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公正価値測定の目的、範囲、定義

(平成23年5月16日現在)

3−1.公正価値測定の目的と範囲

 IFRSでは、金融商品に限定されず、様々な資産又は負債を公正価値によって測定することを要求又は許容しています。このため、IFRSにおける統一した公正価値測定の基準として、2011年5月16日に新基準IFRS第13号「公正価値測定(Fair Value Measurement)」が設定されました。また、FASBとのコンバージェンスとして公正価値測定の基準の設定が必要とされていたこともあり、共同プロジェクトとしてIFRS第13号が設定されるに至りました。このため、FASBのFAS157「公正価値測定」の内容が多分に利用されています。

 

 IFRS第13号の目的は、次の3つです(IFRS13.1)。

 

 [IFRS第13号の目的]

  • 公正価値を定義する。
  • 公正価値を測定するにあたっての単一のIFRSのフレームワークを確立する。
  • 公正価値測定に関する開示を要求する。

 

 IFRS第13号は、IFRS全体における公正価値測定の単一のフレームワークを提供するものであるため、金融商品だけでなくすべての資産又は負債の公正価値測定の場面で適用されることになります(IFRS13.5)。

 ただし、IFRS第13号の適用範囲として、次の基準は除外されています(IFRS13.6,7)。

基  準 測定基準 開示基準
IFRS第2号「株式報酬」の適用範囲である株式報酬取引 × ×
IAS第17号「リース」の適用範囲であるリース取引 × ×
IAS第2号「棚卸資産」における正味実現可能価額のような又はIAS第36号「資産の減損」における使用価値といった、公正価値ではないが公正価値に類似する測定 × ×
IAS第19号「従業員報酬」に従って公正価値によって測定される制度資産 ×
IAS第26号「退職給付制度の会計及び報告」に従って公正価値で測定される退職給付制度

×

IAS第36号に従って処分費用控除後の回収可能価額である資産 ×

 

 なお、本シリーズでは、金融商品に係る公正価値測定に限定せず、IFRS第13号に関する全体的な基準の解説を行います。このため、金融商品には無関係の論点も含まれます。

 

3−2.公正価値の定義と公正価値測定の前提

 公正価値(fair value)とは、測定日において市場参加者間(market participants)で秩序ある取引(orderly transaction)が行われた場合に、資産の売却によって受取る又は負債を移転するために支払う価格として定義されています(IFRS13.9)。また、公正価値は、その価格が直接観察可能(ovservable price)であろうと、評価技法(valuation tecqnic)を用いて見積もられたものであろうと関係なく、測定日における現在の市場環境での主要な(又は最も有利な)市場の秩序ある取引における資産を売却する又は負債を移転する価格(これを出口価格(exit price)といいます)になります(IFRS13.24)。IFRS第13号の特徴は、FAS157号と同様、公正価値を「出口価格」として定義したことです。

 

(A) 測定対象の資産又は負債(会計単位)


 公正価値を測定する際に、測定対象となる資産又は負債を明確にする必要があります。公正価値で測定される資産又は負債は、単独の資産又は負債となるか、資産グループ、負債グループ又は資産及び負債のグループといった、グループ単位となるかのどちらかです(IFRS13.13)。グループ単位となるのは、例えば、キャッシュを生み出す単位や事業といったものを対象とする場合にグループで評価されることになります。認識又は開示の目的に関して、資産又は負債が単独の資産又は負債、資産のグループ、負債のグループ、又は資産及び負債のグループであるかどうかは、その会計単位(unit of account)に依存しています。資産又は負債の会計単位は、本基準で定められている場合を除き、公正価値測定を要求又は許容する基準に従って、決定します(IFRS13.14)。

 評価対象の資産又は負債について、市場参加者が考慮すべき特徴(資産の状態や場所、売却や使用に関する制限など)があれば、公正価値測定においても当該事項を考慮しなければなりません(IFRS13.11)。特定の特徴から生じる測定の影響は、市場参加者がどうやって当該特徴を考慮するのかに左右されます(IFRS13.12)。

 

