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2013/10/09 ヤフー、出店・出品 無料に

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

今日は、ヤフーが発表したヤフーショッピングの出店・出品の無料化の話題からです。

 

【記事要約】


・ヤフーは7日、電子商取引(EC)事業の料金体系を見直し、インターネット通販サイトとオークションサイトへの出店料を無料にすると発表した。

・ヤフーはネットオークションは好調だが、ネット通販は楽天やamazonの前に苦戦気味だ。

・出店料を無料化してEC利用を促す一方、広告収入を増やすことで事業拡大を狙う。

・「無料化でふ2桁億円の減収になる」(宮坂学社長)見通しだが、出店者がヤフーに載せる広告を増やすことで減収分を補う考え。

・「日本のEC化率を20%~30%に引き上げる」(同社幹部)。

 <日本経済新聞 2013年9月30日 朝刊11面より


 

 ここ2日で、ネット上でも大変話題になったヤフーショッピングの無料化戦略。

 マーケットでは、さっそく反応し、競合の楽天では20%下落、ヤフーも今日の14時30分時点で、2日前の終値から約10%ほど下落しているようですね。

 「無料化 = 収益性への懸念」という構図が顕著に表れた結果かと思います。

 今日は簡単にヤフーと楽天の財務状況を確認したいと思います。

◆ヤフーの財務状況

 ヤフーの最近5年の財務状況は次のとおりです。

 

 

【リソース】ヤフーHPより、筆者がグラフ化

 

 ヤフーの売上はこの5年間で順調に推移しており、約30%成長しているようです。

 

【リソース】ヤフーHPより、筆者がグラフ化

 

 営業利益、最終利益ともに順調に右肩上がりで、売上高営業利益率は55%にせまっており非常に高い利益率を誇っています。

 

【リソース】IKP財務データベース、ヤフーHPより筆者がグラフ化

 

 一方で、ROA及びROEは下落傾向にあります。

 これはBS自体が肥大化していることが原因で、資産の有効活用が行われていないとも言えます。次にみるとおり、稼いだキャッシュがつみあがっている状況です。

 

【リソース】IKP財務データベース、ヤフーHPより筆者がグラフ化

 

  期末現金残高が5年前に約370億円だったものが直近では約4100億円まで積みあがっています。ここ最近では稼いだキャッシュが投資に回っている様子もなく、配当に回っている様子もありません。

 十分すぎるぐらい潤沢なキャッシュと健全な財務基盤を誇っていると言えます。

◆楽天の財務状況

 一方で、楽天の最近5年の財務状況は次のとおりです。

 

【リソース】楽天HPより筆者がグラフ化 

 

  こちらも順調に売上を伸ばしており、この5年間で約77%の成長を遂げています。楽天は、楽天市場をはじめ、楽天銀行、楽天トラベルなどのインターネット業態の多角化と相互のポイント付与による抱え込み戦略で順調に業績を伸ばしています。

 

【リソース】IKP財務データベース、楽天HPより筆者がグラフ化

 

 利益ベースでみると、営業利益は順調に伸ばしているものの、特別損失の計上により、過去2回において最終赤字を計上しています。08年12月期は投資有価証券の評価損(TBS株の評価損)による最終赤字、11年12月期はクレジットカード事業の再構築等に伴う特別損失の計上により最終赤字となっているようです。

 

【リソース】IKP財務データベース

 

 

 金融業を抱える楽天であるため、ROAは低く算定される可能性があります。

 

【リソース】楽天HPより筆者がグラフ化 

 

 キャッシュフローの状況についても、楽天は金融業を行っているため、あまり分析しても意味がありませんが、ここにきて残高は増加しているようです。

◆ヤフーのプレスリリース

 ヤフーは、Yahoo!JAPANによるプラットフォーム型の広告収入モデルで、楽天は小売業態を中心とした金融業を含む多角化モデルであるため、単純に比較することはできませんが、やはり、ヤフーの方が楽天よりもインターネット世界でより大きなプラットフォームを提供している点で強いと言えますね。

 

 ヤフーにとってはECサイトのページですら広告収入を増やすためのコンテンツでしかすぎず、結果として「ECサイトの無料化」というところにたどりついたのだと思います。

 ヤフーの10月7日プレスリリースでは、「Yahoo!JAPANは、このタイミングでeコマースのビジネスモデル自体に革命を起こし、自社サービスを次のステージに引き上げるべく、この度の大きな決断に踏み切りました」と書かれているように、ヤフーショッピングがどうかというカテゴリーではなく自社サービスの全体的なレベルアップの起爆剤と考えているのだと思います。

 それに、上記の財務状況を見れば、ヤフーにとってこの程度の投資であればそこまで負担感もないでしょう。また、Yahoo!JAPANはその立場上、海外進出することはできないわけですし、国内で何らかの大胆な戦略を打ち出していかなければ成長は止まってしまうわけですから、ネットビジネスの大きなカテゴリーであるeコマースには本格的な関与は避けられないんでしょうね。

 

 ヤフーの翌日のプレスリリースでは、「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」への新規出店希望が爆増」ということで、わずか1日で「Yahoo!ショッピング」のストア10,000件、個人16,000件の希望があったようです。

 現在のYahoo!ショッピングのストア数が約20,000店舗、ヤフオク!のストア数が約16,000店舗ですので、その多さは歴然ですね。

 

 

 Yahoo!ショッピングの無料戦略は売上に対するロイヤリティーまでもなくしたことに相当驚きましたが、個人レベルの出店側の観点からすると出店料の初期費用や月額費用もないのが本当に使いやすくなるものにしていると思います。

 10月7日プレスリリースにも記載されているように、「ストア出店料を無料にすることにより、期間限定の短期営業も可能となるため、たとえば出荷できる時期が限られる第一次産業の産品(農作物や水産物など)や、期間限定販売のイベントグッズなども気軽に販売することができるようになります」。これは間違いなく使い勝手がいいですよね。

 

 

 それに対して、楽天はどのように対応するのでしょうか。今では、楽天市場だけでなく、さまざまなサービスを提供し、金融業にも本格的に進出している楽天ですので、すぐにどうなるということもないでしょうが、ECビジネスはコア・ビジネスであることは間違いありませんから何らかの対応はしていくと思われます。

 

 AmazonもECサイトのプラットフォームを提供している企業ですが、自社で物流機能も持ち、自社そのものも販売を行っている点で、ビジネスモデルは若干異なってくるでしょう。また、最近ではCloudサービスなどの別事業体も順調に成長していますから、一定のインパクトは受けると思いますが、そこまで大きなダメージは受けないのではないかと筆者個人は思っています。

 

 今後のeコマースの動向に注目していきたいですね。

以  上

 

 

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