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金融商品の償却原価測定

(平成23年1月31日現在)

1−1.償却原価による測定

 IFRS第9号では、前シリーズにあるとおり、金融商品の分類基準に従って償却原価を適用するものとして分類された金融資産または金融負債について、実効金利法を用いて償却原価で測定することになります(IFRS9.4.1.2、IFRS9.4.2.1)。

 償却原価の測定については、IAS第39号の抜本改訂プロジェクトのフェーズ2として取り扱われており、2009年11月に公開草案「償却原価及び減損」、続いて当公開草案の補足として2011年1月に公開草案「金融商品:減損」が公表されており、執筆現在、議論は継続されています。

 本項では、現規定であるIAS第39号の規定について解説し、最後に公開草案の概要について解説します。

 

 <償却原価(amortised cost)>


 金融資産又は金融負債の償却原価とは、金融資産又は金融負債の当初認識時に測定された金額から元本返済額を控除し、当初金額と満期金額との差額についての実効金利法による償却累計額を加減し、さらに減損又は回収不能額を(直接に又は貸倒引当金勘定を通じて)控除したものをいいます(IAS39.9)。

 すなわち、償却原価は、実効金利法を適用した償却計算と、その後の減損計算を実施したものとなります。

 

<実効金利法(effective interest method)>


 実効金利法とは、金融資産若しくは金融負債(又は金融資産あるいは金融資産のグループ)の償却原価を計算し、関係する期間に受取利息又は支払利息を配分する方法をいいます。

 実効金利(effective interest rate)とは、当該金融商品の予想残存期間(場合によっては、より短い期間)を通じての、将来の現金支払額又は受取額の見積額を、当該金融資産又は金融負債の正味帳簿価額まで正確に割り引く利率をいいます。債券などのクーポン(ないし表面金利など)とは異なります。

 実効金利を計算する際には、当該金融商品のすべての契約条件(例えば、早期償還、コール及び類似のオプション)を考慮してキャッシュ・フローを見積もらなければなりませんが、将来の貸倒損失について考慮しません。その計算には、実効金利の不可分の一部である契約当事者間で授受されるすべての手数料とポイント(IAS第18号「収益」参照)、取引費用、並びにその他のすべてのプレミアム及びディスカウントを含めます(IAS39.9)。金融資産は発生している貸倒損失を反映してディープ・ディスカウントで取得されることがあります。企業は、実効金利を計算する際に、このような発生している貸倒損失を見積キャッシュ・フローに含めます(IAS39.AG5)。

 類似した金融商品のグループについてのキャッシュ・フローと予想残存期間は、信頼性をもって見積れるという反証可能な前提があります。しかし、ある金融商品(又は金融商品のグループ)のキャッシュ・フロー又は予想残存期間を信頼性をもって見積ることができないという稀な場合においては、当該金融商品(又は金融商品のグループ)の契約期間全部にわたる契約上のキャッシュ・フローを使用することになります(IAS39.9)。

 

 <手数料、ポイント、取引費用、並びにその他のすべてのプレミアム及びディスカウント>


> 実効金利法を適用する際には、企業は一般に、実効金利の計算に含まれた、手数料、授受されたポイント、取引費用及びその他のプレミアム又はディスカウントを、当該金融商品の予想残存期間にわたって償却しますが、予想残存期間よりも短い期間に関連したものである場合には、その期間を用いて償却することになります。これは、手数料、授受されたポイント、取引費用及びその他のプレミアム又はディスカウントが関連している変数が、当該金融商品の予想される満期の前に市場金利に改定される場合にあてはまります。このような場合には、適切な償還期間は次回の金利改定日までの期間です。例えば、変動金利の金融商品に係るプレミアム又はディスカウントが、金利が最後に支払われてから以降に当該金融商品について発生した金利、又は変動金利が市場金利に改定された以降の市場金利の変動を反映している場合には、次回に変動金利が市場金利に改定される日まで償却します。これは、次回の金利改定日において、そのプレミアム又はディスカウントは次回の金利改定日までの期間に関連するものであるからです。しかし、プレミアム又はディスカウントが、当該金融商品における特定された変動金利に上乗せされる信用スプレッド(又は市場金利に改定されない他の変数)の変動により生じた場合には、当該金融商品の予想残存期間にわたって償却します(IAS39.AG6)。

