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IAS第36号「資産の減損」(1/3)

(平成23年1月31日現在)

1.目的・範囲

IAS第36号の目的は、企業が資産に回収可能価額を超える帳簿価額を付さないことを保証するために、すべての資産に適用する減損にかかる会計処理を定めることにあります。(IAS36.1)

 

ただし、以下の資産は適用範囲外としています。(IAS36.2)

・棚卸資産(IAS第2号「棚卸資産」参照)

・工事契約から生じる資産(IAS第11号「工事契約」参照)

・繰延税金資産(IAS第12号「法人所得税」参照)

・従業員給付から生じる資産(IAS第19号「従業員給付)参照)

・IFRS第9号「金融商品」の適用範囲内の金融資産

・公正価値で測定された投資不動産(IAS第40号「投資不動産」参照)

・農業活動に関連して生物資産で売却費用控除後の公正価値で測定されるもの(IAS第41号「農業」参照)

・IFRS第4号「保険契約」の適用範囲に含まれる保険契約の下での、保険者の契約上の権利から生じる繰延取得コストおよび無形資産

・IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」に従って、売却目的保有に分類された非流動資産(または処分グループ)

 

 IAS第36号も日本基準と同様に、減損の兆候の評価、回収可能価額の測定、減損損失の認識と測定というフローで減損損失が計上されます。

2.減損テストの要否の判定

IAS第36号では、減損テスト(帳簿価額と回収可能価額との比較)の要否の判定について、「耐用年数を確定できない無形資産、未使用の無形資産、のれん」「それ以外の資産」について分けて規定しています。

 

<耐用年数を確定できない無形資産、未使用の無形資産、のれん>

耐用年数を確定できない無形資産、未使用の無形資産、のれんについては、減損の兆候の有無にかかわらず、下記の頻度やタイミングで減損テストを実施しなければなりません。(IAS36.10)

 

 @ 耐用年数を確定できない無形資産、未だ使用可能でない無形資産

各年次において帳簿価額と回収可能価額とを比較することにより、減損テストを実施しなければなりません。減損テストは、毎年同時期に実施するのであれば、年次期間中のいつでも実施してもよく、異なる無形資産については、無形資産ごとに異なる時期に減損テストを実施してもよいとされています。ただし、それらの無形資産が当事業年度中に当初認識された場合には、当該無形資産については当事業年度の末日前に減損テストを実施しなければなりません。

 

 A 企業結合で取得したのれん

減損テストを毎年実施しなければなりません(テスト方法の詳細は後で解説します)。

 

<上記以外の資産>

上記以外の資産については、各報告期間の末日現在で、資産が減損している可能生を示す兆候があるか否かを評価し、兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能価額を見積り、減損テストを実施しなければなりません。(IAS36.9)

減損損失の可能性を示す兆候が存在しない場合は、回収可能価額の正式な見積りを行う必要はありません。(IAS36.8)

3.減損している可能性のある資産の識別 −減損の兆候の評価−

耐用年数を確定できない無形資産、未使用の無形資産、のれん以外の資産について、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを評価する場合、企業は少なくとも以下の兆候を考慮しなければなりません。(IAS36.12)

ただし、これらの項目はすべてを網羅するものではなく、資産が減損している可能性を示す他の兆候を識別することもあるとされています。(IAS36.13)

 

【外部情報源】

 @ 当期中に、時間の経過または正常な使用によって予測される以上に、資産の市場価値が著しく低下している

 A 企業が営業している技術的、市場的、経済的もしくは法的環境において、または資産が利用されている市場において、当期中に企業にとって悪影響のある著しい変化が発生したか、または近い将来に発生すると予想される

 B 市場利率または投資についてのその他の市場収益率が当期中に上昇し、かつ、これらの上昇が資産の使用価値の計算に用いられる割引率に影響して資産の回収可能価額を著しく減少させる見込みがある

 C 報告企業の純資産の帳簿価額が、その企業の株式の市場価値を超過している

 

 【内部の情報源】

 D 資産の陳腐化または物的損害の証拠が入手できる

 E 資産が使用されており、または使用されると予測される範囲もしくは方法に関して、当期中に企業にとって悪影響のある著しい変化が発生し、または近い将来において発生すると予測される

(これらの変化は、資産が遊休となること、資産の属する事業の廃止、リストラクチャリングの計画、予定されていた期日以前の資産の処分の計画、資産の耐用年数が確定できない状態から有限となるよう再評価することを含みます)