(B) 秩序ある取引


 公正価値の前提は、秩序ある取引が行われていることです。秩序ある取引が行われていない場合における取引価格は、公正価値とはなりません。秩序ある取引とは、通常かつ慣習的なマーケティング活動ができるように、測定日以前の一定期間、市場にさらされていることを仮定した取引のことをいいます。つまり、強制された取引(例:強制清算(forced liquidation)又は投売り(distress sale))ではありません(IFRS13.A)。

 

(C) 取引市場


 公正価値測定では、資産を売却する又は負債を移転する取引が、(i)主要な市場(principal market)もしくは、(ii)主要な市場が存在しない場合の最も有利な市場(most advantageous market)で行われるときの取引価格を前提としています(IFRS13.16)。

 企業は、主要な市場又は主要な市場が存在しない場合の最も有利な市場を識別するために、合理的に入手できるすべての情報を考慮して決定します(ただし、すべての可能性のある市場に関してあらゆる調査を行う必要はありません)。反証する証拠がない場合、企業が通常締結するであろう市場が、主要な市場又は最も有利な市場であると推定されます(IFRS13.17)。なお、主要な市場がある場合、たとえ、異なる市場の価格が測定日においてより有利な価格である可能性があろうとも、主要な市場の価格を利用します(IFRS13.18)。また、測定日におけるプライシング情報を提供する観察可能な市場が存在しない場合でも、資産を保有する又は負債を負っている市場参加者の観点を考慮しながら、当該測定日に取引が行われることを仮定しなければなりません。こうした取引が仮定されることで、価格の見積りに関する基礎が確立します(IFRS13.21)。

 企業は、測定日において、主要な(もしくは最も有利な)市場にアクセスできなければなりません。ただし、市場にアクセスできればよく、実際に取引できる必要はありません。なお、異なる活動を伴う異なる企業(及び企業内の事業)は異なる市場にアクセスしているので、同じ資産又は負債の主要な(又は最も有利な)市場は企業ごと(及び企業内の事業)に異なってきます(IFRS13.19,20)。

 

(D) 市場参加者


 市場参加者(market participants)とは、資産又は負債の主要な(又は最も有利な)市場における、次の要件をすべて満たす買い手又は売り手のことです(IFRS13.A)。

(a)

お互いに独立している。つまり、関連当事者ではない(IAS第24号に定義)。しかし、企業が当該取引が市場の利用規約で締結されたことを示す証拠を保持している場合、関連当事者の取引における価格は公正価値測定へのインプットとして利用できる。

(b) 知識を有している。通常及び慣習的な詳細調査の努力を通じて得られる情報を含む、すべての入手可能な情報を利用して、資産又は負債及び取引について合理的に理解している。
(c) 資産又は負債に関する取引を行う能力がある。
(d) 資産又は負債に関する取引を自ら行う意思がある。つまり、動機はあるが、それは強制又は強要されるものではない。

 

 企業は、市場参加者が経済的に最善の利益を求めて行動することを仮定し、市場参加者が資産又は負債の価格を決定するときに利用する仮定を利用して、資産又は負債の公正価値を測定します(IFRS13.22)。 仮定を設定するにあたり、企業は特定の市場参加者を識別する必要はありません(IFRS13.23)。むしろ、企業は(i)資産又は負債、(ii)資産又は負債に関する主要な(又は最も有利な)市場 、(iii)企業が市場で取引を行うであろう市場参加者といった事項に固有の要因をすべて考慮して、全般的に市場参加者を区分する特徴を識別します(IFRS13.24)。

 

(E) 価格


 公正価値を測定するために利用される主要な(又は最も有利な)市場での価格には、取引費用(transaction costs)は調整しません。取引費用は、資産又は負債についての主要な(又は最も有利な)市場における資産の売却又は負債の移転のための費用で、資産の除去又は負債の移転に直接起因するものです。取引から直接生じ、取引に不可欠なもので、取引の意思決定がなされなければ発生することがなかった費用のことです。

 一方で、輸送費用(transport costs)は調整対象になります。輸送費用は、現在の場所から主要な(又は最も有利な)市場へ資産を輸送することで発生するコストです。

 

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