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IAS第11号「工事契約」(1/2)

(平成23年1月31日現在)

1.目的

IAS第11号の目的は、工事契約に係る収益及びが原価の会計処理を定めることにあります。

 

工事契約に基づく請負業務の性質上、請負業務が開始される日とその業務が完了する日は、通常、異なる会計期間に属します。それゆえ、工事契約の会計における主要な論点は、工事契約に係る収益及び原価を建設工事が行われる複数の会計期間に配分することにあります。

IAS第11号は、工事契約に係る収益及び原価を、包括利益計算書に収益及び費用としていつ認識すべきかを決定するために、「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」に示されている認識要件を用いており、当該要件の適用に関する実務上の指針も提供しています。

2.範囲

本基準は、 施工者の財務諸表における工事契約の会計処理に適用しなければなりません。(IAS11.1)

3.定義

IAS第11号で使用されている主要な用語の定義は下記のとおりです。(IAS11.3)

 

・工事契約

単一の資産又はその設計、技術及び機能若しくはその最終的な目的や用途が密接に相互関連又は相互依存している複数の資産の結合体の建設工事のために特別に交渉される契約をいいます。

工事契約には、プロジェクトの管理者及び設計者の役務に関する契約のような、資産の建設工事に直接関連した役務の給付に関する契約や資産の破壊又は修復、及び資産の解体後の環境修復に関する契約が含まれます。(IAS11.5)また、建物などの単一の資産の建設工事のみならず工場などの複合体の建設工事も含まれます。(IAS11.4)

 

工事契約は、多数の方法によって締結されますが、本基準の目的上、固定価格の契約及びコスト・プラス契約のいずれかに分類されます。

また、上限価格が設定されているコスト・プラス契約の場合のように固定価格の契約とコスト・プラス契約の両方の特徴を備えている工事契約もあります。(IAS11.6)

 

・固定価格の契約

施工者が固定された契約価格又は単位出来高当たりの固定単価で請け負う工事契約をいい、場合によっては原価を基礎とする価格修正条項が付されます。

 

・コスト・プラス契約

許容可能な原価又は他の方法で定められた原価に、その原価に対する一定率又は固定の報酬額を加えたものが施工者に支払われる工事契約をいいます。

4.工事契約の結合及び分割

本基準の規定は、通常、個々の工事契約に個別に適用されます。しかし、特定の状況下においては、単一の契約又は一群の契約の実質を反映させるために、 単一の契約の個別に識別可能な構成要素に対し、又は、一群の契約に対し、一括して本基準を適用することが必要です。(IAS11.7)

 

<工事契約の分割>

単一の契約が多数の資産を対象としている場合、次のときには、個々の資産の建設は別個の工事契約として取り扱わなければなりません。(IAS11.8)

・個々の資産に対して個別の見積書が提示されている。

・個々の資産について個別に取り決められており、施工者及び発注者が個々の資産に関する契約の関連部分について受諾することや拒絶することができる。かつ、

・個々の資産の原価と収益が区分できる。

 

発注者のオプションにより追加資産の建設工事を行う場合や、追加資産の建設工事を含めるために契約が修正される場合がありますが、次の場合には、別個の工事契約として取り扱わなければなりません。(IAS11.10)

・追加資産が、その設計、技術又は機能において、当初の契約の対象となる資産又は資産群と著しく異なる場合

・追加資産の価格が、当初の契約価格と無関係に取り決められる場合

 

<工事契約の結合>

発注者が単独であるか複数であるかにかかわらず、次の場合には、一群の契約を単一の工事契約として取り扱わなければなりません。(IAS11.9)

・一群の契約が一括して取り決められている。

・それらの契約が、非常に密接に相互関連しているために事実上、全体としての利益率が定められた単一のプロジェクトの一部になっている。かつ、

・それらの契約が同時又は連続的に進行する。

5.工事契約収益の構成要素

工事契約収益は次のものから構成されます。(IAS11.11)

 

 @ 工事契約で合意された当初の収益額

 A 建設工事の契約内容の変更、クレーム及び報奨金のうち、収益となる可能性が高<、かつ、信頼性をもって測定できるもの

 

工事契約収益は、回収済み又は回収可能な対価の公正価値で測定されます。事契約収益の測定は、将来の事象の結果に依存する種々の不確実性に影響され、諸事象の発生及び不確実性の解消に従って、見積りの見直しが必要となることが多くあります。それゆえ、工事契約収益額は、会計期間ごとに増えることも減ることもあります。(IAS11.12)

 

なお、ここでいう報奨金とは、一定の履行基準を満たした場合やそれを超えている場合に、施工者に支払われる追加額をいい、例えば、契約の早期完了に対し、施工者への報奨金の支払が認められる契約があります。(IAS11.15)

6.工事契約原価の構成要素

工事契約原価は、次のものからなります。(IAS11.16)

 

 @ 特定の契約に直接関連する原価

 A 当該請負業務全般に起因し、かつ、その契約に配分できる原価

 B 契約の条件により、発注者に個別に請求できるようなその他の原価

 

<特定の契約に直接関連する原価>

特定の契約に直接関連する原価には次のものを含みます。(IAS11.17)

・監督を含む現場の労務費

・建設工事に使用された材料費

・その契約に使用された工場及び設備の減価償去費

・契約に基づく工事の現場への又はそこからの、工場、設備及び材料の移設費及び移送費

・工場及び設備の賃借に係る原価

・契約に直接関連する設計及び技術援助料

・調整及び保証作業の見積原価(予測される補償の原価を含む)

・第三者からのクレーム

 

これらの原価は、工事契約収益に含まれない副次的な収益によって減額されることもあります。例えば、契約の完了時における余剰材料の売却や工場及び設備の処分から発生する収益があります。

 

<請負業務全般に起因し特定の契約に配分できる原価>

当該請負業務全般に起因し、かつ、特定の契約に配分できる原価には次のものを含みます。(IAS11.18)

・保険料

・特定の契約に直接関連しない設計及び技術援助料

・工事間接費

 

これらの原価は、規則的、合理的で、特徴の類似したすべての原価に首尾一貫して適用される方法を用いて配分されます。その配分は、建設工事活動の通常の水準に基づいて行われます。

工事間接費には、建設工事要員の人件費の支払を準備し、処理する費用などを含みます。また、請負業務全般に帰属させることができ、かつ、特定の契約に配分できる原価には、借入費用も含まれます。

 

<契約の条件により、発注者に個別に請求できるその他の原価>

契約の条件により、発注者に個別に請求できる原価には、当該契約の条件により支払が特定されている場合の一部の一般管理費や開発費が含まれます。(IAS11.19)

 

<工事契約原価から除外される原価>

工事請負業務に帰属させることも、契約に配分することもできない下記のような原価は、工事契約原価から除外されます。(IAS11.20)

・契約で支払が特定されていない一般管理費

・販売費

・契約で支払が特定されていない研究開発費

・特定の契約に使用されない遊休の工場及び設備の減価償却費

 

<契約を獲得する過程で発生した原価>

工事契約原価は、契約の獲得の日から最終的な契約の完了までの期間にわたり、工事請負業務に帰属させることができる原価から通常は構成されます。

しかし、契約に直接関連し、契約を獲得する過程で発生した原価がそれらを区分して把握し、信頼性をもって測定することができ、かつ、その契約を獲得する可能性が高ければ、工事契約原価の一部として含めることになります。

ただし、契約獲得過程で発生した費用について、一旦発生した会計期間に費用として認識した場合は、その後に契約が獲得されたとしても、費用認識を取り消して工事原価に含めることはできません。(IAS11.21)

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