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金融資産と金融負債の相殺ポジションへの適用

(平成23年5月16日現在)

3−6.市場リスク又は取引先の信用リスクにおける相殺ポジションを有する金融資産及び金融負債への適用

 IFRSでは、金融資産と金融負債の相殺の「表示」について、IAS第32号で規定しています。基本的に、IAS第32号で定める要件を満たさなければ、金融資産と金融負債の相殺表示は認められません。一方、IFRS第13号では、金融資産と金融負債の「測定」段階において、相殺ポジションによる公正価値測定を例外的に認めています

 

 企業が、金融資産及び金融負債のグループを市場リスク又は信用リスクのどちらかのネット・エクスポージャーを基礎として管理している場合、企業は、測定日における現在の市場環境での市場参加者間に存在する秩序ある取引における特定のリスク・エクスポージャーに関するネット・ロング・ポジション(つまり、資産)を売却する又は特定のリスク・エクスポージャーに関するネット・ショート・ポジション(つまり、負債)を移転するために受取る価格を基礎にして、金融資産及び金融負債のグループの公正価値を測定することを認めます。したがって、企業は、市場参加者が測定日におけるネット・リスク・エクスポージャーの価格を決定する方法と整合するように、金融資産又は金融負債のグループの公正価値を測定します(IFRS13.48)。 これは、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」又はIFRS第9号「金融商品」の適用範囲である金融資産及び金融負債にしか認められません(IFRS13.52)。

 

 

(A) 相殺ポジションの例外規定の適用要件


相殺ポジションの公正価値測定を適用するには、企業は、次のすべての事項に該当しなければなりません(IFRS13.49)。

 

 [相殺ポジションの公正価値測定の適用要件]

  • 企業の文書化されたリスク管理又は投資戦略に従って、特定の市場リスク(又は複数のリスク)又は特定の取引先の信用リスクに対する企業のネット・エクスポージャーを基礎にして金融資産及び金融負債のグループを管理している。
  • 企業の経営幹部(IAS第24号で定義)に金融資産及び金融負債について当該基礎に基づく情報を提供している。
  • 各報告期間末日の財政状態計算書において、それらの金融資産及び金融負債を公正価値で測定することが要求又は選択されている。

 

(B) 財務諸表の表示との関係 


相殺ポジションの公正価値測定の例外規定は、財務諸表の表示に関係しません。ある場合では、財政状態計算書における金融商品の表示に関する基礎は、金融商品の測定に関する基礎とは異なります。例えば、国際財務報告基準は、金融商品を純額ベースで表示することを要求又は許容していないため、企業は、ポートフォリオ・レベルの調整(第53項から第56項参照)を、企業のネット・リスク・エクスポージャーを基礎として管理している金融資産及び金融負債のグループを構成する個々の資産又は負債へ配分する必要はありません。企業は、当該状況に適している方法論を利用して、合理的及び整合的基礎に基づいたそのような配分をしなければなりません(IFRS13.50)。

 

(C) 市場リスクへのエクスポージャー


 相殺ポジションの公正価値測定の例外を適用する場合、企業は、市場リスクへの企業のネット・エクスポージャーの状況における公正価値を最もよく示しているビッド・アスク・スプレッド内の価格を適用しなければなりません(ビッド価格・アスク価格については後述)(IFRS13.53)。

 また、企業は、金融資産及び金融負債のグループ内でさらされている市場リスク(又は複数のリスク)がほとんど同じであることを保証しなければなりません。例えば、企業は、企業の市場リスク又は商品価格リスクへの企業のエクスポージャーは削減されないため、金融資産に関連する金利リスクと金融負債に関連するコモディティ価格リスクを結合しません。同一でない市場リスク・パラメータから生じるどんな基礎リスクも、グループ内の金融資産及び金融負債の公正価値測定において考慮しなければなりません(IFRS13.54)。

 同様に、金融資産及び金融負債から生じる特定の市場リスク(又は複数のリスク)への企業のエクスポージャーの存続期間はほとんど同じでなければなりません。例えば、5年物の金融資産及び金融負債だけで作られているグループ内の金融商品で、金利リスク・エクスポージャーの12か月分に関連するキャッシュ・フローに対して、12か月の先物契約を利用する企業は、純額ベースの12か月金利リスクへのエクスポージャー及び総額ベースの残余期間の金利リスク・エクスポージャー(つまり2年から5年)の公正価値を測定する(IFRS13.55)。

 

(D) 特定の取引先の信用リスクへのエクスポージャー


 特定の取引先と締結した金融資産及び金融負債のグループの公正価値を測定するために、相殺ポジションの公正価値測定の例外を利用する場合、企業は、市場参加者が倒産事象における信用リスク・エクスポージャーを削減するどんな既存の契約(例えば、取引先とのマスターネッティング契約又はその他の取引先の信用リスクへの各取引先のネット・エクスポージャーを基礎にした担保の交換を要求する契約)も考慮する場合、公正価値測定において、取引先の信用リスクへの企業のネット・エクスポージャー又は取引先の当該企業の信用リスクへのネット・エクスポージャーの効果を含めなければなりません。公正価値測定は、契約が倒産事象において法的に強制力を持つ可能性についての市場参加者の期待を反映しなければなりません(IFRS13.56)。

 

(E) 会計方針との関係


 企業は、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って、相殺ポジションの公正価値測定に関する例外を会計方針として決定しなければなりません。ビッド・アスク調整(第53項から第55項参照)及び信用調整(第56項参照)の配分に関する会計方針を含めて、適用できるのであれば、特定のポートフォリオに関する期末日から期末日の間で整合的に当該会計方針を適用しなければなりません(IFRS13.51)。

 

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