 F 資産の経済的成果が予想していたより悪化し、または悪化するであろうということを示す下記のような証拠が内部報告から入手できる

・当該資産の当初予算よりも極めて高額な、資金を取得するためのキャッシュ・フロー、またはその後の資産の操業や維持に必要な資金

・予算よりもの著しく悪化している、実際の正味キャッシュ・フローまたは資産から発生する営業損益

・資産から発生する、予算化されていた正味キャッシュ・フローもしくは営業利益の著しい悪化または予算化されていた損失の著しい増加

・当期の数値を将来の予算上の数値と合計した場合の、当該資産に関する営業損失または正味キャッシュ・アウトフロー

 

【子会社、共同支配企業または関連会社から配当】

 G 子会社、共同支配企業または関連会社に対する投資について、企業がその投資からの配当を認識しており、かつ、次のような証拠を入手できる

・個別財務諸表における当該投資の帳簿価額が連結財務諸表における被投資企業の純資産(関連するのれんを含む)の帳簿価額を超えている

・配当が、その配当が宣言されていた期間におけるその子会社、共同支配企業または関連会社の包括利益の合計額を超えている

 

資産について減損損失が認識されない場合においても、資産が減損している可能性を示す兆候がある場合には、資産の残存耐用年数、減価償却(償却)方法、残存価額が、当該資産に適用される基準に従って見直され、かつ、修正される必要があることを示している場合があるため注意が必要です。(IAS36.17)

 

<重要性の原則>

上記の兆候か存在していたとしも資産の回収可能価額を見積もる必要があるか否かを識別するにあっては、重要性の原則が適用されます。例えば、資産の回収可能価額がその帳簿価額より相当大きいことを過去の計算結果で示されている場合には、当該差異を帳消しにしてしまうような事象が起きていない限り、資産の回収可能価額を再度見積もる必要がない場合などが挙げられます。(IAS36.15,16)

4.回収可能価額の測定 −全体像−

耐用年数を確定できない無形資産、未使用の無形資産、のれんについては、減損の兆候の有無にかかわらず、毎期、帳簿価額と回収可能価額との比較を行います。

それ以外の資産については、減損の兆候の評価の結果、減損の兆候が存在する場合には帳簿価額と回収可能価額との比較を行います。

 

回収可能価額とは、資産または資金生成単位の「売却費用控除後の公正価値」と「使用価値」のいずれか高い金額をいいます。(IAS36.6,18)

 

<回収可能価額算定上の留意点>

ただし、資産の売却費用控除後の公正価値および使用価値のどちらか一方でも資産の帳簿価額を超過する場合には、資産は減損していないといえるため、常に両方の金額を決定する必要があるとは限りません。(IAS36.19)

 

また、資産が活発な市場で取引されていない場合で、さらに取引の知識がある自発的な当事者間で独立第三者間取引条件による資産の売却から得られる金額の信頼し得る見積りを得る基礎がないため、売却費用控除後の公正価値を決定することが不可能な場合は、資産の回収可能価額として使用価値を用いることになります。(IAS36.20)

 

さらに、処分目的で所有されている資産の場合など資産の使用価値が売却費用控除後の公正価値を著しく超過していると考える理由がない場合には、売却費用控除後の公正価値が回収可能価額として用いられることになります。(IAS36.21)

 

<回収可能価額の算定単位>

回収可能価額は、当該資産が他の資産または資産グループから概ね独立したキャッシュ・フローを発生している場合は、個別資産単位で算定されます。(IAS36.22)

 

一方、そうでない場合は、次のいずれかに該当しない限りは、回収可能価額は当該資産の属する資金生成単位で算定されます。

・当該資産の売却費用控除後の公正価値が帳簿価額より高額である

・当該資産の使用価値が売却費用控除後の公正価値に近いと見積もられ、かつ、売却費用控除後の公正価値が決定できる

 

資金生成単位とは、他の資産または資産グループからのキャッシュ・イン・フローとは概ね独立したキャッシュ・イン・フローを生成させるものとして識別される資産グループの単位をいいます。(IAS36.6)

詳細は「8.資金生成単位の減損」を解説します。

 

<耐用年数を確定できない無形資産の回収可能価額の測定>

耐用年数を確定できない無形資産については、減損テストを、減損の兆候の有無にかかわらず、帳簿価額と回収可能価額と比較することによって毎年行うこととしています。しかし、ある過去の期間に行われたそのような資産の回収可能価額に関する直近の詳細な計算結果は、次のすべての条件が満たされれば、当期における減損テストに用いることが可能です。(IAS36.24)

 

@ 無形資産が、他の資産または資産グループからほぼ独立した継続的な使用からのキャッシュ・イン・フローを生まず、それゆえ当該資産の属する資金生成単位の一部として減損テストが行われる場合、当該単位を構成する資産および負債が、直近の回収可能価額の計算のときから著しく変化していないこと

