株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

IAS第1号「財務諸表の表示」(2/5)

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(平成22年7月31日現在)

5.財務諸表の一般原則

IAS第1号は以下の8つの財務諸表の一般原則(一般的特性)を定めています。

 

① 適正表示とIFRSへの準拠(Fair presentation and compliance with IFRSs)

財務諸表は、企業の財政状態、財務業績およびキャッシュフローを適正に表示しなければなりません。適正表示をするためには、概念フレームワークで示されている資産、負債、収益及び費用の定義と認識規準に従って、取引及びその他の事象や状況を適正に表示することが要求されます。そして、必要な追加開示を伴ったIFRSの適用により、適正表示を達成した財務諸表を作成することができます。(IAS1.15)

 

さらに、適正表示には次のことも必要となります。

IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って会計方針を選択し、適用する
目的適合性、信頼性、比較可能性、理解可能性の4つの質的特性を備えた情報を提供する方法で、会計方針を含む情報を表示する
IFRSの特定の定めに準拠するだけでは、特定の取引及びその他の事象や状況が企業の財政状態や財務業績に与える影響を利用者が理解するには不十分となるときは追加開示を行う

 

財務諸表がIFRSに準拠する企業は、注記においてIFRSに準拠している旨を明示的かつ十分に記載しなければなりません。財務諸表がIFRSのすべての定めに準拠していない限り、企業は当該財務諸表がIFRSに準拠していると記載してはなりません。(IAS1.16)

 

また、IAS第1号では、以下のようなIFRSからの離脱に関する規定が設けられています。日本基準では、IFRSからの離脱に相当する概念はありません。

 

-IFRSからの離脱-

IFRSの中のある定めに従うことが、概念フレームワークに示されている財務諸表の目的に反するほどの誤解を招くと経営者が判断する極めて稀なケースでは、関連する規制上の枠組みがそのような離脱を要求している、もしくは、そのような離脱を禁止していない場合には、以下の事項を開示するとともに当該IFRSの定めから離脱しなければなりません。(IAS1.19,20)

 

・当該財務諸表が企業の財政状態、財務業績、キャッシュ・フローを適正に表示していると経営者が判断した旨

・適正表示を達成するために特定の定めから離脱したことを除いて、適用可能なIFRSに準拠している旨

・企業が離脱したIFRSの表題、離脱の内容(IFRSが要求する通常の処理を含む)、当該処理がその状況においては誤解を招くものであり、フレームワークに定める財務諸表の目的に反することになる理由および採用した処理

・表示されている各期間について、IFRSが定める通常の処理による場合と比較して当該離脱が財務諸表の各項目に及ぼす財務的影響

なお、過年度に、IFRSの定めから離脱し、当該離脱が当期の財務諸表に計上されている金額に影響を与える場合には、企業は上記一部の開示を行わなければなりません。(IAS1.21)

 

一方、IFRSの中のある定めに従うことが、概念フレームワークに示されている財務諸表の目的に反するほどの誤解を招くと経営者が判断するが、関連する規制上の枠組みがその定めからの離脱を禁止している極めて稀なケースの場合、以下の事項を開示しなければなりません。(IAS1.23)

・問題となるIFRSの表題、その定めの内容、その定めに従うことが当該状況においては誤解を招くことになり、概念フレームワークに定める財務諸表の目的に反すると経営者が判断した理由

・表示されている各期間について、経営者が適正な表示を達成するためには必要であると判断して施した財務諸表の各項目に対する調整

 

② 継続企業の前提(Going concern)

財務諸表を作成するに際して、経営者は企業が継続企業として存続する能力があるかどうか検討しなければなりません(少なくとも報告期間の期末日から12カ月の将来について必要)。

経営者に当該企業の清算もしくは営業停止の意図があるか、またはそうする以外に現実的な代替案がない場合以外は、企業は財務諸表を継続企業の前提により作成しなければなりません。

経営者が、この検討を行う際に、当該企業の継続企業としての存続能力に対して重大な疑問を生じさせるような事象または状態に関する重要な不確定事項を発見したときは、企業はその不確定事項開示しなければなりません。

企業が財務諸表を継続企業の前提で作成していない場合には、企業はその事実を財務諸表作成の基礎および当該企業が継続企業とは認められない理由とともに開示しなければなりません。(IAS1.25,26)

 

③ 発生主義会計(Accrual basis of accounting)

企業は、キャッシュフロー情報以外は、発生主義会計により財務諸表を作成しなければなりません。発生主義会計の下で、企業は取引の要素を、概念フレームワークに定められる定義及び認識要件を満たすときに、資産、負債、資本、収益、費用として認識します。(IAS1.27)

