーラー市場(dealer markets)

ディーラー市場において、ディーラーは、トレードするために準備しており(自己勘定(own account)のために購入又は売却する)、したがって、ディーラーが作っている市場に関して商品の目録を保有するために、資本を使用することで流動性を提供しています。典型的なビッド価格(bid price)及びアスク価格(ask price)(それぞれ、ディーラーが買う予定である価格又はディーラーが売る予定である価格を表している)は、終値よりも容易に入手可能です。店頭市場(over-the-counter markets)(公に公表されている価格のある市場)は、ディーラー市場です。ディーラー市場は、一定の金融商品、コモディティ及び物理的資産(例えば中古資産)を含めて、一定の他の資産及び負債も存在します。

 

(iii) ブローカー市場(brokered markets)

ブローカー市場において、ブローカーは、買い手と売り手を合わせることを意図しており、自己勘定のために取引する準備をしていません。つまり、ブローカーは、ブローカーが作る市場のための商品の目録を保有するために自己の資本を使用しません。ブローカーは、それぞれの取引関係者によるビッドとアスクの価格を知っており、各取引関係者は基本的にもう一方の要求する価格が自明ではありません。完結した取引の価格はときどき入手可能です。ブローカー市場は、売り買い注文を合わせる電子通信ネットワーク、及び商業施設や住居用の不動産市場も含みます。

 

(iv) 当事者間取引市場(principal-to-principal markets)

 当事者間取引市場において、取引は、新品販売及び再販売の両方とも、仲介業者に依頼せずに交渉されます。取引についての情報は、公に入手可能となることはほとんどありません。

 

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