 

A 直近の回収可能価額の計算の結果が、資産の帳簿価額に比して相当程度大きいこと

 

B 直近の回収可能価額の計算のとき以降発生した事象および変化のあった状況を分析した結果、現在の回収可能価額が資産の帳簿価額を下回る可能性が極めて低いこと

5.回収可能価額の測定 −売却費用控除後の公正価値−

売却費用控除後の公正価値とは、取引の知識がある自発的な当事者の間の独立第三者間取引による資産の売却から得られる金額から、処分費用を控除した額をいいます。(IAS36.6)

 

<売却価格の見積り>

 @ 拘束力のある売買契約に基づく価格がある場合

売却費用控除後の公正価値は、独立第三者間取引条件による拘束力のある売買契約に基づく価格を資産の処分に直接に関連する増分費用について修正した金額となります。

当該金額が、売却費用控除後の公正価値としては最善の証拠といわれています(IAS36.25)

 

 A 拘束力のある売買契約はないが、資産が活発な市場で取引されている場合

売却費用控除後の公正価値は、処分費用を差し引いた当該資産の市場価格となります。適正な市場価格は、通常は見積り日現在の入札価格ですが、見積り日現在の指値が入手できない場合には、取引日と見積り日との間に著しい経済環境の変化がなかったことを条件として、直近の取引価格が売却費用控除後の公正価値を見積もる基礎となり得ます。(IAS36.26)

 

 B 拘束力のある売買契約や活発な市場が存在しない場合

売却費用控除後の公正価値は、報告期間の末日において、取引の知識がある自発的な当事者間で独立第三者間取引による資産の売却により獲得できる、処分費用控除後の金額を反映する、利用可能な最善の情報に基づくことになります。

当該金額の決定においては、同一産業内の類似資産の直近時点の取引結果を反映しますが、即時売却を余儀なくされている場合以外は、売却が強制された場合を反映してはいけません。(IAS36.27)

 

<処分費用の見積り>

売却費用控除後の公正価値の決定において控除される処分費用は、既に負債として認識された費用以外の処分費用となります。例としては、法的費用、印紙税および類似の取引税、資産の除却費用ならびに資産を売却可能状態にするための直接増分費用などが挙げられています。一方、資産の処分に引き続き事業の縮小や再編成に関連する費用は、直接増分費用には該当しません。(IAS36.28)

6.回収可能価額の測定 −使用価値−

使用価値とは、資産または資金生成単位から生じると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値をいいます。(IAS36.6)

 

資産の使用価値の算定には次の要素を反映させなければなりません。(IAS36.30)

・企業が資産から得られるものとする期待する将来のキャッシュ・フローの見積り

・将来キャッシュ・フローの金額または時期についての、起こり得る変動についての期待

・現在の市場におけるリスクフリーレートで表わされる貨幣の時間価値

・資産固有の不確実性の負担に対する価格・非流動性のように、企業が資産から得られることを期待する将来キャッシュフローの見積りに際して、市場参加者が反映させているその他の要因

 

<使用価値の見積り手順>

資産の使用価値の見積りは、下記手順で実施します。(IAS36.31)

 @ 当該資産の継続的使用および最終的な処分から発生する将来キャッシュ・フローの見積り

 A @で算定した将来キャッシュ・フローに適切な割引率の適用

 

なお、不確実性の要素は、将来キャッシュフローの修正として反映することも割引率の修正として反映することできるとされています。(IAS36.32)

 

<将来キャッシュフローの見積りの基礎>

将来キャッシュ・フローは下記点を基礎にして見積りしなければなりません。(IAS36.33)

 

 @ キャッシュフロー予測は、当該資産の残存耐用年数にわたり存在するであろう一連の経済状況に関する経営者の最善の見積りを反映する合理的かつ支持し得る前提と基礎にしなければなりません。

当該見積りにおいては、外部証拠に重点を置かなければなりません。

また、経営者は、現在のキャッシュ・フロー予測の基礎とする仮定の合理性を、過去のキャッシュ・フロー予測と実際のキャッシュ・フローとの間の差異の原因を検討することにより評価します。(IAS36.34)

 

 A キャッシュ・フロー予測は、経営者によって承認された直近の財務予算/予測を基礎にしなければなりません。

ただし、将来のリストラクチャリングまたは資産の機能を改善または拡張することから生じることが予想される、将来のキャッシュ・イン・フローまたはアウト・フローの見積りは除外しなければなりません。