 

1−2.見積りの変更が生じた場合

 償却原価の計算で、実際のキャッシュ・フローや見積将来キャッシュ・フローに変更が生じた場合には、それを帳簿価額等に反映させて、見積り部分の修正額を純損益に認識する必要があります。例えば、期限前償還が見積りよりも早かった場合など、キャッシュ・フローの変更が発生すると考えられます。

 企業が支払又は受取りの見積りを修正する場合には、実際のキャッシュ・フロー及び改定後の見積キャッシュ・フローを反映するために、金融資産又は金融負債(あるいは金融商品のグループ)の帳簿価額を修正しなければなりません。企業は、見積将来キャッシュ・フローの現在価値を当該金融商品の当初の実効金利で計算することにより、帳簿価額を再計算します。この修正は、純損益に収益又は費用として認識されます(IAS39.AG8)。

 IAS第39号IGB26の設例を用いて具体的に解説すると以下のとおりです。

 

(A) 期限前償還に関する見積りの変更


【設定】

取得価額(20×0年期首に取得)    1,000円
額面金額   1,250円
クーポン(固定金利)  4.7%

 

 期限前償還について、当初償還予定はなかったものの、20×2年期首に償還に関する見積りを変更した。その際の見積りは、20×2年期末に50%を償還し、残りを20×4年期末に償還するという見積りだった。

 

(i) 実効金利の算定

20×0

(期首)

20×0

(期末)

20×1 20×2 20×3 20×4
Cash Flow △1,000円 58.75円 58.75円 58.75円 58.75円

58.75

+1,250円

 

額面1,250円、クーポン4.7%であることから、毎期の金利収入は1,250円×4.7%=58.75円となります。

上記のキャッシュ・フローを用いて、実効金利を計算すると10.0%と計算できます(計算は、エクセルなどでゴーシーク機能やIRR関数を用いることで計算できます)。

 

(ii) 償却原価計算

20×0

(期末)

20×1 20×2 20×3 20×4
償却前帳簿価額(A) 1,000円 1,041円

1,086

+52円

568円 595円

実効金利

(B)=(A)×実効金利

100円 104円 114円 57円 60円
CF (C) 59円 59円 625+59円 30円 625+30円

償却後帳簿価額

(D)=(A)+(B)−(C)

1,041円 1,086円 568円 595円

 ※小数点以下は四捨五入で計算しています。

 

 20×2年の期首で期限前償還に関する見積りを変更しています。このため、20×2年の帳簿価額が変更されます。20×2年の帳簿価額の計算は、20×2年期首における将来キャッシュ・フローを下記のように見積りなおし、それを当初の実効金利(この設問では10.0%)で現在価値へ割引計算します。

 

20×2 20×3 20×4
Cash Flow 58.75+625円 29.38円 29.38+625円
割引率 0.9090 0.826 0.751 修正後帳簿価額
割引後現在価値 621.74円 24.28円 492.01円 ⇒   1,138円

 

 

(B) 変動金利の場合の対応


 変動金利の金融資産と変動金利の金融負債については、市場金利の動きを反映するためのキャッシュ・フローの定期的な再見積により、実効金利が変更されます。すなわち、金利改定後に基づく金利キャッシュ・フローにより、再度キャッシュ・フローを見積もり、それに基づいて実効金利の再計算を行います。

 なお、変動金利の金融資産又は変動金利の金融負債が、満期日に受け取るか又は支払うべき元本に等しい額で当初認識されている場合には、将来の利払いの再見積りは、その資産又は負債の帳簿価額に通常は重要な影響を与えません(IAS39.AG7)。

 

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