株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

2012/04/25 決算の過年度修正相次ぐ

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

今日は、今日の日経朝刊13面の過年度遡及修正の記事が掲載されていたのでその話題から。

 

<2012年4月25日 日経朝刊13面 記事の要約より>


・これから本格化する2012年3月期決算の発表で、比較対象となる前期の決算数値を修正する企業が相次ぎそう。11年4月から12月期決算の発表ですでに80社が修正している。

・これは「過年度遡及修正会計」の影響によるもの。欧米ではすでに適用されているもので、日本では12年3月期から提供が始まった。

・過年度遡及修正は、12年3月期に何か会計方針を変更した場合、発表済みの11年3月期の決算数値も新たな会計方針をさかのぼって適用し計算しなおして公表する。

・投資家は手元に控えるなどしている古い数値ではなく、最新の決算書で開示される数値を使うよう注意が必要。

・日経の調べでは売上高を修正したのが24社、営業、経常、最終の各損益を見直したのが28社、15社、16社。

・1株当たり利益を変えたケースが最も多く53社にのぼる。過年度修正会計の導入による1株利益のルール変更なども重なり、株式分割に伴う修正が目立った。

・比較しやすくなった半面、数値が大きく修正されているので、過去の発表資料を利用する際は、投資家はこうした修正の理由を理解しておく必要がある。

・過去からのデータの連続性が途切れ、例えば「どの決算期が過去最高だったのか」といった点はわかりにくくなる。

・ただ、市場では「投資家の関心は、過去の決算数値ではなく、将来の企業収益なので問題は感じない」とのこと。


<記事要約はここまで>

 

会計実務でも影響が大きい過年度遡及修正の話題ですね。

◆過年度遡及修正会計基準の概要

企業会計基準第24号「会計上の変更および誤謬の訂正に関する会計基準」は、企業会計基準委員会が平成21年12月に公表した会計基準です。議論としては、平成13年11月のテーマ協議会の提言書において取り上げられていたもので、当時は商法の規制により見送られていたものだったようです(会計基準、結論の背景27項)。

この基準は会計方針を変更した場合や表示の方法を変更した場合の過年度に公表した財務諸表に対する修正の方法について規定しているものです。

会計方針の変更に合わせて、間違えて公表してしまったものを修正する「誤謬」(ごびゅう)についても規定しています。

 

会計方針の変更には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更と、正当な理由により会社が自主的により会計方針を変更するパターンがあります。

なお、そもそも論として、正当な理由のない会計方針の変更は認められないので、会計方針の変更に関する議論には出てきません。

 

さて、こうした会計方針の変更によるものは、会計基準等に遡及適用を行わない特定の経過的な取扱いが規定されていない場合には、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することになります。特定の経過的な取扱いが定められている場合には、それに従うことになります。

開示は、次の取扱いとなります。

①表示期間より前の期間に関するものは累積的影響額を表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映

②表示期間は、当該各期間の影響額を反映

 

表示方法の変更を行った場合にも過去の表示を組み替えを行い修正することになります。

 

これらの変更を行った場合には、会計基準等の名称、会計方針の変更の内容などを注記することになります。

◆原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱い

遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合は、次のパターンにより対応します。

 

①過去の期間のすべての累積的影響額を算定することができるものの、表示期間のいずれかにおいて当該期間に与える影響額を算定することが実務上不可能な場合は、実行可能な最も古い期間の期首時点で累積的影響額を算定し、党外期首残高から新たな会計方針を適用する。

②過去の期間のすべての累積的影響額を算定することができない倍いは、期首以前の実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用する。

 

過年度のものを修正するのですから、実務的にさかのぼれる期間に限界が生じてくる可能性は高いと思います。

特に表示の組替の場合、当該組替を行えるような集計データを情報として持っていないようなケースでは組替えようがないので、これに該当するかと思われます。

なお、実際に実務的に遡及適用が難しいことが明らかなケースや実務的にコストが高くつきすぎるようなケースでは、各会計基準で特定の経過的な取扱いで遡及修正する必要がないことが規定されると思われます。

 

◆会計上の見積りの取扱い

「会計上の見積り」は、資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出することをいいます(会計基準4項(3))。

会計上の見積りは会計方針とは異なり、合理的な金額を算出する方法になります。

 

会計上の見積りの変更は、当該変更が変更期間のみに影響する場合には、当該変更期間に会計処理を行い、当該変更が将来の期間にも影響する場合には、将来にわたり会計処理を行うことになります。

会計上の見積りは、見積もる時点で入手できる情報に基づいて最善のものを行うものなので、時間が経過し入手可能な情報が変化すれば当然会計上の見積りが変わります。

このため、これを遡及修正することは妥当ではなく、日本の会計基準でもIFRSであっても会計上の見積りの変更による影響で遡及修正が適用されることはありません。

 

ただし、会計上の見積りのやり方に誤りがあった場合には誤謬に該当するため、この場合は誤謬として遡及修正が行われます。

◆財務諸表利用者側の対応

すでに適用されている会計基準であるため、財務諸表を作成する側の企業はすでに対応済みであると考えられますが、財務諸表を利用する側としては12年3月期の決算が本格化していく中で、注意していく必要はあるでしょう。

日経の記事にもあるように、過去の財務情報をストックして利用する場合には、過年度情報が異なることになり前期比などが異なる結果となる可能性が十分にあります。

日経の記事では、「過年度の決算に興味はない」といったようなコメントも出てましたが、確かに株式投資では将来収益を織り込む形で株価が形成されていくとは思いますが、過年度の趨勢分析を行うのも一般的に行われていると思いますので、大きく数値が動くような場合には留意が必要でしょう。

 

公表する側の企業としては一度確定した(締めた)数字に修正していくということは、本当に大変で、かつ、面倒なことです。。

ある意味で確定しきれない財務数値を管理し続けなければならない経理マンとしては厳しい会計基準ですね。

「過去の決算数値に興味がない」と言われながらも、修正しなければならないのは何とも悲しい業務と言えますね。。

以 上

前へ  次へ

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

お問い合わせ

PAGETOP