これら予算/予測を基礎とした予測は、より長い期間を正当化し得えない限り、最長でも5年間でなければなりません。5年間超にわたる長期にわたる将来キャッシュ・フローの詳細に関する明確かつ信頼し得る予算/予測は一般的に入手できないと考えられるためです。(IAS36.35)

 

 B 直近の予算/予測の期間を超えたキャッシュ・フロー予測は、逓増率が正当化できる場合を除き、後続の年度に対し一定または逓減する成長率を使用した予算/予測に基づくキャッシュ・フロー予測を推測して延長することにより見積もらなければなりません。

この成長率は、より高い成長率を正当化し得ない限り、当該製品、産業または企業が活動している単数または複数国の、または資産が使用されている市場の、長期平均成長率を超えてはなりません。

 

<将来キャッシュ・フローの見積りの構成要素>

将来キャッシュ・フローの見積りには、次の事項を含めなければなりません。(IAS36.39)

 

 @ 当該資産の継続的使用によるキャッシュ・イン・フローの予測

 A 当該資産の継続的使用によるキャッシュ・イン・フローを発生させるため、必然的に生じるキャッシュ・アウト・フロー(資産を使用に供する準備のためのキャッシュフローアウトフローを含む)で、当該資産に直接帰属させられる又は合理的かつ首尾一貫した基礎により配分できるものの予測

 B もし該当すれば、その耐用年数の終了時における資産の処分によって受取る(または支払う)正味のキャッシュ・フロー

(当該資産の耐用年数の終了時における、その処分によって受け取る(又は支払う)正味キャッシュ・フローの見積りは、取引の知識がある自発的な当事者の間で、独立第三者間取引による資産の処分から得られる金額から見積処分費用を控除したもので、企業が予測する金額でなければなりません。(IAS36.52))

 

将来キャッシュ・フローは、資産の現在の状態において見積もらなければなりません。そのため、将来キャッシュ・フローの見積もりには、次の項目から発生すると予想される見積り将来キャッシュ・イン・フローまたはアウト・フローを含めてはいけません。(IAS36.44)

 @ 企業が未だコミットしていない将来のリストラクチャリング

 A 当該資産の機能を改善または拡張するもの

ただし、リストラクチャリングが確定した場合には以下の対応を行う。(IAS36.47)

・使用価値を決定する目的において将来キャッシュ・フローの見積りには、当該リストラクチャリングからの費用の削減およびその他の便益(経営者に承認された直近の財務予算/予測に基づく)を反映する

・当該リストラクチャリングに関する将来キャッシュ・アウト・フローの見積りは、IAS第37号「引当金、偶発負債および偶発資産」に従ってリストラクチャリング引当金として取り扱う

 

また、将来キャッシュ・フローの見積りには、次の項目を含めてはいけません。(IAS36.50)

・財務活動からのキャッシュ・イン・フローまたはアウト・フロー

・法人所得税の受取り又は支払い

 

<割引率>

割引率は、次のものに関する現在の市場評価を反映した税引前の利率でなければなりません。(IAS36.55)

・貨幣の時間価値

・当該資産の固有リスクで、それについて将来キャッシュフローの見積りを調整していないもの

 

<将来キャッシュ・フローが外貨の場合>

将来キャッシュ・フローが外貨の場合、将来キャッシュフローは発生する通貨(外貨)によって見積もられ、当該通貨に適切な割引率を用いて割り引かれます。そして、計算された現在価値を、使用価値の計算日現在の直物為替レートを用いて換算して算出します。(IAS36.54)

7.減損損失の認識および測定 −個別資産(のれんを除く)−

個別資産(のれんを除く)について、当該資産の帳簿価額と回収可能価額との比較を行った結果、資産の回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合に、かつ、その場合にのみ、当該資産の帳簿価額をその回収可能価額まで減額し、当該減額は減損損失として計上します。(IAS36.59)

 

<会計処理>

当該資産の減損損失は直ちに純損益として認識しなければなりません。

ただし、他の基準(例えば、IAS第16号における再評価処理)に従って再評価された資産の減損損失は、当該他の基準に従って再評価の減額として処理します。(IAS36.60)

 

減損損失として見積もった金額が、関連する当該資産の帳簿価額より大きい場合、それが他の基準によって要求されている場合に、かつ、その場合にのみ、負債を認識しなければなりません。(IAS36.62)

 

減損損失を認識した後には、当該資産の減価償却費(償却費)は、資産の改訂後の帳簿価額から残存価額を控除した金額を、残存耐用年数にわたって規則的に配分することにより、将来の期間にわたって調整しなければなりません。(IAS36.63)

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