 

④ 重要性と合算(Materiality and aggregation)

企業は、類似項目の分類に重要性がある場合、それらを財務諸表で区別して表示しなければなりません。重要性がない場合を除き、企業は性質または機能に類似性がない項目を区分して表示しなければなりません。(IAS1.29)

表示項目に個別の重要性がない場合は財務諸表の本体または注記で他の項目と合算して表示します。ただし、財務諸表本体で独立して表示するほどの重要性はない項目でも、注記では別掲して表示することが妥当の場合ものあります。(IAS1.30)

また、情報に重要性がない場合には、IFRSに定められて特定の開示を要しません。 (IAS1.31)

 

-重要性-

IAS第1号では、項目の脱漏又は誤表示は、利用者が財務諸表を基礎として行う経済的意思決定に、個別にまたは総体として影響を与える場合には、 重要である(material)といえます。重要性は、それを取り巻く状況において判断される脱漏や誤表示の大きさや性質により決定されます。当該項目の大きさや性質、またはその両方が重要性を判断する要因となり得ます。(IAS1.7)

脱漏や誤表示が利用者の経済的意思決定に影響を及ぼし、それゆえに重要であると評価するには、当該利用者の特徴を考慮しなければなりません。概念フレームワークは、「利用者は事業、経済的活動及び会計について妥当な知識を持ち合わせており、合理的な勤勉さをもって情報を研究しようとする意欲を有していると想定される」と述べられています。したがって、評価については、当該属性を有する利用者がその経済的意思決定において、合理的にみてどうのように影響を受けるかを考慮する必要があります。 (IAS1.7)

 

⑤ 相殺(Offsetting)

企業は、IFRSで要求または許容されている場合を除き、資産と負債、収益と費用を相殺してはなりません(IAS1.32)。

 

⑥ 報告の頻度(Frequency of reporting)

企業は完全な財務諸表一式(比較情報を含む)を少なくとも年に1回は報告しなければなりません。

企業の報告期間の期末日が変更され、年次財務諸表が1年よりも長い期間または短い期間について作成されるときには、企業は財務諸表の対象期間に加えて、次の事項を開示しなければなりません。(IAS1.36)

・1年よりも長い期間または短い期間が使用されている理由

・財務諸表の比較数値が完全に比較可能とはならない旨

 

⑦ 比較情報(Comparative information)

IFRSが容認しているまたは異なる取扱いを定めている場合を除き、企業は、当期の財務諸表で報告されたすべての金額について、前期との比較情報を開示しなければなりません。

当期の財務諸表の理解に役立つ場合には、企業は、説明的・記述的な情報に関する比較情報を含めなければなりません。(IAS1.38)

 

財務諸表の中の項目の表示または分類が変更される場合には、組替えが実務上不可能でない限り、企業は比較金額を組替えなければなりません。比較金額が組替えられる場合には、企業は次の事項を開示しなければなりません。(IAS1.41)

・組替え内容

・組替えられた項目または項目分類の金額

・組替えの理由

 

比較金額を組替えられることが実務上不可能な場合には、企業は次の事項を開示しなければなりません。(IAS1.42)

・金額を組替えない理由

・金額を組替えていたならば行われていたであろう修正の内容

 

なお、実務上不可能(impracticable)とは、企業がある定めを適用するためにあらゆる合理的な努力を払った後にも、適用することができない場合をいいます。(IAS1.7)

 

⑧ 表示の継続性(Consistency of presentation)

企業は次の場合を除いて、財務諸表上の項目の表示と分類を、ある期から次の期へと維持しなければなりません。(IAS1.45)

・企業の事業内容の重大な変化または財務諸表の表示の再検討により、IAS第8号に定める会計方針の選択と適用の要件に関して別の表示または分類の方がより適切であることが明らかな場合

IFRSが表示の変更を求めている場合

6.財務諸表の識別表示

企業は財務諸表を明瞭に識別し、同じ公表書類中の他の情報と区別しなければなりません(IAS1.49)。

また、企業は各計算書および注記を明瞭に識別しなければなりません(IAS1.50)。

 

さらに、次の情報を目立つように表示し、表示されている情報が理解されるために必要な場合には、繰り返し表示しなければなりません(IAS1.51)。

報告企業の名称または他の識別手段、および直前の報告期間の期末日からの当該情報の変更

・財務諸表は個別企業の財務諸表か、企業集団の財務諸表か

・報告期間の期末日または財務諸表一式もしくは注記の対象期間

・IAS第21号「外国為替レート変動の影響」に定義される表示通貨

・財務諸表中の金額を表示するのに使用される表示単位

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